人の暮らしがエネルギーになる ― 都市活動を利用した次世代発電の可能性

  • 更新日:2025/09/22

所属:湘南白百合学園高等学校

インターン生:S.Mさん

人の暮らしがエネルギーになる ― 都市活動を利用した次世代発電の可能性の写真

都市は電力を大量に消費する場所ですが、近年では人々の暮らしや都市活動そのものを電力に変える研究が進んでいます。本記事では、足音や振動、温度差や雨粒などを利用したユニークな発電方法を紹介し、その未来像を考えます。

<このページを監修した人>

RAUL株式会社 電気プラン乗換コム運営事務局
エコモ博士のエコらいふナビ

RAULのインターンシップに参加いただいた湘南白百合学園高等学校のS.Mさんが執筆してくれた記事だモ!内容がご参考になりましたら、ぜひともイイネやシェアしてほしいだモ!

目次

1.都市とエネルギーの現状

都市は、現代社会において電力消費が最も集中する場所のひとつです。私たちの生活を支える家庭の電気、オフィスや商業施設の照明、公共交通機関の運行、デジタル社会を支える通信インフラなど、あらゆる活動が電力に依存しています。特に都市部では人口密度が高く、エネルギー消費も集中的になる傾向があります。国際エネルギー機関(IEA)の報告によると、都市部における電力需要は今後20年間でさらに大幅に増加すると予測されています。

人口増加と都市化

都市部では人口増加とともに住宅、商業施設、交通量が増加します。これに伴い、都市のエネルギー需要も増大し、ピーク時の電力供給の安定性に影響を与えます。特に夏季や冬季の冷暖房需要のピーク時には、電力網に大きな負荷がかかり、計画停電や供給不足のリスクが生じることがあります。

二酸化炭素排出と環境負荷

都市部の電力消費は、化石燃料に依存する場合が多く、二酸化炭素排出量の増加につながります。これは地球温暖化や気候変動の大きな要因となります。たとえば都市の交通量が多い地域では、自動車や公共交通機関の燃料消費も加わり、環境負荷がさらに高まります。このため、都市における電力消費の効率化や再生可能エネルギーの導入が急務となっています。

エネルギー供給とインフラの課題

都市部ではエネルギーの集中消費に対応するため、大規模な発電所や送電網が整備されています。しかし、送電ロスや停電リスク、設備の老朽化など、都市の電力供給には複数の課題があります。特に集中型の電力供給では、自然災害や事故による停電の影響が広範囲に及ぶことがあり、分散型エネルギー源の導入が注目されています。

再生可能エネルギーの導入状況

近年、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入は進んでいます。しかし、これらは天候や立地条件に左右されやすく、都市部では設置場所が限られることも課題です。また、発電量が不安定な場合があるため、蓄電池や送電網の強化が必要になります。都市部の建物の屋上や空き地に太陽光パネルを設置する試みもありますが、限られた面積では大規模電力を賄うことは難しいのが現状です。

エネルギー効率化の取り組み

都市では、照明や空調設備の効率化、建物の断熱改善、スマートメーターの導入などにより、電力消費の最適化が進められています。これにより、無駄な電力消費を抑えると同時に、ピーク時の負荷を減らすことが可能です。しかし、これらの効率化だけでは、都市全体の電力需要の増加に追いつくことは難しく、新しい発電手段の導入が求められています。

都市生活と電力の関係

私たちの都市生活では、電力は不可欠であり、日常のすべての行動が電力消費に結びついています。例えば、通勤で使うエスカレーターやエレベーター、街灯、商業施設の空調、通信インフラなど、日常生活のすべてがエネルギーに依存しています。こうした都市の生活自体が、将来的には新しい発電源として利用できる可能性があると注目されています。

今後の都市エネルギーの課題

都市におけるエネルギー課題は、供給の安定化、環境負荷の軽減、効率的な消費のバランスです。都市が抱えるエネルギー問題は複雑であり、単純な再生可能エネルギーの導入だけでは解決できません。これを補う方法として、都市で日常的に発生する「動き」「音」「振動」「熱」などをエネルギー源として利用する新しい技術の研究が進んでいます。

2.従来の発電の課題と暮らしや都市活動を利用した新しい発電方法

都市における電力供給は、長年にわたり化石燃料や水力、原子力などの大型発電所に依存してきました。しかし、これらの従来型発電方法にはさまざまな課題があります。たとえば、火力発電は化石燃料の燃焼により大量の二酸化炭素を排出します。原子力発電は、発電時のCO₂排出は少ないものの、廃棄物処理や事故リスクという別の課題を抱えています。また、水力発電は立地条件に制限され、ダム建設による環境への影響も無視できません。

こうした課題を解決するために注目されているのが、都市生活そのものや日常の活動を発電に利用する技術です。これは従来の大型発電所とは異なり、「都市の中で発生する小さなエネルギー」を回収して活用する方法であり、分散型エネルギーとして都市の持続可能性を高める可能性があります。

