深刻化する水不足

  • 更新日:2020/08/28

所属:専修大学

インターン生:R.Mさん

深刻化する水不足の写真

地球は水の惑星と言われていますが、実は世界のほとんどの地域で、水が不足する問題が発生しており、発展途上国では深刻な問題になっています。しかし、何故水の惑星と言われ、表面の3分の2が水に覆われている地球で水が不足する問題が起きているのでしょう。

地球上の水の割合

地球上にある水の97.5%が海水で、実は淡水は2.5%しかありません。そのうち、私たち人間や動物が利用する水の多くが川の水です。しかし、川の水は淡水の中で占める割合の0.006%しかないのです。残りの淡水は地下水や南極や北極の氷、氷河として存在しているため、容易に利用することができないのです。

北極や南極の氷や氷河、深地下水などの水を除いた、私たち人間や動物が容易に利用できる水の量は地球上の水の約0.01%にしかすぎず、この貴重な水を地球上の人間や動物たちが分かち合っているのです。

水の使われ方

水の使われ方は大きく分けて、農業用、工業用、生活用の三つに分かれます。日本が年間で利用する水使用量は835億立方メートルです。このうち、一番水の使用量が多いのは農業用水で、全体の約3分の2を占めており、552億立方メートルの水を利用しています。

農業用水は、農作物を栽培するために利用されており、私たちの食生活を支えています。農作物の栽培には大量の水が必要で、1キログラムの穀物の栽培に1000倍以上の水が必要です。日本では、水使用量の中で農業用水が占める割合は66%ですが、世界では約70%、乾燥地では90%近くを占めています。

また、農作物を栽培するのと同じように、鉄や紙などの製造にも、水は利用されており、工業用に利用される水の量は15%です。そして、私たちが日常生活を送るうえで行われる、炊事や洗濯、トイレ水洗、入浴や洗面などは生活用水といい、水使用量の19%を占めています。

水使用量の増加

私たちの1人当たり1日の水の使用量は、経済成長や都市拡大などの影響で急激に増えてきています。特に、先進国の1人当たり1日の水の量はとても多く、日本人1人当たりでは世界平均の約2倍の水が利用されています。また、発展途上国でも、人口の大幅な増加や急激な経済成長により、水使用量は増え続けています。

日本の水使用量

日本では、生活用に利用される水の量は1965年の42億立方メートルと比べ、2010年では132億立方メートルにまで増加しており、45年前の約3倍にまで増加しています。

出典:国土交通省

工業用水は、高度経済成長に伴う水需要の増加の影響で1965年から2000年までの間で約3倍にまで増加しました。しかし、回収率の増加により、1973年をピークに新たに淡水を補給する割合は減少しつつあります。

出典:国土交通省

発展途上国での問題

日本では、水道の蛇口をひねれば清潔で安全な水が、いつでも得られることが当然だと思われています。しかし、世界ではトイレや入浴に利用する水だけでなく、その日に飲む水にすら困っているのが現状です。日本では、上水道が整備されており、いつでも簡単に清潔な水を得ることが可能です。

しかし、水道が整備されていない発展途上国では、いつでも水が得られる蛇口などなく、水源にまで水を汲みにいかなければなりません。何キロも歩いて水を汲み、そこから数リットルもの水を運びながら何キロも歩かなければ、水を得ることができません。

発展途上国ではとてつもない重労働をしなければ、水を得ることができないのです。さらに、多くの発展途上国では、とてつもない重労働で体力が必要な水汲みが、子供や女性の仕事とされています。水は人間が生きていくのに必要不可欠です。

そのため、水汲みはあらゆる仕事より優先して行われることになります。そうすると、水汲みを行わなければならない子供や女性は、時間や体力を水汲みという仕事に奪われてしまい、子供は教育を受けることができず、女性は働きに出ることができなくなります。

働く時間や教育を受ける時間が取れないことで、貧困の悪循環に繋がるだけでなく、国を発展させる人材が育たないため経済発展の妨げにもなります。水不足の問題は、日々の生活や生命の維持に問題が発生するだけでなく、子供の就学率や、女性の社会進出など、様々なことに影響が出てしまうのです。

水紛争

いくつかの河川では水の使用量を巡って、国家間の紛争さえ起こっています。世界には複数の国を流れる「国際河川」が約260本存在しており、国際河川の上流にある国がダムを建設して水を確保したことにより、下流の水量が減るなどの、自国のことだけを考えて水資源を利用することによって、国際紛争に発展する可能性があります。

