豊かな暮らしの裏側で行われる森林伐採

  • 更新日:2021/04/15

所属:昭和女子大学

インターン生:N.Rさん

豊かな暮らしの裏側で行われる森林伐採の写真

近年、日本では、「SDGs」が話題となっており、CSR、CSV活動に取り組む企業が増えてきており、それらの取り組みが活発になっています。しかし、地球環境や、社会問題の深刻さや、実態を報道するメディアが少なく、正しく理解している人はどのくらいいるのでしょうか。世界の森林が減少している原因を知っていますか?あなたが想像している以上に深刻になってきています。これらの森林伐採には様々な要因があり、その原因の一つに畜産が挙げられます。私たちの食生活には欠かせない存在となったお肉や乳製品と森林伐採は深く関係しています。あまり知られていない森林伐採の実態についてまとめました。

1分間で消える東京ドーム2個分の森林

世界の森林面積は約40.3ヘクタールです。これは全陸地面積の約31%を占めており、そこには数多くの動植物が生息しています。(環境省)しかし、毎年520万ヘクタールの森林が減少しています。これは1分間で東京ドーム2個分、1時間でおよそ127個分の広さの森林が消えていることになります。

森林の減少が激しい上位の国であるブラジル、オーストラリア、インドネシアが上位を占めています。特にブラジルのアマゾンで森林の減少が進んでいることが分かります。

アマゾンの実態

世界最大の熱帯雨林アマゾン。地球上の熱帯雨林の総面積のおよそ半分を占めており、数百万種の動植物や、太古の昔から先住民族が暮らしています。全長7000kmという世界の大河アマゾン川と、そこに流れ込む支流は、地球上の全淡水量の15%を占めています。アマゾンの森と川は地球上には欠かせない存在であることが分かります。また、多種多様な生き物が生息しており、アマゾンでしか見られない動植物もいます。多種多様な動植物がいるからこそ、生態系が崩れやすく、なっています。

「アマゾン森林伐採衛星監視プロジェクト」という観測衛星を利用しているブラジルの国立宇宙研究所の報告によると、1988年に観測が始まり、2018年の間にブラジルのアマゾンの消失面積は、日本の国土面積の1.1倍に相当する42万km2に達しました。

        

日本の実態

日本は世界有数の森林大国と言われています。日本の森林面積は約2520万ha、約5割が天然林です。1000万ha、約4割が人工林、残りが竹林などです。日本の国土の66%、3分の2が森林です。世界各国の森林率を見てもフィンランドに続き、日本は第2位となっています。

輸入に頼りすぎ?日本の木材が余っています……

日本は、森林資源に関しては乏しいわけではなく、使われなくなっているという課題があります。下のグラフを見て下さい。昭和30年代、木材輸入の自由化が始まり、昭和39年代には木材輸入が全面自由化になりました。国産の木材価格が高騰する一方で、安い外国産の木材が大量に輸入されています。一度に大量に安く、定期的に輸入されるため需要が高くなっており、年々輸入量が増加してきました。供給されている日本の木材の8割が外国の輸入に頼っているのが現状です。通常、収穫期を迎えた森林は伐採され、新しく植えられ、育て、そして、伐採されるというように森林を循環させなければなりません。

国産木材の需要が低下すると、使われない人工林が増加し、費用がかかる間伐や、整備、主伐ができなくなるため放置されます。通常、収穫期を迎えた森林を伐採し、植えて、育てる、そして、伐採するというように循環させなければなりません。林業で有名だった地域の場合、地域の活力が落ち、林業経営者の後継者不足、山村問題など環境問題が社会問題に発展しているのです。

出典:林野庁

このような日本の森林問題を解決するためにはどうしたらいいのでしょうか。私たちにできること。それは国産の木材を積極的に利用することです。そして、需要を拡大させる必要があります。世界規模でみると森林は減少していますが、国内では、森林が増加していることを理解することが重要だと思います。

なぜ、森林が消えているのか⁉

①土地利用への転換

ブラジルでは、政府が1940年代にアマゾン開発計画が始まりました。アマゾンの本格開拓に向けて調査探検隊を送り込みました。(「西への行進」)1960年代以降には、アマゾン縦断道路や、横断歩道が建設され、アマゾンの木々が切り倒されてしまいました。これらの跡地には、農地が開かれ、家畜を飼育するための牧草地になりました。

1990年以降、アマゾンは、輸出用の大豆栽培のために大規模農業開発地となりました。「法定アマゾン地域では農場面積のうち80%を森林として残さなければならない」とされていますが、規制が緩く守られていないことが多いです。このように森林を伐採してプランテーションや、牧場へ転換していることが分かります。

