化石燃料との惜別の別れなるか

2020年07月14日

所属:国際教養大学

インターン生:M.Cさん

化石燃料との惜別の別れなるかの写真

2020年7月、日本の経済産業省が石炭火力発電に対してようやく腰を上げました。低効率の石炭火力発電の廃止策と再生可能エネルギーへの移行案を、年内中に取りまとめる方針を発表しました。国内に140基ある石炭火力発電の8割に上る、114基は発電効率が悪く、2030年度までの廃止を目標に、徹底した議論を進める予定です。

このニュースの背景にある動きが、化石燃料ダイベストメント(化石燃料への投資撤退、Fossil Fuel Divestment)です。アメリカ、ハーバード大学の学生運動をきっかけに10年ほど前に始まった、この環境運動。世界各国の教育機関、公的機関、金融機関が既に部分的、または完全な化石燃料への投資撤退を実行する一方で、日本では近年急に叫ばれるようになった言葉ではないでしょうか。

私もアメリカに留学していた際に初めて知り、大学基金に対するダイベストメント運動の運営側として、運動を支援してきました。本記事では、運動の目的、現在の進捗状況から、日本政府や金融機関による化石燃料産業への投融資の現状に焦点を当て、投資には興味がないという方にも分かりやすくお話ししたいと思います。皆さんの大事なお金は、実は知らないところで運用されているのです。

ダイベストメントとは

そもそも、ダイベストメントとは何でしょうか。英語では ”divestment”、つまり投資 “investment” の逆で、明白な社会的、政治的、または倫理的理由により、株、債券、投資信託などの資産を手放すことにあたります。

1980年代には、南アフリカでの人種隔離政策(アパルトヘイト)の撤廃を目的としたダイベストメント・キャンペーンがアメリカを中心に展開され、名立たる名門校を含めた150を超える米大学、26の米州政府、さらに100以上の都市や郡が、当時南アフリカ政府と取引のあった企業への投資を止め、投資資金を引きあげました。

このような資本逃避が、南アフリカ共和国の通貨である、ランド(Rand)の為替レートの急落を招き、さらに世界各国からの経済制裁によって追い詰められていった国民党政府は、半世紀以上法的効力を有していた、アパルトヘイト政策の廃止を決断したのでした。このように、投資撤退は重要な意思表示となるばかりか、経済に大きな影響をもたらす、効果的な方法といえるでしょう。

「汚い」化石燃料

では次に、なぜ今、化石燃料産業に対するダイベストメント(投資撤退)が必要なのか探りたいと思います。化石燃料とは、石油、石炭、天然ガスを主とした、動植物性の燃料資源の総称です。地球の長い歴史の中で堆積されたこれらの資源を今のペースで消費し続けるといずれ枯渇する、有限の資源であるため、持続可能ではありません。

焼却時には二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄硫化物等の大気汚染物質を放出するため、大気汚染やそれに伴う健康被害の原因でもあり、また温室効果ガスの発生により、近年における気候変動を助長することも指摘されています。デメリットは他にもあります。日本の化石燃料の海外依存度は、石油で99.7%、天然ガス97.5%、石炭99.3%と、そのほとんどを海外からの輸入に頼っています。特に、政治情勢の不安定な中東から石油を輸入することにはリスクがつきまとうことも視野に入れなければいけません。

しかし、これらの化石燃料に依存している現状もおさえる必要があります。東日本大震災以降、再び急増した火力の割合は、近年での再生可能エネルギーの躍進を受けたものの、依然、国内総発電量の約四分の三を占め、この割合は世界平均を10%以上上回っています。

世界の一次エネルギー(化石燃料と再生可能エネルギー)消費量は増加の一途をたどっています。先進国でのエネルギー需要は一定を維持、またはわずかに減少しているものの、新興国、特に中国やインドを中心とした国々では、急速な経済成長と人口増加にあわせるように、一次エネルギーの消費量が年平均約2.5%の割合で増え続けています。日本も未だに、国別一次エネルギー消費量では世界トップ5の座を守っています。昨年では、世界の一次エネルギー消費量は石油換算で約140億トンにのぼります。

化石燃料ダイベストメントの誕生

化石燃料の増え続ける消費に対して対策が急務の中、2010年、アメリカの複数の大学で立ち上がった学生運動こそが、化石燃料ダイベストメントです。2012年にはハーバード大学やマサチューセッツ工科大学で学生団体が設立され、大学生のみならず、院生や教授陣、大学で勤務するスタッフから卒業生まで、数千名からの賛同と署名を得たのでした。