実際に紛争が起こった地域

ドナウ川

スロバキアとハンガリーのダム建設が原因で起きた環境問題から国家間の紛争にまで発展しました。

ユーフラテス川

トルコ、シリア、イラク間で中東での貴重な水資源として利権を巡って紛争に発展しました。

リオグランデ川

アメリカとメキシコ間での水資源の利権問題から紛争に発展しました。20世紀の戦争が石油を巡って起こったとするならば、21世紀の戦争は水を巡るものになるだろう、と予測されています。

バーチャルウォーター

バーチャルウォーターとは、穀物や畜産物など食糧を輸入する消費国において、もし自国で、それらの輸入食料を生産したとき必要となる水の量を推定したもので、ロンドン大学東洋アフリカ学科名誉教授のアンソニー・アラン氏により提唱されました。

日本は四方を海に囲われており、国土の約3分の2が森林できれいな川も流れています。そのため日本は、自国の水だけを利用していると思われがちです。しかし、実際にはバーチャルウォーターという形で、日本は世界から大量に水を輸入しているのです。

穀物や畜産物を生産するには大量の水が必要となります。環境省によると、トウモロコシ1キログラムを生産するためには、農業用水が1,800リットル。さらに、牛はトウモロコシなどの穀物を食べて育つため、牛肉1キログラムを生産するのに、トウモロコシの約20,000倍もの水が必要になるのです。日本の食糧自給率は先進国の中でとても低く、これらの食糧を大量に輸入しているということは、海外から水を大量に輸入しているということなのです。

東京大学生産技術研究所の沖大幹教授らのグループのデータによると、日本のバーチャルウォーターの輸入量は年間約600億トンにも上り、日本の年間の農業用水の使用量約550億トンを上回っています。一見、日本は水不足の問題と無関係のように見えましたが、実際には世界からバーチャルウォーターを大量に輸入することで、水不足に苦しまずにいるのです。

日本の問題意識

現在の日本の水問題としての意識は水質汚染がほとんどで、水不足について意識や関心があまり向けられていません。その背景として、日本では、蛇口をひねれば、いつでも綺麗で安全な水が流れ、水洗トイレや洗濯、風呂、炊事など、身の回りに水があふれかえっているからです。

しかし、実際には世界が水不足の問題に直面している中で、日本はバーチャルウォーターを大量に輸入しており、世界の水資源に頼っています。これから、さらに深刻化していくと予測されている水不足によって、食糧を作るための農業用水の不足が起こり、日本の食糧輸入にも影響が出てきます。これらの問題に対して、向き合っていかなければならないのです。

食糧自給率が低く、大量の食糧を輸入している日本ですが、それと同時に大量の食糧を廃棄しています。農林水産省のデータによると、日本では1年間で5800万トンの食糧を輸入していますが、そのうち、約1900万トンの食品廃棄物として排出されており、年間輸入量の30%に当たり、発展途上国の5000万人分の年間食糧に匹敵します。

その中で、まだ食べられるのに捨てられている「食品ロス」は約800万トンの食品ロスが発生しています。日本が廃棄している食品のバーチャルウォーターの量は、日本全国の一般家庭が1年間で利用する水の量よりも多いのです。食品廃棄物のうち、約6割が家庭からの排出であり、私たち1人ひとりが、食べ物を無駄にしないことが節水にも繋がるのです。

世界の水不足の現在とこれから

日本の水道の普及率は97%で、ほぼ全員の人が安全な水を飲むことができます。しかし、現在、世界人口の約1割にあたる8億人が、衛生的で安全な水を飲むことができず、1日に1900人(毎年約170万人)の子供が、不衛生な水しか飲めないことによる下痢で亡くなっており、世界の子供の死因で二番目に多いです。この水不足は今後、さらに悪化していくと予測されています。悪化する原因と考えられているのは、一つ目に世界人口の急激な増加です。

1950年で25億人だった世界人口は、2000年には約60億人、現在では73億人にまで達しており、60年間で約3倍にまで増加しています。このような、世界人口の急激な増加に伴い、食糧を生産するための農業用水の使用量が増加しています。農業用水の使用量は60年間で約3倍にまで増加しています。2050年には世界人口は97億人にまで増えると予測されており、さらに水不足は深刻化していくと考えられています。

