借地権×電力インフラ徹底ガイド|土地貸し・送電線・太陽光発電の契約・税務・リスクを解説
土地を貸し、賃料などの収入を得る方法は、個人への貸付にとどまりません。
企業に土地を貸し出し、その対価として金銭を受け取ることもできます。電力インフラ用地として土地を提供することも、こうした土地活用の一形態です。
電力インフラに供する形で土地を活用する際には、土地に設定される借地権が重要なポイントとなります。
本記事では、借地権と電力インフラの関係性、活用のメリット・デメリット、押さえておきたいコツを解説します。
電力インフラへの土地提供を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
借地権と電力インフラが交差するシーンとは
まずは、借地権と電力インフラの基本、および両者の関係について確認していきましょう。
一口に借地権や電力インフラといっても、それぞれに複数の類型があります。
土地活用として電力インフラを導入する際には、両者の基本を正しく理解しておくことが不可欠です。
借地権の基本の整理
まず、借地権とは、他人の所有地を借り、その土地の上に自己名義の建物を建てて所有できる権利を指します。
すなわち、土地は地主の所有である一方、その上に建てられた建物は借地権者(借主)の所有物となるのです。
借地権は地主と借地権者との契約内容により、大きく「普通借地権」と「定期借地権」に分けられます。
普通借地権
定期借地権ではない一般的な借地権の総称です。
初回の契約期間は30年以上と定められており、以下の期間で契約を更新できます。
- 1回目の更新では20年以上
- 2回目以降の更新では10年以上
定期借地権
契約期間満了時に更新がなく、期間の終了と同時に借地権が消滅する形態です。
満了後は土地を地主へ返還しなければなりません。
定期借地権には、次の3類型があります。
- 一般定期借地権:用途制限なし・存続期間50年以上
- 事業用定期借地権:事業用建物のみ・存続期間10年以上50年未満
- 建物譲渡特約付借地権:用途制限なし・存続期間30年以上(契約満了時に地主が建物を買い取る特約付き)
土地を貸し出す際には、どのタイプの借地権を設定するかを選択する必要があります。
電力インフラの種類
電力インフラとは、各供給地点で利用される電力を発電し、送電・変電・配電して届けるための設備群を指します。
一口に電力インフラといっても、担う機能や扱う電圧・規模によっていくつかの類型に分けられます。
身近な例としては、街中に張り巡らされた送電線・配電線です。
これらは発電された電力を各供給地点へ運ぶ設備で、需要に応じて電圧を変える変電設備や地域へ分配する配電設備も含まれます。
電線は、流れる電圧により低圧・高圧・特別高圧などに区分されます。
日本の配電では6.6kVの高圧が一般的で、より高い電圧は「特別高圧」として主に送電に用いられ、鉄塔などの支持物とともに運用されるのです。
もう一つ重要なのが、電力を生み出す発電設備です。火力・水力など電力会社が運用する大規模な発電所のほか、太陽光発電のように個人でも導入・管理できる設備も含まれます。
借地権と電力設備が重なる代表的ケース
電力設備を新設するにあたり、用地に借地権等の権利設定が必要となるケースがあります。
たとえば、企業が太陽光発電設備を事業として設置するに際し、自社所有地ではなく遊休地を賃借して新設することがあります。
太陽光発電の設置面積は、一般に1kWあたり約10~15㎡が目安とされるため、広い土地を賃借して大規模(メガソーラー)を計画すると事業性が高まりやすくあるのです。
※太陽光発電設備は通常「建物」には該当しないため、実務上は地上権や土地賃貸借を用いることが多く、管理棟など建物を併設する場合に借地権が問題となります。
また、電力会社が送電線・配電線(高圧線を含む)を通す際には、その下にある土地について地役権を設定し、架設・通行等の権利を確保することがあります。
電力設備を伴う土地貸しのメリット
土地を企業に貸し出す際には、土地賃貸借や地上権(管理棟など建物を伴う場合は借地権)を設定することで、企業が太陽光発電設備を設置・運用できるようになるのです。
この場合、土地は地主の所有、太陽光発電設備は設置した企業の所有となります。
このような用地提供は、企業が土地を所有せずに発電設備を保有できるという利点に加え、地主にもメリットがあります。
安定収入と長期リースによるキャッシュフローの改善
太陽光発電設備などの電力設備を前提とした用地提供は、賃料収入が比較的安定しやすいのが利点です。
