蓄電池の選び方・見るべきポイント
FITは、太陽光発電を普及させるために制定された制度で、売電価格は諸外国と比較しても高値に設定されており、太陽光発電を設置してから10年間は買取価格が固定で保証されるというものです。その効果もあって、太陽光発電は急速に普及していきました。
しかし、住宅用太陽光発電では、制度が開始した2009年11月から10年後の2019年11月より買取期間の保証が終了する家庭が順次出てくることになります。その数は2019年だけでも53万件とも言われ、2019年11月以降は毎月卒FITを迎える家庭があります。
卒FITを迎えるに際し、太陽光発電で余った余剰電力はどうするべきか、ということが今後の課題となっています。その課題を解決する選択肢として、蓄電池や電気自動車に余剰電力を蓄電して自家消費するという方法と、大手電力会社や新電力会社による卒FIT買取サービスを利用するという方法があります。
今回、その一つの方法として蓄電池を導入して卒FITに備えようと考えている方に、蓄電池の選び方をご紹介しようと思います。
蓄電池の選び方
1 寿命
蓄電池の充電と放電の回数(サイクル)には寿命があります。保証されている回数を超えると、蓄電の容量が減っていきます。
2 蓄電容量
蓄電池の容量によって蓄電した電気の使用可能な時間や使用可能な電力量が異なります。予算やライフスタイルに合わせて選ぶといいでしょう。
3 サイズ
蓄電池の大きさは製品によって様々あります。設置したい場所に置くことができるサイズかどうか、事前に採寸しておくといいでしょう。また、屋内設置限定の蓄電池もあるため注意が必要です。
4 太陽光発電との併用
自宅などに太陽光発電がある場合、蓄電池と併用したらどのような効果があるかシミュレーションしておくと良いでしょう。
5 停電時出力
蓄電池を設置するにあたり、停電した時に蓄電池の電気が使えるということは安心面でのメリットとなります。蓄電池の種類によって放電できる時間は異なるため、最大でどのくらいの電気をどれだけの時間使うことができるかということを考えると良いでしょう。
6 保証
メーカーによって蓄電池の保証内容は様々あります。保証期間と内容をチェックすることが大切です。
〜寿命〜
スマートフォンのバッテリーが使っているうちにだんだん弱くなっていくことは多くの人が経験したことがあると思います。それは蓄電池にも言えます。簡単に考えますと、蓄電池はスマホのバッテリーを大きくしたものということができます。
ということは、蓄電池にも寿命はあるということです。蓄電池の充電と放電のサイクル寿命(満充電から完全放電までを1サイクルとする)は各メーカーから出ている蓄電池によってことなり、寿命が短いもので3,000回、寿命が長いもので10,000回を越すものもあります。
寿命を迎えた蓄電池は導入した当初より蓄電できる容量が減っている状態になります、各メーカーが公表しているサイクル回数を過ぎても全く使用できなくなるわけではなく、充放電を繰り返すことは可能です。
蓄電容量が50%から60%まで落ちれば充電回数が多くなるため、さらにサイクルを重ねることになるので、一気に性能劣化が進んでしまいます。この状態になってしまうと買い替えを検討するべきでしょう。メーカーによって蓄電池のサイクル寿命は異なっています。
メーカー | サイクル |
---|---|
京セラ EGS-LM1201 | 6,000サイクル |
シャープ JH-WB1621 | 12,000サイクル |
パナソニック LJPB21 | 10,000サイクル |
〜蓄電容量〜
蓄電池を購入する際に注意する点として、購入したい蓄電池が使用する電力量に応じた蓄電容量を備えているかという点です。購入した蓄電池の蓄電容量が使用する電力に応じていなかった場合、足りない分を充電する必要が出てくるためサイクルの回数が増え、寿命を早めてしまうかもしれません。
よって、できるだけ長く使用するためには、使用する電力量に応じた蓄電容量の蓄電池を選ぶことが重要です。使用電力量に応じた蓄電容量をもつ蓄電池であれば10時間の使用が可能な蓄電池がある場合、この蓄電池で倍の使用電力量を使用すれば半分の5時間しか使用できないといった具合です。
逆に、使用電力量が半分であれば20時間の使用が可能であるため、あえて蓄電容量の大きい蓄電池を買うことも良いでしょう。また、蓄電池は蓄電容量いっぱいまで使用できるわけではありません。各メーカーの製品によって蓄電容量に対して、実際に使用できる実質容量が異なっています。
