食と環境

  • 更新日:2021/03/02

所属:早稲田大学

インターン生:H.Mさん

食と環境の写真

この記事では、私たちの生活に欠かせない食べ物によってどのような環境問題が引き起こされているのか、またどのような変化が求められているのかについて、肉の消費、食物の生産方法、フードロスの三つの観点からみていきたいと思います。

食は、私たちが生きていく上で決して欠かすことのできないものです。毎日口に入れている食べ物ですが、普段何気なく買っている肉や野菜、加工食品がどのようにして生産され、地球にどのような影響を及ぼしているか、考えたことはありますか?実は、人口の増加や人々の食生活の変化により、需要は大幅に増え、時代とともに生産や流通の仕方なども大きく変わりました。

そして、それによって様々な環境問題も引き起こされており、私たちは自分たちの食生活や消費スタイルを変えなければならない現状にあります。この記事では、私たちの生活に欠かせない食べ物によってどのような環境問題が引き起こされているのか、またどのような変化が求められているのかについて、肉の消費、食物の生産方法、フードロスの三つの観点からみていきたいと思います。

畜産と環境問題

まずは、多くの人に好まれる肉。今や、肉は私たちの食事に欠かせないものになったと言っても過言ではありません。焼肉やステーキ、しゃぶしゃぶなどの肉料理は多くの人を魅了し、世界の肉の消費量は年々増加していると言われています。しかし、実は肉を食べることによって地球環境に悪影響が及ぼされていることをご存知でしょうか。

肉の大量消費によって引き起こされる環境問題は、地球温暖化、水質汚染、森林伐採など多岐に渡ります。その主な原因は、畜産によって起きる大量の資源の消費です。例えば、水は家畜の飲み水としてだけでなく、えさになる穀物を育てるために大量に消費されます。その量は全世界の淡水量の27%とも言われ、家畜が育つまでに使用される水の量を合計すると、鶏肉1キログラムには4500リットル、豚肉1キログラムには5900リットル、牛肉1キログラムには2万600リットルもの水が必要とされています。

家庭のバスタブは約160リットルなので、1キログラムの牛肉を生産するためにはバスタブ93杯分もの水が使われるということになります。一方で、植物性食品を生産するのに必要な水の量はこれに比べてはるかに少ないです。例えば、トマト1キログラムの生産に必要な水量は131リットル。玉ねぎ1キログラムは158リットル。肉の代替品としてよく使用される植物性タンパク質を多く含む大豆でも、豚肉の半分以下の水量で生産することができます。

同じ1キロの食品を生産するのに、動物性食品と植物性食品ではこんなにも必要な水の量が変わるのです。ユネスコの発表では、このままの水資源の消費が行われると10年後には世界人口の47%が水不足になるという報告がなされており、限りある水資源の持続的な使い方が求められています。畜産の消費を減らすことは水の使用を大きく減らすことになるので、欧米では動物性食品を食事から減らすという動きが活発化してきています。

また、家畜を育てるためには水以外にも大量の穀物を必要としますが、家畜のよる穀物の消費は環境負荷が大きく世界中の飢餓問題にも拍車をかけています。なぜなら、育った穀物が直接人間の手に届くのではなく家畜によって消費される、穀物の間接消費が非常に不効率だからです。

例えば、牛肉1キログラムを生産するためには13キログラム、豚肉1キログラムには7キログラムもの穀物が必要です。これらの穀物が直接人間によって消費されれば、どれだけ多くの人が飢餓から救われるでしょう。しかし現実では世界の穀物の約40%は家畜のための飼料として使われ、アメリカの家畜が消費する穀類と大豆で13億人が食べ物を手に入れられるという報告もあります。

また、穀物の栽培、家畜の放牧のために大規模な森林伐採が行われているのも事実です。なんと、世界の農地の75〜80%が家畜の飼料の生産のために使用されており、森林破壊の原因の80%が畜産を含めた工業型食料システムによって引き起こされているのです。二酸化炭素の吸収だけでなく生物多様性を守るために欠かせない森林が、畜産によって削られていっているのです。

さらに追い討ちをかけるのが、家畜によって生み出される温室効果ガスの問題です。国連食糧農業機関によると、なんと家畜動物たちは全世界の交通機関から排出される温室効果ガスより40%も多くの温室効果ガスを産出しているといいます。それは、家畜のゲップや糞尿に二酸化炭素より遥かに温室効果の高いメタンが多く含まれているからであり、畜産業は年間1億トン以上のメタンを排出していると言われています。これらの温室効果ガスは地球温暖化に拍車をかけ、さらには土壌や水質汚染の劣化の主な原因となっています。

