共有持分の不動産の「電力」完全ガイド ─ 費用負担・インフラ設置・トラブル解決まで丸わかり
不動産を共有している場合、電力費用の負担をめぐって共有者間のトラブルが生じるおそれがあります。
どのような費用が発生し、どのように対処すべきかをあらかじめ把握しておくと安心です。
本記事では、共有不動産(共有持分を有する不動産)における電力の管理と費用負担の考え方をわかりやすく解説します。
共有不動産をお持ちの方や不動産管理に関心のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
共有持分×電力問題とは
共有不動産とは、複数の共有者が取得時の出資割合などの持分に応じて所有権を有する不動産のことです。
このような共有不動産では、電力に関する問題やトラブルが生じることがあります。
管理にあたっては、これらの問題の類型や対処法を把握しておくことが大切です。
「共有持分の不動産」と電力インフラが交わる場面
共有不動産で電力インフラが問題となるのは、主に当該不動産に建物がある場合です。
自宅用・賃貸用を問わず、建物がある場合は通常電力会社の引込線が設けられ、電気を使用できる状態になります。
よくあるトラブルのパターンと背景
共有不動産の電力インフラをめぐり、よくあるトラブルは「誰が設備の維持管理費を負担するのか」という点です。
共有関係にある以上、管理に要する費用は共有者全員が持分割合に応じて負担するのが原則です。
もっとも、共有者の一部のみが当該物件に居住し、ほかの共有者は使用せず持分を保有しているにとどまる、といったケースもあるため、費用負担の在り方には注意が必要です。
電力関連コストの全体像
共有不動産の電力インフラやその維持管理費をめぐるトラブルを理解するには、まず関連コストの全体像を把握しておくことが重要です。
一般的に、管理関連の費用は必要費と有益費、特別費に大別されます。
必要費:基本料金・修繕費・税金など
必要費は、不動産の管理において建物を通常通り使用するために欠かせない費用を指します。
電力設備(受電設備・配線など)については、受電のための電力契約に伴う毎月の基本料金などがこれにあたるのです。
また、設備の故障に対する修繕費や法定点検費用なども必要費に含まれます。
有益費:省エネ設備・容量増設に伴う費用
有益費とは、当該不動産の価値や利便性を高めるための改良・増強に要する費用です。
電力設備については、省エネルギー性能の高い機器への更新に伴う費用や契約容量(アンペア/kVA)の増加に必要な設備増強費用などが該当します。
共有者全員合意で発生する特別費(売却・建替え前提など)
特別費とは、共有不動産において共有者全員の同意を要する変更・処分に伴い臨時に発生する費用を指します。
共有者全員の同意が必要となる例としては、不動産の売却や解体を伴う建替えなどが典型です。
これらに伴い、電力関連設備(受変電設備・引込線・メーターなど)の撤去・処分費や新設・更新費が発生する場合、特別費に該当します。
費用負担の原則と例外
共有不動産における電力関連費用の負担については、一定の原則が定まっています。
ただし、共有者間で協議のうえ合意があれば、別段の取り決めを設けることも可能です。
原則:共有持分割合での按分
共有不動産の管理に関する責任は、共有者全員にあります。
費用負担の割合は、各共有者の持分に応じて定まるのが原則です。
したがって、電力関連の費用についても、基本的には共有者全員が負担し、持分割合に応じて按分します。
例外1:単独居住者がいる場合の負担調整
共有者のうち1人が当該不動産に住んでいる場合でも、原則として費用は共有者全員が負担します。
ただし、共有者間の協議により、当該費用を居住している共有者が負担する旨の別段の取り決めを設けることも可能です。
例外2:管理会社委託・光熱費など「管理費用にならない」ケース
共有不動産に係る費用であっても、管理のための費用にあたらず、共有者全員で負担する必要がないものもあります。
たとえば、共有者の一部が個別に管理会社へ管理を委託した場合の委託料や各共有者の使用に応じて発生する電気料金などの光熱費です。
これらは、当該契約を締結し、サービスの提供を受けた共有者が単独で負担するのが原則です。
電力インフラ設置・変更時の手続きと管理分類
共有不動産に改修を加え、電力設備を新設・増設・変更する場合には、電気事業法などの関係法令や電力会社の供給約款に基づく手続きが必要となることがあります。
これらの手続きに要する費用や対応を公平に分担するためにも、必要なプロセスの概要をあらかじめ把握しておくことが重要です。
