ストレスが環境悪化を促進⁉
所属:高知工科大学
インターン生:K.Kさん
みなさん「ストレス」「環境問題」という単語を一度は聞いたことがあると思います。しかし、「この2つがどう繋がっているの?」と思う人は多いのではないでしょうか。今回は、これらの関係性についてみていきたいと思います。
今ある環境問題
この世の中には多くの環境問題が存在しています。主要な問題として以下のようなものが上げられます。
- 地球温暖化
- 海洋汚染
- 大気汚染
- 生物多様性の減少
- 森林破壊
- 酸性雨
- 異常気象
これらの環境問題は生態系や人間の健康、社会経済に悪影響を及ぼしています。そして、これらの問題は様々な植物や動物のストレスと密接に関係しています。
ストレスとは
ストレスとは、外部からの刺激などによって体の内部に生じる反応のことを指します。ストレスは人間だけでなく、動物や植物も感じることがあります。
植物が受けるストレス
植物が感じるストレスには、環境悪化を促進させるストレスがいくつか存在します。
乾燥ストレス
乾燥ストレスとは、植物が乾燥により水分欠乏状態になったときに起こるストレスです。乾燥ストレスへの耐性がない植物は根が深い場所まで張っていないため、乾燥状態では根から水を吸えない状況に陥ります。そのため植物は貴重な水を温存しようと気孔を閉めます。このとき気孔を占めることで、二酸化炭素も同様に取り込めなくなり光合成が抑制されます。この状態が続く場合は植物が死滅してしまいます。
結果として、植物の光合成が抑制・植物が死滅することにより、植物が持つ光合成による地球温暖化防止機能が失われ、地球温暖化が促進されます。乾燥状態が生まれる原因として、異常気象による干ばつなどが挙げられます。
※気孔は、呼吸や水分の出入りの調節で、植物の生命活動における大切な役割を担っています。
低温ストレス
低温ストレスとは、低温耐性を持たない植物が、成長適温より低い温度にさらされることで起こるストレスです。低温になると気孔の応答が遅くなり,開いた状態の気孔は開いたままに,閉じた気孔は閉じたままになります。そのため低温ストレス下においては、光合成と呼吸活性は減少し、ある一定温度以下では光合成生産が行われなくなります。また、細胞内の水が凍ることでの細胞の破壊やこともあります。
結果として、乾燥ストレスの時と同様に、植物の光合成が抑制・植物が死滅することによって植物が持つ光合成による地球温暖化防止機能が失われ、地球温暖化が促進されます。低温ストレスが起こる環境形成の原因として、寒波の到来などの異常気象が挙げられます。
栄養ストレス
栄養ストレスとは、生物が成長するための必須栄養素のいずれかが不足、または過剰量存在することによって起こるストレスです。このことにより、生育に阻害的な効果をもたらします。
具体的には、リン酸不足による主根の成長阻害などがあります。結果、植物がきちんと育たないことで、植物が持つ光合成による地球温暖化防止機能が低下し地球温暖化が促進されるほか、生息域の減少に伴う生物多様性の減少などが起こります。
栄養ストレスが起こる環境形成の原因として、長雨・集中豪雨、渇水などの異常気象による栄養の流出や、工場からの排水による水質汚染などが挙げられます。
金属ストレス
金属ストレスとは、土中での有害金属との接触や蓄積によって起こるストレスです。これにより、生産・成長に悪影響を及ぼします。具体的には、土壌のルミニウムはAl3+と呼ばれるイオンを放出します。Al3+は植物に対して強い毒性を持つため、植物の根を痛めてしまいます。その結果、植物は栄養分を根からすいあげることができなくなり、成長の停止や死滅を引き起こします。
結果として、植物が持つ光合成による地球温暖化防止機能が低下し地球温暖化が促進されるほか、生息域の減少に伴う生物多様性の減少などが起こります。金属ストレスが起こる環境形成の原因として、酸性雨や工場水による水質汚濁などが挙げられます。
強光ストレス
強光ストレスとは、吸収した光エネルギー量が消費・散逸可能なエネルギー量を超える状態のことです。例えば、エネルギー過剰の状態が継続すると、クロロフィルなどの光合成色素が分解され白化が起こり,最終的に細胞が死滅します。
結果として、植物が持つ光合成による地球温暖化防止機能が低下し地球温暖化が促進されるほか、生息域の減少に伴う生物多様性の減少などが起こります。強光ストレスが起こる環境形成の原因として、オゾン層の破壊などが挙げられます。
生物的ストレス
生物ストレスとは、病原菌などの病気や他の生物からの攻撃によるストレスのことです。例えば、外来種による生息地の占領やえさの競争などです。
結果として、生物の多様性の減少が起こります。生物的ストレスが起こる環境形成の原因として、環境問題により環境変化したことで、外来種が増加し在来種が減少したことなどが挙げられます。また、これよって生態ピラミッドのバランスが変化したことも原因の一つです。
以上からわかるように、生物、植物のストレスによって促進される環境問題の多くが地球温暖化や生物の多様性の減少です。また、これらのストレスを引き起こす原因の多くも、地球温暖化が原因だとわかります。そこで、少し詳しく地球温暖化についてみていきましょう。
地球温暖化
地球温暖化とは、酸化炭素、メタン、フロン類などの温室効果ガスが大量に大気中に排出され、気温が上昇し続けている現象のことです。これらの温室効果ガスは産業革命以降、人工的に大量に大気中に放出されるようになり、1980年代から世界的に問題視されるようになりました。
人が受けるストレス
水ストレス
水ストレスとは、1人当たりの年間使用可能水量あるいは年利用量を河川など潜在的年利用可能量で除いた値を用いて表されるストレスです。年間使用可能水量であれば、1700tを下回り、日常生活に不便を感じる状態を示したものが水ストレスとなります。世界で20億人もの人がこのストレスに悩まされているといわれています。
世界の様々な地域で水不足による戦争が多く起こっています。そして、戦争によって原油の流出や火災、軍事行動に伴う爆撃によって大量の温室効果ガスや有害なガスも放出され、水も汚染されます。
水不足が起こる原因として、地球温暖化による大雨や干ばつ、世界人口の増加、貿易の増加などが挙げられます。
日本が戦争を促進している?
