『EUではもう進んでいる!? 「Circular Economy (循環型経済)」とは?』

  • 更新日:2020/08/28

所属:国際基督教大学

インターン生:N.Mさん

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Circular Economyとは、直訳すると「循環型経済」となりますが、資源循環の効率化だけではなく、原材料に依存せず、資源の無駄や捨てられている素材、まだ使用できるにもかかわらず廃棄されている製品など世の中にある「無駄」を活用して、利益を生み出す経済システムです。

Circular Economyはこれまでの「循環型社会」とはどう異なるの?

Circular Economyが従来の「循環型社会」と大きく異なる点としてあげられるのが、「作る段階から再利用を前提としている」という点です。「循環型社会」の考え方では、個人や企業が使い古していらなくなったものをリサイクルに出し、それを新たな燃料や材料として再生して、循環させる社会をつくるというものでした。

しかし、Circular Economyでは、その物自体を製造する際に使い終えた後の再利用の方法を計画し、考慮した上で製品を作り、販売するという考え方が主体となっており、「リサイクル」よりも「再利用」に焦点を置いているという点で従来の「循環型社会」とは異なります。

3Rから5Rへ

日本では3Rの考え方は広まっており、認知度も高いですが、5Rの考え方は未だにあまり広まっていません。EUが推進している5Rには、3RのReduce, Reuse, Recycleの他に、RefuseとRepairが含まれており、ごみとなる可能性のある要素を最初から断るという考え方とまだ使えるものを修理して使おうという考え方も組み込まれています。

*意外と知られていないReuse (=再利用)とRecycle (=リサイクル)の違い

日本では「リサイクルショップ」や「ペットボトルのリサイクル」など「リサイクル」という言葉をよく耳にすると思います。3Rの概念が導入されてから「リユース」という言葉も広がりましたが、「リユース」と「リサイクル」の違いはあまり知られていません。では、「リユース (=再利用)」と「リサイクル」の違いは何でしょうか?

「リサイクル」は日本語に訳すと「再生利用」や「再資源化」という言葉になります。一見「再生利用」とリユースの「再利用」は同じようにも伺えますが、意味が異なってきます。

「再生利用」というのは、ペットボトルや牛乳パックなどリサイクルに出されたものを一度処理・加工をして違うものに作り変えるという意味を持っています。

一方で「再利用」は、「再使用」と同じ意味合いで、一度使用されたものを全体、または部分ごとにそのまま使用するという意味を持っています。従って、「リサイクル」というのは、一度処理や加工をして新しい製品を作るということに対して、「リユース」は使用されたものをもう一度そのまま使うという意味合いを持っているということから、両者の違いがわかります。

5Rで私たちにできること

Reduce (リデュース:減らす) → ゴミをなるべく減らす

  • 長く使えるものを買う
  • 包装の少ないものを買う
  • 必要最小限のものだけを買う
  • 買うのではなくシェアする
  • マイボトルを持ち歩くようにしてペットボトルや缶・瓶入りの飲み物を買わないようにする
  • 買い物に行く前に冷蔵庫の中身を確認する

Reuse (リユーズ:再利用/再使用) → そのままの形で再使用する

  • 着れなくなった服などはお下がりとしてあげる
  • セカンドハンドショップやフリーマーケットで使わなくなった服やカバンなどを売る
  • 使い古したものでも工夫をして使う(例:古くなったタオルを雑巾として使う
  • 詰め替え式ボトルを使う

Recycle (リサイクル:再生利用) → 再び資源として利用する

  • 古紙回収
  • ペットボトルを分別して、ペットボトル用の回収ボックスに入れる
  • 使用しなくなった携帯電話の中に埋蔵されている鉱物資源をリサイクルする

Refuse (リフューズ:断る) → 不要なものはもらわない

  • マイバックを持ち歩くようにして、レジ袋をもらわないようにする
  • お弁当などについてくるお箸やスプーン、フォーク等を断る

Repair (リペア:修理する) → 修理をして再び使う

  • 壊れたもの (服、靴、カバン、時計等)を修理してもらってもう一度使う

EUの ‘Circular Economy’ と日本の「循環型経済」

日本の「循環型経済」

日本では、2000年6月に経済産業省が廃棄物・リサイクルに関する課題の解決を狙いとする「循環型社会」を推進する法律、「循環型社会形成推進基本法」を公布しました。

これは、「大量生産・大量消費・大量廃棄」型の経済社会から脱却し、生産から流通、消費、廃棄に至るまで物質の効率的な利用やリサイクルを進めることにより、資源の消費が抑制され、環境への負荷が少ない「循環型経済」を形成する必要性から生まれた法律です。

「循環型社会形成推進基本法」の発効により、3R (Reduce, Reuse, Recycle)の基本概念が日本中で広まり、様々なリサイクル運動が行われるようになりました。

日本の「循環型経済」に向けての具体的な政策事例

日本が「循環型経済」を達成するために行っている政策の一つとして挙げられるのが、エネルギーの地産地消推進です。2011年3月11日に起きた東日本大震災での原発事故に伴う化石燃料の使用増加によって、2012年7月に再生可能エネルギー固定価格取引制度が開始され、2016年度からは電力の小売りの自由化が進められました。