メーカー | 蓄電容量 | 実質容量 |
---|---|---|
パナソニック LJPB21 | 5.6(kWh) | 3.84(kWh) |
シャープ JH-WB1621 | 4.2(kWh) | 3.30(kWh) |
テスラ Powerwall(2019年版) | 13.5(kWh) | 12.15(kWh) |
京セラ EGS-LM1201 | 12.0(kWh) | 9.78(kWh) |
〜蓄電池のサイズ〜
蓄電池の大きさの目安として、
屋内型:エアコンの室外機1つより一回り大きいくらい
屋外型:エアコンの室外機2つより一回り大きいくらい
となっています。これを目安に蓄電池を設置する場所を確保すると望ましいです。
また、重さに関しては、
屋内型:60kg~170kgほど
屋外型:120kg~250kgほど
となっています。
壁掛けタイプの蓄電池の場合、重さの関係上、木造住宅への設置ができないものもあるので気をつけましょう。以下、設置の条件をいくつか挙げていきます。
屋内
- ○:分電盤及び使用したい機器に近い場所が望ましいです。
- ×:湿気のこもりやすい水回りへの設置は避けましょう。また、床の対荷重に問題がある場所への設置は避けましょう。
屋外
- ○:直射日光が当たらない場所、熱がこもりにくい場所、高温多湿出ない場所、重塩害地域でない場所、積雪地域でない場所、寒冷地帯でない場所が望ましいです。
- ×:水はけの悪い場所、燃えやすいものの近く、ガスの発生がある場所、粉塵が多い場所、高圧電線やトランスの近く、人や貨物の通りが多い場所は避けましょう。
重塩害地域とは、海岸から50m以内、海水のしぶきが頻繁にかかる、もしくは強風時に海水が直接かかるエリアのことをいいます。
〜太陽光発電との相性〜
太陽光発電を導入している場合、自家発電で余った電力(余剰電力)を蓄電池に充電することができます。日中に発電して使わなかった電力を太陽光発電ができない時間帯や天候の時に使用することができます。
すでに太陽光発電を導入している方にとっては、2019年から始まる「卒FIT」で余剰電力が売電できなくなったときへの備えとして蓄電池を導入するという手もあります。メーカーによっては、太陽光発電との連携を考えて設計された蓄電池を販売しており、使用者が使いやすいと感じたものを選ぶと良いでしょう。
例としてシャープの場合、太陽光発電と蓄電池を1台で対応する一体型パワーコンディショナータイプがあります。パナソニックの場合、太陽光発電と蓄電池を連携して平常時も停電時も太陽光発電の電力をフルに活用する創畜連携システムがあります。
〜停電時出力〜
停電時、蓄電池に貯めた電気を使う際、予め使いたい回路を選ぶ必要がある「特定負荷タイプ」と、家中全ての回路で電気を使うことができる「全負荷タイプ」があります。
全負荷タイプは高額なものが多いです。どれだけの電力を停電時に使いたいかを考え、製品を選ぶと良いでしょう。
家庭内で使用されている主な家電製品の消費電力一覧
ノートパソコン | 50W~120W |
---|---|
携帯電話の充電器 | 15W |
液晶テレビ | 40W~60W |
LEDスタンドライト | 6W~10W |
冷蔵庫 | 150W~600W |
エアコン | 100W~2000W |
ラジオ | 5W~10W |
停電時に使いたいご自宅の家電製品の出力を合計し、それに対応する蓄電池を選ぶと良いでしょう。(合計2,000W未満の場合、2kWの蓄電池を選ぶなど。)
各メーカーの蓄電池の停電時最大出力
メーカー | 出力 |
---|---|
パナソニック LJPB21 | 2kW |
シャープ JH-WB1621 | 1,500W |
テスラ Powerwall(2019年版) | 5~7kW |
京セラ EGS-LM1201 | 2kW |
〜保証〜
メーカーによって保証の期間や内容は様々です。保証期間の目安として、短いもので7年、長いもので15年ほどです。無償保証のものが多いですが、中には有償の保証もあります。
保証期間内に蓄電容量が一定基準を下回った場合、蓄電池内の電池の交換が可能です。購入時には保証の条件がどうなっているのかをしっかりと確認し、蓄電容量に低下が見られた場合に備えるようにしてください。
メーカー | 保証期間 |
---|---|
パナソニック LJPB21 | 15年 |
シャープ JH-WB1621 | 15年 |
テスラ Powerwall(2019年版) | 10年 |
京セラ EGS-LM1201 | 15年 |