新型コロナウイルスとこれからのゴミ問題
所属:東京情報大学
インターン生:Y.Yさん
昨今、新型コロナウイルスの影響で私たちの身のまわりは大きく変わってしまいました。感染拡大防止のために外出自粛が叫ばれ、以前のように外出することは少なくなったのではないでしょうか。そんな中で、新型コロナウイルスが環境問題へ及ぼす影響がどれほどのものなのか、今回は特にゴミに関する問題について注目していきます。街中や観光地でのポイ捨てされているゴミなど、今まで問題視されてきたゴミの問題や、家庭ゴミの廃棄量がどのように変化しているのか。またコロナ禍の中で新たに生まれてしまった問題や、この先ゴミ問題とどう向き合っていくのかについても触れていきます。
今まで問題視されてきたゴミ問題はどのように変化しているのか
コロナ禍以前では、観光地や街中でのポイ捨て、不法投棄などの問題がありました。コロナ禍の今、皆さんは感染予防対策をしながら生活していると思います。マスクをつけ、アルコールやウェットティッシュで手を消毒する。そしてそれらは全てゴミとして捨てられます。
このゴミをきちんと捨てている人もいれば、街中にポイ捨てをしている人も少なくなく、これが今、日本に限らず世界中で問題になっています。実際、東京都内でのポイ捨てされているマスクの数は、例年と比べておよそ2倍にまで急増しているといわれています。
自分がつけていたマスクや手を拭いたウェットティッシュなどをポイ捨てすることは、そのゴミから感染するリスクがあり、感染予防の観点からは大変危険だといえます。また、欧米では使い捨てマスクやゴム手袋がポイ捨てされ、そのゴミが雨などで海へ流出し、海中生物へ大きな影響を及ぼしているとの報告もあります。
コロナ禍の中で生まれてしまった新たなゴミ問題
コロナ禍において、新しい生活様式への移行が推奨されてきました。そんな中で新たに生まれてしまったゴミの問題について取り上げていきます。
テイクアウト/デリバリーサービスとゴミ問題
コロナ禍の中で外出自粛をしていると、外食をすることも減ったのではないでしょうか。その一方で、テイクアウトやデリバリーサービスの需要が高まっています。皆さんも何度か利用したことがあるのではないでしょうか。スマートフォンやパソコンからすぐに注文ができ、美味しい料理が家で楽しめるということが大きなメリットです。しかし、店舗で提供される商品と、テイクアウトやデリバリーで提供される商品では大きな違いが1つあります。
それは、提供される際に使われるのが「食器」なのか「プラスチック容器」なのかという違いです。食器であればきちんと洗って乾かせば何度でも使うことができます。しかし、プラスチック容器はそのようなことができず、あくまで使い捨てを前提とします。そのため、食べ終わって残った容器はゴミとして捨てられてしまいます。
こういったテイクアウトやデリバリーサービスの普及に伴い、プラスチック容器をはじめとしたプラスチックごみが増えています。しかし、これを食器に置き換えて提供してしまうと食べ終わった後に食器を回収しそれを洗わなければいけません。感染予防の観点からみて、衛生的には使い捨てのプラスチック容器のほうが良いのかもしれませんが、とても難しい問題です。
通販サービスとゴミ問題
コロナ禍の中、外出自粛をしていると買い物に行くことも必要最低限にとどめることが多くなったと思います。そんな中で需要が増えているのがインターネットの通販サービスです。スマートフォンやパソコンから気軽に注文することができ、家から出なくても買い物を済ませることができます。日本では主にAmazon.co.jp、楽天、Y!ショッピングや、オムニ7といったネットスーパーなどがよく利用されています。この通販サービスとゴミの問題、どのような点で関わりがあるのかというと配送の際に使われている梱包材です。
基本的に梱包材として段ボールや、小さい商品であれば封筒などに入って届くことが多いかと思います。そしてその中には、配送中に商品に傷がついたり、破損したりしないようにするために緩衝材が入れられています。いわゆる「プチプチ」などです。
しかしその梱包材や緩衝材は、無事に商品が届けられた後はごみとして捨てられてしまいます。それぞれ梱包材は紙ゴミ、緩衝材はプラスチックごみとして扱われます。実店舗などではレジ袋の有料化とエコバックの利用が進んでいますが、反対に通販サービスは普及する一方で、こういったゴミが急増しています。
コロナ禍での家庭ゴミの扱い
コロナ禍で在宅時間が増え、結果的に家庭ゴミが急増しています。そして、その家庭ゴミの扱いが問題になっています。東京23区では、緊急事態宣言の発出前と発出後で比較したときに家庭ゴミの量が普段の2倍ほど増えていたという報告があります。先ほど取り上げたデリバリーサービスや通販サービスの普及が進んでいることや、不要になった洋服や雑貨などを捨てることが増えたことが要因ではないかとされています。
また、ゴミの量だけでなくゴミの捨て方や、それに伴う清掃員の方々の負担増加も問題になっています。特に多い例として以下のものが挙げられます。
- きちんとゴミの分別をせずに捨てること
- 袋の口をしっかり結ばずに捨てること
こういったことをきちんとせずに捨ててしまうと、ゴミを分別し直さなければいけなくなり、清掃員の方々への感染リスクが高まってしまいます。
ゴミ拾いボランティアの減少
