食品ロスの現状と新型コロナウイルスの影響

  • 更新日:2021/01/25

所属:ライデン大学

インターン生:K.Aさん

食品ロスの現状と新型コロナウイルスの影響の写真

食品ロスは、過剰に生産され余ってしまった食糧が廃棄されることです。日本では一人につき、ご飯1杯分の量が毎日捨てられているほどの食品ロスが出ています。これは生産から廃棄までに多大な量のエネルギーを使い、二酸化炭素を放出したりプラスチックなどの資源を無駄に使ったりすることにつながっています。こうした食品ロスを通した環境負荷を軽減する為にはどのような取り組みが日本で、または世界中で行われているのでしょうか。また、新型コロナウイルスは食品ロスへの意識や習慣にどのように影響をもたらしたのでしょうか。

食品ロスについて

「食品ロス」というのは、過剰に生産され余ってしまった食糧が廃棄されることです。食品ロスを含めた食品廃棄物の量は世界では13億トンにも達し、世界の年間生産量の約1/3にも当たります。

比べて日本では毎年2775万トン以上の食品が捨てられています。政府によると、そのうち食べられるのは約612万トンで、毎日、日本人一人当たり1杯分のご飯の量が捨てられている計算になります。ちなみに、この日本の食品ロスの量は世界食糧基金による世界全体の食料援助量の2倍ほどの量を表しています。

この食品ロスの量は、ゴミとして出された後に処理工場に運ばれ、可燃ごみとして処分されます。ほとんどの食品は水分を含んでいるので、焼却の際に二酸化炭素(CO2)を排出する上、焼却後の灰の埋め立ても、環境負荷につながります。この大量に破棄される食品のために、森林が伐採されて、燃料とパッケージに使う資源も消費されるのです。

この食品ロスの量は、どうしたら削減されるのでしょうか。まず、食品ロスの出方を分析すると約半数は家庭ごみ、そして残りの約半数は事業ごみから出ているそうです。

家庭ごみは、家での料理の作り過ぎによる食べ残しや、買ったのに使わずに捨ててしまうこと、料理を作る時の皮のむき過ぎなどから出ています。事業ごみは、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなど小売店での売れ残りや返品、飲食店での食べ残し、売り物にならない規格外品などが含まれます。

食品ロスの変化

農林水産省の統計をグラフにして見ると、食品ロスは2012年から2017年の6年間でも600万トン以上になっており、大きな変化は見られないことが分かります。しかし、事業系の食品ロスを2000年の547万トンと比べると、量が大幅に減っているのが読み取れます。

国は2030年までに、事業系の食品ロスを2000年の量の半減を目指しています。家庭系の食品ロスも同様に、2030年までに半減させる目標を設定しているそうです。この目標を達成するには、消費者一人一人が協力しなくてはいけません。

食品ロスについて

出典:農林水産省

取り組み

日本では3分の1ルールという、製造日から賞味期限までの合計日数の3分の1を経過した日程までを納品可能な日とし、3分の2を経過した日程までを販売可能な日(販売期限)とする慣習が定着しています。賞味期限は未開封で保管して時に美味しく食べられる「目安」であり食べられなくなるわけではありませんが、私たちはその表示に敏感になっています。

米国の場合、納品期限は「2分の1」、欧州は「3分の2」と設定されていますが、日本は世界的に見ても厳しく、短い設定です。この設定がたくさんの返品や廃棄を生み出し、食品ロスにつながっているそうです。例として、2017年では業者からメーカーに返品された加工食品は562億円分に到達し、そのうち2割がディスカウント店に回されましたが、8割は廃棄となってしまったそうです。

これに対して事業者側は納品期限の緩和や品質保持技術による賞味期限の延長、賞味期限の表示を年月日から年月に見直すなどの策に取り組んでいるそうです。それに加え、技術を使い鮮度をより長く保つことができる容器の形や包装の材質を工夫した取り組みもあるそうです。

行政でも取り組みが行われており、2019年の5月には「食品ロスの削減の推進に関する法律」が公布されました。10月を食品ロス削減の月間、10月30日を食品ロス削減の日として定めました。

消費者側も食品ロスの削減に貢献できるように、普段に欠かせないテクノロジーを使った方法があります。例えば、食べ物をシェアするためのアプリである『Tabete』、『ReduceGo』、『Tabeloop』、『ポケットマルシェ』です。消費者と提供者が直接関わったり、BtoB向けの設定があり、提供側は収益の増加や、顧客拡大のきっかけにもなり、利用者側は安く食べ物を購入でき、環境にも優しい仕組みになっています。

海外の取り組み

フランスでは、2016年の2月に食料廃棄禁止法が成立されました。食料廃棄禁止法は、フランスの400㎡以上の敷地面積を持つ大型のスーパーマーケットで、賞味期限切れ食品や賞味期限が近付いている食品の廃棄を禁止しています。これが守れなかった場合には、日本円で49万円の罰金、または最大2年間の禁固刑を課せられます。

スーパーで売れ残り、消費期限が迫っている食品は、廃棄する代わりにチャリティー団体やボランティア組織などへ寄付するように慈善団体と契約を結ぶことが義務付けられました。法が成立した後、その年の間で廃棄されるはずであった、余った食品を受け取る慈善団体が新しく5000以上誕生した上、寄付された食品は合計で約1000万食分だったそうです。

デンマークでは2016年に賞味期限切れ食品専門のスーパーマーケット「WeFood」が誕生しました。ここでは、包装に傷や汚れがある食品も販売しているそうです。2016年時点で5年前と比べた結果、デンマークの食糧廃棄量は約25%削減されたので、食品ロスの削減に貢献したのだと言えます。