足音や振動を利用した発電

踏力発電(床発電)

駅やイベント会場では、人が歩く際の踏力を電気に変換する床パネルが研究されています。例えば、オランダやイギリスの駅では、通勤ラッシュの時間帯に踏力発電の試験が行われ、LED照明や案内表示の電力に充てられています。歩行者の体重や歩行速度に応じて微細な電力を生成しますが、都市全体で蓄積すれば小規模ながら安定した電力供給源となります。

振動発電(ハーベスティング技術)

都市では交通や建物の振動も電力源として活用可能です。鉄道の線路や道路の下に圧電素子を設置することで、車両通過時の振動を電気に変換します。これにより、道路沿いの街灯や道路標識、小型IoTセンサーの電力として利用する試みが進んでいます。

音や環境の変化を利用した発電

音響発電

騒音や大きな音をマイク型デバイスや圧電素子で電気に変換する研究があります。コンサート会場や工場、都市の交通量の多い道路では、大きな音が日常的に発生しています。この騒音を有効活用することで、電力源として再利用できる可能性があります。

雨粒発電

雨粒がパネルに当たる衝撃や摩擦を利用して発電する技術も開発されています。特に屋外照明やセンサーに活用でき、天候によって電力が左右される太陽光発電の弱点を補う手段として注目されています。

温度差発電

建物の内外の温度差、あるいは地面や水面との温度差を利用して電気を生み出す方法もあります。都市部ではヒートアイランド現象により、温度差が生じやすいため、こうした微細な差も発電に活用できます。

人体や植物を活用した発電

人体発電

ウェアラブル機器や衣服に組み込まれた発電素子で、歩行や筋肉の動き、体温から電気を取り出す試みがあります。これにより、スマートウォッチや医療用センサーなど、小型機器の電源として利用できます。

植物発電(バイオフォトボルタイクス)

植物の光合成や土壌中の微生物の活動から電気を取り出す技術です。都市の公園やビルの緑化帯に設置することで、環境に優しい発電を実現できます。これにより、都市空間で発生する微弱なエネルギーを有効活用することが可能です。

これらの技術は、従来の発電所のように大規模な電力を生むことはできません。しかし、都市空間で無駄になっているエネルギーを効率的に回収し、街灯、案内表示、IoTデバイスなどの小規模な電力需要に充てることで、都市の持続可能性を高める可能性があります。また、災害時の非常用電源としても活用できるため、スマートシティ構想や都市防災の観点からも注目されています。

3.都市環境や自然を利用した発電

都市では、人の生活や建物の活動によって多くのエネルギーが日常的に消費される一方で、微小な形でのエネルギーも無駄になっています。歩行や交通による振動、建物や地面の温度差、雨粒の衝撃、さらには都市の騒音や植物の光合成活動など、これらを発電に変換する研究が進んでいます。

騒音を利用した発電

都市の交通量の多い道路や駅、コンサート会場、工場では日常的に大きな音が発生しています。この音を圧電素子などで電気に変換するのが騒音発電です。

具体例

イギリスのロンドン市では、地下鉄駅構内の騒音を利用して小型の街灯や案内表示の電力を賄う試みが行われています。騒音の振動を電力に変換する装置は、微細ながらも集積することで一定の電力を供給可能です。

メリット

都市の騒音という環境負荷を有効活用できる点が魅力です。特に交通量の多い都市部では、廃棄されるエネルギーが非常に大きいため、騒音発電の潜在能力は高いと考えられます。

振動を利用した発電

都市の交通や建物の活動は振動として蓄積されます。これを圧電素子やマイクロタービンで電力に変換するのが振動発電です。

具体例

東京のある鉄道駅では、線路下に圧電素子を設置し、通過する電車の振動から街灯の電力を生成する実証実験が行われています。また、道路の下に埋設された発電素子では、自動車の通過振動を活用して道路沿いの街灯や案内表示の電力を供給することができます。

応用

都市防災やスマートシティのセンサー網に応用でき、都市の振動を再利用することで、無駄なエネルギーを有効活用できます。

雨粒を利用した発電

雨粒が建物やパネルに当たる衝撃や摩擦も、微弱な電力として取り出すことができます。雨の日には太陽光発電が効率低下するため、雨粒発電は天候依存型エネルギーの補完として期待されています。

具体例

台湾やシンガポールの都市部では、雨水を集める屋外パネルに微細な圧電素子を組み込み、雨粒の衝撃を電力に変換する研究が進んでいます。生成された電力は街灯や小型デバイスの電源として利用されます。