この制度が導入されたことにより、エネルギーの地産地消が可能となり、人材的にも経済的にもエネルギー的にも地域ごとに活性化することができるという点に置いて、「循環型経済」を達成する第一歩となったと考えられます。

また、千葉県の匝瑳市では、食品副産物を利用した飼料原料から作った餌で豚を飼育し、養豚から出荷までを行う、クリーンで安全なエコ・フードシステムを実現しています。

匝瑳市が使用している飼料は食品メーカーなどから出る食品残渣を乳発酵させて製造しており、匝瑳市内では2000頭もの豚が4ヶ所の養豚場で飼育されています。

この政策により、匝瑳市ではフードマイレージを大幅に減らし、廃棄物やエネルギー使用の減少にもつながったとして日本が促進している「循環型経済」の重要な例の一つとされています。

加えて、徳島県上勝町では、ゼロ・ウェイストアカデミーという、3R活動を住民や行政と一緒に町内で推進し、環境に配慮できる人材育成、ゼロ・ウェイストな商品開発、活動推進のための調査・研究、そして一緒に取り組む仲間を世界中につくるというコンセプトで生まれた特定非営利活動法人があります。

ゼロ・ウェイストアカデミーでは、自分たちが日常的に捨てているものはどこでつくられ、どこに行くのかを知るというところから始め、ワークショップや研修、セミナーを通してゼロ・ウェイスト政策に取り組むという活動をしています。

それに加えて、上勝町日比ヶ谷ごみステーションという2005年にゼロ・ウェイストアカデミー設立以来上勝町の一般廃棄物中間処理業務を受託し、町内唯一のごみ集積所の管理も行っています。

この日比ヶ谷ごみステーションでは、ゼロ・ウェイスト政策を積極的に行っており、45の分別システムを実施しています。これにより、上勝町では廃棄物が大幅に減少し、リサイクルを中心とした3Rに特化した「循環型経済」への転換を大きく促しています。

EUの ‘Circular Economy’

2015年12月、EUはCircular Economyへの移行により積極的に行動していくために‘Circular Economy Package’を提案しました。この提案は、EU諸国の企業と消費者が資源をより持続可能な形で使い、廃棄物を最終的に大幅に減らすことを目的として採用されたもので、現在マイクロプラスチック問題などで注目されているプラスチックに関する対策に重きを置いて目標を示しています。

実際、ヨーロッパでは毎年2500万トンものプラスチック廃棄物が出ていますが、全体でみるとそのうちの30%未満しかリサイクルをされていないという現状があります。

このプラスチック廃棄物問題とリサイクル問題の対策として、各国が達成するべき目標を明確に‘Circular Economy Package’では表しています。

EUがプラスチックに関する目標として挙げている中には、EU市場で出回っているすべてのプラスチック包装を2030年までにリサイクルし、single-useのプラスチックを大幅に削減するというものや、マイクロプラスチックの使用に厳しい規制をかけるというシビアな目標も多く含まれており、EU諸国が協力して積極的に行動する必要性があります。

EUは‘Circular Economy Package’とこれらの目標を設定し、リペア、再製造、アップグレード、修理が含まれるリユースに力を入れることでビジネスの育成と国際競争力を向上させ、かつ、リユースを意識した製品の製造により廃棄物の排出や環境汚染を「未然に防ぐ」ことができると考えています。

加えて、EUは、Circular Economyに転換することで廃棄物を減らし、環境問題に配慮をした社会を作り出すことができるだけではなく、合計17万人の雇用を創出できるとともに、3%のGDP上昇を見込むことができるということから、経済効果も期待できると発表しています。

このことから、EUが促進するCircular Economyは、環境面だけではなく、経済面も社会面も発展させるということも視野に入っているということから、国として発展していこうという考え方を持っているということがわかります。

EUの ‘Circular Economy’に向けての具体的な政策事例

EUでは ‘Circular Economy’の完全実現に向け、様々な政策や対策が行われています。そのうちの一つとして挙げられるのが、エコデザインの義務付けとエネルギーラベルの導入です。

エコデザインとは、ライフサイクルの全てにおいて環境に配慮したデザインで、製品の設計から製造、輸送、使用、廃棄までの “ライフサイクル”全体を通して、資源の消費量や汚染物質の排出量を削減するという目的があります。

また、エコデザインは、リサイクルよりも修理・アップグレード・再製造のしやすさを重視しており、リペアとリユースに力を入れているEUならではの考えということがわかります。

EUでは、このエコデザインを義務づける規制の一つとして、2005年に出されたEuP指令(Energy-using Products)を強化・規制にした、ErP指令を採用しており、家電のみに限らず、エネルギーに関連する全ての製品に対象を広げています。

エネルギーラベルは、エネルギー消費効率を製品群ごとに7段階に分けて、その製品がどこに位置するのかを分かりやすく色別で表示するというもので、一般的にエネルギー消費量、待機電力、水の消費量(例:洗濯機)などを表示します。

