「世界で2番目に環境問題を引き起こす業界」の変化と現状とは?

  • 更新日:2020/08/28

所属:明治学院大学

インターン生:M.Hさん

「世界で2番目に環境問題を引き起こす業界」の変化と現状とは?の写真

気候変動や地球温暖化の原因となる環境問題。みなさんが普段、バーゲンセールなどで大量に購入する洋服が環境に大きな負荷をかけていることをご存知ですか。アパレル産業は、世界で一番CO2を排出する「石油産業」に次いで、世界第2位のCO2排出量と言われています。さらに、深刻な水不足が世界で議論される中、Tシャツ1枚を作るために必要な水の量は2700ℓとされています。これらの事例のように、環境に大きな負荷をかけてきたアパレル産業が、近年、変化を遂げています。そこで、この記事では、アパレル産業の背景から近年の動向について触れていきたいと思います。

ファストファッションブランドの変化

最新のトレンドアイテムが低価格で手に入る「ファストファッション」が、2008年頃から多くの若い世代の支持を集めるようになりました。「ファストファッション」を呼ばれるブランドとして、H&M、ZARAやUNIQLOなどが挙げられます。

これらのブランドを開発途上国に生産拠点に置くことで、安価な労働力を劣悪な労働環境の中、大量に服を生産させているという現状があります。したがって、「ファストファッション」は、環境問題だけでなく、途上国の弱い立場に置かれる労働者たちや児童労働などの人権の課題も挙げられます。

しかし、近年「非人道的」であったファストファッション企業に変化が見られるようになりました。近年、日本では2017年にOLD NAVYが撤退して以来、2019年10月にForever21、同年12月にAmerican Eagleが全店舗閉店となり、ファストファッション産業の生き残りが難しい状況にあります。ファストファッションが社会的に問題視されるようになったのは、2013年4月24日にバングラデシュの首都ダッカで8階建ての商業ビル「ラナプラザ」の倒壊事故が発生してからです。

この事故で、4000名の従業員のうち、1,130名以上の死者と2,500名以上の負傷者を出しました。「ラナプラザ」で起こった倒壊事故は、連日世界中のニュースで取り合挙げられ、ファストファッションに潜む社会的問題に目が向けられるようになりました。

そして、この事故を受けて制作されたドキュメンタリー映画「ザ・トゥルーコスト」も世界に大きな反響を呼びました。また、ファストファッション企業に変化が見られた理由のもう一つに「SDGs」が挙げられると思います。

2015年に国連が定めた持続可能な開発目標(SGDs)は、目標達成に向けてあらゆる企業で用いられ、それぞれの企業に合ったアプローチで貢献しています。これらの社会的な動きから、ファストファッション企業は、より倫理的で環境に配慮した産業を行う傾向に変化していきました。では、これらのブランドで具体的にどのような社会的貢献(CSR)を行っているのでしょうか。

(1)H&M

H&Mでは、2030年までに100%リサイクル製品の製造やその他において持続可能な原料を使用することを目標として掲げています。また、H&Mでは、H&Mの製品に関わらず、古着回収BOXを店舗に設けてリサイクル活動に取り組んでいます。これまで、H&Mでは、39,000tもの不要布地を回収してきました。この実績から、同社は毎年少なくとも25,000tの布地を回収する目標を掲げています。そして2040年までに、クライメイト・ポジティブな企業を目指すために温室効果ガスの排出量の削減に努めています。

(2)UNIQLO

UNIQLOでは、プラスティック包装を85%カットすることに加え、世界で縫製産業に携わる労働者達の安全性の確保を支援することを公表しています。 ユニクロが行っているもう一つの社会貢献事業。日本ではあまり知られていませんが、ノーベル平和賞を受賞した「グラミン銀行」と協力して立ち上げを行ったアパレルブランド、「グラミンユニクロ」がバングラデシュで注目されています。

この「グラミンユニクロ」とは、バングラデシュで服の企画から生産、店舗での販売を行う地産地消型アパレルブランドです。日本で愛されるユニクロの機能性を活かした洋服は、バングラデシュでも認知度が高まっています。

このブランドで見込める社会貢献は、バングラデシュで地産地消されることから彼らの雇用創出に繋がります。また、店舗運営のノウハウを学べることから人材育成にも繋がります。このようにして、UNIQLOは縫製産業の主要国であるバングラデシュの人々の自立に貢献しています。

(3)ZARA

ファストファッションの走りとして知られているZARAでは、2025年までに綿・麻・ポリエステルを全て廃止し、オーガニックの材料を利用した衣服生産に置き換えることを公表しています。

また、ZARAでは主にバングラデシュやカンボジアなどのコミュニティ開発プログラムを実施しています。NPOやNGOが実際に行う支援をZARAのサイトを通し広報することで、支援に賛同してくださるパートナーの呼びかけを行っています。