太陽光発電は、適用がある場合は固定価格買取制度(FIT)などにより一定期間電力が固定価格で買い取られるため、事業者の収益見通しが立てやすく、地主への賃料も安定しやすくなります。
さらに、用地権の設定(土地賃貸借・地上権/建物を伴う場合は借地権)は、一般に10年以上の長期契約とするケースが多く、アパートやマンションなどの居住用賃貸に比べて空室に起因する減収が生じません。
その結果、契約期間中は賃料収入の変動要因が相対的に少なく、収入が減る・なくなるといったリスクは抑えられる傾向にあります。
相続税の評価減など税務メリット
電気設備のために用地権を設定して土地を貸すメリットとして、相続税負担が軽減される可能性があります。
もっとも、評価の考え方は権利の種類により異なるのです。
普通借地権が付いた土地(底地)は、路線価等に定める借地権割合を用いて評価減されます。
一方、定期借地権や地上権に準ずる賃借権では、残存期間に応じた割合を用いる取扱いが設けられています。
いずれの場合も、仕組みにより相続税評価額が自用地より低くなることで、結果として相続税が抑えられる可能性があるのです。
また、対象地に居住用の賃貸建物があり住宅用地の要件を満たすと、固定資産税は課税標準が小規模:1/6 一般:1/3、都市計画税は小規模:1/3 一般:2/3の特例が適用されます(面積要件等あり)。
なお、太陽光発電設備そのものは、規模や用途により償却資産として固定資産税の課税対象となることがあるため、土地の軽減とは別に取り扱われます。
再エネ推進による社会的信用・SDGs効果
太陽光発電設備を前提とした用地提供には、社会的信用の向上につながるメリットもあるのです。
近年は気候変動対策への関心が高まり、企業でもSDGsやESGの観点から再生可能エネルギーへの貢献を重視する傾向があります。
こうした目的で土地を提供する取り組みは、再生可能エネルギーの普及に寄与するものとして評価され、地域社会や取引先、金融機関などステークホルダーからの信認が高まる可能性があります。
想定しておくべきデメリット・リスク
電力に関わる設備を設置するために土地を貸すとさまざまなメリットがあるものの、同時にデメリットやリスクも存在します。
そのため、土地を活用するときはそのデメリットやリスクについても念頭に置く必要があるでしょう。
契約終了時の原状回復・設備撤去義務
普通借地権でも更新されず期間満了となった場合や定期借地権で土地を貸している場合は、契約満了と同時に土地は地主へ返還されます。
その際の争点となるのが、原状回復・設備撤去の要否です。
設備買取特約などがない限り、設置された設備は借主が撤去し、原状回復のうえ返還する義務を負います。費用は原則として借主負担です。
ただし、設備買取特約がある場合は、地主が当該太陽光発電設備を買い取ることになります。
さらに、撤去費用を賃料に内包する旨の特約等がある場合には、撤去費用を地主が負担することがあります。
電気料金滞納・地代未払い時のトラブル
賃料が適切に支払われていれば問題はありませんが、そうでない場合はトラブルに発展するおそれがあります。
FIT期間中は売電単価が一定であるため、事業者のキャッシュフローが安定し、地代の支払いも安定しやすい一方、期間終了後は事業者が自ら買取先を確保する必要があるのです。
売電収入が想定どおり得られない、または支払いが滞ると、地代の未払いにつながる可能性があります。
トラブルが生じた場合は、借主と慎重に協議し、必要に応じて契約に基づく対応を行う必要があります。
状況によっては、借主から賃料の減額交渉を求められることもあるのです。
売却や担保設定を阻む契約上の制限
借地権が設定されている土地は、権利関係を前提にした取引となるため、そのまま売却したり、担保に供して融資を受けたりすることが難しくなる傾向があります。
所有権は地主にありますが、実際に土地を使用・収益できるのは借地権者(借主)です。
したがって、当該土地を第三者が購入しても、借地権が存続する限りは従前の賃貸借関係を承継することになり、買主は自由な利用や再開発が原則できません。
このため、底地は買い手がつきにくく、売却や担保利用(融資評価)が難しくなりがちです。
契約前チェックリスト:4つの必須ポイント
電力インフラのために土地を貸すときは、契約前にしっかり確認しておくべきポイントが4つあります。
確認を怠っていると、あとからトラブルになる可能性や訴訟のリスクがあるでしょう。
電線通過契約を結ぶときに地役権を設定するか