〈意外と知られていない! お肉や、乳製品の需要が高まると……〉

私たちの食生活には欠かせないお肉や、牛乳。それらを飼育するために広大な牧草地が必要になってきます。特に先進国では、安価で満足度の高い食事を済ませられるという理由からファストフード店が非常に人気です。莫大な量の食肉が必要になるため放牧だけでは生産が追い付かず、大規模の工場型の畜産を行うために貴重な森林を伐採して農地の開拓を進めています。

②伝統的な焼き畑農業

森林や野原を刈り、倒した樹木や、草木を燃やしてから、灰を肥料として稲や芋などを栽培する焼き畑農業。数年間にわたり作付けした後、肥料が無くなるため別の場所に移動します。放棄された耕作地は、移動先の植生で焼き畑農業を行っている間に植生が回復するため再び、利用されます。植生の再生に10年以上はかかるため継続的に焼き畑農業をするには、いつかの土地を上手くローテーションする必要があります。また、人口増加により、植生が完全に回復しないうちに再び焼いて土地が劣化し、森林が上手く再生しないことが問題です。

〈ブラジルで焼き畑を60日間禁止。欧米でのボイコットが原因で…〉

2019年8月29日、ブラジル政府は焼き畑農業を60日間にわたり禁止すると発表しました。農牧地開発のための焼き畑は先住民の伝統的な農業を除き原則として禁止するという内容です。アマゾン熱帯雨林で発生した大規模な森林火災に対する政府の対応が消極的であるということから、欧米ではブラジル産品のボイコット運動が起こりました。1月に発足したボルソナル政権はブラジルの経済発展を優先し森林開発を容認しています。アマゾン熱帯雨林の大規模火災は農家や、畜産業者が焼き畑を実施したことにより起こったと言われています。

③燃料用木材の過剰な摂取

世界の木材需要の約半分が燃料として利用されています。アメリカや、中南米の熱帯地域では、調理の燃料として炭や薪などの木質燃料が使われています。また、アフリカでは家庭用エネルギーに占める木質燃料の比率は9割を超えています。人口の増加や、貧困のため安い木材に頼らざるを得ないのが現状です。

④森林火災

焼き畑農業、農地開発のための火入れなどの火の不始末、落雷、干ばつや猛暑が原因で森林が焼失しています。植生が燃えることで泥炭や、永久凍土がむき出しになることにより土壌から温室効果ガスの原因である二酸化炭素が発生してしまいます。

〈アマゾン熱帯雨林の大規模火災を覚えていますか?〉

2019年7~11月、アマゾンをはじめとする広大な地域で、大規模な森林火災が多発しました。2019年、ブラジル国立宇宙研究所によると、森林火災が2018年の同時期と比べて85%増加していることが分かりました。特にブラジル北部の被害が大きく、火災増加に伴い非常事態宣言が発令されました。

そして、火災によって大量の二酸化炭素と煙が発生しました。欧州連合のコペルニクス気候変動サービスによると、煙が大西洋岸まで到達しました。アマゾンから3200km以上離れたブラジル最大都市サンパウロの空を煙が覆った被害が出ています。大規模な森林火災により1億1700万トン以上の二酸化炭素が排出されたことを明らかにしました。これは2010年以降で最多と言われています。また、有毒な一酸化炭素の被害も報告されており、南米の海岸を超えて一酸化炭素が流れてしまっていることも確認されています。

アマゾンの動物たちは……

地球上にいる生物種の10分の1が生息しているアマゾン。火災に適していない動物たちにどのように影響したのでしょうか。アマゾンの多様な生態系を維持することができるのは火災が少ないからだと言われています。アマゾンの熱帯雨林は火事が起きることを想定していません。長引く火災によって動物たちの生息地が失われています。

特に深刻なのが動物の食料となる果実や水が奪われていることです。そして、動物たちは死を逃れようとして必死に避難場所を探します。その結果、人間が暮らしている街にたどり着くこともあり、交通事故や、捕獲といったリスクに直面することになってしまいます。

森林の役割って何?

地球温暖化の原因として考えられているのが人間の活動による温室効果ガスです。この温室効果ガスの最大の原因として、二酸化炭素が挙げられます。二酸化炭素排出量の多い国として日本は約11億3,240万トンと第5位にランク付けされています。(キッズ外務省)日本が第5位と聞いてどう感じるでしょうか。続いて、人口比で割った一人当たりの二酸化炭素排出量として日本は8.9トン排出されています。世界全体で比較すると第4位にランク付けされます。(JUCCA)

①地球上の二酸化炭素循環の中では、森林が吸収源として大きな役割をしています。森林を構成している一本一本の樹木は、光合成により大気中の二酸化炭素を吸収するとともに、地球温暖化の防止に貢献しています。1年中葉を落とさない20年生きている天然の広葉樹の森で1辺が100mの正方形の森の場合、1年間に5万トンの二酸化炭素を吸い取り、3.7トンの酸素を吐き出します。人間の場合、14年間に呼吸に使う量です。

