太陽光発電導入時に考えられるトラブル
最近は太陽光パネルを積載している住宅も増えてきており、日本の再エネ自給率も徐々に高まっておりますが、そもそもなぜ太陽光発電が増えているのか皆さんご存じでしょうか。その最も大きな要因として考えられるのが、FIT制度による国の後押しです。この制度により、再エネの電気を高値で売ることができるようになったため、太陽光発電を設置するご家庭が大きく増加しました。FIT制度がなければ、電気の売電収入では太陽光発電の購入費用を賄うことは難しいのですが、FITの後押しにより概ねのケースで10年前後で初期費用をペイし、その後は常に売電収益を得られるような形となりました。このFIT制度が導入された理由として、日本のエネルギー自給率の低さが挙げられます。
2017年における日本エネルギー自給率は9.6%。およそ90%のエネルギーを海外からの輸入に頼っている状態にあります。そのため、日本国内のエネルギー自給率を上昇させるために、CO₂を排出しない再生可能エネルギーに注目し、対象となる太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの再生可能エネルギーを普及させるためにFIT制度が開始されました。
さて、この5つの再生可能エネルギーの中で、読者の皆さんに最も身近に感じるエネルギー発電はおそらく太陽光発電だと思います。なぜなら、太陽光発電はほか4つに比べ装置が設置しやすく、ご家庭の屋根や公立の小中学校など、さまざまな場所で比較的手軽に設置できるからです。しかし、そんな太陽光発電ですが、設置の際や設置した後に利用者の人々から数々のトラブルが報告されています。今回は、実際に報告されているトラブルの内容と、そのようなトラブルを未然に防ぐ方法をご紹介していきたいと思います。
まず、経済産業省・資源エネルギー庁の報告書によると、国民生活センターに寄せられた太陽光発電設備に関するクレームやトラブルは以下のようになっています。
強引な販売方法や、契約・解約に関するトラブルが圧倒的に多く、全体の約70%に上っています。それでは太陽光発電設置の際に起こりうるトラブルを大きく3つに分けてご紹介します。
1:人為的なトラブル
- 悪質業者による相場とかけ離れた不当に高額な契約
- シミュレーションの水増し
- 長時間の訪問販売、夜間訪問
- 予期せぬ高額なメンテナンス費用
- 設置後すぐに充電が始まらず、売電価格も違う
- 契約時に税金の説明を受けていなかったが、固定資産税や課税通知書がとどいた
- 提示された売電収入よりも少ない
人為的なトラブルの中で最も多いのが、費用に関わるトラブルです。太陽光発電システムを売る業者には、もちろん信用を置ける業者もありますが、一方で悪質業者も少なからず存在します。または、業者の説明が不足しており、後から予期せぬ費用が発生してしまう場合もあります。
このようなトラブルを防ぐためには、業者による説明を正確に聞き分ける、消費者側の知識が必要となります。特に、費用の問題は選択を誤るとかなりの損害となってしまう場合があります。そのようなトラブルを防ぎ、お得な太陽光発電設備を選ぶために、ぜひ注目していただきたいポイントが3つあります。
1つ目は、kW単価というものです。このkWとは、発電できるパワーを表します。つまりkWが大きければ大きいほど、同じ大きさのパネルでも発電量が増えるということです。よって、kWが大きく、かつお手頃価格なものがよりお得な商品といえます。例えば同じ大きさの太陽光発電を売っているA社とB社の料金を比較するとします。
- A社:値段90万円、容量3kWの場合、kW当たりの単価は30万円
- B社:値段100万円、容量4kW、kW当たりの単価は25万円
この場合、kW単価が安いB社の方がお得という計算になります。お得な太陽光発電設備を見分ける一つの方法として、こちらの計算方法をご紹介しました。その他、メンテナンス費用や税に関する情報は、事前に業者の方と納得のいくまで話し合い、時間をかけて決断をすることをお勧めします。
2つ目は変換効率の高さです。変換効率とは、太陽光パネルが太陽光の光エネルギーをどれほど電気に変換することができるのか、という電気への変換の効率を指します。変換効率が高いほど、同じ枚数の太陽光発パネルを設置したとしても、より、多くの電気を生み出すことが可能となります。
ちなみに、変換効率を表す指標として、「モジュール変換効率」と「セル変換効率」の二つの指標が存在します。モジュール変換効率とは太陽光パネル(太陽光モジュール)1㎡あたりの変換効率を指し、一般的に太陽光パネルの発電能力を表す指針として、このモジュール変換効率が使用されています。
一方、セル変換効率とは、太陽光モジュールの最小部品であるセルの変換効率を指示しており、モジュール変換効率に比べて値が大きくなります。太陽光発電の変換効率を比較する場合は、ぜひモジュール変換効率を基準とし、比較してみてください。
3つ目は設備利用率の高さです。設備利用率とは、一年間、太陽光発電設備が100%の出力で発電した場合の発電想定量に対して、実際の発電量の割合がどれほどであったかを指示した数値を指します。つまり、太陽光発電設備が一年間でどれくらい設備性能を有効に利用できているかがわかります。
よって、設備利用率が高ければ、その分設備性能を有効に利用できていることがわかり、もし設備利用率が低下していたとしてもその原因を突き止め、改善していくことができます。ちなみに、太陽光発電の平均的な設備利用率は約13%(10kW以上の場合)です。設備を最大限有効に利用できるよう、設備利用率の高い製品を選択することをお勧めします。以上3つのポイントより、kW単価が安く、そして変換効率と設備利用率が高い製品ほど、お得かつより効率的に電気を生み出すことができます。
2:工事中に起こるトラブル
重機による騒音や振動、工事現場から出る砂ぼこり