温度差を利用した発電

都市ではヒートアイランド現象によって建物や地面の温度が高くなる一方、夜間や地下では温度差が生じます。この温度差を熱電素子で電力に変換する方法が温度差発電です。

具体例

日本のあるオフィスビルでは、室内外の温度差を利用した熱電発電装置が設置され、空調設備の制御センサーや照明の電力として活用されています。

メリット

都市空間に存在する微細な温度差も無駄にせず、低炭素社会の実現に貢献できます。

植物や自然の活動を利用した発電

都市の公園やビルの緑化帯では、植物の光合成や土壌中の微生物活動を電気に変換する技術も研究されています。

バイオフォトボルタイクス

植物の光合成による電子の移動や微生物の代謝活動を利用して電気を生成する方法です。都市の緑地帯や屋上庭園に設置することで、環境に優しい発電を実現できます。

応用例

大学や企業のキャンパスで、植物発電パネルを設置し、周辺のセンサーや小型LED照明の電力源として活用されています。微弱ながらも継続的に電力を供給でき、都市の環境教育やエネルギー教育にも活かせます。

都市環境や自然の活動を利用した発電は、大規模な電力供給にはまだ不十分ですが、都市の中で発生する微細なエネルギーを活用することで、街灯、センサー、案内表示などの小型機器の電力需要を賄うことが可能です。また、災害時や非常用電源としても期待でき、都市の持続可能性を高める手段として注目されています。

4.実用化の現状と今後の展望

都市での新しい発電技術は、研究段階だけでなく、実用化や社会実装の取り組みも進んでいます。ここでは、各技術の現状と今後の展望を解説します。

足音や振動発電の実用化状況

駅や公共施設での導入

オランダのアムステルダム・スキポール空港やロンドンの地下鉄駅では、踏力発電を導入してLED照明や案内表示の電力に活用しています。歩行者1人あたりの発電量は微小ですが、多くの人が通行する場所では累積して十分な電力が得られます。

商業施設での活用

商業施設のフロアやショッピングモールでも、足音や振動を活用する発電床の試験が行われています。これにより、施設内の小型照明やデジタルサイネージへの電力供給が可能です。

今後の展望

都市全体に分散型の踏力発電を導入すれば、通勤・通学などの日常行動が持続可能な電力源に変わります。特に、IoTデバイスやスマート街灯など小型電力需要に向いています。

音響発電や雨粒発電の実用例

音響発電

ロンドンやパリの都市部では、騒音を利用した発電実験が行われています。街路や駅、工場の騒音を圧電素子で電力に変換し、街灯や信号機の補助電源として活用されます。騒音が多い都市環境では、環境負荷を有効に利用できる点が大きなメリットです。

雨粒発電

雨粒の衝撃を圧電素子で電力に変える技術は、台湾やシンガポールで実証実験が進んでいます。雨の日でも発電が可能なため、太陽光発電との相互補完に向いています。将来的には、都市型の屋外照明や街路センサーへの電力供給に活用できると期待されています。

温度差発電と植物発電の応用

温度差発電

オフィスビルや駅構内で、室内外や地面との温度差を利用した熱電素子が導入されつつあります。これにより、空調や照明制御用センサーの電力を賄うことができます。都市のヒートアイランド現象を逆手に取り、微細な温度差を電力化することが可能です。

植物発電(バイオフォトボルタイクス)

大学キャンパスや企業の屋上緑化で植物発電パネルが設置され、センサーや小型LED照明の電源に活用されています。環境教育や都市の緑化推進と連動している点も特徴です。

都市発電技術のメリット

分散型で災害に強い

都市内の至るところで小規模に発電できるため、災害時や停電時にも一部の電力を確保可能です。

環境負荷の軽減

騒音、振動、温度差など、これまで捨てられていたエネルギーを有効活用でき、CO₂削減に貢献します。

都市生活との相乗効果

通勤や歩行、建物の運用など、日常行動が電力生成に直接結びつくため、生活そのものが持続可能な社会活動となります。

今後の課題と展望

発電効率の向上

現状では微小な電力しか得られませんが、圧電素子やマイクロタービン、熱電素子などの効率改善が進めば、都市全体の電力利用に大きく貢献できる可能性があります。

コストと設置の課題

都市空間に設置するには、耐久性やコスト、景観への影響も考慮する必要があります。特に既存インフラへの後付けでは、建設費やメンテナンス費用が課題です。

スマートシティとの連携

IoTやAIを活用して発電状況をリアルタイムで管理することで、効率的な電力利用が可能になります。スマート街灯や交通管理、環境センサーと連携すれば、都市全体のエネルギーマネジメントに貢献できます。

まとめ

都市生活そのものをエネルギー源とする発電技術は、まだ発展途上ですが、都市の持続可能性や災害対応、環境負荷削減に向けて大きな可能性を秘めています。将来的には、都市全体が分散型発電ネットワークとして機能し、日常生活の動きや都市環境の変化が持続可能な電力社会の基盤となることが期待されています。

都市生活や環境を活用した発電は、踏力、振動、音、雨粒、温度差、植物などの技術があります。従来の発電に比べ小規模ですが、都市の無駄なエネルギーを有効活用でき、災害時の非常用電源や環境負荷の軽減にも役立ちます。今後は効率向上やコスト削減、スマートシティとの連携が課題ですが、都市活動そのものが持続可能な電力源となる可能性を示しています。

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