では、畜産業によって引き起こされるこれらの環境問題にはどのように対処すればいいのでしょうか。一番シンプルな対処法は、動物性食品の摂取を控えることです。最近では、問題の認識が広まりつつあることから菜食主義に切り替える人も増えてきています。菜食主義といっても、肉は食べないが卵や乳製品は摂取する人から、動物性食品は一切とらない完全菜食主義(ビーガン)の人まで、その度合いは人それぞれです。

毎日の食事で徹底して菜食主義を行うだけではなく、週に何回はビーガンの日を設ける、といった自分の生活スタイルに合わせて菜食主義を行うことも可能ですし、環境負荷の大きい牛の摂取を抑えて鶏肉に切り替えることも効果的です。また、工業型に生産された肉ではなく、地球環境に優しい飼育の仕方をされた肉を選ぶことも重要だと言えます。

食物の生産方法と環境問題

開発途上国での人口爆発を中心に、近年世界の総人口は増加の一途をたどっていますが、それに伴って増えているのが食糧に対する需要です。下の表を見てわかる通り、2000年には60億人だった人口は2050年には53%増加し、92億人に達すると予想されています。そしてそれだけの人口を支えるためには食料生産量を2000年の45億トンから69億トンまで55%引き上げる必要があります。

出典:農林水産省

この人口増加に伴う食料生産の増加は、農作物の工業的な生産方法を導き、様々な形で深刻な環境問題を引き起こしています。例えば、農地開墾による森林伐採。多くの森林は、増え続ける人口を養うために農地として世界中で伐採、開墾されてきました。代表的な例として、インドネシアで行われているパーム油生産のための森林伐採があります。

パーム油とはアブラヤシの果肉から得られる油のことで、植物油の中では世界で最も多く生産されているものです。このパーム油は生産量が多く安価なため、世界中で需要が高まった結果、インドネシアやマレーシアなどの熱帯林で生産が盛んになりました。しかし、アブラヤシ農園の開墾によって、過去50年間で7,400万ヘクタール以上ものインドネシアの熱帯林が伐採・焼失・劣化しています(国際NGOグリーンピース)。

森林の消失は、植物による二酸化炭素の吸収量を減らすだけでなく、オランウータンをはじめとする多様な野生生物の住処を奪ってしまうので、地球環境に多大な悪影響を与えます。さらに、パーマ油生産のために伐採される熱帯林は「泥炭地」と呼ばれる炭素を大量に含んでいる土地なので、泥炭地の森林がなくなることによって泥炭と空気が触れ、温室効果ガスが排出されてしまうのです。パーム油は、ポテトチップスやフライドチキンなど食べ物から洗剤やシャンプー、化粧品といった私たちの生活に短な日用品にまで幅広く使われているため、生産地から遠く離れた地に住む私たちにも大きな責任があります。

また、森林伐採の他にも、農産物の生産性を上げるために大量に使われる農薬などの化学肥料も、環境に大きな負荷をかけています。農薬や化学肥料を使うことは、虫による害を減らし、植物を丈夫に早く育てることを可能にするので、大規模で効率的な食料生産を行うには非常に有効的です。しかし、化学肥料の使いすぎは生き物の数を減らし、土壌の酸性化や水質汚染などの環境問題を引き起こします。

例えばハチは、花粉を集めるという行為を通して野菜や果物など植物の受粉に大きく貢献します。しかし今、世界中でハチの数が激減しており、国連環境計画(UNEP)の報告によれば欧州で10〜30%、米国で30%、中東で85%ものミツバチが絶えてしまったといいます。UNEPの事務局長、アヒム・シュタイナー氏は、「世界の食料の9割を占める100種類の作物種のうち、7割はハチによって受粉されている」と、ハチの激減に警鐘を鳴らしており、原因の一部に農薬や殺虫剤などの化学肥料を挙げています。

またヨーロッパでは、ネオニコチノイド系農薬を使用とハチの個体数減少に相関があるとの研究結果が発表され、EUはネオニコチノイド系農薬のほとんどの使用を暫定的に禁止しました。また、継続した化学肥料の使用は土壌の質を劣化させるため土壌汚染を招き、その土地での持続的な農業を不可能にします。さらに、化学肥料は環境に負荷をかけるだけでなく、人間の体にまで害を及ぼす可能性があります。化学肥料によって育てられた植物は人間の体内で蓄積されるからです。