→これらの鉱害は近隣住民の方からクレームに繋がりかねません。工事現場から出る砂ぼこりに関しては、近隣の外壁や車を汚染してしまう可能性があります。事前にどれほどの騒音や振動が予想されるのかを確認し、近隣の方への理解を求める必要があります。
3:太陽光発電設置後に生じる設備トラブル
落雪、雪による被害
→太陽光パネルの上に積もった雪は滑り落ちやすく、危険な状態になる場合があります。また、太陽光パネル一枚で約15~20㎏とかなり重さがあるにも関わらず、この上にさらに雪が積もってしまうとかなりの重さが建物にかかることになります。そのうえ、長時間太陽光パネルの上に雪が積もってしまうと、雪が太陽光を阻害し発電しなくなるケースもあります。このように数々の雪による被害がありますが、被害を未然に防止する策も複数存在します。例えば、落雪による被害を防ぐために、滑り止めが付いたパネルを選ぶ、または落雪防止設備を設置するなどです。そのほかの課題に対しては、各家の屋根の角度や土地、積雪量によって対策が異なってきますので、それぞれの過程にあった解決策を業者の方と相談してください。
雨漏り
→太陽光発電システムを家の屋根に設置する際、多くの場合で屋根に穴をあけて固定金具を設置する必要があります。そのため、野地板の上にある屋根材と防止シートにも穴をあける必要があり、その結果雨漏りを発生させているケースがあります。こちらに関しては、万が一太陽光発電施工の影響でのちに雨漏りが発生した際にはどのように対応をするべきなのか、業者の方にあらかじめ確認しておきましょう。
光害
→近隣の家に反射光がかかってしまうトラブルです。光の反射角度によっては、隣家の室内の気温を上昇させてしまう場合もあります。そのため、太陽光発電の設計段階で光害が発生しないよう、しっかり考慮することが必要です。こちらは、パネルを設置する業者の方と注意深くご確認ください。
塩害
→こちらは海岸から2㎞以内の場所は塩害地域発生しやすいトラブルの一つです。太陽光パネルに関しても海の塩の影響を受けてしまいます。この塩害の影響により太陽光パネルの劣化やエネルギー変換機器の破損してしまう場合があります。沿岸地域にお住まいの方は、ぜひ塩害対策が施された太陽光パネルをご確認ください。
季節ごとによる発電量の差、発電量が少ない
→太陽光の日照時間が長ければ長いほど、発電量も増加するため、夏の発電量が最も多く、一方冬の発電量は少ないのではないかというお考えをお持ちの方は多いと思います。しかし、実際の太陽光発電の季節ごとによる発電量とは異なっています。ソーラーパネルの一つの大きな特徴として高温に弱いという点が挙げられます。ソーラーパネルの表面はガラスで覆われていますが、内部の発電を行う部分はシリコンと呼ばれる半導体でできています。そのシリコンの部位は高温になればなるほど機能が低下する特性と持っており、そのため夏のような高温が続く時期には発電の効率が低下し、発電量が少なくなってしまいます。このような特性からソーラーパネルが高温になりすぎず、安定した日照時間が確保できる春から初夏にかけた期間(3~5月)が、最も一年で安定して発電量が高くなります。季節ごとに発電量に若干の差が生じることを理解し、ソーラーパネルを選ぶ際には高温にもしっかり対応した機種を選択することをお勧めします。
地面設置型における除草トラブル
→地面設置型の太陽光発電を設置する際、周囲の雑草などは火事防止のためにできるかぎり取り除く必要があります。その際に除草剤をまいた結果、近隣の畑や土壌への悪影響などを及ぼしてしまう場合があります。また、近隣の景観を損ねてしまう可能性もあるため、地面設置型のような大きい機材を設置する際には、事前に近隣の方からの理解を求める必要があります。
台風や土砂崩れ、地震といった災害による破損トラブル
→強風により設置したパネルが飛ばされる、またはシステムの浸水による機器の故障する場合があります。強風で飛ばされたパネルはほかの民家や最悪の場合人体に直接あたってしまう可能性があり、非常に危険です。こういった災害による故障・被害が発生した際の補償は、サービス料金に含まれているのかを、事前に確認しましょう。
パワーコンディショナーの動作不良
フィルターの目詰まりや経年劣化によりパワーコンディショナーが故障してしまうケースがいくつもあります。パワーコンディショナーとは、太陽光発電システムを利用するうえで、発電された電気を家庭などの環境で使用できるよう電気を変換する機器のことを指します。こちらは、10年を目処に寿命がくるため、10年を目途に交換が必要になります。メンテナンスを怠ればもっと早く故障してしまう場合も考えられますが、10年以内であればほとんどのメーカーの保証期間内に該当するため無償交換が適用できます。ただし、発電量を下げないためにも、可能であればパワコンのフィルター掃除などのメンテナンスを行うことをおすすめします。ちなみに、パワーコンディショナーが永久に動作し続けることはほぼ不可能です。メンテナンス不要と宣伝している業者の情報は信用しないようにしてください。
トラブルを防ぐために事前にチェックしたいポイント
- 施行実績が十分にある業者であるか
- kW単価は相場であるか
- 見積書が詳細に書かれているか
- 設計プランの綿密であるか
- メンテナンス、アフターフォローの説明がきちんとされているか
また、極端に価格が安い商品や、太陽光発電の設置を急がせる業者に関しても注意が必要となります。業者による説明をすべて鵜呑みにするのではなく、利用者側がしっかり知識を蓄えておくことがとても重要です。事前に得た知識をもとに予期されるトラブルについて徹底的に話し合いと重ねることでより良い選択をすることが可能になります。信頼できる発注業者を見つけ、一生に一度かもしれない太陽光発電という大きな買い物で失敗しないよう、最善の選択をなさってください。