なぜ水問題を知ることは大切なのか

  • 更新日:2020/08/28

所属:マギル大学

インターン生:I.Eさん

なぜ水問題を知ることは大切なのかの写真

地球の約70%は水に覆われています。しかしその大半は海水や氷雪で、実際に使用できる水はわずか0.02%ほどです。その少量の水を世界の77億人が共有しなければなりません。しかし今、水不足により人々が危機に直面しています。日本ではあまり聞かない水不足問題。私たちはどのように向き合っていけば良いのでしょうか?

水不足の原因

ではなぜ水不足という問題が起きるのでしょうか?さまざまな原因が考えられますが、主な原因は環境問題と人口増加です。地球温暖化により地球上の水が蒸発し、砂漠化が進行したり、湿地が乾燥したりするなどして地球上の水分量が減っています。これにより自然と私たちが使うことのできる水の量も少なくなります。

さらにこの異常気象は人間の住むスペースの減少、生態系の破壊にもつながります。また現在、世界中の使用済みの下水のうちの約80%が適切な処理を受けないまま自然に返されています。この行為により、本来、きれいにされていたら使用できたはずの水が使えなくなったり、環境破壊につながったりしています。

しかし、多くの人々は下水をきれいにするためのシステムを開発することを重要視していません。特に先進国などでは水道代が安いため、それ以上のコストを下水の洗浄にかけようと思う人があまりいません。普段あまり目にすることのない下水ですが、それをきれいにすることにより、その水を使うことのできる人が増え、また環境破壊を食い止めることにもつながります。

環境問題だけではなく、人口増加も水不足のひとつの大きな要因になっています。冒頭でも述べたように、人間が実際に使用できる水の量は地球上にある水の0.02%ほどで、その量にあまり大きな変動はありません。しかし、人口増加に伴い、水を使う人の人数が増えるため、自然と水不足になってしまうのです。

現にインドでは国内の水の消費量が水の湧き出る量を上回っているため、54%もの水井戸が減少しています。また、インドとパキスタンとの間では両国の人口増加により水不足が起こり、インダス川の水の所有権をめぐって水紛争が起こっています。世界全体でみても人口増加による水不足が見込まれています。

Global Water Instituteはこのままいくと、2030年までに7億人もの人々が水不足になると予想していたり、ユニセフは2040年までに4人に1人の割合で18歳未満の子供たちが深刻な水不足に悩まされながら生活をしていくことになると予想していたりするなど、今後なにかアクションを起こさなければ世界中が水不足の危機に陥る可能性があることが予想されています。

世界の現状

世界にはもうすでに深刻な水不足、そして水の不衛生に悩まされている地域もあります。主に途上国にある地域がその問題を抱えており、その多くは基本的な水道設備も完備していません。しかし、生きていく上で必要不可欠である安全な水を少しでも多くの人に届けるため、国際連合(国連)はSDGsの一つとして「安全な水とトイレを世界中に」を掲げています。

SDGsとはSustainable Developmental Goals (持続可能な開発目標)の略称で2015年9月の国連サミットで採択されました。国連に加盟している国である全193か国が2016年から2030年の15年間で達成することを目的に掲げられたもので、全部で17個の目標があります。

2000年以降、SDGsの前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)を国連が掲げ、ユニセフなどの団体とともに、水道設備の改善を行った結果、18億人が基本的飲み水の提供を受けられるようになりましたが、今も世界人口のおよそ3割に当たる約22億人の人々が安全な飲み水を確保することが困難な状況で生活をしています。

またそのうち約4割に当たる7億8500人もの人々が基本的な供給サービスを受けることができていません。彼らは水を汲むために往復30分以上かけて水源に行かなければならず、またその水源もきちんと整備されたものではなく、安全ではない水を飲むという生活を強いられています。トイレも飲み水と同じようにMDGsによって2000年以降、あらたに約21億人ものひとびとが基本的衛生施設であるトイレを使用できるようになったものの、依然として世界人口の約半数以上である42億人の人々は安全に管理されたトイレを使うことができない状況に置かれています。

さらに現在でも世界の10人に1人の割合に当たる約6億7300万人が野外排泄をしており、サハラ以南のアフリカに位置する国を中心にした39か国では野外排泄をする人の数が増えています。また、世界の4割程度に当たる約30億人の人々は自宅内にせっけんと水を使って手洗いをすることのできる施設がなく、ユニセフによりますと、これは後発開発途上国(国連総会の決議で特に開発が遅れていると認定された国々)の人々の75%近くが基本的な手洗いを行える場所を確保できていないということになります。

このような不衛生な環境で育てられた子供たちはコレラ、赤痢、A型肝炎、腸チフスなどの病気に感染するリスクが高く、毎年、5歳未満児の約29万7000人が不適切な水と衛生に関する下痢症で命を落としています。これは世界の子供たちの死亡原因の第3位になっています。これだけ多くの子供たちが不衛生な水により命を奪われていることに驚きを感じるかもしれませんが、実は子供たちは劣悪な水環境によって学習の機会までも奪われているのです。