化学肥料の使用による環境汚染を防ぐには、化学肥料を使わずに育ったオーガニック野菜(有機野菜)を選ぶことが重要です。最近ではオーガニック商品への関心も高まり、オーガニックコーナーを設けているスーパーを見かけることもあるかと思います。オーガニック商品を選ぶということは、生物や土壌を守ることにつながるので、今後の自分たちの安定した食料確保を可能にします。環境にだけでなく人体にも優しい食品で、安心に美味しく食事を楽しんではいかがでしょうか。

フードロスと環境問題

今、地球上では生きていくのに十分な食べ物が手に入らず飢餓に苦しんでいる人が大勢います。その数は、2019年には約6億9千万人で、これは世界人口の8.9%。このままの傾向が続けば2030年には8億4千万人を越えると予測されています(国連食糧農業機関)。その一方で、世界では毎日大量の食料が廃棄されており、国連食糧農業機関によれば世界生産量の3分の1が廃棄されているそうです。

日本では年間約600万トンもの食べ物が廃棄されており、これは世界食糧基金による世界全体の食料援助量の約2倍に相当すします(環境省)。このいわゆる「フードロス」が飢餓問題を深刻化させていることは有名ですが、実はフードロスは地球温暖化とも深く関係があります。なぜなら、食物(穀物や畜産)を育てるところから消費・廃棄するまでの保管、処理、加工、配送などのすべての過程において使用されたエネルギーが無駄になってしまうからです。

例えば、配送や廃棄の際にはCO2が発生しますし、前述した通り家畜を育てる際にはメタンが発生しますが、食品が消費されずに焼却処理されてしまうことで、生産と流通の過程で温室効果ガスを排出しただけでなく、排気の過程でより多くの温室効果ガスを排出するということになってしまうのです。国連食糧農業機関による作物別の温室効果ガス排出量は以下の通りです。

出典:国際連合食糧農業機関

このグラフから、穀類、肉類、野菜の温室効果ガス排出量が多いのがわかります。穀類や肉類を消費せずに廃棄することは、食物の生産と流通までにたくさんの温室効果ガスを排出したにも関わらず食べ物も無駄にし、さらに焼却処理時の温室効果ガス発生という何重もの無駄を生んでいることになります。また、日本では食品廃棄物は焼却処分されますが、世界の多くでは埋め立て処分が主流で、埋め立て処分では埋め立て時にメタンが発生することが問題になっています。

フードロスの処理によって発生する温室効果ガスは世界で約33億トンを超えると言われています。これは、温室効果ガス排出量で世界1位の中国、2位のアメリカに次ぐ、世界で3番目の排出量だと言われ、地球温暖化に深刻な影響をもたらしています。

このように、あまり知られてはいませんが、フードロスは地球温暖化に大きく影響しているのです。よってフードロスを減らすことは、世界中で公平な食料分配を実現し飢餓に苦しむ人々を救うだけでなく、地球の環境を守ることにもつながります。では、私たちが普段の生活でできるフードロスの削減方法とは何でしょうか?それはとても簡単で、買いすぎないことや作りすぎないこと、好き嫌いしないことなどが挙げられます。

また、適切な保存方法を知ることで食べ物を腐らせずに長期保存できることもあります。本当にちょっとしたことですが、一人一人が毎日の生活で少し配慮するだけで、フードロスは削減できますのです。公平な未来ある地球を作るために、日々の消費行動を意識して行ってみてはいかがでしょうか。

まとめ

食べ物は、私たちの体を作り、エネルギーになり、生きていくためには決して欠くことのできないものです。だからこそ、食が環境に与える影響というものは大きく、私たちは今すぐにでも食べ物の生産・消費の仕方を変える必要があります。今アクションを起こすことは、将来の人々に安定した食料を供給することにつながります。

反対に、このままの食料の消費の仕方を続けていれば、より多くの人が飢餓に苦しむことになるのです。また、この地球は人間だけのものではありません。人間以外のたくさんの野生動物たちにも、自由に安全に生きていく権利があり、人間の食料を確保するために彼らの生活を脅かすことは許されることではありません。地球の明るい未来のために、自分たちの食事を少し見直してみませんか?

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エコモ博士
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