テレワークは環境にも良い?

  • 更新日:2021/10/29

所属:明治大学

インターン生:H.Aさん

テレワークは環境にも良い?の写真

最近では、新型コロナウイルスの影響で、感染予防のための在宅ワークが推奨されています。長時間の在宅ワークに疲れた...という方も多いかと思います。 一方で、より良い働き方を見直す動きも高まっています。実は、テレワークが環境や人にも良いとされる考え方をご存知でしょうか? 今回は、テレワークが環境と人にもたらす影響について考えていきます。

テレワークとは?

日本テレワーク協会によると、テレワーク(「tele=離れたところ」「work=働く」の造語)とは、ICT技術を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方です。テレワークには、様々な種類があり、自宅で働く「在宅勤務」、電車や飛行機などの移動中に働く「モバイルワーク」、企業や一般のサテライトオフィスやコワーキングスペースを活用する「サテライト/コワーキング」、リゾートなどで働く「ワーケーション」など、それぞれの環境に合った多様な働き方が推進されています。

環境への良い影響

CO2排出量の削減

まず、会社へ通勤する代わりに在宅勤務などを行うことによって、電車や車、飛行機などでの移動に伴うCO2の排出量を削減できることがわかっています。日常的な通勤や海外・国内の出張などでは、交通機関を利用することがほとんどです。この移動による環境負荷が軽減できる点は、大きなメリットと言えると思います。(参考:テレワークの効果・効用 – 国土交通省)

また、総務省の調査によると、テレワークを実施したオフィス内では、照明やエアコン、ICT機器の利用を縮小することで、テレワークによる電力消費量を考慮しても、全体で14%の電力消費量を削減できると言われています。また、これによって社員は自分の席を確保する必要がないため、オフィスのあり方も変わってきます。オフィス内を自由に活用できるフリーアドレス化を行うことで、さらなるCO2削減や、コスト削減にも効果が発揮されるそうです。(環境省 平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書)

このように、テレワークは移動の縮小やオフィスでの電力消費量削減によって、CO2の削減に大きな効果があると言えそうです。

出典:総務省「平成22年度次世代のテレワーク環境に関する調査内容」

ペーパーレス化の実現

また、テレワークに伴い、仕事で必要な書類などを電子化することで、社内での書類の提出や押印のためだけに出勤する必要がなく、業務効率化にも繋がります。さらに、ペーパーレス化は、環境保全にも効果があると言われています。佐賀県では、新型コロナウイルスが流行する前に、在宅勤務の導入に伴うペーパーレス化を行い、2014年度は2012年度と比べて14.4%の紙経費の削減につながったという試算が出ているそうです(テレワークの効果・効用 – 国土交通省)。紙媒体の電子化は以前から声かけがされてきましたが、テレワークはそれをさらに促進させるきっかけとなりそうです。

その他(災害時リスク・ゴミ排出削減)

そのほかにも、間接的に環境に良い影響を与えると言われる点はいくつかあります。例えば、災害時にテレワークを可能にしていたらどうでしょうか。どこかの地域で自然災害が起こり、オフィスで働くことができない状況になってしまっても、テレワークを導入していれば業務を継続することができます。日本は地震や豪雨の多い災害大国ですが、テレワークを導入することで業務の継続もでき、オフィスを再建しなくてはならない心配も薄れるのではないかと思います。

また、英国の非営利団体WRAPによると、テレワークをする人はオフィス勤務の人よりも、テイクアウトではなく自炊する傾向があるそうです。在宅ワークでの食事のテイクアウトには、ゴミを増やす可能性があるため注意が必要ですが、パッケージによる環境負荷の削減だけでなく、紙コップでコーヒーを飲む代わりにマグカップを使用するなど、ゴミ削減につながる効果はあると言えそうです。

人への良い影響

環境に良くても、自分たちにはあまり関係がないのかな、と考える方も多いのではないでしょうか。しかし、テレワークは、環境だけでなく、企業や人にとっても有利なことが多いのです。

生産性、効率性の向上

テレワークは、業務の生産性や効率性に良い影響を与えると言われています。総務省が平成29年に公表した通信利用動向調査の調査によると、テレワークの導入で1社あたりの労働生産性が1.6倍に上昇することがわかっています。また、テレワーク協会によると、勤務に集中できる時間も長くなるそうです。オフィスでの勤務時には、急な打ち合わせや訪問などで作業の中断を迫られてしまうことが多くなりますが、在宅勤務では比較的長時間作業に集中できることがわかっています。