水道が通っていない多くの地域では水を確保する方法が主に二種類あります。一つ目は水売りから水を買う方法、二つ目は自分で汲みに行く方法です。一つ目は水汲み場が自宅から離れたところにあるため、水売りに水を取ってきてもらい、お金を払うという方法です。しかし、この方法は人件費がかかり、水売りの商売の競争も低いため、水の値段は水道が通っている地域と比べてとても高くなる傾向にあります。

実際に東京大学の沖教授はフィリピンのマニラでの例を挙げています。フィリピンでは富裕層が住む地域にしか水道が通っておらず、そのほかの地域では水道代の約10倍の値段を払って水売りから水を買っています。またケニアでは、1トンの水を運ぶために約750円かかります。日本での水の1トン当たりの値段は約200円のため、ケニアの人々はおよそ4倍近くの値段を払って水を手に入れています。

しかし、水道が通っていない地域に住んでいる人々の多くは貧しく、水にかけられるお金もわずかです。そこで多くの人は二つ目の方法である自分で水を取りに行くという選択肢を取ります。しかし、水汲みは大抵女性や子供の仕事で、中には毎日8時間かけて水を取りに行く人もいます。1日の大半を水汲みために使っているため、子供たちは当然学校に行く余裕がありません。教育の機会を奪われた子供たちは社会進出をすることが難しく、大人になっても貧しい生活を強いられます。

また、女性も水汲みなどに時間を取られ、働くことができません。このような状況が国の経済発展を遅らせ、国民がもっと貧しくなるという負の連鎖が起こってしまいます。このように不衛生で不適切な水環境のために毎年、約26兆円ものお金がなくなっています。逆に世界中で基本的な水道設備を整えることができれば水の不衛生で命を落とす人の数が減り、それだけで1兆8500億円の利益が出ると予想されています。

解決策

このような状況を打破するためのいくつかの解決策を紹介していきます。一つ目は水道設備の整備です。先ほど述べたように水道がない地域は水道がある地域に比べて水の値段が高い傾向にあります。しかし、この仕組みだと貧しい人々は負のループに陥り、なかなか貧困層から抜け出すことができません。

東京大学の沖教授は社会全体でお金を出し合い、基本的な水道設備を整えることが重要だと訴えています。これをすることにより、水の値段が下がり、出費が抑えられるだけでなく、子供や女性が水くみに使う時間も減るため、子供の教育機会の増加、女性の社会進出が見込まれ、国の経済発展にもつながります。

このように国を発展させる手助けをするため、実際に手動式ポンプ、井戸、簡易トイレなどの設置をしたり、井戸の修理・維持をすることができる人材を育成したりする活動をしている団体も日本国内にあります。ただあくまでも日本は手助けをする立場であり、現地の人が主体となり水道環境を整えていくことが大事であると沖教授は述べています。

実際に現地に出向いて支援をすることも大事ですが、国内で間接的に水不足を改善する手助けをすることもできます。それはバーチャルウォーターというものを減らすことです。バーチャルウォーターとは食料品や生活用品などを生産する過程で使われる水のことで、実際に私たちが日常で使っている水ではありません。輸入大国である日本はおよそ60%の食糧品を海外から輸入しています。

ユニセフによるとこの輸入をする過程で年間およそ640億リットルもの水が使われています。この量は日本の全国民が直接使用する水のおよそ五年分です。この大量の水の消費がほかの地域で使うことのできる水の量を減らしてしまっている可能性があるのです。このバーチャルウォーターの消費を少しでも少なくするため、意識的に食糧品がどこで生産されたものなのかを確かめることも大切です。

また、水不足を解消する間接的な方法として個々人の意識を高めることも重要です。国土交通省が発表したデータによると、世界で水道水が飲める国はわずか15か国しかなく、そのうちの一国が日本なのです。このことを考えると日本は水不足とは縁もゆかりもなく、世界の様々な地域が深刻な水不足になっていることを知らない方々もいるでしょう。

しかし、今現在劣悪な水環境により亡くなっている人々がいるということや人口増加によりさらに水不足が深刻になっていくかもしれないということを考えると日本人もこの問題を他人事として考えるのではなく、きちんと現状を知り、ひとりひとり何ができるのかを考えていくことが重要になっていくのではないでしょうか。

また、水不足が改善することによって途上国の経済が発展すれば国連のSDGsの1番目に掲げられている「貧困をなくそう」と4番目に掲げられている「質の高い教育をみんなに」という目標の達成にも近づくのではないのでしょうか。世界の国々、特に日本を含めた先進国が途上国を支援することはこの問題を解決するために大切なことです。

最後に

水問題について知ってはいてもなかなか実際のデータや数字を見る機会は少ないと思います。今日本に住んでいる私たちの多くはこのような問題に直面することはないですし、遠くで起こっていることなのだろうなと客観的に捉えがちです。

しかし、今のままでなにも行動を起こさなければ人口が増えるとともに、私たちが使うことのできる水の量は確実に減りますし、さらにたくさんの人が命を落とす可能性があります。そうならないためには私たちひとりひとりが決して他人事と考えず、節水を心掛けたり、募金をしたり、現状を把握することが重要なのではないでしょうか。

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エコモ博士
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