送電線・配電線を敷設する際、電力会社から土地所有者に対し、上空を電線が通過できるようにする電線路通過(使用)契約の締結やこれに代えて地役権設定を求められることがあります。
電線路通過契約は、上空に電線を架設・維持するために土地の使用を認める契約です。
これに対して地役権は、登記を前提とする物権で、電線の架設・保守、立入、樹木の伐採、建築物の高さ制限などの範囲を定め、将来の所有者にも及ぶのが特徴です。
地役権が設定されると、契約・登記で定めた範囲内で、電力会社は土地利用に一定の制限(例:高さ制限・立入許可)を求めることができます。
逆に、地役権が設定されていない場合は、上空に電線が通っていても、電力会社がこうした制限を第三者(将来の買主など)に対抗する根拠を欠くため、利用調整が難しくなることがあります。
解除条件・信頼関係破壊条項の明確化
太陽光発電などの用地として土地を貸し出す際は、解除事由や信頼関係破壊条項を契約書で明確に定めておくことが重要です。
どのような事由が生じた場合に契約を解除できるのかを特定しておかないと、解除が認められないおそれがあります。
特に賃料の滞納その他の契約違反があった場合に、催告の要否や猶予期間、無催告解除の可否などを含め、地主が解除できる条件を具体的に規定しておく必要があります。
保守・管理責任と費用負担の分担
太陽光発電設備などを目的に土地を貸し出す際は、土地・設備の維持管理に関する責任主体と費用負担の分担を契約で明確にしておく必要があります。
原則として、土地賃貸借・地上権に基づき設置された設備の維持管理・保安責任は、設備の所有者である借主(事業者)が負います。
もっとも、契約上、地主が一部の管理(例:敷地の除草、通路確保、立入調整など)に協力することもあり得ます。
その場合は、作業範囲および費用負担(定額・実費精算・上限・負担割合など)を具体的に定めておくことが重要です。
災害・事故時の損害賠償と保険対応
太陽光発電を目的に土地を貸し出す際は、災害や事故で設備が破損し周辺に損害が生じた場合の損害賠償の帰責、保険の加入義務・補償範囲などを契約で明確にしておく必要があります。
特に、台風などでパネルが飛散して近隣の建物などに損害を与えた場合には、設備の所有・管理者(借主)に加え、状況によっては地主が責任追及を受ける可能性もあるため、注意が必要です。
実例で学ぶ裁判例・トラブル事例
電力インフラのために土地を貸すときは、実際にどのようなトラブルが発生しているかをしっかりチェックしておくことが大切です。
トラブル事例を知っておけば、似たトラブルへの対策がしやすくなります。
契約解除に関する判例のポイント
太陽光発電用に貸し出した土地の契約解除については、東京地裁・令和4年8月30日判決に参考となる事例があります。
この事件では、原告(地主)が被告(借主)に対し、債務不履行(義務違反)を理由に解除の有効性を主張しましたが、当該義務が契約書に明確に規定されていないとして、解除は認められませんでした。
裁判所は、解除事由となる義務・義務違反が契約書その他の客観的証拠により具体的に特定・立証されているかを重視します。
したがって、どのような場合に解除できるか、貸主が借主に課す義務の内容、是正期限・催告の要否、無催告解除の可否などを契約書に明記しておくことが重要です。
送電線上空通過料を巡る交渉の実態
高圧線などの送電線が上空を通過する土地は、契約内容によって建築物の高さ制限や立入・伐採義務などの制限が課され、売買や再開発等の活用が難しくなることがあります。
そのため、電力会社は土地所有者との電線路通過契約や地役権設定の締結時に、上空通過に対する補償金(通過料)を支払うのが一般的です。
ただし、提示額が土地所有者にとって妥当とは限りません。
不利な条件が提示された場合、契約を締結しない・電線ルートの変更を要請することは可能です。
一方で、補償金の大幅な増額は、事業計画や技術的制約、社内基準などを理由に応じてもらいにくい傾向があります。
太陽光発電設備の撤去費用でもめたケース
太陽光発電の用地提供に伴うトラブルとして、設備の撤去費用の負担をめぐる紛争がしばしば生じます。
撤去費用については、契約時に負担者や負担方法(実費精算・上限設定・保証金など)を特約で定めるのが通例です。
しかし、契約が長期に及ぶため、撤去時点で予定していた負担者に資力がなく、費用を拠出できない事態も起こり得ます。
この結果、特約があっても実際の負担をめぐって紛争化することがあります。
高圧線下・電力設備用地の相続税評価テクニック
