ジビエ肉って、おいしいの?

  • 更新日:2021/09/25

所属:慶應義塾大学

インターン生:M.Yさん

ジビエ肉って、おいしいの?の写真

当記事では、ジビエの魅力とその課題について説明します。ジビエ肉は美味しいだけではなく、環境問題や農業被害、地域問題までも解決しうるのです。この記事を読んだ皆様に、ジビエはすごい、食べてみたい、と思っていただけたら幸いです。

1、ジビエとは何か

みなさん、ジビエ肉をご存知でしょうか。ジビエとは、フランス語で「gibier」で「狩猟で捕獲した天然の野生鳥獣の肉」を表す言葉です。ヨーロッパでは古くから貴族の伝統料理として発展してきました。フランス料理界では高級食材として重宝されています。ジビエ肉は普段の生活になじみがないものの、脂肪が少なく身も引き締まり、栄養価も高いのです。ジビエ肉の例として、シカ、イノシシ、野ウサギ、カモ、キジ、カラス、クマ、ワニなどがあります。これらの動物を食べ物として捉えている人は少ないのではないでしょうか。

現在日本では、シカやイノシシによる農作物被害が大きな問題となっています。それらの動物の捕獲が進められるとともに、ジビエとしての利用も全国的に広まっています。「害獣」とされてきた野生動物を、食文化をより豊かにしてくれる味わい深い食材、あるいは山間部を活性化させてくれる地域資源として利用する動きが高まっています。ジビエは食肉としての利用にとどまらず、ペットフード、飼料、肥料としても有効活用されています。

2、ジビエの魅力

まずはじめに、ジビエの魅力について説明いたします。ジビエにはとても大きな可能性があります。ここでは環境、社会という観点に分けて説明します。

ジビエ肉が環境にもたらすメリット

廃棄されるものが食べ物という資源に変わる

鳥獣被害対策として捕獲された動物を、廃棄せずにジビエ肉として消費者に提供することで、資源を無駄なく有効活用することができます。コストがかかる廃棄物という負の要素から、食べ物としての資源という正の要素へと変身させることになるのです。

フードマイレージ、バーチャルウォーター

海外から輸入される肉や飼料は、その飼育や生育に大量の水が用いられている上、輸送や保管にも多くの化石燃料が使用されます。その一方で、野生の鹿などのジビエはそもそも人間の手で育てる必要はなく輸入飼料を必要としないうえ、地産地消となることが多いのです。よって、フードマイレージやバーチャルウォーターの観点から見ても、ジビエ肉は環境に優しいといえます。

フードマイレージとは、輸入食糧の総重量と輸送距離を掛け合わせたものです。食料の生産地から食卓までの距離が長いほど、輸送にかかる燃料や二酸化炭素の排出量が多くなるため、フードマイレージの高い国ほど、食料の消費が環境に対して大きな負荷を与えていることになります。ヴァーチャルウォーターとは、食料を輸入している国( 消費国) において、もしその輸入食料を生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定したものです。

出典:農林水産省

出典:農林水産省

上の資料より、日本のフードマイレージは世界的に見てとても大きいことがわかります。これは日本の輸入量が多いことではなく、他国に比べ輸送距離が長いことが大きく影響しているのです。地産地消によって、フードマイレージを大幅に削減することが可能であるといえます。

令和元年度において、日本の食料自給率(重量ベース)は牛肉は36%で、国内需要の約3分の1、豚肉は50%であり、国内需要の約半分、鶏肉は66%であり、国内需要の約3分の2であり世界的にみると低くなっています。その一方で、ジビエ肉の場合、自給率は100%となります。ジビエは自給率の向上にも利益をもたらすのです。

社会へもたらすメリット

もしジビエ産業が発達し鳥獣被害を及ぼす動物の数が適切に減少したとすると、農業への被害が減少し、農業従事者数の増加が見込めます。これにとどまらず、後ほどあげる鳥獣被害が減少するという大きなメリットがあります。また地域の人々は新鮮な栄養価が高く美味しい肉を食べることもできます。山間部での狩猟や流通に関わる仕事も生まれ、地域産業の復興も予想されます。

また、ジビエ肉の消費者にとっても大きなメリットがあります。それはジビエ肉の栄養価が高いことです。シカ肉はヘルシーな食材で、牛肉と比較すると高たんぱく質、低脂質(6分の1)、エネルギーが半分です。また鉄分を2倍含んでいます。イノシシ肉は、豚肉と比べると鉄分がおよそ4倍、ビタミンB12が3倍です。

栄養成分の比較(100gあたり)

エネルギー (kcal) たんぱく質 (g) 脂質 (g) 鉄分 (mg) ビタミンB1 (mg) ビタミンB2 (mg) ビタミンB6 (mg) ビタミンB12 (μg)
シカ肉 1  119  23.9  4.0  3.9  0.20  0.35  0.60  1.3
牛肉 2  294  17.1  25.8  2.0  0.07  0.17  0.35  1.4
イノシシ肉 3  244  18.8  19.8  2.5  0.24  0.29  0.35  1.7
豚肉 4  237  17.1  19.2  0.6  0.63  0.23  0.28  0.5