学生運動は各州、各大学に瞬く間に広がりました。スタンフォード大学は2014年に187億米ドル(約2兆円)に上っていた、化石燃料産業への出資の撤退を表明し、その膨大な金額と素早い決断に多くの反響を呼びました。カリフォルニア州立大学等、公立私立の垣根を超えて、ダイベストメントの成功事例はアメリカ全土に広がり、今ではカナダ、イギリスや、北欧を中心としたEU諸国へと広がりを見せています。

さらに、大学という教育機関の投資に対して始まったこの運動は、公的機関や銀行等、全ての機関投資家へと対象が広がりました。ダイベストメントを表明した団体、機関は、今年(2020年)4月時点でほぼ1,200に達し、ダイベストメント予定資産運用額の合計はなんと14兆米ドル(約1500兆円)に上ります。欧米では、石炭を手始めに、年金や保険を管理する公的機関でも次々とダイベストメントが進み、その波はようやくアジア、そして日本へもやってきたばかりです。

化石燃料ダイベストメントの目標

ダイベストメント運動の最大の目標、それは化石燃料への依存から脱却し、パリ条約の目標を達成することにあります。つまり、「世界の平均気温の上昇を2100年までの間、1.5~2.0℃に抑えるために、新規化石燃料事業に対し、貸付、投資、建設の一切を行わない」ということです。ダイベストメント運動が世界各国共通で持つ具体的な目標は以下の3つです。

  1. 化石燃料企業への全ての新たな投資を凍結する
  2. 5年以内に、化石燃料の公的株主資本や社債を含む、直接保有の株式、及び全ての年金信託型年金資産への投資を撤退する
  3. 化石燃料へのあらゆる助成金、資金提供に終止符を打つ

要するに、投融資や補助金など、いかなる形での金銭的な後援を止め、気候変動に歯止めをかけようということなのです。

対象の拡大

世界各国にダイベストメントが普及するにつれ、その投資撤退の対象も、たばこ産業、アルコール産業やギャンブル関連産業、また石炭火力発電を中心とした電力会社や発電所へと拡充されています。実は、ノルウェーやオランダなどからは既に、これらの分野にたけた日系大手企業に対し、ダイベストメントの表明がなされています。

ダイベストメント運動に後れをとった日本

今回この記事を書くにあたって、日本の機関または団体においてダイベストメントの成功事例がないのかを調べましたが、残念ながら投資撤退を実践する側ではなく、その対象とされる事例がほとんどでした。では一体なぜ、日本はダイベストメントの流行に乗り遅れてしまったのでしょうか。

私が考えるには、主に二つの理由があると思います。一つは、日本の教育機関が持つ、基金の額が少額であり、その運用も限られたものだからです。既にご説明したように、アメリカで始まった化石燃料ダイベストメントのきっかけは、大学基金が行う投資に対する、学生主導の抗議運動でした。大学基金とは、公立私立を問わず各大学法人が研究支援や学生支援、施設の拡充を目的とした基金であり、その寄附金の運用を行っています。

東京大学をはじめとした国立大学の基金は、2004年の国立大学法人化を踏まえて開設された、比較的新しいもので、規模は早稲田大学や慶應義塾大学などの私立大学の数分の一に留まります。加えて、日本国内で見れば基金規模の大きいこれらの私立大学も、世界一の規模を誇るハーバード大学の基金(約4兆円)に比べると、そのわずか百分の一程度です。

アメリカの四年制私立大学では平均して、歳入の半数強を授業料と基金の運用収益がそれぞれ分け合う形であり、寄附金集めとその上手な投資が大学の経営を大きく左右します。また、ハーバード大学やエール大学といった、米名門校の大学基金は高い運用実績を誇ります。リターンを上げるため、投資で要となるリスク分散は、投資家をも唸らせるほど徹底してします。

分散投資の結果、各大学は化石燃料産業へも投資していたという訳です。一方の日本における大学基金はまだ始まって間もない段階で、その規模も現在拡充真っ只中という状況です。そのため、アメリカや欧米で教育機関に対するダイベストメントの運動が盛んになっても、どこかでよそ事だと割り切ってしまっていたのかもしれません。