これにより、消費者が自分が購入しようとしている製品はどれほどエネルギーを消費するのかということが一目でわかり、エネルギー消費量が少ないものを選ぶことを促すことができるというねらいがあります。

EUの国々が積極的に行っている対策としてもう一つ挙げられるのが、修理代に対する付加価値税の減税です。ドイツでは2016年に資源効率性の高い製品や修理活動に対して19%から7%の付加価値税率に変更し、2017年1月にはスウェーデン政府も修理への支払いに対する付加価値税を25%から12%に減税することを決定しました。

これは、5RのうちReduce (=減らす)とRepair (=修理する)に重きを置いた政策であり、政府はこの政策を行うことによって、これまで以上に市民が長持ちをする、高品質な商品を買うようになり、壊れにくいものが市場に増えるとともに、大量生産・大量消費の経済を変えることができるという考え方から行われた政策です。

加えて、修理代の減税を両国10%以上も行うことで、消費者が所有しているものが壊れたり古くなった際にも新しいものを買うよりも、修理して同じものを使い続けるという選択肢を選択する可能性が高くなるであろうという考えから、廃棄物や資源の使用を減らす狙いもあります。

また、オランダは、2050年までにCircular Economyを完全に実現させるため、資源利用を大幅に削減し、廃棄物を削減していく協定を、インフラストラクチュア・環境大臣、経済・農業・イノベーション大臣、政府関係者、産業界、NGOの間で締結しました。

この締結により、政府だけではなく、様々な機関と国民が積極的に協力しながら共に行動するという社会を構築することができ、Circular Economyの実現への大きな一歩となります。

さらにオランダは、廃棄物から利用可能な原材料を回収する予算として最大2,700万ユーロを投じることを発表し、さらに経済的・社会的な面でも、オランダ国内で2030年までに73億ユーロの市場価値と54,000人の雇用を生み出すという主張もしました。

廃棄物の対策として行っていることとしては、スウェーデンの分別システムスが挙げられます。スウェーデンでは、ゴミの分別が金属、プラスチック包装、着色ガラス、無着色ガラス、新聞紙・雑誌、紙包装、生ゴミ、一般ゴミ、有害物質を発するゴミ(例:電子機器や化学薬品)の9つに分別されており、これによってゴミが廃棄物として処理される割合は1%以下といわれています。

排出されたゴミの約50%は、主にエネルギーを生み出すことに使われており、残りの50%は主にリサイクルに使われているということで、廃棄物を極力減らし、有効活用することでCircular Economyの実現を可能にしようという考えが広まっています。

これらのことから、EUの各国は、政府だけが政策を発表するのではなく、国民や様々な機関が一体となって、Circular Economyに転換していこうと積極的に環境的・経済的・社会的行動を行っているということがわかります。

EUが目指している ‘Circular Economy’と日本が目指している「循環型経済」の比較

日本 EU
概念が生まれた年 2000年6月(循環型社会形成推進基本法) 1970年代後半(Cradle to Cradle)
定義 資源・エネルギーが無駄なく有効に活用される社会 環境だけではなく、国際的競争力や持続可能な経済発展、雇用の創出を含める
政策方針の違い 3R(Reduce, Reuse, Recycle)
※リサイクルに重きを置いています
5R(Reduce, Reuse, Recycle, Refuse, Repair)
※リデュースおよびリペアに重きを置いています
活動の主体 地域ごとに 国が一体となって

‘Circular Economy’に転換してどのように雇用を創出する?

EUはCircular Economyに転換することで、各国で大幅な雇用を生み出すことができると主張していますが、実際にそれはどのようにして実現させるのでしょうか。

その方法の一つとして挙げられるのがスウェーデンとドイツにおける修理業の例です。スウェーデンやドイツでは修理代の付加価値税を減税したことにより、修理業が活性化し、多くの雇用を創出しています。

また、スウェーデンにきている難民の多くは白物家電などの修理を出身国で経験したり、事業を営んだりしていたこともあり、修理業が栄えたことにより難民の労働力も活用することもできるようになったといいます。

また、以前のスウェーデンの労働市場の多くは高等教育を必要とするものであったのに対し、Circular Economyに転換することで、高等教育を必要をしない仕事も増え、貧困層にも社会進出を促し、難民と貧困層と富裕層の格差を減らすこともできるのではないかともいわれています。

さらに、DIY文化の復活やAirbnbなどの共有経済により、世帯間の経済格差を減らす手段にもつながっていくとも考えられています。加えて、修理業の活性化による雇用創出だけではなく、再生可能エネルギーへの転換により、さらに雇用を増やすことができるということもEUは主張しています。

現にドイツではバイオマスを使った発電に変えたことで雇用が大幅に増えたという例や、デンマークでは、風力発電を活性化させてから風力発電産業の雇用数は2012年末までに28,459人まで増えたという例もあります。

これらの他にも、EUはCircular Economyと共にSharing Economyへの転換も促進することで、シェアリングビジネスにおける雇用も大幅に増やすことができるとも主張しています。

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