地震などの災害に備える、太陽光発電のBCP能力を解説
近年、再生可能エネルギーの1つとして太陽光発電が注目されていますが、太陽光発電のメリットとしてどのようなことが考えられるでしょうか。本記事では、太陽光発電を設置することで得られるメリットを、主に災害時のBCP機能を中心として紹介します。
BCPとは
BCPは、「Business Continuity Plan」の頭文字を取った言葉で、事業継続計画という意味です。事業継続計画とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
現代の日本では、自然災害による被害のリスクが年々増加しています。例えば、名古屋大学の発表によると、南海トラフの確率が2050年頃までに約80%もあり、西日本から関東沿岸部の全世帯90%が停電になると予測されています。さらに、発電所が被災してしまうと電力需給能力が極端に下がり、2か月程度の計画停電が起こる可能性もあります。そのような事態に備えるために、BCP対策をしておくことは企業のみならず、ご家庭にとっても重要であると言えるでしょう。
太陽光発電のBCP機能
BCP対策の1つとして、災害時の停電に利用できる非常用電源への需要が高まっています。非常用電源にはいくつか種類がありますが、その中のひとつが太陽光発電です。
太陽光発電は、屋根などに取り付けて発電するもので、非常用電源のなかでも比較的取り組みやすいとされています。もしも災害時に電力会社からの電力供給が止まっても、太陽光発電によって電力の自家生産が可能となり、事業活動の全面停止を防ぐことができます。停電時の太陽光発電の使用方法としては、太陽光発電システムに備えられた自立運転モードを使用する方法と、蓄電池に電力を貯めて使用する方法の2種類があります。
自立運転モードによる太陽光発電の使用
まず1つ目に、自立運転モードによる太陽光発電の利用方法をご紹介します。自立運転モードでは、停電していても、太陽光発電で発電した電力を使用することが出来ます。自立運転モードによって使用する場合には、パワーコンディショナーの設定を通常モードから自立運転モードに切り替えます。そして、普段使用しているコンセントではなく、自立運転用コンセントに使用したい機器を接続することで、停電時でも一定の機器を使うことが可能となります。この時に使用する自立運転用コンセントは、あらかじめ購入しておく必要があります。
ただ、自立運転モードによって太陽光発電を使用する際には、2つの注意点があります。まず1つ目は、時間帯や天候によって、発電できる時が限られている点です。太陽光発電では、日中しか発電できず、夜間に電力を利用することができません。さらに曇りや雨の日にも発電することは可能ですが、晴れの日と比べて発電量が大きく下がってしまいます。
そして2つ目に、使用できる電力量に限りがあることです。自立運転モードでは太陽光発電システムの容量に関わらず、使用できる電力は最大1.5kW(1500W)という制限があります。1.5kWでは、どのような機器を使用することができるのでしょうか。以下は、1.5kWで使用できる代表的な家電の表です。
家電 | 消費電力目安 |
---|---|
電気ポット | 900W |
携帯電話充電器 | 10W |
テレビ | 475W |
ノートパソコン | 65W |
ラジカセ | 14W |
冷蔵庫 | 250W |
電子レンジ | 1300W |
この表にある家電は利用することができますが、1.5kW(1500W)を超えて同時に使用することはできないため、例えば電子レンジとテレビを同時につけることはできません。また、エアコンやオーブンレンジなど大電力を要するものは起動しないか動作が不安定になるため、使用を避けるのが望ましいとされています。このように、自立運転モードでは、使用できる機器に限りができてしまうことが考えられます。
蓄電池との併用による太陽光発電の使用
2つ目に、蓄電池との併用による太陽光発電の使用についてご紹介します。蓄電池では、自立運転モードの弱点を補うことができます。まず、蓄電池では、日中の晴れている時に太陽光で発電した電力を貯めておき、停電時に使用することができます。そのため、天候や時間帯に左右されることなく電気を使うことが可能となります。
また、蓄電池はさまざまな容量のものから選択することができます。少ないものでも1kWh台、そして工場のように電力を大量に消費する大規模な施設向けに数百kWhまで幅広い蓄電池が存在します。kWhとは、kW(電力)×h(時間)を表す単位で、例えば1kW(1000W)の電力を1時間使用した電力量が1kWhということになります。蓄電池では、施設の規模に合わせて停電時に必要な電力を貯めておくことができ、貯めた分だけの電力を使用することができます。
このように、太陽光発電と蓄電池の併用によって使用することで、停電時に安定した電力を必要とする分だけ消費することができます。ただ、蓄電池はコストの負担が大きいなどといった問題もあります。そのため、停電時に事業を続けるためにどのくらいの電力が必要となるのかをじっくりと検討し、それぞれのご家庭にあった方法を用いて太陽光発電をBCP対策として利用することが大切です。
太陽光発電におけるFIT制度・卒FIT
上述のように、太陽光発電はご家庭や企業においてBCP対策として活用することができます。しかし、太陽光発電の設置にかかる費用のために、導入を躊躇してしまう企業もあるかもしれません。そこで、FIT制度や、卒FIT後の電力の買取システムについてご紹介します。
FIT制度とは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度のことです。FIT制度により、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることがルールとして決められています。電力会社が買取に要した費用の一部は、賦課金として、電気の利用者が支払う電気料金から賄っています。
FIT制度によって建設コスト回収の見通しを立てやすくなり、太陽光発電を購入しやすくなっています。しかし、年々電力の売電価格は下がっている状況です。ただ、売電価格が下がるのと同時に、太陽光発電の設置費用も年々減少しています。
FIT制度では、買取期間が決まっています。太陽光発電でその期間は、凡そ10~20年間です。そこで、FITによる買取期間が終了した発電設備を卒FITと呼びます。卒FIT後は、電力会社と個別に契約を結ぶことで、引き続き余った電力を売ることができます。大手電力会社では買取価格が下がってしまいますが、近年では大手電力会社より高い値段で買い取ってくれる 新規参入の電力会社も増えています。
まとめ
これまで、災害時におけるBCP機能としての太陽光発電の役割をご紹介してきました。地震などの自然災害の脅威が増しているなか、停電に備えて太陽光発電を設置することは、いざという時の備えとして重要だと考えられます。また、BCP機能以外にも、太陽光発電に取り組むことで様々なメリットを得ることができます。費用の問題などもあると思いますが、そうした問題とのバランスを考慮しながら、ぜひ選択肢のひとつとして太陽光発電を検討してみてください。