伐採後放置されてしまう木々

  • 更新日:2020/08/28

所属:高知工科大学

インターン生:I.Kさん

伐採後放置されてしまう木々の写真

木々を伐採することによる問題は一重に自然災害に留まりません.木を育てるために間伐を行い,費用削減の為とそれを放置しているといつの間にか山には放置された木々が残されているでしょう.いずれは腐敗して自然に還ります,しかし分解量が多くなると木々は分解しきれなかったメタンガスを大気中に蓄積させるのでした.

林業従事者の減少

林業の仕事

地ごしらえを2~3月に行います。立木を伐採した跡地を整理し、苗木を植えるための準備をします。植栽を4~5月に行います。苗木を植える作業です。下刈り、つる切りを6~8月に行います。苗木の成長を邪魔する雑草やかん木を刈り払い苗木の成長を助けます。

枝打ち、除伐を9~10月に行います。余分な枝を切り落とします。間伐を11~12月に行います。木の成長を助け、若い木材を収穫するために木を一部切り落とします。

林業従事者の推移

林業従事者は長期的に減少傾向で推移しています。平成2年時点で10万人であったその数は平成12年で6。8万人、平成27年では4。5万人となっています。総務省の国勢調査より全産業における若年者率(総数に占める35歳未満の割合)は高齢化率(総数に占める65歳以上の割合)を10%近く上回っていますが、林業においては高齢化率の方が若年者率より8%程上回っており、若年者率の新規従事者確保を目指さなければ従事者は今後大きく減少してしまいます。

林業従事者の労働環境改善

昭和60年から比べて平成30年時点で年間210日以上の就業が9%から65%に上昇し、月給制での給与制度が4%から25%に上昇しました。しかし体力負担や危険性が高い割に林業従事者の平均年収は343万円であり、林業に従事し続けていたとしてもその年収は20歳での240万円からピークとなる40代で360万円となっています。勉学に特別力を入れてきた若年者が林業という道を選ばない理由はここにもあるのでしょう。

林業道具の連続使用、従事者の健康問題

林業従事者といえばチェーンソーですが、長時間の使用は健康に影響が出てしまうことから1日2時間以内の使用が望ましいとされており、従事者の少ない環境では道具に頼った作業が行えず効率化が図れません。

また安全の為にヘルメット、ゴーグル、イヤーマフ、防護ズボン、グローブ、スパイクシューズなど複数の安全具を着用して足場の整備されていない場所で作業を行います。重い道具をもって徒歩での移動を余儀なくされるため長期的に働くにはかなりの覚悟を必要とし、若年者から苦手意識を持たれてしまいがちです。

従事者減少による人工林管理者の負担

従事者が減少の一途である以上一人当たりの仕事負担量が増加し、コストと時間をかなり要するようになります。一人にできる仕事量は明らかに限界がある仕事なのでコストが大きくなっていくのは必然的と言えます。

緑の雇用

林業従事者の減少、不足の対策として緑の雇用という事業があります。これは未経験者でも林業に就き必要な技術を学んでもらうため、林業経営体に採用された人に対して講習やキャリアアップを支援する制度です。キャリアアップが早く、従事者としてすぐに働き始められるので国内の林業従事者増加をひと押しした制度です。

伐採とそれと共にかかる費用について

作業費について

伐採費用は高さ3m未満であると3、000~5、000円、3~5mでは15、000~18、000円となり、5mを超えると25、000~30、000円となります。伐根費用は木の直径によって変わり、30cm以下なら10、000~15、000円、80cmを超えると40、000円を超えてしまいます。山からの運び出しを行うとクレーンを使用するために10トンで100、000円を超え、パワーショベルを使用するなら5トンで30、000円を超えることになります。舗装された道が遠くなりがちな山中では運び出しのための費用が高くなってしまい、間伐材は山に放置されてしまうことになります。

処分費について

この後廃棄物として処分してもらう場合は、処分の為に木を細かくしたり運搬したり、廃棄したりと処分費として作業費の半額かそれ以上を必要とする場合があります。もし作業を行った業者と別の業者に頼む場合は作業費と同じだけの額を処分費として必要になることもあります。造林後2、3年の木を間伐した際は売ることができないため、処分してもらうか自然に還るのを待つことになりますが処分の際も当然運び出し作業があるためこちらも費用が大きくなってしまいます。

管理者の収入

スギ中丸太1本あたりの売値と経費の比較

平均樹高を22m、平均直径25cmとすると材積表から0。5746m^3、平成22年での山元立木価格は2654円/m^3よってスギ1本の値段は1、525円。これに対しスギを50年育てると必要経費はおよそ1ha当たり231万円。1haに植えられるスギの本数は3000本、しかし間伐によって最終的には1500本になるとします。この時、間伐された木は売るに値しないため、そのまま山に放置、または廃棄となります。

