シリアスゲームでSDGsを考える
所属:東京情報大学
インターン生:K.Yさん
SDGsという用語を聞いたことのある人は多いと思います。しかし、聞いたことがあるだけで、具体的にどのような行動をすれば達成できるのかを説明できる人は少ないのではないでしょうか。今回は、シリアスゲームを用いることで、SDGsについて知り考えるきっかけを与えることができるかを考えようと思います。
SDGsとは
SDGsとは「Sustainable Development Goals」を略したもので、日本語では「持続可能な開発目標」と呼ぶ、国際社会共通の目標です。2015年9月に、150カ国を超える世界のリーダーが参加して開かれた「国連持続可能な開発サミット」で決められました。2015年から2030年までの長期的な開発の指針で、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現を目指しています。そのために2030年を達成期限として定められたのがSDGsで「17の目標」と「169のターゲット(具体目標)」で構成されています。
17の目標には、貧困や飢餓などから、働きがいや経済成長、気候変動に至るまで、21世紀の世界が抱える課題が包括的に挙げられています。食料の生産や食品の流通にも天然資源等のエネルギーが不可欠なように、一つの目標が複数の目標に絡んでいたりすることも少なくない為、目標一つ一つを切り離して考えることはできません。
シリアスゲームを採用する理由
ゲームを遊ぶ目的として、単純に楽しいからということもありますが、複数人で遊ぶことで、SNS等コミュニケーションツールの代わりとして利用する目的もあります。その中でも、シリアスゲームは、ゲームをプレイすることで新たな知識や経験を得ることを目的としたゲームであり、そういった目的にはうってつけです。
どんなゲームが求められるのか
実際にどのようなゲームが良いのかというと、都市が建設されていく中での人間にとっての暮らしが豊かになる行為や、自分も普段の生活の中で何気なくやってしまっているような行為が自然に対してどのような影響を及ぼすのか、それを環境破壊される前の状態に戻すのにどれほどの年月と労力が必要なのかというものを体験できるようなシミュレーションゲームであるのが一番良いと思います。
教育目的で使えそうなシミュレーションゲームの種類を挙げると、「経営、育成シミュレーションゲーム」、「ロールプレイングゲーム」の2つが挙げられます。
経営・育成シミュレーションゲームとは、会社や組織などの収入・支出や、人的資源、物的資源、不動産などをゲームの要素として、会社の初期状態から目的に沿って事象を発展あるいは進展させるゲームです。また、ロールプレイングゲームとは、プレイヤーが役割を演じることでダンジョンの攻略といった目標の達成を目指すゲームです。
この2つのどちらがより合っているかを考えると、会社の経営ではなく一般の人がSDGsを達成するために、具体的に何をすればいいかがこのゲームの利用目的なので、ロールプレイングゲームがより向いていると考えます。また、双六型シミュレーションWebゲームにすると多くの年齢層に対応できると考えます。
その理由として、社会経験の薄い子どもの場合、どのような環境問題があるか、何をすれば問題の解決につながるかが分かっていない状態であるにも関わらず、環境改善に必要な行動をとることは難しいと考えるからです。その点、双六ならば、子どもでもルールが理解しやすく、サイコロで止まったマスの行動をおこなっていくことで複数の目標のつながりを実感でき、ゴール地点で最終的にどうなったかが分かりやすくなります。
また、SDGsの達成には個人の努力だけでは不可能であり、複数人の団結した努力が必要になります。協力しないと達成できないミッションを用意することで複数人の努力が必要なことも実感できます。さらに、Webゲームにすることで、まとまった時間の取りづらい社会人であってもスマホ1台で隙間時間にどこでもプレイすることが可能になります。
先行研究の方法と結果
九州大学による先行研究[1]によると、シリアスゲームを行うことで環境意識・行動、ゲームリテラシーともに実験条件との交互作用が見られた。具体的には、個人の意識の高さや行動力によって、意識は高いが行動が伴っていない群にはシリアスゲームがより有効であり、意識は低いが行動が伴っている群には授業が有効であるという結果になりました。
また、早稲田大学による先行研究[2]によると、あらかじめ決めた部分のみを代表者2名のみにプレイさせて振りかえりをさせて、他生徒はスクリーンで観戦する形式をとりました。この実験後に、ゲーム内でやった内容を実際に全員でやってみることで、20%以上の上昇が見られました。また、小中高校で同様の内容だったため、年齢に応じてより深い内容が必要という回答も得られました。
先行研究を踏まえて
上記を踏まえると、ただ単に双六型シミュレーションWebゲームをプレイするだけでは、最大限の貢献ができる訳ではないことが分かります。最大限の貢献を行う為には、環境意識やゲームリテラシーが高い人を選別して行い、シリアスゲームをやった後に実践学習や振り返りを行うことが、必要であると考えられます。
まとめ
このように、シリアスゲームを用いることで、SDGsについて考える機会を提供することができます。ただし、このゲームをやるだけでSDGsに貢献ができる訳ではありません。また、ゲームを使用することによってこれらのことを達成するのが比較的容易にはなりますが、それは、これらのことは必ずしもゲームを使用しなければ達成できないというわけでも、達成するためにゲームを使用しなければいけないというわけでもありません。
このゲームは、あくまで考えるきっかけを与える目的のゲームです。SDGsの貢献に最も大事なことは、「今自分がこの場でできることはないのか」、「これから自分がどんなことに気を付ければいいのか」という知識を自らの手で集めて、その知識をもとに行動を起こすことです。環境問題を改善するために自分一人からでもできる行動を「自分一人がやってもやらなくても大差はない」と考えるのではなく、「何万人もの人がやっている行動に参加する」と考えるようにすれば、一人ひとりの貢献度も上がり、結果として地球にとってとても大きな貢献になっていくのだと思います。