「都会の夏、どう乗り切る?ヒートアイランドって何?」
所属:跡見学園女子大学
インターン生:K.Rさん

真夏の都市は、周囲の郊外より気温が高くなる「ヒートアイランド現象」よって、街全体が熱を帯びています。アスファルトや建物に熱が蓄積し、排熱や緑地の減少も重なるため、健康やエネルギー消費、生活の快適さにまでに影響が及びます。本記事ではこの現象の原因や影響、そして対策についてわかりやすく紹介します。
RAULのインターンシップに参加いただいた跡見学園女子大学のK.Rさんが執筆してくれた記事だモ!内容がご参考になりましたら、ぜひともイイネやシェアしてほしいだモ!
1暑い街って、どうして生まれるの?
都市部で気温が周囲より高くなるヒートアイランド現象は、複数の要因が合わさって生じます。
まず、アスファルト・コンクリート化です。
アスファルトやコンクリートで覆われた道路や建物は、太陽の熱を吸収して蓄積する性質があります。
この熱は夜間になっても放熱しにくいため、一日中熱がこもっている状態になり、アスファルトやコンクリートが多い都市部が郊外よりも暑くなります。
さらに、緑地や水面の減少も大きな要因です。
公園や河川、街路樹は蒸発冷却によって周囲の気温を下げる効果がありますが、都市化が進むと、こうした自然の冷却機能は失われ、風通しが悪くなり、地表面に熱がこもりやすくなることで、さらに気温の低下を妨げることになります。
次に、自動車や工場、エアコンなどからの大量の排熱が発生することです。
特にエアコンの使用は都市部で集中しており、エアコンの室外機から出る熱を外に放出することでさらに気温上昇を招くこととなります。
これは都市部に住む人が涼しさを求めるほど悪循環が強まることがわかると思います。
令和5年度の冷房使用状況を示した左の表からは、関東地方で冷房使用率が特に高いことが読み取れます。
これは人口密度や都市構造により、冷房が生活に不可欠となっていることを示しています。
このような使用増加が、前述の排熱問題をさらに深刻化させ、都市部の気温上昇を助長しています。

出典)気象庁/ヒートアイランド現象の概念図

出典)気象庁/東京・名古屋・大阪の3都市平均と15地点平均の年平均気温偏差の経年変化
このグラフは3つの都市と15の郊外の気温平均を比べたものです。見て取れるように1925年から現在(2025)にかけるまで気温の幅が広がっています。
人口が集中することは、交通量や電力使用量の増加につながり、エネルギー消費による排熱をさらに増大させる要因となります。
つまり、都市の高い人口密度そのものがヒートアイランド現象を強める大きな要素であるといえます。
2.ヒートアイランドってどんな影響があるの?
ヒートアイランド現象は都市の暑さを強めるだけではなく、人々の健康や社会活動、さらには環境全体に深刻な影響を及ぼしています。
特に日本の都市では、人口が集中し建物や交通が密集しているため、影響の度合いが大きく、さまざまな形で生活に直結しています。以下では、その代表的な影響を具体的に見ていきたいと思います。
(1)健康への影響
第一に、私たちに直接影響することといえば暑さによる体調不良です。特に危険であり、気を付けなければいけないのが熱中症です。
日本経済新聞によると過去5年間(2017~2021年)の5~9月における熱中症搬送者数を東京、大阪、名古屋で比較した結果、昼間人口10万人あたりの平均搬送者数は、いずれの都市も中心区より周辺区で多くなる「ドーナツ状」の分布が見られました。
東京では足立区が千代田区の6倍、大阪では西成区が中央区の8倍、名古屋でも港区が中区の2倍と、区ごとに大きな差がありました。
35度以上が当たり前の日本の夏は動いていなくても熱中症のリスクがあるため、命のために少しでも涼しいところにいることが重要です。
(2)エネルギー消費への影響
都市部の高温は冷房需要を押し上げ、エネルギー消費を大きく増加させています。特に真夏の昼間は冷房利用が集中し、電力消費のピークを引き起こします。
東京電力などの電力会社は「電力使用率」の予測を毎日発表していますが、その背景には都市の高温があるといえます。
冷房需要の増加は、家庭やオフィスの電気料金を押し上げるだけでなく、エネルギー供給体制にも大きな負担を与えます。
