円安とエネルギー価格の関連性─日本経済への影響
長期間にわたって円安が続くと、物価やエネルギー価格にも影響が及ぶと言われています。
国内の経済活動を理解するうえでは、ドル円相場とエネルギー価格の関係性を把握することが重要です。
この記事では、円安がどのようにエネルギー価格へ影響するのか、円安とエネルギー価格の変動が企業や家庭にどのような影響をもたらすのか、さらに今後の展望や対策について解説します。
円安がエネルギー価格に与える影響に関心のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
ドル円相場とエネルギー価格の関連性
そもそも円安とは、海外通貨に対して日本円の価値が下がっている状態を指します。
つまり、海外通貨を手に入れる際に、これまでより多くの日本円が必要になる状態です。
たとえば、1米ドルが100円で交換できていたものが、120円支払わなければ交換できなくなった場合、この状態を円安といいます。
円安が進むと、電気・ガス・ガソリンなど、国内で利用するエネルギーの価格が高くなるのが特徴です。
これは、日本のエネルギー自給率が低く、多くを輸入に依存していることが関係しています。
低いエネルギー自給率とドル決済
国内のエネルギー価格に円安が影響を与えるのは、日本が利用しているエネルギーのほとんどが海外産の原料によって賄われているためです。
日本は国土が狭い島国であり、石油や石炭などの資源に乏しい地理的なデメリットを抱えています。
その結果、2022年度の一次エネルギー自給率は12.6%にとどまり、エネルギーの生産に必要な資源の約9割を輸入に依存している状況です。
さらに、海外から物資を輸入する際の決済はドル建てで行われるケースが一般的です。
そのため、円安が進むと石油や石炭を輸入する際に、日本円換算でより多くの金額を支払う必要が生じ、原料価格が上昇します。
これに伴い、輸入原料をもとに生産されるガソリン、ガス、火力発電による電気などのエネルギー価格も上昇するのです。
円安による輸入コスト増幅
エネルギー価格が高騰するのは、輸送コストが増加するためでもあります。
エネルギー資源は船舶や車両など、さまざまな手段を用いて輸送されますが、その輸送にもガソリンなどのエネルギーが必要です。
また、輸送コストは国内だけでなく、原油産出国や輸送ルートとなる国の戦争、 political risk、経済状況の悪化などによっても上昇するため、国外要因によって高騰することもあります。
こうした事情による資源価格の上昇に、円安による為替レートの変動が加わることで、国内で消費されるエネルギー価格はさらに高くなる傾向にあります。
企業への影響
円安によるエネルギー価格の上昇は、企業の経済活動にも大きな影響を及ぼします。
ただし、エネルギー価格の上昇による影響の度合いは企業によって異なり、すべての企業が同じように影響を受けるわけではありません。
一方で、エネルギーコストの割合が高い企業にとっては、価格上昇が死活問題となり、経営面で厳しい局面を迎えることになります。
エネルギー多消費産業の苦境
円安によるエネルギー価格の上昇の影響を強く受けるのは、いわゆるエネルギー多消費産業に属する企業です。
エネルギー多消費産業には、鉄鋼業、化学工業、紙・パルプ、窯業といった工場を稼働させる製造業、ガソリンなどを大量に使用する運輸業、さらにはハウス栽培における空調利用や肥料生産でエネルギーを必要とする農林水産業が含まれます。
これらの企業では事業運営に大量のエネルギーを消費するため、エネルギー価格の上昇は大きなコスト増につながるのです。
また、エネルギー多消費産業でなくても、通常の企業は事業活動に電気やガスなどを使用しています。
エネルギー価格が上昇すれば、電力会社やガス会社から購入する電気・ガスの料金にも反映され、事業運営に必要な固定費が増加する可能性が高まります。
さらに、生活費の上昇を背景とした従業員の人件費高騰も、企業にとっては追加の負担となっています。
燃料コストの転嫁難
企業にとって円安によるエネルギー価格上昇の影響が大きいのは、コストを価格に転嫁しにくい事情があるためです。
円安や原油高によってエネルギー価格が上昇すると、通常の輸送費が高くなるだけでなく、燃油サーチャージとして追加料金が発生することも少なくありません。
その結果、事業を行ううえで従来よりも高いコストがかかるようになります。
こうしたコストをサービスや商品の価格に反映させて回収できれば、企業は事業を維持しやすくなります。
しかし、発注元からの依頼を受けて事業を行う、いわゆる下請け企業は、コスト転嫁が難しい状況に置かれがちです。
コストを価格に転嫁するには、発注元企業との価格交渉が必要になりますが、下請け企業側から交渉を持ちかけると、発注量の減少につながるリスクがあります。実際に、下請け事業者の約6割が交渉をためらっているという現状があるのです。
発注元企業としても、自社の事業コストを抑えたい事情から、下請けに対して価格交渉に応じにくい状況があり、結果として下請けとして事業を行う中小企業にとって、エネルギー価格の上昇は深刻な問題となり得ます。
家計・消費への波及
円安によってエネルギー価格が上昇すると、一般家庭の経済活動にも影響が及びます。