これらの例から分かるように、これらの代表的な3つのファストファッションブランドが「エシカル」(倫理的で自然環境を損なわない)ファッションへと変化していっています。

エシカルファッションの浸透

では、「エシカルファッション」とは、具体的にどのようなブランドを指すのでしょうか。エシカルファッションあるいは、サスティナブルファッションと呼ばれるブランドは、地球への環境や生産に携わる労働者達の労働環境に配慮したファッションのことです。

「エシカル」ファッションとされる、代表的なブランドに「パタゴニア」「グッチ(Gucci)」などが挙げられます。確かに、これらのブランドは長く使用するために素材にこだわった商品である為、高価で手が届きにくいブランドが多いことが現状です。

しかし、環境に配慮したエシカルファッションは、近年、多くの消費者の注目を集めています。例えば、「パタゴニア」では、洋服の繊維など素材は最高品質のものを使用し、その一着が長く着続けられるような製品の作成に努めています。

衣服ができ上がるまでに必要な水の使用量やエネルギーの使用量を削減できるような取り組みを徹底的して行っています。また、上記に挙げた「グッチ(Gucci)」も社会貢献に積極的であると言われています。

グッチが行う具体的な活動として、動物の毛皮を使用しない「Fur Free Alliance」に加入し、リアル・ファーの廃絶に取り組んでいます。リアルファーを完全に廃止するとしたラグジュアリーブランドは、グッチの他にもアルマーニなどが挙げられます。現在では、800以上のブランドがこの「Fur Free Alliance」加入しています。

また、「エシカルファッション」を促進する組織は、企業だけではありません。例えば、NPO・NGOまたは学生団体も活動を行っています。筆者である私自身も、大学で服の大量生産・大量消費による社会課題の情報発信をボランティア活動として行っています。

自身の団体で行ったイベントは、大学内で集めた古着をリメイクし、新しく生まれ変わった服でファッションショーを開催しました。このファッションショーでは、観客の方に服の大切さであったり、大量廃棄による環境への負荷を発信することができたと思います。

これらの活動を行う団体は、私たちの大学だけではありません。近年、大量生産・大量消費やエシカルファッションついて発信する学生のボランティア団体は広がってきています。

なぜなら、大学生は、決まったユニフォームが無い為、衣服を購入する機会が多く、安く手に入るファストファッションを多く消費する傾向にあると思うからです。

実際に、友人から、トレンドが去ったら着られる服でも捨て、友人と服が被ったら全く着なくなってしまうという話を聞いたこともあります。服が安く手に入ることで、すぐに捨てて、すぐに新たな服を購入するといった悪循環を招いているのではないでしょうか。

私が行う学生団体に加え、その他団体でも服の生産の裏側についての情報発信を行っています。先進国の人々が、大量に消費することで、途上国の弱い立場に置かれる人々の利益は搾取されています。皆さんも、その服を購入する際に、本当に必要か一度考えてみてください。

大量生産・大量消費・大量廃棄の現在の実態

世界中のファストファッション企業が「エシカル」ファッションへと変化している一方で、日本人の年間の服の消費は深刻な現状にあります。2018年のデータから、国内の消費される衣服は13億点であり、売れ残りとなる在庫は年間14億点にも上ります。このことから、日本のアパレル産業では、消費量よりも売れ残りの個数の方が多い現状があります。

では、なぜアパレル企業は服の生産量減らさないのでしょうか。その理由は、大量に同じ商品を生産することで企業のコストを抑えられるからです。確かに上記に挙げた、「エシカル」で天然のコットンを利用した衣服を販売することで人権問題や環境問題の解決に貢献できます。

しかし、大量に服を生産し、大量に在庫を抱えて廃棄するといった、この構造を変えなければ、アパレル産業における環境課題の解決には繋がりません。また、低価格で衣服を購入することで衣服に対する愛着が薄れ、2、3回使用した後、廃棄してしまうという人も少なくないのではないでしょうか。

私たち消費者ができること

これらの大量生産・大量消費の構造を作っている理由は、企業だけではありません。私たち消費者も含まれています。地球の限られた資源を次世代の人々へ繋いでいく為に、私たちにもできる取り組みはたくさんあります。次に洋服を買う際、ぜひ以下のことを気にして購入してみてください!

