再生可能エネルギーの限界はどこか
所属:高知工科大学
インターン生:D.Tさん

もしもこの外に見える景色がすべてソーラーパネルの地平線だったら、もしもこの山々の稜線に無数の風力発電機が摩天楼のように立ち並んでいたら、どれほどのエネルギーが生み出されるのか、再生可能エネルギーについて学んだ方ならば誰しも一度はこのような想像をするのではないでしょうか。本記事では、実際に国が公開している資料をもとに再生可能エネルギーはどれほどの電力を生み出すポテンシャルを秘めているのか、それをご紹介したいと思います。
再生可能エネルギーの限界
再生可能エネルギーをどこまで導入できるのかという問いは、再生可能エネルギーを今後電力の主軸にしていくにあたり非常に重要な問題として、環境省は2009年以降日本の再生可能エネルギーの導入ポテンシャルやシナリオ別導入可能量などの推計を行い、毎年報告書を公開しています。本記事ではそれをもとに再生可能エネルギーの限界をご紹介します。
再生可能エネルギーの導入ポテンシャルとは
再生可能エネルギーの利用できる量を考えるにあたって、当然ながら自然界に存在するすべてのエネルギーを利用することはできません。そこで、現在の技術で利用し、電力として取り出すことのできる最大のエネルギー量を賦存(ふそん)量といいます。
しかしながら、これは土地の傾斜や土地用途、法規制といった様々な制約を無視した数字です。そこで、これらの制約による影響を加味したうえで導き出された値を導入ポテンシャルと言います。本記事においてはこの導入ポテンシャルを再生可能エネルギーの限界とし、それがどの程度のものであるのかを見ていきたいと思います。

出典:環境省
再生可能エネルギーの種類別の導入ポテンシャル
太陽光発電
太陽光発電の導入ポテンシャルは住宅系と非住宅系に分かれており(詳しい違いは参考文献を参照)、住宅系では設備容量20,978万kW、年間発電量2,527億kWhと見積もられています。また、非住宅系では設備容量253,617万kW、年間発電量29,689億kWhとなっています。合計すると、日本における太陽光発電の導入ポテンシャルは設備容量274,595万kW、年間発電量32,216億kWhとなります。これは日本で1年間に消費される電力(2019年度で9,273億kWh)の3倍を超える数値であり、いかに再生可能エネルギーが可能性を秘めているかということが見て取れるでしょう。
風力発電
風力発電の導入ポテンシャルは陸上風力と洋上風力に分かれており、それぞれ別に推計がとられています。陸上風力では設備容量28,456万kW、年間発電量6,859億kWhと見積もられており、洋上風力では設備容量112,022万kW、年間発電量32,956億kWhとなっています。これらを合計すると設備容量140,478万kW、年間発電量39,815億kWhとなり、日本で1年間に消費される電力の4倍を超える数値となります。
その他
そのほかにも地熱発電や河川などにおける中小水力発電においても推計がなされています。地熱発電においては、設備容量815万kW、年間発電量569億kWhと見積もられており、中小水力発電においては、設備容量890万kW、年間発電量537億kWhとされています。
まとめ
以上より、これらすべての再生可能エネルギーの導入ポテンシャルの総計は、設備容量416,778万kW、年間発電量72,861億kWhとなり、これは日本の1年間の消費電力の約7.85倍であり、世界の1年間の消費電力(2020年で26823TWh)の約27%に相当します。今回調査を行った感想としましては、再生可能エネルギーだけでこれほどの電力を生み出せるのかと驚きました。地球環境が激変し温室効果ガスの削減が叫ばれている現状、再生可能エネルギーがどの程度まで利用できるのかを知ることは環境問題を考えるうえで必要な手がかりの一つを与えてくれるのではないでしょうか。

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