出典:総務省「テレワークの最新動向と総務省の政策展開」出典:総務省「テレワークの最新動向と総務省の政策展開」

出典:平成17年度「在宅勤務実証実験」(社団法人日本テレワーク協会)の調査結果

ワーク・ライフ・バランスの向上

そして、忘れてはならないのが、テレワークによるワーク・ライフ・バランスの向上です。テレワークの実現によって、いつ・どこでも仕事ができるようになり、通勤時間の時間も確保する必要がなくなります。そのため、仕事とプライベートの両立が可能になり、好きなことに使う時間にも余裕ができると考えられています。通勤のため首都圏に住んでいた家庭が、リモートワークで自然の多い田舎に引っ越しする事例もよく耳にするのではないでしょうか。

また、介護や子育てとの両立、女性の雇用にもメリットがあると言われています。従来の働き方では、誰かが家にいて子どもの面倒を見る必要がある人や、介護のために仕事を辞めなくてはならない人が多くいました。特に女性は、結婚を機に退職を考える人や、パートタイムのみで働く人が多い環境でした。しかし、テレワークを導入することで、働きながら自宅にいるという選択が可能になるため、誰かが仕事を辞める決断をする必要もなくなります。さらに、フレックスタイム制を導入することで、自身の生活環境に合わせた働き方が可能になります。テレワークは女性だけでなく、多くの人の働き方を自由にする特徴があると言えるのではないでしょうか。

環境経営に取り組む企業への評価

環境対策は自然には優しくても、コストが大きく利益が見えにくいため、企業利益にとって不利なイメージがありますが、実はこの風潮が変わってきているようです。大手信用調査会社の調査によると、環境省が策定した日本独自のマネジメントシステムであるエコアクション21に取り組む企業は、実施していない企業よりも企業としての評価が高いそうです。環境に優しい会社と聞けば、そのほかにおいても優しいイメージを抱くのは理解できると思います。(環境省 働き方改革とCO2削減等の両立に向けて)

企業の成長に不可欠なESG投資

持続可能な社会、環境への取り組みは、企業イメージだけでなく、お金の面でも有利になることが明らかになっています。近年関心が高まっているESGとは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の要素を考慮した企業の取り組みのことです。そして、資本家や企業が投資をする上での新しい評価基準として、このESG投資という考え方が広まっています。このことからも、環境や社会への配慮は、企業にとって経済面でも不可欠になってくることは明らかだと言えそうです。テレワークが環境に優しいとわかれば、これも一つのアピールポイントとなるのではないでしょうか。

一方でデメリットも…

精神面・コミュニケーション面

一方でテレワークの際に悩ましいのが、コミュニケーションの方法です。コロナ禍ではビデオ会議システムなどが導入され、対面でなくても電話やメール、ビデオ会議などでミーティングや打ち合わせを行うことが可能ですが、通信環境の不安定さやリモートならではの意思疎通の難しさを感じることは多いのではないでしょうか。相手に伝えたいことが伝わらず、相手の言っていることがイマイチ理解できないことは、業務の支障や誤解による人間関係の悪化、精神的なストレスにもつながります。

また、長い時間自宅に閉じこもってデスクワークを行うことは、精神的にストレスを感じるのではないでしょうか。通勤時間がないからこそ、外を歩いてリフレッシュしたり、休憩時間に同僚と世間話をする時間も取りづらくなることは事実です。

精神面でのストレスの解消方法としては、在宅勤務以外に、コワーキングスペースを活用したり、ワーケーションを行ってみるのはいかがでしょうか。先述したとおり、テレワークには在宅勤務以外にも、様々な場所での勤務方法が提案されています。自宅にこもっているとストレスが溜まっていて集中できないという方も、たまには場所を変えて働いてみることで、新鮮な気分を味わうことも可能だと思われます。また、最近ではキャンプ場やホテルなど、観光気分を味わえるような場所でワーケーションのサービスを提供している施設も多くなっています。新型コロナウイルスへの感染の心配がある場合も、自宅近くのホテルや、人が少なく自然豊かなキャンプ場などを利用することで、不安を軽減することができるのではないでしょうか。このようにして精神的なストレスを解消することで、仕事においても生産性の向上に役立てられるのではないかと思います。

テレワークの導入が難しい業種

また、なかにはテレワークを導入したいけど、自分たちの業種には難しい…という方も多くいます。パーソル総合研究所の調査のとおり、テレワークの実施は業界によって大きな差があることがわかります。情報通信業は群を抜いて実施率が高いのに対して、モノや人に直接関わる運輸業や郵便業、医療や介護などの業種は、実施率が非常に低くなっています。全体的に見ても、調査が行われた2020年時点でテレワークの実施率が半数以下の業種がほとんどだったことを考えると、まだまだテレワークの普及には課題があると言えそうです。