ポイ捨ては環境保全や街の景観のためにもしてはならないことです。そのような状況をみて、ゴミ拾いをしようというボランティアの方々がいらっしゃいます。しかし、使い捨てマスクや飲み終わったペットボトル、たばこの吸い殻などは人の粘膜に触れたゴミであり、感染のリスクがあります。また、複数人でゴミ拾いをする場合、密になってしまう恐れがあるという点も含め、現在は活動の自粛が推奨されており、ゴミ拾いボランティアは減少傾向にあります。
ゴミの量が増え続けるとどうなるのか~最終処分場問題~
なぜゴミを減らさなければならないのか。環境のため、地球のためはもちろんですが、日本においてのゴミ処理能力の限界が近いためというのが一番の理由です。日本では、再利用や再資源化が難しいゴミを処分するための「ゴミ埋立地」や「最終処分場」が存在します。しかし、環境省の発表によればそのゴミ埋立地の寿命(=埋立地の容量)は全国平均であと20年ほどといわれています。(2019年時点)
このままゴミの排出量が減少せず、ましてや増加していく一方なのであればこの寿命は20年よりも早く訪れる可能性が大いにあります。それを防ぐためにも、今からゴミを減らしていくことが大変重要なのです。
コロナ禍の中で、これからゴミ問題とどう向き合っていくか
コロナ禍の中で、「ウィズコロナ」として感染予防とゴミの問題へ向き合うことを両立させなければなりません。そこで、「これくらいならできるかも」というゴミ問題との向き合い方をいくつか紹介します。
ごみを捨てる前にできること~3Rを意識して~
ゴミを捨てる前にもう1度考えてみてください。また、日頃の生活から3Rを心がけることが重要です。
Reduce(リデュース):ゴミを減らす
マイバックを利用してレジ袋の利用を控える
お家でご飯を食べるときも、なるべく割り箸ではなくマイ箸を使うのも良いでしょう。
ものは長く使うようにする
具体例として、メモ用紙は1回使った後は裏紙も使うこと、ボールペンはインク交換ができるものを選ぶことなどが挙げられます。
食べ残しなど、食品は無駄にしないようにする
デリバリーや外食の場合は食べきれる量だけを注文するようにしましょう。
Reuse(リユース):再使用する
フリマアプリやリサイクルショップなどで売る
洋服や電化製品、雑貨など、捨てる前にフリマアプリで販売してみるのはどうでしょうか。近頃は、スマートフォンで写真を撮るだけで簡単に出品ができるサービスも増えています。またリサイクルショップなどに持っていき、買い取ってもらうのも良いでしょう。
Recycle(リサイクル):再資源化する
リサイクルボックスを活用する
ペットボトルや缶、瓶などはリサイクルが可能です。スーパーや商業施設などでリサイクルを行っている店舗もあります。また、リサイクルすることによってポイントや現金に換えてくれるサービスを行っている場合もあります。
補足
現在ではより環境に配慮し、上記の3Rに Refuse(リフューズ):ゴミになるものを断ることとRepair(リペアー):壊れても直して使うこと を加え、5Rと呼ばれることもあるようです。
コロナ禍でのゴミの取り扱い方
いくらゴミを減らす努力をしても、人間が生活している以上はゴミが出てしまいます。そこで感染予防のために、ゴミを取り扱う際に気を付けるべきことを紹介します。1
ポイ捨てをしない
コロナ禍であってもなくてもポイ捨てはするべきではありませんが、コロナ禍の今こそ、きちんとゴミ箱に捨てるようにしてください。自分の付けたマスクや手を拭いたウェットティッシュ、たばこの吸い殻など、特に人の粘膜に触れたものは絶対にポイ捨てをしないでください。何気なく捨ててしまったゴミから感染する恐れがあります。また、ポイ捨ては地方自治体の条例違反となり、罰金が科される場合もあります。
ゴミの捨て方
ゴミ袋にはパンパンにゴミを入れず、きちんと口を結ぶ
きちんと口を結ばないと、ゴミが袋から出てきてしまいカラスなどに荒らされやすくなり、感染のリスクが高まります。
マスクやウェットティッシュなど、人の粘膜に触れたものは袋を二重にする
ポイ捨ては絶対にしてはいけません。袋は二重にして捨てると破れる心配もなく、感染予防に繋がります。
ペットボトルや瓶・缶類はきちんと分別をし、口やキャップもしっかり洗ってから捨てる
きちんと分別をすることで、清掃員の方々の負担を減らすことができます。また、口やキャップもしっかり洗ってから捨てることで感染予防に繋がります。
ゴミ出しをした後は手洗いうがいをしっかりとする
地域のゴミ捨て場は家の外にあることがほとんどでしょう。ほかの住民の方が出したゴミやカラス除けのネットにウイルスが付着している可能性もあります。意外と忘れがちですが、ゴミ出しをして帰ってきた後はしっかり手洗いうがいをしましょう。
まとめ
今回は新型コロナウイルスの影響で一変した生活と、様々なゴミの問題との関連について取り上げました。皆さんが少しずつ意識を変えるだけで、今回取り上げた問題は大きく改善していくことができます。しかし、少しずつでも改善していかなければさらに悪化し、最終処分場問題や環境破壊、延いては地球温暖化へ多大な影響を与える恐れもあります。
「コロナ禍でストレスも溜まり、こんなところまで気が回らない…」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、今後の日本の、そして世界の環境のためにもこの問題に向き合っていきましょう。