土地の上空に高圧線を通したり、電力に関連する設備を設置したりすると相続税を減額できる可能性があります。
これを活用して税金を減額するためには、その仕組みについて知っておくことが大切です。
区分地上権に準ずる地役権で評価減が認められる根拠
地役権が設定されている土地では、所有者であっても電力会社による高さ制限や立入・伐採等の制限を受けるため、自由な活用が難しくなります。
このため、土地の用途に制約が生じ、資産価値(評価)が低下する可能性があるのです。
一般的な目安として、家屋の建築がまったくできない場合は「評価額の50%または借地権割合のいずれか大きいほう」、一部に制限がある場合は「評価額の30%」を減額とする取り扱いが用いられることがあります。
もっとも、具体の減額率は契約内容や評価主体(税務・鑑定・補償)によって異なるため、個別確認が必要です。
路線価方式・倍率方式それぞれの計算ステップ
相続税評価額を確認するときは、まず制限がない前提の評価額(自用地評価)を算出し、そこに所定の減額割合を適用します。
相続税評価額の算定方法は、「路線価方式」と「倍率方式」の2種類です。
路線価方式では、当該土地が面する路線に付された1㎡あたりの路線価を用いて計算します。
路線価はインターネットで確認できるため、これに実際の面積を乗じ、必要に応じて減額割合を適用すれば評価額を算出できるのです。
路線価が設定されていない土地は倍率方式により評価します。
倍率方式では、固定資産税評価額に国が定める評価倍率を乗じ、減額割合を適用して算出するのです。倍率は国税庁のウェブサイトで確認できます。
地役権未登記でも減額できるパターン
地役権の登記がなく、電力会社による明確な利用制限が契約等で定められていない場合でも、現地調査の結果によっては評価上の減額(評価減)が認められることがあります。
これは、高圧線の地上高や敷地との離隔によって、建築物の高さや配置に実質的な制約が生じるためです。
もっとも、こうした事情は位置・高さなどの現地確認が十分でなければ立証できず、減額が認められないこともあります。
活用タイプ別・収益シミュレーション
電力インフラのために土地活用を行うときは、どのように活用するかによって得られる収益が異なります。
そのため、活用の際はどの程度の収益が相場なのかを知っておくと良いでしょう。
太陽光発電用地として貸す場合の相場と利回り
土地を太陽光発電用地として貸し出す場合の賃料相場は、約1,000~1,800㎡の土地で年間5万~10万円とされています。
これは出力約100kW規模を想定した目安です。
支払いは年払いが一般的です。地主は土地を貸すだけのスキームとなるため、初期投資が小さい反面、得られるリターンも相対的に小さくなる点に留意しましょう。
送電線上空通過料の収益例
送電線が上空を通過する際に電力会社から支払われる上空通過料(補償金)は、一般に公表されていません。
もっとも、実務の契約事例から一定の目安を把握することはできます。
一例として、1㎡あたり年間2,000円程度とする事例があります。この単価を前提にすると、100㎡で年間約20万円となります。
ただし、地役権を設定している場合は、一括の補償金で精算され、継続的な支払いが行われないこともあるため注意が必要です。
契約形態や対象範囲によって金額や支払方法は大きく異なるため、個別の契約内容を確認しましょう。
自己所有で投資用太陽光発電所を設置する場合
太陽光発電のために土地を賃貸するだけでなく、自ら設備を設置・運用することも可能です。
その場合は、初期投資や維持費を踏まえた収支計画を立てる必要があります。
例として、出力約100kWの設備を導入する際、整地費用を除き約2,530万円を要するとされるケースがあります。
事業用太陽光発電では(適用がある場合)固定価格買取制度(FIT)により最長20年間、契約時の売電単価(例:23円/kWh)での買取が継続されるのです。
想定発電量などによりますが、年間で100万円超の売電収入となる試算もあります。
ただし、設備の維持には定期点検・清掃などのO&M(運用・保守)費用、保険料、機器の更新費、固定資産税なども発生する点に留意しましょう。
まとめ
空き地などの遊休地がある場合、電力インフラ用途として土地を貸し出すことができます。
その際は、土地賃貸借や地上権(建物を伴う場合は借地権)などの権利設定を行います。
ただし、活用にはメリット・デメリットがあるため、十分に検討しましょう。
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