原子力発電はなぜ続くの?

  • 更新日:2022/12/29

所属:跡見学園女子大学

インターン生:I.Mさん

原子力発電はなぜ続くの?の写真

2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災により多大な被害を受けました。大きな揺れ・津波・火災そして原子力発電所の水素爆発で放射線物質が大気中に放出されました。今回の震災から原発に対しての危険意識が改めて高まりました。ですがなぜ原発を止めることなく、今もなお続けているのでしょうか。

原子力発電とは

火力発電のボイラーを原子炉に置き換えたものです。この中で核分裂を起こしてつくった熱で水を水蒸気に変えます。次にタービンという、流体が持つエネルギーを回転エネルギーに変換をする機械を使って電気を作っています。

燃料はウランで、天然ウランの中に0.7%程度しか含まれていないウラン235が中性子を吸収すると核分裂が起こり、同時に大きな熱エネルギーが発生します。その際にウラン235の原子核から2〜3個の中性子が飛び出し、連鎖的に核分裂が起こります。

日本は2021年現在、世界で5番目に電気消費量が多い国です。原子力発電は1度でも核分裂をすると大きなエネルギーが次々と起きるため、電気の使用量が多い日本には効率がいいことはとても重要になります。しかし、なぜ原発は他の発電方法と比べ賛否両論が多いのでしょうか。

メリット<原子力の3E>

①安定供給(Energy Security)

燃料に対してエネルギー出力が圧倒的に大きく、ウラン燃料は再処理することで再び燃料として使用できます。そのため、数年に渡り国内保有燃料だけで生産が維持できるほどの準国産エネルギー源になります。

②経済効率性(Economic Efficiency)

燃料価格変動の影響を受けにくく、価格が高騰しても国内保有量で賄えるほど運転コストが低廉していると言えます。

③環境適合(Environment)

運転時にCO2(二酸化炭素)を排出しないためライフサイクルCO2も抑えられます。*東日本大震災後、これからのエネルギー政策の基本原則3Eに大前提とされる安全性(Safety)のSが追加され「3E+S」になりました。

デメリット

事故が発生すると他の発電と比べものにならないほど深刻な被害を出し、被害を回復することも大変になります。放射線物質が漏れ出る可能性はゼロではないため、放出されてしまった場合に、人は空気、土壌、体表から放射線を受けることがあります。これを外部被ばくと言います。また、呼吸や放射線物質を受けた空気中や土壌から間接的に水や食べ物に入ったものを口にしてしまうこと内部被ばくと言います。

廃炉や解体する際は莫大な費用がかかります。資産エネルギー庁の試算によると小型炉(50万kW級)では360〜490億円程度、中型炉(80万級)は440〜620億円程度、大型炉(110万級)570〜770億円程度かかるとされています。また、事故が起こった原子炉はよりコストが上がるため、東京電力福島第一原発の場合は22兆円かかると言われています。

発電に使った核燃料ウランは先ほど述べた通り再処理をすることで95%が再利用できますが、5%は再利用できないため廃液になります。しかし、この廃液の最終処分方法がまだ確定していません。現在は一部については焼却処理が行われていますが、結果的に処理で発生した焼却灰も含めて未処理のまま廃棄物貯蔵施設で保管されています。

<高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター内>出典:日本原燃株式会社

原子力発電は、地球温暖化・気候変動が国際社会で大きな議題となった際に、CO2を発生させない発電方法として注目されてきました。東日本大震災で起きた事故以降、再稼働が認められるにはとても厳しい審査を乗り越えなければいけません。その時不足した電力供給を補ったのが火力発電でした。火力発電は大量のCO2を排出し、化石燃料価格が高騰する可能性があるため今後も電力の安定した供給が確保できるかわかりません。そのため、事故の影響を考えつつも再稼働をすべきか否かで議論になっているのが現状です。

