再エネ×電力自由化
所属:武蔵野大学
インターン生:H.Mさん
みなさんは「再エネ」という言葉を頻繁に耳にすると思います。近年では、再エネ普及拡大の動きが、自治体の政策や企業の事業活動にも多く反映されるようになり、日本のみならず世界中で活発になっています。そんな再エネですが、「電力自由化」で大きな広がりを見せつつあります。
再エネとは一体どんなものなのか?
では、再エネとはどのようなエネルギーを指すのでしょうか?再エネは、「再生可能エネルギー (Renewable Energy)」の略称であり、太陽光・風力・水力・地熱といった自然界に常に存在するエネルギーのことを指します。特徴としては、以下の3つが挙げられます。
1.枯渇しない
2.温室効果ガスを排出しない
3.エネルギー源が多く存在する
1.枯渇しない
私たちは、電気を得るために、これまで石油や石炭、天然ガスといった化石エネルギー源を大量に消費してきました。再エネ化が進められている現在(2018年度)においても、化石エネルギー源の割合は85.5%を占めています。そんな化石エネルギー源は、当然のことながら限りある資源なのです。石油や石炭も、いつかは採掘し尽くされることになるでしょう。それに対して、再エネは枯渇することはありません。これは、法律上でも定義されており、資源が永久に枯渇しないことを条件の1つとしています。
2.温室効果ガスを排出しない
石油や石炭といった化石エネルギー源を使用しての発電は、燃料が焼却されるたびに大量の温室効果ガスが排出されます。対して、再エネなどの非化石エネルギー源は、エネルギー自身がもつ熱や動力によって発電を行うために温室効果ガスを排出することはありません。
3.エネルギー源が多く存在する
基本的にどのような場所でもエネルギー源が調達可能です。前述のように、再エネは太陽光・風力といった自然エネルギーに由来しています。そのため、日本の豊かな自然やあちこちに存在する特有のさまざまな地形を十分に活かすことができるでしょう。
これで、再エネがどのようなエネルギーを指し、どういった特徴を持っているのか分かっていただけたと思います。では、次はさらに詳しく再エネについて触れていきましょう。
日本における再エネの現状・課題
再エネについて大まかに触れてきましたが、ここからは日本国内の現状や展望などについても踏み込んでいきます。
現状
エネルギーが起源の世界全体でのCO₂排出量は、約322億トン(2018年現在)にまで増加しています。今後、世界や日本が持続可能な社会や持続可能な発展を実現するためには、環境に配慮された再エネの導入は非常に重要であり、必要不可欠だといえます。2015年のパリ協定合意後に発表された「長期エネルギー需給見通し(経済産業省)」によると、2030年度までに再エネの比率を現在の15%から22~24%に引き上げるとあります。
2017年においては、日本の電源構成に占める再エネ比率は約16%で、諸外国と比較すると低い水準に位置しています。ヨーロッパ諸国は、どの国も軒並み30%に達しており、カナダにおいては国内発電量の60%以上が再エネによるものという状況になっています。
その後2020年には、導入拡大により約21%まで増加しており、2030年度目標の22~24%に間近まで迫っています。しかし、それでも諸外国には遠く及んでいないのが現状といえ、さらなる高い目標設定が今後必要不可欠になってくるでしょう。
課題
再エネを普及拡大させていくうえで最も課題とされているのが、従来の発電方法よりもコストがかかるというものです。エネルギー白書(2020)によると、日本における買取価格は太陽光13円/kWh、風力19円/kWhとありますが、諸外国では10円kWhを切る水準になっているところが多くなっています。では、なぜ日本の再エネコストは高いのでしょうか?