また、電力を生み出す過程で排出される二酸化炭素も、地球温暖化を加速させる要因となり、ヒートアイランド現象と地球規模の気候変動が互いに影響し合うことになります。
(3)社会・経済への影響
ヒートアイランド現象は都市の社会や経済にも大きな影響を与えています。家庭では電気代の負担が増加し、公共施設や企業でも冷房のための運転コストが膨らみます。
加えて、食料、水、電気、交通手段を意味する都市インフラも深刻です。高温によってアスファルトは柔らかくなり、道路のひび割れや変形が起こりやすくなります。
建築物の劣化も早まり、維持管理にかかるコストが増えます。こうした負担は、行政や企業だけでなく市民の生活全体にもかかわってきます。
さらに、観光やイベント産業にも影響があります。夏の猛暑によって屋外イベントの中止や参加者数の減少が経済的な損失につながっています。
(4)環境への影響
最後に、私たちの住む環境への影響についてです。
都市の高温は、大気中の工場の煙や自動車の排気ガスなどに含まれる物質が、紫外線と反応することで光化学スモッグを発生させるリスクを高めます。これにより、呼吸器系の疾患を持つ方々に被害が出る可能性があります。
都市の暑さは、私たちの生活だけでなく、自然にもさまざまな影響を与えています。
気温が高くなることで、都市の周りの天気も変わりやすくなります。アスファルトや建物が多い都市は熱がこもりやすく、積乱雲が発生しやすいため、急な雨や雷雨が起こりやすくなり、洪水や土砂災害のリスクも高まります。
水の環境にも影響があります。川や湖の水温が上がると、魚や水に住む小さな生き物が暮らしにくくなります。
さらに藻が増えすぎると、水のきれいさが保てなくなり、生き物のバランスも崩れてしまいます。
東京湾でも、水温の上昇によって海底に広がるサンゴや海の人気者クマノミの姿も確認されており、魚の分布や生態が変わっていることがわかります。
地面や植物にも影響があります。暑さや乾燥が続くと、土の中の小さな微生物や植物の成長が弱まり、街路樹や公園の植物も元気がなくなってしまいます。
すると、昆虫や小さな動物たちの住む場所も減り、セミや蝶などの鳴き声や姿が少なくなることもあります。都市の自然の多様性が減ってしまうのです。
最近は、夏でもあまりセミの鳴き声を聞かないと感じる方もいるのではないでしょうか。実は暑さに強いと思われがちな蚊やセミも私たちと同じように夏バテ気味です。
蚊は35度を超えると飛ばなくなり、蚊に刺されにくくなります。セミも熱中症のような状態になって寿命を迎える前に死んでしまうことが判明しています。
さらに、都市の熱は周りの地域にも広がります。都市から出る熱や排熱によって、近くの農地や森林も暑くなり、作物や植物の育ち方に影響が出ることがあります。
こうして、ヒートアイランド現象は、私たちの暮らしだけでなく、都市の周りの自然や広い地域の環境にも関わる問題なのです。
3.街を少し涼しくする工夫たち
(1)緑の力を借りる
まず欠かせないのが緑の存在です。真夏に街を歩いていて、木陰に入ったときの涼しさを経験したことがある方も多いでしょう。
木の葉が日差しを遮り、水分を蒸発させることで周囲の温度を下げてくれるのです。最近では「屋上緑化」や「壁面緑化」といった形で、ビルそのものに緑をまとわせる工夫も広がっています。緑が増えることで、景色が和らぐと同時に街の雰囲気も落ち着きます
今ではあまり見かけませんが、私が小学生のころ、夏になると小学校の窓辺にゴーヤの緑のカーテンがかけられました。
日差しを和らげ、室内の温度を下げてくれるだけでなく、収穫した実を持ち帰ったことがありました。
こうした取り組みは、小さな規模でも積み重なることで都市全体の暑さを少しずつ和らげていくため素晴らしいものだと感じます。
(2)地面や建物を工夫する
都市の地面はアスファルトに覆われていて、昼間の熱をため込み、夜になってもなかなか冷めません。
そこで最近は「保水性舗装」といって、雨水を地面にしみ込ませておき、昼の暑さで蒸発させながら温度を下げる工夫も登場しています。
国土交通省 によると一般的な塗装に比べ4.3度の差が生まれており効果がわかります。
また、屋根や壁の色を白っぽくする「クールルーフ」も効果的です。黒っぽい屋根に比べて熱を吸収しにくく、室内の温度上昇を抑えます。
(3)エネルギーの使い方を見直す