放射線・放射能・放射性物質について

下記の図のように電球で例えると、出ている光が放射能、光を出している電球事態が放射性物質で光を出す能力が放射能になります。

出典:環境省 放射性物質汚染廃棄物処理情報サイト

放射線とは目に見えない粒や光の仲間と言われているものです。人は普段から大地や宇宙、食べ物や空気から放射線を受けており、様々な物の物質を通り抜け、性質や状態を変える性質を持っています。普段から受けている放射線は基本的には害はなく、レントゲン検査や医療器具の減菌、タイヤの性能強化にも使われています。様々な種類がありα(アルファ)線・β(ベータ)線・中性子線が有名で、その種類によって通り抜けられる物に差があります。 放射能とは放射能を出す能力のことで、放射線物質は放射線を出す物質のことです。

先ほどX線(放射線)のレントゲン検査にも使用されていると紹介しましたが、被ばく量は少ないため安心して受けることができます。健康診断などで撮影する機会が多い胸部X線の撮は0.06ミリシーベルトの線量を受けています。しかし、人は200ミリシーベルト以上になると身体の影響が出てくると言われていますが、100ミリシーベルト以下の場合、身体への影響は確認されておらず特に問題はないそうです。

安全を確保する

原子力発電所は安全を確保するために「(原子炉を)止める、(燃料を)冷やす、(放射線物質を)閉じ込める」と言う考えのもと設計されています。まず、大きな地震などの緊急時には制御棒が素早く挿入することで原子炉は緊急停止します。次に、燃料が高温になって炉心が空焚きの状態にならないよう、大量の水を炉内に送り込んで冷却します。そして、事故があっても放射線物質が外部に出ないよう閉じ込める防壁を作ることで安全が確保できると考えられていました。

東日本大震災以降、安全対策が強化されています。自然現象に対しては耐震強化や防波壁・防潮堤の設置、扉の水密化をし、設計基準強化としては外部電源の2ルート化といった様々な対策がされました。他にも様々な具体的に想定したシビアアクシデントに対しての対応を細かくマニュアル化することで柔軟な対応がしやすくなりました。

廃棄物貯蔵施設でも近年耐震強化が行われました。しかし、私は廃棄物貯蔵施設が青森県だとしても防波壁などの津波対策をするべきだと思います。日本は日本列島という島国であり、4つのプレートに囲まれています。また、地震の起きやすい場所と言われている噴火するかもしれない火山も110以上あり、2010年〜2019年の10年間で263回も地震が起きている事実も既にあります。

他にも近い将来発生のする可能性の高い大規模地震として、首都直下地震をはじめとした南海トラフ地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、中部圏・近畿圏直下地震が懸念されているため、日本はいつ何が起こるかわかりません。青森県にも津波が来る可能性もゼロではないでしょう。そのため、今のうちからできる対策を念入りに行うべきだと考えます。

東日本大震災で起こった事故

2011年3月11日太平洋側にある5ヶ所の原子力発電所は大きな揺れに襲われたため、運転が全て止められました。東北電力HD(株)東通原子力発電所、東北(株)女川原子力発電所、東京電力(株)福島第一原子力発電所と福島第二原子力発電所の5つです。止めるところまでは良かったのですが、福島第一原子力発電所は大きな津波によって部屋が水浸しになりポンプや電源が壊れてしまいました。そのため原子炉や使用材燃料プールが冷やせなくなったことで、3月12日の15時、14日の11時、15日の6時の3度にわたって水素爆発が起こり放射性物質を外部に放出させる最悪な事態が引き起こされました。

経済産業省原子力安全・保安院が2011年8月26日に公表した東京電力福島第一原子力発電所と広島に投下された原子爆弾で大気中に放出された放射線物質の種類別比較の資料により、とてつもない量の放射性物質が放出されたことがわかりました。半減期が約30年の放射線物質セシウム137で比べると原爆が89テラベクベル(テラ=1兆)に対し、原発では1万5千テラベクベルと約168.5倍放出されていることが明らかになりました。他にも、ヨウ素131が原発6万3千テラベクレルに対し、原爆が16万テラベクレルと約2.5倍放出されていることがわかり、世間を騒つかせました。