小さい市場規模
日本の再エネ市場の規模がまだ小さく、世界レベルまでに拡大できていないことが理由としてあります。太陽光パネルや風力発電機の多くは海外メーカーによって製造されており、海外からすれば日本の市場は魅力的とはいえないのです。物価水準があまり変わらない欧米と比較すると、国際的に取引されているそれらは、日本では約1.5倍高くなっています。さらに、それを設置する工事費も約1.5倍という結果が出ています。そのため、物流やメンテナンスのための投資や、部品・サービス供給などの関連ビジネスの改善・育成は必然的に遅れてしまいます。
先程、再エネは日本の地形や自然に合ったエネルギーであると説明しましたが、立地に焦点を当てて見ていくと課題は残されています。例えば、太陽光はパネルを設置するのに適した広い土地が限られていたり、傾斜地の場合は太陽光が十分に当たる土地が限られていたりといった制約があります。そのため、利用可能な土地を造成して発電設備を設置したり、電気を接続するための電線を整備したりといったコストがかかってしまうのです。こうした場所の制約を解消してくれるものとして、洋上風力発電が挙げられるでしょう。海上のため、陸地よりも風が強く吹き比較的大量の電力を発電できます。さらに、大型風車の導入も可能なため、通常の風力発電よりも効率よく発電することができるのです。
電力系統の不足
さらに、電力を供給するにあたって必要となる電力系統が不足していることも理由の1つとなっています。ここで重要な問題となるのが、電力利用量と発電量のバランスをとるということです。このバランスが崩れてしまうと、東日本と西日本で異なっている周波数が乱れ、発電機などに深刻な影響を与えてしまいます。そのため、常にこのバランスを保つ必要があり、季節によって変化する需給バランスを管理しなければなりません。
しかし、再エネは発電量が天候によって左右されてしまうため、コントロールが難しいという特徴があります。再エネで発電することができない時間帯や時期は、従来の火力発電や水力発電で発電量をカバーしなければいけません。
また、再エネのポテンシャルが高いのは北海道といわれており、広大な土地を生かした大規模な再エネ設備を整備することも可能です。しかし、そこで大量に電気を発電できたとしても、現状それを本州に供給する電力線がその容量に耐えきることができないのです。これは、離れたエリア同士で大容量の電気を融通するのが難しいということを示しています。容量を増やすためにも巨額なコストがかかってしまいます。
ここまで、再エネについて詳しく触れてきましたが、次からは電力自由化と再エネがどのようにつながってくるのか知っていただきたいと思います。
電力自由化とは?
2016年4月1日以降、電気の小売業参入が全面自由化され、すべての消費者が電力会社や料金プランを個人や家庭のライフスタイルに合わせて、サービスを自由に選べるようになりました。これを「電力自由化」といいます。供給側と需要側ともに広く自由化し、より高品質で低価格な電力を安定的に供給することで、市場の自由化を促すことを目的としています。2000年3月に始まり、はじめは大規模工場やデパートなどの「特別高圧区分」においてのみの自由化でしたが、中小ビルや中小規模向上などの「高圧区分」と徐々に対象が拡大していき、2016年の家庭や商店などの「低圧区分」の自由化で全面自由化に至っています。
電力自由化によって拡大する再エネ
電力自由化以来、誰しもが発電事業主として発電事業をすることができるようになり、電気を販売することもできるようになりました。これにより、これまで電力とは関わりがなかった業種からも多くの企業が新規参入してきています。その中には、太陽光パネルを広大な敷地に敷き詰めて発電するメガソーラーといった、再エネを使用した発電設備を所有する電力会社もあります。
電力自由化以前は、各地域で決まった電力会社との契約に限られていました。しかし、自由に電力会社を選択できるようになった現在、東京に住んでいる方が他地域の電力会社と契約することが可能となっています。地域をまたいだ電力供給により、電気の需給バランスの調整がさらに上がることが期待されます。さらに、より多くの再エネ由来電力を受け入れる可能性もでてくるでしょう。
分散型エネルギー
ここで、少し話は変わりますが、みなさんは「地産地消」という言葉を知っているでしょうか?これは、「地元で生産されたものを地元で消費する」という意味を持った言葉です。よく耳にするのは、農産物などの話題でだと思います。しかし、これはそこに限ったものではなく、エネルギー面でも同じことがいえるのです。
発電設備と聞くと非常に大規模なものを想像すると思いますが、ここで焦点となるのは小規模発電です。誰もが電力事業を実施することができるようになったことで、小売電気事業者として認められると、個人でも太陽光パネルを利用して電気を販売することができます。より分かりやすくいえば、地域の小さな河川や水路を活用した小規模水力発電やバイオマスを利用した小規模火力発電などです。この2つに関しては、国内でもさまざまな例があり、実際に地域単位や家庭単位で電力が発電されているところがあります。
こうしたエネルギーの地産地消は、東日本大震災や近年頻発する水害を契機として広まるようになりました。こういった災害を経験したことで、エネルギー供給の制約や集中型エネルギーシステムの弱点が顕在化し、エネルギーの地産地消という1つの打開策のようなものが出てきたのです。これをより正確にいうと、「分散型エネルギー」です。エネルギー供給拠点を増やすことで、地域の特徴に合わせた多様な供給力が生まれ、供給リスクの分散化が図られ、CO₂排出削減を積極的に進めていこうとする風潮が高まるのです。
そして、分散型エネルギーの仕組みが拡大する中で誕生しているのが「新電力」です。ここからは再エネを導入している新電力や再エネを利用した電気小売事業者を見ていきましょう。
*新電力:電力自由化によって新規参入してきた大手電力会社以外の電力会社のこと
再エネを利用している電力会社や企業はどういったところがあるのか?
