食べ物の3分の1が捨てられている!?食品ロスの現状とこれから

  • 更新日:2021/10/29

所属:武蔵野大学

インターン生:Y.Rさん

食べ物の3分の1が捨てられている!?食品ロスの現状とこれからの写真

食べ物の3分の1が捨てられている!?食品ロスの現状とこれから みなさんは家庭で捨てる食品ロスの量をどれだけ気にしたことがあるでしょうか。量が多くて食べ残してしまったり、つい買い物をしすぎて期限を過ぎてそのまま捨ててしまったりということがあると思います。しかしそれは世界規模で見ると深刻な問題になりつつあります。本記事では、食品ロスの問題点や解決していくためのプロセスを一緒に考えていきましょう。

食品ロスとは

食料ロスとは、もともと人の消費向けに生産された食料の量(乾物質量)あるいは栄養価(品質)が減少することを言います。つまり、食べられる状態であるのにも関わらず捨てられてしまう食品のことです。食品ロスは、その発生源により事業系と家庭系の二つに分けられます。農林水産省と環境省が推計したデータによると、2017年度に発生した食品ロス量は約612万tで、その内訳は事業系が328万t、家庭系が284万tでした。以下、この二つの発生源の具体例です。

事業系

・飲食店において、客が食べ残した料理を廃棄

・小売店において、大量発注した恵方巻きやクリスマスケーキが売れ残り、廃棄

家庭系

・一回に作る量が多くなってしまい、食べ切る前に廃棄

・安売りしていたのでまとめ買いしたものの、使い切る前に廃棄

私たちが普段から廃棄しているのは家庭系の食品ロスだということがわかります。一方の事業系の食品ロスの現状は、2030年までには2000年の食品ロスの量の半分に削減するという目標を立て、年々減少傾向にあります。これは、SDGsのターゲットの一つにある、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」という目標(ターゲット12.3)をもとに作られた目標です。食品ロスの削減を通じてこのターゲットを達成するには個人、事業者、自治体、NPO法人など、さまざまな方面からの協力が欠かせません。

出典:農林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」

では、日本や世界など広い目で見たときに、現状どれだけ問題視されているのか、より詳しく見ていきましょう。

日本と世界の食品ロスの現状

2017年の1年間に日本全体で排出された食品ロスは612万tにもなり、これは東京ドーム5個分の容積とほぼ同じ値です。日本人一人当たり1日にお茶碗1杯分の量を捨てている計算になります。また日本は食料自給率が低く、約62%の食料を海外から輸入しているのにも関わらず、このように大量に食品ロスを生み出してしまっています。一方、世界規模で見ると、食糧生産量の3分の1にあたる13億tの食料が毎年廃棄されています(FAOの報告書による調査)。

では、なぜこのように大量の食品ロスを生み出してしまっているのでしょうか。また、それを解決していくためにはどのような対策が必要なのでしょうか。

食品ロスの原因とは

食品ロスが大量に発生してしまう原因は、実は先進国と発展途上国とで違いがあります。それぞれで対策の方法が異なるため、ここでそれぞれの原因と、解決するための対策法を紹介します。

先進国で食品ロスが発生する理由と必要な対策

理由

まず挙げられるのが、生産段階で需要を超える量の食品を生産してしまうことです。しかしこれは、突然訪れる異常気象や凶作によって、農業や漁業で生産する量の微調整が難しいといわれています。

次に、加工段階や流通・消費段階での品質の問題での廃棄があることです。先進国は特に寡占化していない産業に関しては、企業や業界内での競争も激しくなるということもあり、よりよい品質を目指すがゆえに「外観品質基準」に満たない食品は廃棄されてしまうという現状があります。それらはリユースやリサイクルに回すという手段もありますが、さらに加工を加えるのには余分な費用が必要になってきます。これにより、再利用するよりも捨ててしまおうということになってしまうのです。

さらに、顧客目線で見たときに、先進国の人々は金銭的な余裕があることが多いため、無計画に食品を買ったとしても捨てて大丈夫という思考があるのも問題です。/p>

以上3つの理由から、先進国では大量の食品ロスが出てしまうのです。

対策

では、解決していくために必要な対策とは何なのでしょうか。まず一つは、外観品質基準に満たない食品を購入する顧客も存在するかもしれないので、コストを下げて販売することや、加工して外観に関係なく食べられるものにリサイクルすることです。これによりもともと外観が悪くて捨てる予定だったものも購入者の手に届けることができます。

次に、小売店舗では過剰に商品を陳列せず、マーケティングを行い、需要に合う品数を揃えることです。需要を超える量を生産してしまっていることが大量廃棄に繋がっているため、店舗ごとに必要な量を取り寄せることが重要になっていきます。