実は日本は多くの食料を輸入することで、この水不足問題に加担しています。日本の食料自給率は38%ととても低いです。そのため、多くの食材を輸入に頼って生活しています。
食材を輸入するということは、その食材が育つまでの水や食材自体に含まれている水も輸入しているといえます。その他にも、日本は工業製品や木材も多く輸入しておりそれらに含まれる水も輸入しているといえます。そのため日本は水不足問題に加担し戦争を促進しているといえるでしょう。
対策
日本では食料自給率をあげるために次のような取り組みの喚起をしています。
- 「いまが旬」の食べものを食べる
- 地元でとれた新鮮な食べものを食べて、国産の食べものを応援する
- ごはんを中心に、野菜たっぷりのバランスのよい食事をする
- 残さず食べて、食べ残しを減らす
- 国産の食べものにもっと興味を持つ
その他にも、最近ではITを活用した新あらたな作業用機械を開発し農業の効率化や少数化などが行われています。
私たちにできる取り組み
私たちは生活する中で多くの二酸化炭素を排出しています。そのため、私たち個々も地球温暖化について理解し、防止に向けた取り組みを行うことが重要です。難易度別にぜひ取り組んでほしい活動を紹介していきます。
Easy | ・エアコンの設定温度は、夏は28℃、冬は20℃ |
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・使わない電化製品は、主電源を切り、コンセントからプラグを抜いておく | |
・誰もいない部屋の電気は消す | |
・テレビをつけっぱなしにしない | |
Normal | ・冷蔵庫は開閉を少なく、ものを詰め込みすぎない |
・家族みんなが同じ部屋で過ごす | |
Hard | ・移動手段として自伝車をつかう |
・契約電気プランの見直し |
自分たちにできる取り組みについて調べていく中で、契約電気プランを見直すことが環境問題解決への取り組みになることを知り私はとても驚きました。このことについて詳しく調べていく中で面白い活動をしている電気会社さんを見つけたので少し紹介したいと思います。
Looopでんき
Looopでんきは電力量料金30分ごとに変動するサービスを提供しています。そのため、時間帯によっては0.01円という値段で電気が提供されるケースもあります。これは、お昼の時間に太陽光発電により大量な電気がつくられている等の理由によるものです。
上図を見て分かるように、時間帯によって大きく電気代が異なります。つまり、時間によって発電量が異なるということです。例えば、太陽光発電などから得られる再生可能エネルギーは時間や時期、天候に大きく左右されるためです。そして、電気を貯蓄しておくことの難しさもわかると思います。みなさんはちょっと電気の利用時間をずらすだけで、環境にもお財布にも優しいとりくみを行うことができます。
注目されている技術
環境問題を解決するために世界中で研究が行われ次々と新しいが開発されています。その中で、特に日本が注目している技術についてみていきたいと思います。
ペロブスカイト太陽電池
ペロブスカイト太陽電池とは、ペロブスカイト構造と呼ばれる結晶構造を持つ化合物を用いた次世代の太陽電池です。2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力教授らによって開発されました。
ブスカイト太陽電池の特徴は、薄くて軽く、そして折り曲が可能な点です。そのため、従来の太陽電池と違いオフィスビルの壁や曲面など様々な場所に設置できることが最大の魅力です。これにより、今までよりも発電可能領域が拡大しました。
太陽光パネルに比べて厚さは100分の1、重さは10分の1!!
また、日本の積水化学工業は、2030年までにペロブスカイト太陽電池の生産を始めると発表しました。中国では既にペロブスカイト太陽電池量産が行われていますが、積水化学工業は強みとされる耐久性を生かして屋外などより多くの場所での利用を進めていくそうです。
帯水層蓄熱システム
帯水層蓄熱システムは地中熱利用の一つで、今までは大気中に排出していた空調エアコンなどの排熱を帯水層に蓄え、熱エネルギーとして活用する技術のことです。
冷房運転時には冷熱井から冷たい地下水を揚水して冷房に利用し、熱利用によって温まった地下水を温熱井に注入して蓄えます。暖房運転時は温熱井から温かい地下水を揚水して暖房に利用し、熱利用によって冷めた地下水を冷熱井に注入して蓄えます。この操作を季節間で繰り返します。そうすることで非常に効率の高いエネルギー利用が可能になります。
帯水層蓄熱システムの特徴として、節電・省エネによる二酸化炭素削減効果やヒートアイランド現象の緩和、コスト削減などがあります。
実際に、夏の月別二酸化炭素排出量とランニングコストは従来の空気熱冷房システムに比べ、64%も削減することが可能です。
日本では、大阪市や山形市などが地域特性に即した未利用エネルギーとして帯水層蓄熱システムの普及に取り組んでいます。海外ではすでに帯水層蓄熱システムが進められており、オランダでは国策として1990年代から進められています。今では3000件を超えるシステムがオランダ国内で稼働しています。
まとめ
いま世界では、環境悪化によってストレスが発生し、そのストレスによりより環境悪化が促進されるという負のスパイラスに陥っています。
環境問題は一部の努力だけでは解決できません。皆さんの協力が必要不可欠です。すべての命が守られるよう、私たちも一当事者として、改めて自分たちにできることを考えなおす必要があるのではないでしょうか?