新電力会社の多くは、自然エネルギー(再エネ)を中心とした電力の供給を目指しています。ここでは、そういった新電力会社や電気小売事業者を、電源構成を見つついくつかピックアップしていきます。
FIT電気
現在、新電力会社の多くがFIT電気というものを利用して、契約者へと電気を販売しています。FIT電気とは、再エネを用いて発電され、固定価格買取制度(FIT)により電力会社が買い取る電気を指します。電気を電力会社へ売る側は再エネ発電設備を設置する必要がありますが、FIT制度のおかげでこのFIT電気はどんどん普及していきました。
FIT電気は再エネによって発電された電力だと書きましたが、細かくいえばイコールということにはなりません。再エネで発電された電気でも、FIT制度に基づいて買い取られていなければFIT電気とはいえません。同じ再エネから作られた電気でも、FIT制度によって買い取られているかいないかで区分けされます。FIT制度によって買い取られていない電気を非FIT電気といいますが、これは新電力会社自身が運用している再エネ発電設備で作られた電気といっていいかもしれません。では、早速いくつか見ていきましょう。
*固定価格買取制度(FIT):一般家庭や事業者が再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が買い取ることを国が約束する制度
Looopでんき
Looopでんきでは、再エネ100%とするプランや、CO₂排出を抑えたプランを設定しています。下記に示したグラフは、Looopでんきの電源構成の実績値(昨年度)と計画値(今年度)を表しています。2021年3月31日以前までは、全体の16%が化石エネルギー源(石炭・LNG)により発電された電力を含んでいますが、それ以降は、他社から調達する形でその分を補うという形をとっています。再エネ比率自体は現行のままですが、これによって実質的に再エネ由来の電力の割合を増加させる計画となっています。
Looopでんきのサービスの中には、電気と環境価値を組み合わせることで、顧客のニーズに応じて実質再エネ100%+CO₂排出量ゼロの電気を提供しているプランがあります。それが「eneco」です。通常のLooopでんきのサービスに付加することのできるプランで、証書の取得費用のみしか必要なく、無料で上乗せすることができます。2つの選べるプランがあり、以下に詳細を記載します。
*環境価値:電気や熱そのものの価値のほかに、CO₂を排出しないという価値を持ち合わせているということ
RE100%
「再エネ100%+CO₂排出量ゼロ」を実現させたプランとなっています。また、国際的イニシアチブであるRE100などへの適用や、CO₂排出係数の報告で利用可能です。
→ 再エネ比率を変更可能
→ 無料でトラッキングを付けられる
*トラッキング:Looopが購入した非化石証書の由来となった発電所を明らかにする/国際的イニシアチブ「RE100」に対する報告に活用できる
CO₂ ZERO、CO₂ Light
CO₂排出ゼロの電気を提供するプランとなっています。また、CO₂排出係数の報告での利用やCSR報告書においてCO₂排出削減量を明示できますが、「RE100%」とは異なり、国際的イニシアチブには適用されません。
Looopでんきには、こうした地球温暖化へ対応したプランが設定されています。温室効果ガス排出削減が求められる社会に適したプラン設定をすることで、環境・社会へ配慮するさまざまなチャンスを創出しています。
Looopでんきのお得なキャンペーン
当サイトでは、Looop公式ページにてLooopでんきにお申込みの際、キャンペーン用コード「1gjfit」をご入力いただくことで、6000円~8000円分のクオカードを郵送するキャンペーンを実施しています(詳細はキャンペーン特設ページをご覧ください)。この機会にぜひともご利用ください。
みんな電力
みんな電力では、個人向けサービスとして、「スタンダードプラン」「プレミアム100プラン」の2つを提供しています。特徴的といえるのが、プラン毎に電源構成が異なっているという点です。とくに、「プレミアム100プラン」では、電源に「火力発電」を多く含んでいるものの、非化石証書を購入することで、再エネ100%の電力供給を実現しています。さらに詳しくいえば、再エネ由来の電気に、再エネ指定の非化石証書の環境価値を組み合わせることで、再エネ100%の電力供給を可能にしています。
*非化石証書:再エネが持つ「CO₂を排出しない」という環境価値を電気から取り出したもの
再エネを利用することが、地球温暖化対策になることに加え、再エネ発電所のさらなる発展につながってほしいという願いから、FIT電気と再エネの2つの電源にこだわったプラン設定につながっています。
ここでは、「Looopでんき」と「みんな電力」の2社を例として紹介しましたが、電力自由化以降、電力事業に新規参入した企業はこの2社以外にも非常に多く存在しています。また、新たに誕生した電力会社も多数あります。その中からは、みなさんのニーズに合った会社を見つけることができるかもしれません。この機会に検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ
今回は、電力自由化と再エネにどのような関わりがあるのかについての記事でした。日本における再エネ普及率はまだ低く、諸外国に大きく遅れをとっています。そんな現状でありながら、普及への課題は多く残されており、それをどう打開していくのかが重要であると思います。また、電力自由化が実現したことで、再エネ普及率は今後徐々に上昇していく可能性はあり、私たち個人が電力契約を新電力に変更することも、再エネ普及拡大へ貢献できる1つの策といえるでしょう。今回は、最後まで読んでいただきありがとうございました。