卒FITについて

  • 更新日:2024/03/11

初めに

現在の環境では、エネルギーは有限なものだとされています。かつては、石油や石炭などの化石燃料を爆発的に投入し、ありとあらゆるものの開発を可能にしてきましたが、もはやその力は失われつつあると言えます。

確認されているエネルギー埋蔵量としては、石炭とウランが100年越え、石油、天然ガスは50年ほどしかないと言われています。さらには国際エネルギー機関(IEA)によると、2040年のエネルギー消費量は2014年のエネルギー消費量の1.3倍を超えるとされています。

資源が減少していく一方で、エネルギー消費量は増加の一途を辿る。このままでは、近い未来のうちに少ないエネルギーを国同士で奪い合うような未来がやってきてしまうかもしれません。

そこで現在開発が進められているのが、「再生可能エネルギー」です。有限な天然資源に依存するのではなく、無限にある天然資源を有効活用する方法に、世界が注目しています。

風力や太陽光、火力、地熱に加えて、さとうきびから電力を生み出すバイオマス発電なども開発が進められてきました。ヨーロッパでは、ドイツやフランスなどの大国を筆頭に、積極的な推進制度が設けられるほどです。

日本においても、一つのターニングポイントがありました。2011年の3月11日に発生した東日本大震災です。浮き彫りになったことは2点あり、1つ目は高濃度の放射線による汚染度が高く、緊急の災害時やテロに対する脆弱性があること。

もう1つは、この際に都市部でも計画停電をしなければならない事態を招くほどの混乱を招き、影響が日本各地に出るほど原子力への依存度が高かったことです。他の原子力発電所に対しての活動停止の決定の場面で政府側の大きな揺らぎが垣間見えることもありました。

それからというもの、近年では再生可能エネルギーの導入が急がれることとなりました。その中でも特に着目されたのが太陽光発電です。規模は産業用のものから家庭用のものまで様々で、設置に関しても屋根を活用すればあまりスペースを必要としない他、設置費用も他の再生可能エネルギー発電装置と比較すればかなり安価で設置することが可能です。

年々、開発が進み、さらに安い価格での購入・設置が可能となってきています。今回取り上げる卒FITはこの太陽光発電に関する制度のことを表しています。

FITとは

では、そもそもFITとは何のことを表しているのか。FITはFeed-in-tariffの略です。2009年にFIT法が施工され、当初は余剰電力買取制度として、2012年からは改定されて固定価格買取制度とされました。

10年間は義務保証期間として高値で売電をすることが可能で、2009年時点では48円/kWhでした。この金額の高さによって、設置に関する費用が高額であるというデメリットの部分を拭うことが可能となり、一躍注目されることとなりました。

太陽光発電の設置費用は住宅用であれば150万円~300万円とされていて、初期投資分の利益は実質利回りで計算すると12年から13年ほどでの回収が可能です。

目的としては太陽光発電の各家庭での普及であり、2011年時点では全国での太陽光設置件数が100万件にも満たなかったのですが、2016年には205万件にも登り、かなりの効果があったと言えます。

住宅太陽光発電導入件数

住宅太陽光発電導入件数

卒FITとは

卒FITとは、FITでの固定価格での販売期間が終了することを意味しています。太陽光発電を普及させるために設けられた制度でしたが、はじめて卒FITの対象者が満了となるのは2019年11月までであり、引き続き買い取りが行われるのか、行われた場合の価格はどのように変化するのか、といった点に関しては未確定のままでした。この問題は「2019年問題」とも呼ばれています。この卒FITがどのくらいの影響をもたらすのでしょうか。

人口

まず、関係していた人口についてです。2019年に卒FITを迎える世代の太陽光発電は53万件にも達したとされています。これだけでもかなりの住宅で太陽光発電に関して動きがあったことは確かですが、先述したように、2009年から太陽光発電の設置件数は急激な増加を見せてきたことにも注意を払うべきです。

設置件数が増加した、ということはそれだけ卒FIT件数も増加するということに繋がるからです。それだけ多くの人々に関係してくる事柄だと言えます。

価格

次に大きな変動を見せる価格についてです。下の表をご覧ください。

年度 住宅用 産業用
2009年度 48円/1kwh 約24円(電力会社が自社買取)
2010年度 48円/1kwh
2011年度 42円/1kwh
2012年度 42円/1kwh 40円/1kwh
2013年度 38円/1kwh 36円/1kwh
2014年度 37円/1kwh 32円/1kwh
2015年度 33円/1kwh(出力抑制なし) 35円/1kwh(出力抑制あり) 29円/1kwh
2016年度 31円/1kwh(出力抑制なし) 33円/1kwh(出力抑制あり) 24円/1kwh
2017年度 28円/1kwh(出力抑制なし) 30円/1kwh(出力抑制あり) 21円/1kwh

ご覧の通り、FITが終了する前から年々売電価格は下落しています。最終的には住宅用でも産業用でも、FIT開始の2009年度と比べて2017年度には倍近くもの価格低下を見せる形となってしまっています。そしてFITの期間終了と共に更なる下落を見せます。

現在も各電力会社で売電のプランの提示は行っていますが、現在の平均は6円/kWh~9円/kWh程までに落ち込んでしまっています。ちなみに、どれほどの収益の差になるのか。たとえば年間売電量4,000kWhとすると、FIT制度があった時と卒FIT後で売電収入のシミュレーションを行ってみます。