同様にドイツでは、2017年に廃棄される食品のみを扱うスーパーマーケットである「SirPlus」が誕生しました。イギリスでは、イギリスの大手スーパーマーケットチェーン「セインズベリー」のある店舗で食品廃棄物を利用してエネルギーを自給しているそうです。しかし、すべての食品廃棄物がバイオガスに変換させることは不可能なので、慈善団体と組み、恵まれない人々にまだ食べられる食品を寄付したり、ノーズリー・サファリパークの動物たちの餌として提供しています。この取り組みはエネルギーと食品ロス、どちらの分野でも環境負荷につながります。

食品は、生産から廃棄の過程で多大のエネルギーを消費します。そこで、オランダには食品ロスを焼却や輸送をせずに、現場で電力や肥料に資源化する組織があります。食品ロスなどのゴミをグリーンエネルギー、天然肥料や水に変換し、循環経済(サーキュラーエコノミー)を実現しています。

仕組みとして、ホテル・大学・病院・企業・農場・モール・空港・港などの地元の事業者が、現場にWaste Transformersというごみ変換機を設けることで、その場で食品ロスなどのゴミを資源に変えることができます。この資源は、再生可能エネルギーや肥料、水などであり、これらを販売することできるのでそこから収入を得ることもできます。年間およそ2兆円の税金を食品ロスを含めた全てのごみ処理に使っている日本では、このシステムが少しでも導入されるのを理想と考えます。

新型コロナウイルスの影響

日本では、事業系の食品ロスを2030年までに273万トンに抑える方針ですが、2019年から広がり始めた新型コロナウイルスは、食品ロスにどのような影響を与えているのでしょうか。

新型コロナウイルスの広がりを防ぐため、去年の4月頃に国は学校の休校、外出自粛、イベントの中止、飲食店の休止または営業時間短縮などを決定しました。また、オリンピックの需要を見込み、農林水産省が生産者に例年より食品の生産量を増やすように指示を出していました。その影響により、フードチェーンの中で大量な未利用食品が発生したのです。生産者は大量に在庫を抱え、食品メーカーは余った商品を冷凍保存していましたが新型コロナウイルスが長引いた結果倉庫が満杯になってしまい、やむなく廃棄処分していたそうです。

最近の研究では、新型コロナの影響が大きい地域ほど食品ロス意識が高いという傾向が判明しています。研究の結果、新型コロナウイルスの影響度の高い地域である東京都、大阪府、神奈川県、北海道、埼玉県、千葉県、福岡県、北海道に住んでいる人々は、そうでない地域の人に比べて、「家庭での毎日の食品ロスの量や種類、コストや不足」に注意を払い、「食品の購入や管理についてより厳密に準備をし、食品の選択などの行動」を変えようとする傾向が見られたと報告しています。新型コロナの影響度が低い地域の人々は、新型コロナウイルスが宣言されてから三ヶ月、不要な食品、または過剰な量を購入していたのだそうです。

世界各国の研究でも、この結果は見られています。カタール、チュニジア、アメリカでの研究は、コロナ禍の状況やロックダウンが家庭での食品管理や購入、と食品ロスに対する認識の改善につながっていたと述べています。食糧を購入する行動は、ストレスや不確実性の感情に対する反応で、消費者は商品購入を通し調整力を回復することにつながっているからだと根拠を述べています。また、マレーシアでは新型コロナウイルスによる移動制限期間中での調査によると、食品ロスは最大で15.1%も減少したと報告されています。

新型コロナウイルスの影響により多くの人が節約と食品廃棄回避の精神と認識を高めることができ、食品ロスに対して良い結果をもたらしているとも言えます。食品ロス問題に取り組んでいる環境保護団体、WRAPによると、7割の人が自粛時に新しく身についた食品管理の習慣を保ち続けたいと考えています。これをきっかけに、食品ロス、主に家庭ごみを減らすことに繋がると考えられます。

新型コロナウイルスの影響による家庭の食品ロスの変化

実際に、食品ロスに関する意識はどう変わり、各国でどのように違うのでしょうか。日本では、緊急事態宣言前と比べて、家庭で食べ物を捨てる(食べ切れずにロスになってしまう)量が少なくなった、と答えた人が全体の20%で、70%以上が変わっていないと答えたそうです。フランスでは、33%が感染予防対策が緩和され、通常の生活に戻ったとしても「食べ物の無駄遣いを減らす」と答えました。

イギリスでは2018年から2019年にかけての家庭内食品ロス量と比べて、ロックダウンされてからの2020年4月は、イギリスの家庭でよく使われる食品であるパン、牛乳、鶏肉とじゃがいもの4品が平均34%減っていたそうです。

しかし、アメリカでは家庭の食品ロスは減っている代わりに、サプライチェーンからの事業ごみが増えているそうです。家庭ごみの現象に比べ、より多くの食品がサプライチェーンで廃棄されています。その量はアメリカ農務省によると、通常では食品の30~40%が廃棄されているのにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症の影響でさらに増えています。

このように、ロックダウンや自粛などを経験し、買い物などの外出を控えた結果、食べ物への関心が高くなった上、節約などを考え家庭の食品ロスが下がった傾向が見られます。

これからの食品ロス

新型コロナウイルスによって家庭内で食品ロスの意識が高まったり、食品の通信販売が増えたり、食品ロスの解決を目的とするビジネスが増えました。また、うなぎやクリスマスケーキ、おせち、恵方巻などの余りがちである季節商品を完全予約制で販売しはじめ、食品ロスによる廃棄金額を約8割減少させたという例もあります。

このように、生産者と消費者の双方にとって得であり、同時に環境負荷を削減させる食品ロスへの画期的な取り組みがふえていくと思われます。また、ヨーロッパのように最先端なテクノロジーやアプリを活用した食品ロスの取り組みも普及し、多くの人に使われると良いです。

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エコモ博士
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