都市の排熱を減らすには、冷房や自動車などから出る熱をできるだけ減らすことも大切です。
公共交通を利用したり、省エネ型の家電を選んだりといった小さな工夫も積み重なれば大きな効果につながります。
(4)海外の工夫から学ぶ
海外の都市でも工夫が盛んです。シンガポールは街全体が「庭園都市」と呼ばれるほど緑にあふれていて、高層ビルの屋上や壁にまで植物が植えられています。
狭い国土で資源が少ない国だからこそ、持続可能な国づくりに力を入れてきたことがわかります。ヨーロッパでは屋根の緑化や白色化が普及し、街の景観と環境対策を両立しています。
ロサンゼルスのパコイマでは道路に特殊な塗料を道路や学校、プレイグラウンドなど地域の人やアーティストたちがペイントするプロジェクトが行われました。
- 晴れた日の路面温度は、平均10℃低下
- 周辺気温は平均して晴天時で約2.1℃、猛暑時で約3.5℃、夜間時で約0.5℃減少
- 都市部のヒートアイランド現象は、暑さがピークの時間帯で25〜50%、夜間も含めた24時間で13〜21%低下
その結果
になることが分かりました。
このように地域の人やアーティストが色とりどりに塗装することで町おこしにもなり、ヒートアイランドの効果も出るため、非常に良い取り組みだと思います。
(5)身近にできること
ただ、都市全体の大きな取り組みも大切ですが、私たちができることは案外身近なところにあります。
ベランダにプランターを置いて緑を育てる、夕方に打ち水をする、自転車や電車を使って移動する――どれも昔からある身近にできるものでありながら、ヒートアイランド対策にもつながっています。
夏の夕暮れ、道端で打ち水をしている前を通ると、涼しい風が感じられます。大規模な都市計画ほど目立ちはしなくても、そうした小さな工夫が積み重なることが、これからの都市を少しずつ過ごしやすくしていくのだと思います。
4.私たちにできること、身近な工夫
ヒートアイランド現象をやわらげるために、個人でも取り組めることは少なくありません。以下のような小さな工夫を意識することが大切です。
- 日傘や帽子を使って直射日光を避ける
- 通気性のよい服や吸汗速乾素材を選ぶ
- 水分や塩分をこまめに補給し、熱中症を防ぐ
- 緑のある公園や街路樹の木陰を利用して移動する
出かけるときはこれを意識
- エアコンは28℃程度に設定し、扇風機やサーキュレーターで効率を高める
- すだれや遮光カーテンで日射を防ぎ、室温の上昇を抑える
- 打ち水を玄関やベランダで行い、周囲の体感温度を下げる
- ベランダや窓際にプランターを置き、小さな緑地をつくる
家の中を快適に
- 徒歩や自転車を選ぶときは、日陰の多い道を選んで快適さを確保する
- 図書館や商業施設など、冷房の効いた公共空間を利用して過ごす
- 夏の夕方に涼しい時間を活用し、日中の外出を控える
暮らしの選択肢として
これらの行動はどれも身近で、今日から実践できるものです。都市の暑さを完全に避けることはできませんが、自分の暮らしに合った工夫を取り入れることで、夏の暑さをやり過ごしましょう。
5.都会と快適な暮らし、バランスの取り方
都会の暑さは、もはや夏の風物詩のひとつになりつつあります。都市の建物や道路に熱がこもり、車や工場からの排熱も重なることで、私たちの生活は知らず知らずのうちに影響を受けています。
しかし、ヒートアイランド現象はただ避けられない問題ではありません。屋上や壁面の緑化、遮熱性の高い舗装、省エネルギーの取り組みなど、国や自治体、企業が協力することで都市全体の温度上昇を和らげることは十分可能です。
もちろん、私たち一人ひとりにもできることがあります。緑の多い公園で過ごしたり、日よけを工夫したり、エアコンを効率よく使うだけでも、体への負担を減らすことができます。小さな工夫の積み重ねが、都市の快適さを少しずつ支えていきます。
都市化を止めることはできませんが、ヒートアイランド対策を取り入れることで、健康や環境への影響を減らし、暮らしやすい街をつくることは可能です。
大きな変化は難しくても、私たちの日常の選択や行動が、快適で持続可能な都市生活につながっていく――そんな意識を持ちなが ら、これからの夏を少しでも快適に過ごしていきたいものですね。
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