1.この服を30回以上着るか。(10年後も着られる服か。)

2.来年以降も着続けられるか(トレンドだけを追っていないか)。

3.その服に愛着を持てるか。

4.似たようなデザインや形の服を持っていないだろうか。

5.ヴィンテージや古着などをチェックする。

さいごに

近年、ファストファッション企業は、「エシカル」で「サスティナブル」な企業へと変化していっています。これらの企業に変化が見られたのは、国連が主体となって行う「SGDs」の促進や、バングラデシュで実際に起きた悲惨な事故による社会的な批判が影響していると思います。

また、ファストファッションの変化は、これらの社会的な影響に加えて、世界で活躍する活動家達の努力もあります。例えば、イギリスを代表する女優のエマ・ワトソンさんは、「エシカル」ファッションの浸透に大きく貢献しています。

彼女が実際に行った活動として、オーガニックコットンやチョコレートなどのフェアトレードを行う「ピープルツリー」とコラボしたファッションブランドの立ち上げを行っています。

彼女は実際に、バングラデシュを訪問し、自身のSNSを通した現状の発信を行っています。また、有名ファッション雑誌「VOGUE」を通し、フェアトレードや「エシカル」ファッションの拡散を行うことで若い世代にこれらの現状についてを知る機会を作ることに貢献しています。

以上に挙げた事例から、世界で「エシカル」ブームが巻き起こっています!限られた資源を次世代に繋いでいく為に、私たち一人一人、大量消費について考えなければなりません。

海外では、「ヴィンテージ」や「used」といった古着を購入する人も多いですが、日本ではそれらを好まない人が多いことが現状です。もし、着られなくなった服や着なくなった服があれば、そのまま捨てるのではなく、リサイクルショップやH&Mなどが行う「古着回収BOX」を活用してみてください。これを行うだけでも、個人でできる環境への配慮に繋がるのではないでしょうか。

<このページを監修した人>

RAUL株式会社 電気プラン乗換コム運営事務局
エコモ博士のエコらいふナビ

エコモは各地を飛び回って、電力・エネルギーや地球環境についてお勉強中なんだモ!色んな人に電気/ガスのことをお伝えし、エネルギーをもっと身近に感じてもらいたモ!

宜しければSNSでのシェアをお願い致します!

エコモ博士
本ページの記事が皆様のご参考になりましたら、ぜひともイイネやシェアいただければ有難く思います。皆様がシェア等しやすいように、下記にてFacebook、X、はてなブックマークのリンクボタンを設置しております。ご検討いただけますと幸いです。
おすすめ電力会社用アイコン 編集部おすすめの電力会社
個人・ご家庭の方
Looopでんき用アイコン
基本料金0円でお得
Looopのプランは基本料金が0円となっており、電気を使った分だけ料金が発生することが最大の特徴です。ポイント等の付与がなくとも問題ない方、電気の利用方法で電気代を徹底的に安くしたい方に推奨できます。価格を追求しながらも、環境や日本社会への貢献にも目を向けた大手の新電力会社となり、特に基本料金のコストを削減したい方におススメです。
ENEOSでんき用アイコン
エリア大手電力より安定して安価
ENEOSのプランは、老舗大手エネルギー系列として最高峰の価格水準および信頼・安定性があります。どのような電気の使い方であっても、原則としてエリア大手電力の通常プランよりお得となります。数%であっても安定して毎月の電気代を削減したい方に推奨できます。
idemitsuでんき用アイコン
オール電化で最高峰
idemitsuでんきは、出光興産が提供する電気料金プランです。オール電化住宅において最高水準に安定かつ安価な専用プランがあります。特にオール電化向けという観点では、一人暮らし~大家族まで国内で最高峰の料金構成となっている電気プランと言えます。また、EVユーザーの方も安価な深夜電気で蓄電できるためおススメです。
シン・エナジーでんき用アイコン
マイルが貯まる
シン・エナジーの電気料金プランは、JALのマイレージがどんどんと貯まることが特徴です。ベースの電気代部分もお得な構成のため、電気代をお得にしながら、マイルを貯めたい方にとって非常におススメの電気料金プランとなっています。
四つ葉電力用アイコン
完全固定単価で安心
四つ葉電力の「ほっと5.0安心プラン」は、[基本料金][再エネ賦課金][燃料調整費][容量拠出金][託送費]が0円の、電気を使った分だけ完全固定単価での支払いとなる安定性の高いプランです。原油高等による電気代変動の影響を受けたくない方に推奨できます。
法人(高圧)の方

電力会社の一括見積にて電気代削減のサポートをしております。皆様には電気料金明細をご用意いただくのみの簡単作業となります。複数社の見積りを一覧化、どの程度電気料金を削減できるか比較できます。

おすすめガス会社用アイコン 編集部おすすめのガス会社
個人・ご家庭の方
ENEOS都市ガス用アイコン
オススメ都市ガスプラン
石油元売りとして国内最大の規模を持つENEOSは、都市ガスプランが特筆すべき水準の価格構成となっています。ただし、東京ガス/京葉ガスエリア限定の部分がネックです。しかしそれらエリアにお住いの方であれば、ENEOS都市ガスに切り替えることで大幅なガス代削減が期待できます。
プロパンガス用アイコン
プロパンガス比較サービス
日本では2万社ほどのLPガス事業者が販売を行っており、価格差が極めて大きいのが業界の特徴となります。LPガス会社の見直しにより毎月のガス料金を大きく抑えられる可能性があり、おススメのプロパンガス比較サービスをご紹介しております。
ページトップへ