電柱・引込線を新設する場合
建物で電気を使用するには、必要に応じて電柱の新設や引込線の敷設を行い、建物まで電気を引き込む必要があります。
これまで電気が通っていなかった(未受電の)不動産で電気を使う場合は、これらの設備を新設しなければなりません。
一般的には、電気工事業者(または小売電気事業者)に工事を依頼し、当該事業者が電力会社へ引込工事の申し込みを行います。
その後、配線計画に関する協議と現地の設計調査を経て、見積もりに基づき必要な工事費を負担します。
竣工届の提出と引込工事の実施を経て、工事が完了すると電気の供給(受電)が開始されます。
民法252条4項の適用有無と令和3年改正ポイント
民法252条は、共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い過半数で決する旨を定めています。
一方、共有物の変更は民法251条により共有者全員の同意が必要です。
令和3年改正により民法252条4項が新設され、賃貸借等(使用・収益を目的とする権利)の設定のうち一定期間内のものは管理行為として過半数で決定可能であることが明文化されました(上限期間の目安:建物3年、土地5年、山林10年、動産6か月)。※改正は令和3年、施行は令和5年4月1日。
なお、電力会社との協議により共有不動産内に電柱を設置する場合、締結する契約の類型(短期の賃貸借・使用貸借・地役権の設定など)や存続期間・影響の程度によって、「管理行為(過半数)」にあたる場合と、「変更行為(全員同意)」にあたる場合に分かれます。
一般的に、短期の賃貸借などの範囲内であれば252条4項により多数決で可能ですが、長期・恒久的な利用権設定は変更と評価される可能性が高い点に留意が必要です。
地中配線・ガス管・下水管との一括管理の考え方
都市景観への配慮から、電力ケーブルを通信ケーブルやガス管・下水管などとともに地中化し、一括管理する場合があります。
日本では主に、「共同溝」と呼ばれる地下構造物にこれらのケーブル・管路を収容する方式が採用されています。
ただし、この一括管理方式は導入コストや維持管理の面で課題が多く、いまだ十分に普及しているとはいえません。
非定型利用権の整理と「一律管理分類」の実務
共有不動産が私道である場合、地下に配管(管路)を埋設する際は、当該私道の利用権を設定する必要があります。
この場合、配管を通したい者(個人・法人等)が当該私道の所有者でなくても使用できるよう、地役権などの利用権を設定しなければなりません。
なお、この種の契約は、その私道の利用に支障が生じない範囲であれば、共有物の管理行為として取り扱われることが多いといえます。
※ただし、契約の内容や期間、影響の程度によって評価が異なる場合があります。
支払滞納・拒否が起きたときの実践対処法
共有不動産の管理費用は、共有者全員が負担します。
実務上は、代表者がいったん立て替えて一括で支払い、各共有者に持分割合に応じた負担分を請求する運用が多く見られます。
もっとも、支払いを滞納・拒否する共有者が生じることもあるでしょう。その場合は、適切な措置を講じる必要があります。
求償請求のステップと留意点
代表者が一括で支払った費用を後日各共有者に請求する「求償(求償権の行使)」では、代表者がいったん費用を立て替えたうえで、各共有者の持分割合に応じた負担額を算定し、口座振替などの方法で支払いを受けます。
ただし、当該費用が共有物の管理に要する費用にあたらない場合、代表者であっても求償(求償権の行使)はできません。
たとえば、当該不動産に居住する共有者が趣味目的で行った造作に要した費用は、管理費用には該当しません。
持分買取請求・競売・差押え
求償(求償権の行使)に応じない共有者がいる場合でも、当該共有者の持分を一方的に強制買取することは原則できません。
もっとも、支払請求訴訟により判決などの債務名義を得たうえで、相手方の財産の差押えや強制競売などの強制執行によって回収を図ることは可能です。
なお、持分の取得を目指す場合は、当事者の合意による持分買取や共有物分割訴訟における代償分割などの手続きを検討します。
トラブルを未然に防ぐ合意書・管理規約
管理費用の負担割合に関するトラブルを未然に防ぐには、共有が成立した時点で費用の負担割合や支払方法・支払期限などを協議し、合意を得ておく必要があります。
また、これらの取り決めは合意書(覚書)や管理規約として書面化・明文化し、保存しておくことが重要です。
紛争時にも証拠として活用できる書面とするため、弁護士の関与(作成・リーガルチェック)を依頼すると良いでしょう。