1 ニホンジカ、赤肉、生
2 和牛肉(サーロイン)、赤肉、生
3 肉、脂身つき、生
4 大型種肉(肩ロース)、脂身つき、生
出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

野生の獣肉は臭いのでは?と感じる方も多いかもしれませんが、正しく処理し調理すればとても美味しくいただくことができます。

4、鳥獣被害の現状

次に、鳥獣被害について説明いたします。鳥獣による農作物被害額は、令和元年度において約158億円。被害地域は我が国全域におよび、被害額の7割がシカ、イノシシ、サルによるものです。鳥獣被害は営農意欲の減退、耕作放棄・離農の増加、さらには森林の下層植生の消失等による土壌流出、希少植物の食害、車両との衝突事故等の被害ももたらしており、数字から感じられるよりもかなり深刻な影響を及ぼしています。

国はこの事態を打開すべく、2007年に鳥獣被害防止特措法を制定しました。ここでは、対策に講じる自治体への財政支援や、狩猟や被害対策に関わる担い手の確保に乗り出しました。また2014年、厚生労働省は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」を策定しました。捕獲から販売までの衛生管理に関する基準が設けられました。

国はその後も関連制度の改正などを行い、ジビエ消費を増やすための環境整備を進めてきています。2018年5月に「国産ジビエ認証制度」を制定し、ジビエの処理加工施設の自主的な衛生管理等を推進するとともに、より安全なジビエの提供と消費者のジビエに対する安心の確保を図っています。

3、ジビエの現時点の課題

このように魅力がたくさんのジビエですが、現時点では課題が残されています。まず、捕獲した鳥獣のうち実際に利用されたものの割合はとても少ないのです。2017年度のシカとイノシシの利用率は、約8%です。残りの9割以上が埋設、あるいは焼却処分されています。なぜ、日本ではあまり普及していないのでしょうか。大きく分けて5つの理由が挙げられます。

①安定した供給が見込めない

②処理加工施設が少ない

③歩留まりが低い

④狩猟者の減少

⑤馴染みが薄い

①ジビエ(野生の動物)は飼育されている動物とは異なり、自然の餌を食べて育つため、季節変化の影響を大きく受けます。生産効率を考慮して頭数を調整したり捕獲したりするできるものではありません。その結果、解体処理施設に搬入されるジビエの数は不安定となり、施設に適切な労働力を置くことが難しく生産性が低くなります。出荷できる数が不安定であれば市場も安定しません。

② ①の理由から、全国規模で処理加工施設を設置、運営することは容易ではなくなります。保健所の認可を受けた食肉処理業施設で処理したものでなければ、消費者に食材として提供することはできません。現在は全国に667箇所の処理施設がありますが、これでは不十分であると言えます。十分な施設数が実現されない場合、各狩猟者からアクセスしにくい状況になります。施設への運搬費用が高ければ、ジビエの商品化の利益は見込めません。

出典:農林水産省

出典:農林水産省

③現在飼育されている豚、牛などの家畜は、食肉生産に適する形に改良されています。しかしジビエは野生の動物でそのような改良はなされていないので、食肉加工時に多くの部位が産業廃棄物となってしまいます。それらの廃棄にはコストがかかるため商業化が難しいと言えます。

④狩猟の文化が廃れてしまったことで、狩猟者の高齢化と減少が見られる。これに対して国が補助金などの政策を行なったことで、近年は40歳未満の狩猟免許取得者の数が増加傾向にあるようです。

⑤ヨーロッパでは伝統として引き継がれている一方で、日本でもはるか昔には狩猟文化や山肉食が当たり前であったはずですが、あまり文化に浸透していません。これは殺生を嫌う仏教は相容れずに衰退してしまった、という可能性があるようです。人々に馴染みが薄ければ、もちろんわざわざジビエを買おうとする人も出てきません。現在インターネットでジビエの販売を行なっている方にお話を伺ったところ、「人々に馴染みが薄いのが課題。よくわからないものをインターネットで取り寄せようとする人はほとんどいない。」と述べた上で、「今後は店舗を出すことで人が実際に手に取れる形で販売しようと思う。」と認知度向上のための戦略を練っていました。

これらのような課題が残されているため、ジビエの流通経路が整備されず、一般人への普及もなかなか進んでいません。が、いずれにしても海外のようにジビエを身近なものにすることは不可能ではないはずです。

まとめ

当記事では、ジビエの魅力とその課題について説明いたしました。この記事を読んだ皆様に、ジビエはすごい、食べてみたい、と思っていただけたら幸いです。ヨーロッパのように狩猟が身近であるわけではない日本では、なかなかジビエ肉は浸透しづらいかもしれません。しかし、ジビエ肉の潜在能力はとても大きく、環境問題や農業被害、地域問題までも解決しうるのです。ジビエをブームで終わらせずに、食生活に浸透させるのに対して、国の政策はもちろんのこと、私たちの消費活動も大きな影響力を持っています。環境にも地域にも優しいジビエ、ぜひ食べてみませんか?

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エコモ博士
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