35年以降の間伐材であれば用途が出てきますが、こちらは市場へもっていく費用が高い割に売れず、売ってもお金になりません。結果1500本として1本あたりは1540円。単純に売値と経費を比較するとスギ1本につき15円の損失となります。驚くことにただ育てて売っても赤字となります。

スギ伐採の作業費、運搬費

50年スギから中丸太(長さ6m)が4本とれるとして長さ24m、平均直径25cmとすると0。912m^3。重量はスギが500kg/m^3であることから456kgと計算できます。上記作業費の条件で作業費を求めると伐採に25、000円、伐根に10、000円が一本あたりにかかります。このうえ運び出しの為1haに500本だとして重量22。8トン、228、000円近くかかってしまいます。

国の林業補助金により1haあたり230、000円など補填されていますが、それでも林業者は手元にほとんど何も残らない状態となってしまっています。植栽などで補助金も出ますがそれによってギリギリ赤字を免れているという状況です。路網の整備を行うことで搬出費を抑えることが出来ます。森林経営計画というものがあり、これを作成すると市区村長等の認定を受け様々な支援措置を受けられます。費用負担を減らし、計画的に森林の手入れを行えます。これらの補助のおかげで管理者は管理を続けることが出来ます。

人工林のある山の現状

経費、作業費、運搬費などによって結果として山の所有者の手元には再造林できるかどうかのわずかな金銭が残るか、再造林を考えると赤字になるような金銭しか残りません。ではこのどうしようもなさそうな状況を現状どうしてるのでしょう。

再造林しない

赤字経営で回すことが出来ない以上植えたままで放置することしかできません。別の収入口で稼ぎどうにか再造林するだけの額を集める必要が出てきます。そのさい長年放置された森林は地表に日が届かず、根が張らないせいで土が痩せます。これによって保水力を失い自然災害による被害を大きく被ります。伐り捨て間伐を行っていた場合土砂災害と共に木材が流れてしまい二次災害を引き起こす原因ともなります。

また長年放置した場合課税対象となり費用が無駄にかかってしまいます。もしくは主伐をした後放置の手段もありますが、こちらはもちろん自然災害の犠牲となり、そのうえ雑種地として課税の対象となるので放置していた場合よりも多く税金がかかります。赤字経営、またはほとんど収入のないまま管理を続けるのは管理者としはつらく早々に山を手放してしまうことでしょう。これらが増えた場合管理者は段々と減少してしまい、放置された森林や山々が増えこちらは新たに害獣被害などを受けることになります。

間伐を減らす

間伐そのものを減らしてしまえば定期的な経費が減少し、結果として赤字を避けることができます。しかし木の適正量を守って植林と間伐を行っていない場合、木が太く、幹を多く広くさせて育ってしまい真っ直ぐな材木を得ることが出来ません。これにより商品価値が低下し売値の低下や、搬送困難で追加料金が発生することもあります。一見無駄な作業に思えますがこれがないとむしろ儲けが完全になくなってしまうことでしょう。

間伐材を放置する

材を取り出すことが費用を大きくかけてしまう作業です。伐採した材は売りに出すため搬出と輸送を行いますが、間伐材に関しては売りに出しても場合によっては売れずに赤字となってしまいます。そこで間伐材の搬出作業を放棄し間伐のみを行ってしまえば問題なく木は育ち、且つ経費をかなり抑えることが出来ます。しかしこの方法は大きな問題点が2つ存在します。

1つ目は土砂災害が起きてしまった際に間伐材が流れ出してしまい二次災害を起こす原因となることです。もう1つがメタンガスの大気汚染です。メタンガスは二酸化炭素の次に影響の大きい温室効果ガスであり同量であれば二酸化炭素の21~72倍の温室効果を持ちます。間伐後放置されてしまった木々は発酵してこのメタンを生成します少量であれば土中や空気中の自然な化学反応で分解されますが、排出量が増えすぎて分解が間に合わなくなった場合大気中に蓄積してしまい温室効果を高めることになります。

メタンガス

日本のメタンガス発生源

日本でのメタンガス発生源としては稲作、消化管内発酵、固形廃棄物処分が主でそれらによって75%が占められています。水辺の環境でメタンが発生していることは稲作によるメタンガス発生量が44。4%であることからわかりますが、稲作だけでなく、森林からもメタンガスが発生しています。米カンザス大学化学教授フランシス・W・ブション氏によりメタンが樹木に含まれていることを発見しました。

しかし空気中や土中で分解されるのなら問題ないのではないかとも思います。ここで北海道大学の研究で土壌水分量の少ないヒノキ林では年間を通じてメタンを吸収していますが、湿地土壌では年間を通じて放出していることが発見されました。また夏季の湿地ではヒノキ林の吸収量を大きく上回った放出がされているとのことです。これによって地温と地下水位がメタンの生成、放出を制御していると分かり、吸収過程には土壌水分条件影響していると分かりました。よって放っておくだけではメタンガスが大気中に増加の一途を辿っていくこととなるでしょう。