出典:中部経済連合会「テレワークの普及状況と課題等に関するレポート 」

しかし、テレワークの導入が難しくても、環境に配慮した行動が他にないとは限りません。環境省が作成した「働き方改革によるCO2削減効果算定ツール」では、テレワークだけでなく、以下のような取り組みメニューが提案されています。

1.通勤方法を変更する(車→鉄道など)

2.テレワーク・自宅作業を実施する

3.残業時間を減らす

4.オフィスでできる取組にチャレンジする

・冷暖房を適切な温度設定にする

・照明を間引きする、LEDに交換する

・給湯器の使用をやめる

・飲料自動販売機の利用を抑える

・エレベーターの使用を控える

・ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)実現に向けて、窓を断熱化する

いかがでしょうか?テレワークはできないけれど、これなら導入できる、という取り組みが多くあるのを確認できたのではないかと思います。このCO2削減効果算定ツールは、実施した取組内容を入力するだけで、その効果を自動算出し、CO2削減効果を「見える化」してくれるそうです。テレワークだけではまだまだ環境負荷に対しての課題がありますが、他の方法を組み合わせていくことも効果的なのではないかと思います。

デジタルの使用による二酸化炭素の排出

そして、環境に良いとされるテレワークですが、デジタル化に伴って、通信やデジタル機器の使用によるCO2排出量の増加も危惧されています。例えば、通信分野では日本で2030年には現在の総電力の約1.5倍、2050年には現在の約200倍の電力をICT関連機器だけで消費するおそれも指摘されているようです。移動がなくなってCO2の排出量が減少しても、デジタル機器の使用でまた排出量が増えてしまうようでは、環境負荷を下げる効果があるとは言えません。そのため、自身の使っているデジタル機器がどれだけCO2を排出しているか監視する機能や、CO2の利用を削減できるデジタル機器の開発など、環境負荷の軽減に向けた対策が必要だと言えます。

すでに、この問題に向けた企業の取り組みも始まっています。例えば、株式会社Zrekでは、企業や個人が利用するデジタル分野における毎月の二酸化炭素排出量を算出し、デジタル状のカードを発行してサイトに掲載できるようなサービスを行っているそうです。まずは自分たちがどれだけの二酸化炭素を排出しているか認識し、削減に向けた意思表示をしていくことが非常に大切だと思われます。 (参考:https://lp.z-rek.com/)

会社での使用電力が減る分、自宅の電気代は…?

そして、テレワークの導入で心配なのが、自宅での電力使用料です。先ほど、在宅勤務はオフィスでの電力使用料を大幅に削減できるという話がありましたが、その分自宅で使用する電気代は増えてしまう不安は大きいのではないでしょうか。オフィスでは多少電気代がかかっても、直接の負担は小さいですが、自宅の電気代は家計に直結するため、負担が大きいと考える方も多いと思います。また、環境の面から見ても、自宅での電力消費を抑えた方が、環境負荷の軽減につながると言えます。

そこでできることは、地球やお財布に優しい電力の使い方を考えることです。2016年の電力自由化に伴い、電気の小売業への参入が自由になり、私たちは自身のライフスタイルや価値観に合わせて、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになりました。しかし、いざ「自由化」と言われると、どう選んだら良いのだろう、と迷う方も多いのではないかと思います。そこで、節電や環境への配慮を評価軸として、電力会社を選んでみるのはどうでしょうか。現在では、太陽光発電などの再生可能エネルギーを中心に作られた電気やCO2排出量を抑えた電気を提供する環境配慮重視の電力会社、そして大手電力会社よりも電気代が安くなるプランを提供する新電力など、それぞれの特徴を持った新しい電力会社が登場しています。今の電気代が高すぎる、もっと環境に配慮した生活を送りたい、と感じている方は、自分に合った電気を探してみるのも良いのではないでしょうか。

最後に

ここまでテレワークが与える環境と人への関係について考えてきましたが、良い影響を与える部分もあれば、悪影響を与える部分もあり、まだまだ工夫が必要な側面も多くありました。しかし、コロナ禍において、生活環境の変化を迫られるなか、初めて積極的に採用されたテレワークは、より良い働き方について、私たちに新たな視点を与えてくれたのではないでしょうか。

環境面や働く中での問題点はありますが、システムの整備やルールの策定によって改善できる部分は多いように感じます。テレワークだけでなく、大切なことは、生きていく中で環境にも人にも優しい働き方を追求していくことだと思います。働いていく中で、自分や環境に合った働き方を見つめ直してみるのはどうでしょうか。

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