電力コストを最適化する3つの打ち手
共有不動産に係る電力関連費用を最適化するには、3つの方法が適用可能かを確認すると良いでしょう。
状況によっては、ランニングコストの削減や管理負担の軽減につながる可能性があります。
共同契約で基本料金を下げる仕組み
当該共有不動産が、複数人で共同経営している賃貸物件であれば、一括受電(高圧一括受電)を利用できる場合があります。
この方式では、オーナー(または管理者)が建物全体について電気契約を一括で締結し、高圧で受電して受変電設備で低圧に変換したうえで、各住戸に分配します。
これにより、建物全体の電力単価が下がり、各住戸の電気料金も抑えられる可能性があるのです。
なお、この方式を採用する場合、住戸ごとに電力会社と個別の電気契約を結ぶことはできません。
再エネ設備・スマートメーター導入によるランニングコスト削減
電気料金の削減を図る場合は、太陽光発電など再生可能エネルギーを利用する発電設備の導入やスマートメーターの活用を検討するのが有効です。
発電設備を導入すれば当該不動産で発電でき、電力会社からの購入電力量を抑えられます。余剰電力は売電できるため、収入化につながる可能性もあります。
自治体補助金・税制優遇の活用
太陽光発電設備の導入や省エネ改修などを行うと、自治体の補助金や税制優遇措置を活用できる場合があります。
利用できる制度は自治体や時期の施策によって異なるため、自治体の所管窓口や対応事業者に事前に確認すると良いでしょう。
共有持分を解消・手放す選択肢
共有持分を保有し続けると、電力関連費用をはじめとする管理費用の負担が、受ける利益を上回る可能性があります。
また、共有者間でトラブルが生じることもあります。
そのため、共有関係を解消する方やそもそも不動産自体を処分(売却)するという選択を採る方もいるのです。
共有持分に関する権利の整理
不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要ですが、各共有者は自己の共有持分を単独で処分できます。
したがって、共有者間で持分を売買する、または第三者に持分を売却するといった方法により、買い取りが進めば単独所有化=共有関係の解消を図ることが可能です。
もっとも、第三者への持分売却だけでは共有関係自体は継続し、共有者が入れ替わるにすぎない点に留意してください。
また、共有持分の放棄によってほかの共有者へ持分を帰属させる方法もあります。
実務上は、ほかの共有者への持分移転登記が必要となり、登記手続には共有者全員の関与が求められます。
もう一つの方法は、各共有者の持分割合に応じて現物分割(分筆)することです。
境界確定や全員の同意を経て土地を分筆し、各筆を単独名義にすることで、単独所有が可能になります。
共有持分専門買取業者に売却するメリット・注意点
不動産の共有持分は、ほかの共有者の同意がなくても単独で処分できるため、自分の持分だけを共有持分専門の買取業者に売却することが可能です。
この買取業者を利用するメリットは、①ほかの共有者に知られずに取引を進められること、②短期間で現金化できることの2つです。
個人間での売却は買主が見つからないおそれがありますが、専門業者なら買取先が確実に確保できます。
ただし、留意点もあります。無断で持分を売却すると、ほかの共有者との関係が悪化するおそれがあるのです。
さらに、業者が悪質な場合には残る共有者に不動産の使用料を請求したり、共有物分割請求訴訟を強行したりするケースもあるため、業者の信頼性を十分に確認することが重要です。
相続で共有者が増えた場合の対処と節税策
共有持分は相続により承継され、相続人間でさらに分割することもできます。
そのため、共有者が亡くなると相続により共有者の数が増えることがあります。
このような相続が続くと、次第に共有者同士が疎遠になり、共有関係の解消や変更行為の合意が難しくなります。
したがって、早期に共有者全員で協議し、不動産を売却するか、共有状態を解消することが望ましいでしょう。
なお、相続人の人数や続柄によっては、基礎控除をはじめとする各種控除を活用した節税も可能です。
配偶者控除、未成年者控除、小規模宅地等の特例など、利用できる制度の適用を検討することをおすすめします。
まとめ
共有状態にある不動産では、管理費用に分類される電力コストを共有者全員が負担する必要があります。
負担をなくすためには、共有状態を解消するか、共有持分を手放すのがおすすめです。
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