そして消費者側の対策としては、冷蔵庫の中身を確認し、利用目的を考えてから必要な分だけを購入するということです。また、多く買いすぎてしまった際も、冷凍庫などを用いて正しい保存方法で商品を長持ちさせることも大切です。このように、原因に直結した対策方法があるため、実践していく必要があります。

発展途上国で食品ロスが発生する理由と必要な対策

理由

一つ目として、発展途上国での食品ロスは生産や加工段階での廃棄が圧倒的に多いとされています。収穫技術の問題で生産しても収穫しきれず腐って廃棄することになってしまいます。

また二つ目に、保存設備や加工設備が不足していることから貯蔵や加工できず廃棄しなければならないものも出てきてしまうことも挙げられます。輸送手段が整備されていないことから、生産しても過剰となってしまい、これもまた廃棄が発生する原因となってしまっているのです。

さらに、流通段階での廃棄も起こります。非衛生的な店舗であることから食品がもたないこと、マーケティングシステムが不十分で、必要な場所に必要な量の食品が行き渡らず、その分が余ると食品ロスとなってしまうこともあります。ただ消費者の廃棄も含め、こちらはそれほど多くありません。

対策

このように、発展途上国では先進国とは違い、技術や施設がまだ整いきれていないがために、結果として食品ロスを生むということになります。では、どのような対策をしていく必要があるのでしょうか。途上国では農業に対する技術支援やインフラ、保存設備、加工施設などの整備などを行うことが重要になってきます。生産段階、加工段階で食品ロスが出ている理由は明確であるため、そこを改善することが食品ロスを改善する近道です。ただし食品が市場に多く出回るようになれば、そこでの食品ロスが増える可能性があるのでマーケティングシステムの構築も必要になります。

消費者が食品を捨てる理由

食品ロスが削減されない原因の一つとして、余分に食品を購入してしまうということが上がりましたが、具体的にどういった理由で捨てることになるのか、消費者庁が徳島県で食品ロスの消費者の意見に関する調査がありました。それが以下の通りです。

出典:消費者庁「平成29年度徳島県における食品ロス削減に関する実証事業の結果の概要(ポイント)」より

上のグラフから、購入した食品をそのまま捨てるよりも、調理した後に食べ残したケースのほうが多いことがわかります。今後は、適切な量を料理し廃棄物を出さないようにしていくことが大切です。

なぜ食品ロス削減が必要なのか

では、ここまでで食品ロスの概要が理解できたところで、なぜ食品ロスを削減していく必要があるのでしょうか。たしかに、食品ロスが増えてしまうことは経済的にも非常にもったいないことではありますが、その「もったいない」という言葉が世界中に浸透していった要因が、今回の食品ロスを削減していく必要がある理由に繋がります。それは、食糧難による飢餓に苦しむ人々を減らしていくためです。国連食糧農業機関(FAO)による調査によると、2018年時点で9人に1人である約8億2,100万人が飢えに苦しんでいます。これは、ほとんどが主にアフリカなどの発展途上国に住んでいる人が該当していて、世界的に大きな問題になっています。

ではこの問題は、すぐには解決できない深刻な問題なのでしょうか。そんなことはありません。実は、日本で毎年排出される食品ロスの量は、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料援助量よりも多いというデータが残っています。つまり、世界規模で見れば、食品ロスを全世界で削減していく努力をすれば解決できるような問題なのです。よって、問題解決のために具体的・かつ現実的な施策に取り組んでいく必要があります。では、今日本や世界で行われている施策を見ていきましょう。

食品ロスを削減するための施策

国連や各国政府は、食品ロス削減に向けて具体的な数値目標を掲げ、効果的な方法を探っています。食品ロスや貧困、地球環境の悪化に関して国際的な関心が高まる中、2015年の国連サミットでは、食料の損失・廃棄の削減などを目標とする「持続可能な開発のための2030年アジェンダ」が採択されました。2030年までの達成を目指す国際社会共通の持続可能な開発目標(SDGs、Sustainable Development Goals)として17のゴール(目標)と169のターゲット(達成基準)が示され、各国や地域で積極的な取り組みが始まっています。つまり、食品ロスも解決のために世界的に注目されているのです。

日本での取り組み

日本には農林水産省や環境省、消費者庁だけではなく、都道府県などの各自治体でも食品ロスを削減するための取り組みが行われています。今回は、その中からいくつか取り上げていきます。

食品ロス削減月間の啓発ポスターの作成(消費者庁・農林水産省・環境省共同)