電気やガス、自動車を動かすガソリンなどは、生活に密接に関わるエネルギーです。
また、企業がエネルギーコスト増を受けて製品価格を引き上げた場合、家計の購買力が低下することも懸念されます。
このように、一般家庭においてもエネルギー価格の上昇による影響は避けられません。
光熱費・ガソリン代の家計圧迫
エネルギー価格の上昇が家庭に与える影響として特に大きいのは、光熱費やガソリン代の高騰です。
日本では、2011年の東日本大震災以降、原子力発電所の稼働が停止し、火力発電を中心に電力を供給している状況が続いています。
火力発電に使用される液化天然ガス(LNG)などの燃料は輸入に依存しているため、円安によって燃料価格が上昇すると光熱費が高くなるのです。
同様に、輸入に頼るガソリン価格も高騰し、家計に占めるエネルギー関連支出の割合が増大します。
こうした負担を緩和するため、日本政府は2023年2月から2024年5月まで「電気・ガス激変緩和対策」事業を実施しました。
この制度では、家庭で使用した電気・ガス量に応じて自動的に値引きが行われ、2024年1月までに一世帯あたり電気代が29,119円、都市ガス代が4,733円値引きされたと試算されています。
事業終了後も、政府はエアコンの使用が増える夏や冬を中心に、補助金制度を定期的に導入し、家庭および企業のエネルギー利用料金が過度に高騰しないよう調整しています。
一方で、火力発電から再生可能エネルギーへの転換を進めるための「再生可能エネルギー発電促進賦課金」は値上げされており、光熱費が必ずしも安いとはいえない状況が続いています。
エネルギー起因の購買力低下
円安によってエネルギー価格が上昇すると、一般家庭の消費行動は抑制される傾向があります。
食料品や各種製品の製造・輸送にかかるエネルギー関連コストが販売価格に反映されることで物価が上昇するためです。
その一方で、世帯収入が比例して増えるわけではなく、限られた収入の中で支出をやりくりする必要があります。
電力会社やガス会社との契約を見直すことでエネルギー料金を抑えることも可能ですが、生活に不可欠な固定費には見直しの限界があります。
その結果、食費や光熱費を確保するために、娯楽費や衣服の購入費などを削減し、生活防衛を図る世帯が増える傾向にあるのです。
今後の展望と対策
円安によってエネルギー価格が上昇すると、一般家庭の消費行動は抑制される傾向があります。
食料品や各種製品の製造・輸送にかかるエネルギー関連コストが販売価格に反映されることで物価が上昇するためです。
その一方で、世帯収入が比例して増えるわけではなく、限られた収入の中で支出をやりくりする必要があります。
電力会社やガス会社との契約を見直すことでエネルギー料金を抑えることも可能ですが、生活に不可欠な固定費には見直しの限界があります。
その結果、食費や光熱費を確保するために、娯楽費や衣服の購入費などを削減し、生活防衛を図る世帯が増える傾向にあるのです。
金融政策の限界
そもそも、円安が長く続いている原因の一つは、日本が継続的に行ってきた金融緩和施策にあります。
金融緩和とは、景気回復を目的として金利を低く抑え、経済活動を活発にしやすくする政策です。
しかし、これが長期間続くと円安が進行し、輸入品の値上がりやエネルギー価格の上昇を招きます。
こうした輸入品やエネルギー価格の高騰は、国内の金融緩和だけでは抑えられない現象です。
日銀は2025年現在も金融緩和の解除や利上げには慎重な姿勢を取っており、円安がしばらく続く見込みです。
その背景には、ウクライナ情勢などの影響で輸入燃料価格が上昇し、国内の物価高を招いている状況があり、国内景気が純粋に回復しているとは言い難い事情があります。
とはいえ、円安が続くことでエネルギー価格のさらなる上昇が懸念されており、日銀は難しい判断を迫られています。
エネルギー構造転換の必要性
円安によって燃料価格が上昇し、エネルギー価格が高騰することを防ぐには、輸入に依存せず国内でエネルギーを賄える体制へと構造を転換させる必要があります。
そのためには、エネルギー自給率を引き上げることが重要であり、消費されるエネルギー量を削減する省エネ対策や火力発電に代わって国内資源で電力を生産できる発電方法の開発・普及が求められます。
建物性能や家電性能を高めて光熱費を抑える取り組みや輸送手段の燃費を改善して燃料費を節約する対策は、多くの企業で進められているのです。
また、太陽光発電・風力発電といった再生可能エネルギーを普及させることで、燃料を海外から輸入しなくても電力を生産できるようにし、需給構造を変化させることが求められています。
まとめ
円安が進み、ドルと交換するために必要な日本円が増えると、ドル建てで輸入決済を行う際にもより多くの日本円が必要となり、輸入燃料の価格が上昇します。
日本では電気やガス、ガソリンなどのエネルギー原料の大半を輸入に依存しているため、円安によるエネルギー価格の上昇は企業や一般家庭の経済活動に大きな打撃を与える可能性があるのです。
この状況を打開するには、金融政策の転換による円安の是正に加え、エネルギー需給構造そのものを見直し、エネルギー自給率を高める取り組みが求められるでしょう。
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