FIT制度あり(2019年度) 買取価格:26円/kWh
年間売電収入:104,000円
卒FIT後(2019年度) 買取価格:8円/kWh
年間売電収入:32,000円

結果として、卒FIT後には年間売電収入が72,000円も下がってしまうことが分かります。とはいえ、電力会社側も卒FIT後に受けられる様々なサービスを展開する予定です。多くの方が利用をしている、更には今後も多くの新規顧客が見込まれる中でどれだけの利益還元を生み出せるかが、電力会社間での差になるかもしれません。

今後への展開

下方修正ばかりが目立ってしまっている卒FITですが、では卒FITを迎えた人々はどのような対応を取るべきなのか。現段階では3つ選択肢があります。

①大手電力会社への売電を継続する。

売電価格は大幅に下がってしまいますが、電力プランなどは大手に頼っている人が多いと思うので、余計な手間をかけずにこれまでと同じように売電することができるようになっています。しかし48円がいきなり10円以下になるのでこれまでのように売電収入を当てにすることはできなくなるでしょう。売電収入をお小遣いのように考えるのであれば、こちらをオススメします。

②新規参入の電力会社に乗り換える

少し前から電力業界にたくさんの企業が参入してきており、そういった企業も売電を行うことを発表しています。売電価格については企業によって様々ですが、大手と比べて0.5円~1円程度高く設定されているところが多いです。

これには大手から自社の電力に乗り換えてもらう狙いもあると思われます。ただしほとんどの場合は、太陽光発電の売電先の切替に併せて、その電力会社の電力プランを利用する必要があるので、大手の電力会社と契約している場合は電力プランを変更するために手間がかかります。

蓄電池や電動自動車(EV)に貯蓄しておく

上記2つが電力会社ありきの方法であったのに対し、この選択肢は自家消費型の電力使用例になります。電力会社から買う電力が平均で25円/kWhなのに対して、自家発電電力の価格は10円/kWhにも満たないほどです。

この差を上手く活かして、お得に電力を使おうというのが魅力的なポイントになります。蓄電池と電気自動車に関しては、ここ数年で急激な開発の発展が見られ、より効率良く、安全に蓄電できるシステムを設けています。

高効率蓄電池といえば、リチウム電池が挙げられます。時折、発火するニュースが報道されていることもあり、若干の安全問題を抱えていましたが、その安全問題もさまざまな会社の開発により、解決されつつあります。近い将来、家庭用にも、安全で信頼度が高く、かつ安価な蓄電池が普及するでしょう。昼は太陽光で充電をし、夜になってその電力を使う。まさに理想の再生可能エネルギーの形と言えるでしょう。

加えて

現在も太陽光発電の普及率が高まってはいますが、以前ほど売電のメリットは薄くなってしまわれたように思われがちです。実際にここまで書かれた記事の内容としてはどちらかと言えば太陽光発電の実態のマイナス面に多く触れていたかもしれません。しかし、はっきりとしたプラス面もあります。それは技術面での進化に表れています。

まず、装置そのものの価格です。これは新規設置を検討中の人々にとってのメリットになります。現在は2009年の当時と比較して格段に安い価格で太陽光発電装置を購入が可能です。

半額ほどにまで低下していると言われています。企業の各社が価格競争の中で、材料や仕組みに拘り、より安い製品の開発に挑んだ結果でしょう。回収出来る利益は減額となってしまいまったことは事実ですが、初期投資費用も減額されることとなるので、負担としてはあまり変わらないのも事実です。

そして、発電量です。お金に換えられる量が減ったからといって発電量自体が減ってしまった訳ではありません。むしろ、製品の性能は向上し、発電に対して効率は良くなっています。

太陽電池が光エネルギーを電気に変換する時の効率を「変換効率」と呼び、数値が高いほどたくさんの電気を生むことができますが、太陽電池の種類によって変換効率には差があります。現在市販されている太陽電池の変換効率は、およそ15%~20%ほどです。

太陽電池は、その素材によって、「シリコン系」「化合物系」「有機系」「有機無機ハイブリッド系」に大きく分類されます。現在もっとも普及しているのはシリコン系で、実績にも優れています。中でも、「結晶シリコン系太陽電池」が世界市場の90%以上を占めています。

そんな結晶シリコン系では、さらなる高性能を目指そうと構造の工夫や改良が研究されています。現在、このタイプで世界最高性能を達成しているのは日本企業で、セル単位での変換効率は26.6%、モジュール単位での変換効率は24.4%です。また、別の日本企業も変換効率25%を超える数値を達成していて、日本勢が世界をリードしています。

更には関連する機器も発展を遂げています。これは<今後の展開>の欄で示した③蓄電池や電気自動車(EV)に貯蓄しておく、にしか当てはまりませんが、これらの蓄電池や電気自動車も太陽光と同様かもしくはそれ以上に技術開発が推奨されています。特に、電気自動車などにおいては、車種自体が増加することで家庭により浸透していくようにもなります。

ちなみに最新型の日産LEAFの蓄電池容量は40kWhで、このほかの電気自動車も蓄電池は10-24kWhくらい載っていて、どれも家庭用の蓄電池と比べて大容量であるというデータがあります。今後の更なる発展に期待が高まります。

エネルギーの大量消費が嘆かれる時代に一縷の望みを見出した、と言っても過言ではない太陽光発電。現在は高速道路や砂漠等でも設置が進められています。どこまで可能性があるかは分かりませんが、「卒FIT」を迎えた太陽光発電設備が今後どのような運用をされるか注目されることは間違いないでしょう。

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エコモ博士
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