もともと原子力発電所の設置に協力した自治体は迷惑料として政府から交付金を受け取っていました。資源エネルギー庁のモデルケースによると、出力135万kWの原子力発電所を新設する場合は運転開始までの10年間で約481億円もらえるそうです。運転開始後は40〜80億円で推移しますが、莫大な金を自治体は得られ地元のために様々な計画を立て盛り上げることができるようになります。

過疎化が進んでいる日本の地方にとっては、とても魅力に感じると思います。人は自然現象を予測することは現状不可能のため当時の原子力発電所を受け入れる選択をしたのが悪いとも、政府や電力会社が安全性は十分だと考えていたのが悪いとも言うことはできません。再稼働することになったら、2度と同じことを繰り返してしまわないようにしっかりと見直し改良し続けていくことが重要だと思います。

<日本の原子力発電所の状況> 出典:経済産業庁資源エネルギー庁

福島第二原子力発電所が逃れた理由

東日本大震災が起こった時、福島第二原子力発電所も福島第一原子力発電所同様に大きな地震と津波の被害を受けました。先ほど述べた通りどこの発電所も原子炉を止めることができたのですが、ポンプや電源の故障により次の燃料を冷やすことができず水素爆発が起こったのが第一原子力発電所でした。第二原子力発電所は被害を受けた後も外部電源・交流電源設備が使用可能であったため原子炉を冷やすことができました。

しかし、海水ポンプは第一原子力発電所同様に損傷してしまったため原子炉からの除熱を行うことができなくなってしまいました。そのため、臨機応変に対応し原子炉隔離時冷却系や復水補給水系などの海水ポンプがなくても可能なものを活用することで圧力容器や格納容器内の冷却を進めていたのです。その間に海水ポンプのモーター交換や仮設ケーブルの敷設を行うことで海水ポンプを復旧し前号機を除熱・冷温停止することに成功しました。従業員の迅速な対応により、これ以上の被害を防ぐことができたと言えるでしょう。

何かあった時は、迅速に適切な判断力を持って行動できるか、今できることをしておくことが重要になると伝わってきます。私たちも実際に緊急事態が起こった時は一人一人の迅速な判断が今後の未来を左右することになると改めて自覚し、今できることをしていくことが大切になります。

他の発電方法との違い

日本で採用されている発電方法は6種類あります。原子力発電、火力発電、水力発電、風力発電、バイオマス発電です。仕組み、メリット・デメリット、発電コスト、設部利用率と稼働年数をそれぞれの観点から表で比較してみます。

また、原子力発電所の発電量は他の発電所に比べ必要になる面積が小さくて済むのも利点です。やはり日本は消費電力が多いためトータルで見て現在1番魅力に感じるのは原子力発電所になると思います。

いずれは原子力発電への依存が減ることを期待している人は多いと思います。そのためには大前提として日本全体が節電を再度今まで以上に心がけるにかける必要があります。また、原発への依存を減らすためには、夏や九州・沖縄地方は太陽光発電を、山が多い場所、高低差のある土地は水力発電やバイオマス発電を活用するなど日本の四季や土地を生かしていくのも良いのではないでしょうか。

まとめ

現在日本が依存している原子力発電は、原料が手に入りやすく、CO2の排出量も火力発電に比べ少なく済みますが、事故が起きた際のリスクがとても大きいのが欠点です。東日本大震災によって原発反対派が多い中、原発を続け、再稼働にそなえているのは現在の日本の消費電力では電力が足りず、必要になっていることが原因です。少しでも依存を減らすためには、一人一人が節電を心がけ実行していくことが大切です。また、日本はこの先何が起こるかわからないため、個々がしっかり災害に備え、同じような事故が二度と起こらないよう努力をし続けることが不可欠です。

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