水不足の原因は世界人口の増加だけではありません。日本やアメリカなどの先進国の生活様式の変化や発展途上国の工業化などでも増加しています。さらに、地球温暖化によって、降水量が変化し、干ばつの影響を受ける地域が増えると考えられています。今から8年後の2025年までに、世界人口の3分の2が水不足の問題に直面すると予測されています。

できることから始める

現在、世界で8億人が安全な水を飲むことができず病気などで苦しんでいます。そのなかで、私たち日本人は、入浴やトイレ、洗面などの日常のあらゆる場面で、大量に水を使用しています。しかし、日本の水資源は豊富にあるとは言えず、降水量も年々減少しています。貴重な水資源を守るためにも、問題を理解し私たちが出来ることから始めることが大切です。

国際的な取り組み

EU・ヨーロッパ諸国の現状と取り組み

EUでは過剰取水によって水不足の拡大や干ばつが問題となっており、水枠組み指令が2000年10月に採択された。水枠組み指令とは、地下水を含めるEU水域の水質を持続可能に利用でき、生態学的に健全な状態にすることを目的にしています。

アメリカの現状と取り組み

人口の増加に加え、漁業や環境のための新たな水需要が生じており、水不足を懸念する州が増えてきています。また、深刻な干ばつが発生しており、カリフォルニアでは過去最悪の干ばつ被害が発生しています。そのため、カリフォルニア州では、同州全域を対象とした史上初の節水例を発令し、市民に水使用量の20%削減など、水不足に対処するため様々な対策が取られています。

また、家の外で水を無駄遣いしている住民に$500の罰金を科すと発表された。これは、必要以上に散水することを抑制するためであり、庭や芝の水やり、車の洗浄などに大量放水することを禁止するためです。散水できなくなったことにより黄色く枯れてしまった芝生をスプレーで緑色に染めるなど、驚くようなエピソードが発生しています。

日本の技術

世界で水不足が問題になっていくなか、中東では海水淡水化に積極的に取り組んでいます。その中で、サウジアラビアが日本の海水淡水化の技術を導入することに決定しました。サウジアラビアが注目した日本の海水淡水化技術の特徴として、少ないエネルギーで多くの水を淡水にすることができる点が挙げられます。

海水淡水化にもいくつか方法があり、現在主に使われているのは、膜を使う方法です。日本では1960年代から、海水淡水化用の膜の開発がされており、国内の3社合わせて、世界シェア6割を占めています。水不足が深刻化していく中で、これから日本は少ないエネルギーで海水を淡水にする技術を世界に売り出していくことで、世界の水の確保に貢献していけると思います。

家庭で出来ること

東京都水道局によると、一般家庭での1人当たりの水の平均使用量は約220リットルです。この中で、最も水を利用しているのは風呂で全体の40%を占めています。これら家庭での水の使用を、少しでも減らすことが貴重な水資源を守るためにも大切です。

出典:東京都水道局

入浴時に

入浴時にシャワーを流し続ける人は多いと思いますが、一分間水を流し続ければ約12リットルの水を使用してしまいます。こまめにシャワーを止めることで節水に繋がります。

炊事の時に

炊事の際は、水を使う場面が多いと思います。食器や野菜を洗う際などは水を流し続けず、水を貯めてから洗うことで節水することができます。歯磨きする時に水を流したまま歯磨きをすると6リットルの水を使用しています。しかし、コップに水を貯めることで1リットルの水で済ますことができます。

日本は国内の水資源だけでなく、バーチャルウォーターという形で世界の水資源にも依存しています。世界の水資源の不足は、食糧の60%を輸入している日本の食糧危機に大きく関わっており、食糧価格の高騰などにより私たちの生活に影響が発生します。

食品名 食品の量 バーチャルウォーター(リットル)
1合(150g) 555
小麦粉 1カップ(200g) 210
大豆 1カップ(150g) 375
オリーブオイル 大さじ1(13g) 274
コーヒー 1杯(10g) 210
パインアップル 1個(2000g) 752
ビール 435CC 113
牛丼 1人前 1889
ハンバーガー 一個 999

私たち1人ひとりが、日々の食事にどれくらいの量のバーチャルウォーターが使用されているのか意識し、食べ残しを減らすことも世界の水資源の節約にも繋がっていくのです。

<このページを監修した人>

RAUL株式会社 電気プラン乗換コム運営事務局
エコモ博士のエコらいふナビ

エコモは各地を飛び回って、電力・エネルギーや地球環境についてお勉強中なんだモ!色んな人に電気/ガスのことをお伝えし、エネルギーをもっと身近に感じてもらいたモ!

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