②森林は洪水を防ぎます。森の地面には落ち葉が落ち、沢山の生物が暮らし、土に分解されているため、より水をたくわえやすくなっています。森林が減少した場合、大雨が一気に川に流れ込み、洪水が起こりやすくなります。

③土砂崩れを防ぎます。木の根が土をかかえこんでいるため、大雨が降った場合も崩れにくくなります。

④雨水を綺麗な水に変えるはたらきがあります。厚く積もった腐葉土に染み込んだ雨水は、土の隙間を通りながら汚れが取り除かれ、綺麗な水がつくられます。

⑤生物多様性を守る機能があります。それぞれの土地の環境に応じて、複雑で多様な生態系を形成しています。森を保全することは、遺伝子や生物種の保全に繋がっています。

⑥快適な環境を形成しています。森は、蒸発散作用によって、夏の気温を低下させ、都市部のヒートアイランド現象を抑える、地球の気温の変化を緩和するはたらきを持っています。また、汚染物質の吸収機能、樹林帯による防音効果を備えており、より快適に過ごせるような環境を形成しています。

⑦木材、きのこ、山菜、竹など様々な資源を供給しています。これらは、適切に森を管理することにより、半永久的に繰り返し生産することができる「循環型資源」として私たちの生活を支えています。

森林伐採の対策

森林伐採への対策は非常に重要な課題になっています。

①植林

森林が伐採された荒れ地に植林を行い、森林を回復させることができます。中国では国や、企業が大気汚染、気候変動の効果を減らすため、植樹活動や、森林保護を積極的に行っています。

アリババのエコシステム

実際に、決済、ライフスタイルアプリのアリペイは、環境に配慮した発展を目指す植林プロジェクト活動を行っています。ユーザーの半数にあたる5億人の力で数百万本の樹木を植林しました。これは、アリペイアプリ内のミニプログラム「アント・フォレスト」では、環境に優しい行動をするとエコポイントを受け取り、そのポイントを寄付することで、植林に必要な地域で樹木が植えられます。

これまでに植林された樹木は1億本以上、植林総面積は、サッカー場13万個分に相当する933平方キロメートルになりました。2018年に始まった「アント・フォレスト」には、ユーザーはリアルタイムで自分が植樹した木を衛星画像で見ることができます。2018年12月に公表されたNASAの調査では、過去20年間で増えた緑地面積のうち3分の1が中国、インドで増加したと研究者が発表しました。

植林によるデメリット

  • 森林減少による排出量を再吸収するためには数十年の時間が必要
  • 樹木の生長につれて二酸化炭素の吸収率が減る
  • 農地が不足する地域では植林用の土地の確保が難しい

このようなデメリットはありますが、続けていくことで、生物多様性、土壌などの向上に繋がると考えられます。

②木材のリサイクル

樹木は伐採されても吸収した炭素を体内に維持するため、燃やさない限り二酸化炭素を排出することはありません。木材のリサイクルや、間伐材などを活用し、積極的に利用することで無駄な森林伐採を減らすことができます。

リサイクルの方法として、マテリアルリサイクルとサーマルリサイクルの2種類があります。マテリアルリサイクルは、廃棄処理する物質を原材料として、新たな素材や製品として活用するリサイクル方法です。サーマルリサイクルは、廃棄物を焼却する施設で、焼却時の熱を利用して電気を発生させるなど、熱エネルギーとしてリサイクルする方法です。森林資源が豊富な地域ではエネルギー源としての活用が増えてきています。

まとめ

今回は、森林伐採に関しての記事でした。世界中で、特にアマゾンの地域で森林伐採が進んでいますが、日本では、森林資源が豊富で使われていない樹木が増えているのが現状だと分かりました。国や地域によって抱えている課題が異なっており、先進国の豊かな経済活動、生活をすることによって、森林伐採による生態系の崩壊などといった深刻な実態があることを理解する必要があると思います。

では、私たちにできることは何でしょうか。まずは、世界と日本の森林に関する現状、課題を知り、家族や友人に啓発していくことだと思います。現状を正しく理解すれば、自然と環境に良いアクションをしたいという考えになると思います。環境に良いアクションの例として……

「森林認証」マークの利用

信頼できる木材を判断する指標として重要なマークです。適切に管理された木材を利用した商品を購入することは自国の世界の森林を保全する活動に繋がります。

フェア・ウッドキャンペーンへの参加

世界に現存する森林や、動植物を保全し、持続可能な森林経営を支援する活動です。環境に配慮した活動を消費者や、企業に呼び掛けています。

環境に良いアクションの例として上記の2つを挙げましたが、まずは、自分にできそうなアクションを見つけていくことが重要です。小さなアクションの積み重ねの輪が広がっていけば素晴らしいと思います。

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エコモ博士
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