スギ・ヒノキを伐採、放置することにより増加するメタンガス量

水分量の少ないヒノキ林ではメタンガスが吸収され地球温暖化の防止に役立っており、しかし湿地土壌での放出量を完全に賄えるものではありません。間伐し分解を待っている状況ではメタンガスは増加傾向にあります。日本国土における人工林のスギ、ヒノキの割合はスギが44%、ヒノキが25%、その他31%となっており、スギ林の方が多い環境です。年間を通じ危うくも少しのメタンガス増加でとどめていますがスギでもヒノキでも伐採後放置すればメタンガスは大気中に溜まります。

求められる行動

国産材を購入する

手っ取り早く国内の林業問題解決を手助けする方法は国内産の木材を購入することです。国産は高いというイメージが定着しているとは思われますが、実はそうでもないのです。しかしそれなのになぜ外材をよく使うのでしょう。それは国産材がほとんど急峻な山で作られ、曲がりなどの癖があり、加工に技術を要するためです。また木の中心部分と外周部分で乾燥比率が変わるためひび割れや反りが起きます。それを考慮したうえで国産材を購入するようにできれば林業従事者や管理者の人々を救うことが出来ます。

林業問題を解決する

林業の問題は圧倒的な人手不足と道具の効率化が難しい点です。国全体で少子高齢化の影響により若い労働者は減少傾向にあります。そのうえ林業業界では若年者率より高齢化率の方が高く、今後の林業従事者数減少が大きな不安となります。従事者を新規で雇うにしても雇える人間が居ないという状態に陥ります。また道具は重く、長時間の使用は出来ません。重機を使おうにも舗装された道がほとんどないという状態で道具の効率化はかなり難しいと言えます。

これらの問題を一挙に解決するのが林業へのロボティクス導入と高度化です。現在研究と開発がされているロボティクスや高度技術は枝打ちを代わりにしてくれるロボット、カメラを搭載したドローンによる森林評価システム用モバイルセンシング、振動と傾斜を測定するセンサと3Dスキャンカメラを用いた伐採ナビゲーション、人型ロボットで林業機械を遠隔操作、作業現場の安全対策システムとして転倒検知システムなどがあります。

アプローチは人の作業を補助するロボットやシステム、作業者の安全を確実にするシステムやソフトウェア、遠隔操作による林業、一部作業を行える独立ロボット開発と様々ですが全て林業のこれからを確実に変えてくれる研究と開発です。

室効果ガスを排出しない

日本の温室効果ガス排出量は2013年に14億1、000万トンでピークを迎えてから年々減少に成功しており、2018年には12億4、000万トンとなっています。メタンガスについて林業面は前述の林業問題解決により対策を行うことが出来ます。その他では稲作、つまり水田におけるメタンガス対策を行うことが出来れば、メタンガスの発生を抑制し、吸収量を十分にすることが出来ます。

水田におけるメタンガス発生抑制には稲わらの秋すきこみ迎行、すきこみから堆肥施用への転換、中干し期間の延長が研究されており、中干しを1週間延長することで栽培期間全体のメタンガス発生量が30%削減されたと報告されています。

最後に

林業問題の解決と共に木と共に育ってきた我々日本人の生活は豊かになり、そして環境問題についても対策を取ることが出来ます。管理者や従事者だけでは改善させられない日本国の問題について他の視点からアプローチをすることは必要不可欠です。また林業従事者に限らず人手不足がどの職においても問題となっています。

少子高齢化に対して革新的な解決策が生まれない限り日本国は今後ずっとこの問題と歩み続けることになるでしょう。これに対して技術者を目指す者としてできることは残された人手を人手が求められるべき場所に的確に配備されるよう、人の仕事を代わるロボットやシステムの研究開発をすることです。私は中国のコンビニがレジの自動化を実践したとニュースを見たときは心が躍り、そうあるべき、その技術を知るべきだと深く感動しました。

それから数年しとある服屋の自動レジを始めて使用したときはこのシステムの全てを知りたいとまじまじと眺めたりしていました。こういった技術やシステムをレジのような明らかに自動化できるシステムに限らず他の力仕事などにも適応したいと考えています。特に現場職というものは目で見て、試験して確認し判断して適切な解決手段を取ることで仕事こなします。

最終的なチェックを信頼できる人間に任せれば残りの作業は目、データ、腕がある機械に任せてしまうことが出来ると考えています。言うだけ簡単、意外とできないものだとはよく言いますが人手不足解決、環境改善の手段として新システムやロボティクスなどの高度技術導入があることを我々一人一人の環境と照らし合わせて是非考えてみてください。

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エコモ博士
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