食品ロス削減推進法(正式名称:食品ロスの削減の推進に関する法律)を定めました。この法律では、食品ロスの定義や施策による食品ロス削減の推進、基本的な方針や施策などが盛り込まれています。これは食品ロスの削減に関して、国や地方自治体などの責務などを明らかにしつつ、基本方針の策定や食品ロス削減に関する施策の基本事項を定め、総合的な推進を目的としているためです。

ここでは、毎年10月を食品ロス削減月間、10月30日を食品ロス削減の日と定めています。食品ロスの削減に向けた取り組みを広げていくため啓発資材の提供、イベントの開催などを実施しています。また、・啓発のため、食品ロス削減国民運動のロゴマークである 「ろすのん」を用いた啓発ポスターを作成し、地方公共団 体等に配布しています。食品ロス削減国民運動のロゴマークで、食品ロスをなくす(non)が命名の由来です。

出典:消費者庁「令和3年度食品ロス削減月間について」

出典:消費者庁「令和3年度食品ロス削減月間について」

「めざせ!食品ロス・ゼロ」川柳コンテスト

“食品ロス削減のためには、国民各層がこの問題を「他人事」ではなく「我が事」として捉え、「理解」するだけにとどまらず「行動」に移すことが必要である”ということから、広報・啓発活動もかねてこのコンテストがおこなわれました。詳しくは消費者庁の特設サイトに掲載されています(https://www.no-foodloss.caa.go.jp/senryu_contest.html)。

ここで、このような施策を行っているのに対して、国民の食品ロス削減の意識や認識はどれくらいなのでしょうか。下のグラフは、マイボイスコム株式会社が行った、国民の食品ロスに対する関心度の調査の結果です。「関心がある」「やや関心がある」と答えた人が全体の7割近くいることがわかります。しかし、家庭系の食品ロスの量は過去10年間、ほぼ変わっていません。つまり、食品ロスの認識はあっても、各自治体や国が行っている施策はまだ浸透していないのかもしれません。よって、今後さらに広報や啓発活動を強化していく必要があるのではないでしょうか。

出典:マイボイスコム株式会社「食品ロスに関するアンケート調査」

世界での取り組み

世界では、国際連合世界食糧計画という大きな目標を掲げています。食糧欠乏国への食糧援助と天災などの被災国に対して緊急援助を施し、経済・社会の開発を促進することが目的です。しかしこのほかにも、各国ごとにも施策を行っているところがあります。今回は、その中からいくつか紹介します。

フランスの施策

2016年フランスでは、スーパーマーケットの売れ残り食品を、寄付や飼料に転用することが義務付けされました。つまりフランスのスーパーでは、食品を廃棄することが法律で禁止されたことになります。法律なので、もちろん違反した場合は罰則があります。日本円で約1,000万円の罰金、もしくは懲役2年が課せられます。罰則の重さから、かなり本気度が高いことがわかります。また、EU全体でのフードロスにも注目し、この法案をEU全体に適応させるため、フランス地方議員の1人が、EU各国から74万人分の署名を集めたという話も話題になりました。

オーストラリアの施策

シドニーのスーパーマーケット「OzHarvest Market」では、賞味期限や形が綺麗ではない、いわゆる品質には問題ないけども規格外品になり、廃棄予定の食料ばかりを集めて販売しています。そしてOzHarvest Marketの最大の特徴は、その食品に値札が付いていないことも特徴tr機です。買い手が値段を決めることができ、普通よりも安く買うことができる仕組みです。なお、オーストラリアのフードロスも、年間400万トンもの食料が廃棄されている現状があり、問題を少しでも改善する試みの一環として、慈善事業団体により運営されています。このマーケットの概要は下記に掲載してあります。

https://www.ozharvest.org/ozharvest-market-waterloo/

イギリスの施策

2015年にロンドンでリリースされたアプリ「OLIO」は、ユーザー同士で食品を「おすそわけ」できるアプリです。このアプリのすごいところは利用者が個人だけではないところです。地元の企業や食品店なども利用しており、在庫過多な食品や売れ残りは、廃棄せずに必要な人に届けられる仕組みとなっています。 50カ国以上、180万人以上のユーザーが登録しており、イギリス発ではありますが、アメリカやスウェーデンなどでも活用されています。これも概要を掲載しておきます。

https://olioex.com/

以上の日本と世界の食品ロス削減の施策によって、今後2030年までの削減目標を世界全体で解決していくことが求められるでしょう。

まとめ

ここでは、食品ロスについて掲載しました。これまでと現状と、今後につながる施策について詳しく見ていきましたが、何より大切なことは一人ひとりが食品ロス削減への意識を持ち続けることです。その積み重ねが世界規模の大きな問題を解決していく糸口になるのです。地球の未来を支えていくためにも、今いる私たちが協力していきましょう。

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