もう一つには、火力発電への依存に対する、日本人の無関心さや諦めが表れていると思います。2011年の東日本大震災後、それまで原子力発電に3割強を頼っていた日本は、全ての原子力発電所の稼働を停止し、火力へと舵を戻しました。太陽光発電や風力発電といった自然エネルギーは緩やかな成長を続けるものの、自然災害に頻繁に見舞われる土地柄、自然エネルギーが近年中に火力発電に取って代わるのはあまり現実的ではありません。

火力発電の割合は依然高く、結局化石燃料に頼らざるを得ないという嘆きが聞こえてくるようです。しかし、自国のエネルギー問題への無関心さこそ、さらには化石燃料や火力に対する投資家や金融機関の関心の薄さが、日本経済における化石燃料ダイベストメントを妨げているのではないでしょうか。
ダイベストメントは教育機関のみが行うものではありません。なぜなら、銀行等の金融関係機関、また年金や税金を管理する公的金融機関も投融資を積極的に行い、その利益をさらなる収入源としているからです。

石炭火力発電への融資トップは日本のメガバンク

今年、新型コロナウイルスの感染拡大に世界各国が苦慮する中、日本からの明るいニュースが世界を賑わせました。みずほフィナンシャルグループ(MHFG)と三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)が石炭火力発電事業への新規投融資を停止する決断をしたのです。昨年日本のメガバンクの中で初めて、石炭火力発電所新設融資の停止を表明した三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)に続いて、ようやく日本の三大メガバンクが足並みを揃え、ダイベストメントへの第一歩を踏み出したのです。

しかし、皆さんは、日本のメガバンクの化石燃料産業への投融資に対し、数年前から国際社会の風当たりが強くなっていたのをご存知でしたでしょうか。非難を受けたのも当然、日本の3メガバンクはいずれも世界トップクラスの投融資を続けていたのです。パリ協定以降、銀行の全化石燃料部門への融資・取引額のトップはアメリカの大手銀行が占めており、日本のメガバンクはMUFGが7位に、MHFGが10位にランクインする程度でした。

この状況に終わりを告げたのは2015年、Bank of Americaを皮切りにした、米大手銀行によるダイベストメントでした。後に続くように、JP Morgan Chase, Wells Fargo, Citibankなども次々と融資撤退方針を掲げました。2018年、欧米の大手銀行は予定通りに新規の化石燃料融資を停止しました。ダイベストメントの波に取り残された日本の三大メガバンクは、融資をこれまで通り続けた結果、石炭火力発電への融資額世界トップに躍り出てしまったのです。

COP25でも、日本の金融機関・投資家が石炭投融資リストのトップを独占していると報告され、「ダイベストメントに舵を切れない日本」、「石炭火力発電に油を注ぐ日本」と非難を浴びてしまいました。現に2017~2019年の間、三大メガバンクは合計で、393億米ドル(約4兆2800億円)もの融資を石炭火力発電開発企業に対し行っていたことが判明しています。

このような海外からのプレッシャーを受け、融資を停止せざるを得ない状況で、半ば強制的にダイベストメントを宣言した日本のメガバンク。しかし、これは初めの一歩に過ぎません。完全なダイベストメントとは、先に述べた目標にもあるように、化石燃料産業に対し一切の投融資も行わないことです。新規事業に限って融資を停止するだけでは不十分なのです。受け身な姿勢ながらも、ダイベストメントに歩みを進めた日本の三大メガバンクの、今後の進捗に目が離せません。

日本政府による化石燃料補助金とは

ここまで、教育機関と金融機関、つまり大学と銀行によるダイベストメントについて議論してきましたが、忘れてはいけないのが、公的機関による化石燃料産業への投融資です。

皆さんは、GPIFが何を指すかご存知でしょうか。私達から集めた税金を使い、国民の公的年金資金を管理運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」の略称です。2019年には運用規模が161.7兆円にもわたり、驚くべきことにその規模は昨年度国家予算の102.6兆円をはるかに上回っているのです。安部総理はGPIFのことを「世界最大の機関投資家」などと呼ぶそうですが、それもそのはず、運用額はなんと世界一位の年金基金です。ではなぜこれほどまでの巨額の運用が可能なのか、またその投資先はどこなのか、ご存知でしょうか。

まず最初の疑問から見ていきましょう。なぜGPIFは国家予算を超えているのか。その理由は、少子高齢化社会以前に現役世代から徴収した保険料からの積立金があるからです。年金受給者が今より格段に少なかった頃には、貯蓄として蓄えられる積立金が莫大に存在し、この資産の運用を行っているのがGPIFなのです。

そして次に投資先について。2017年からESG指数に応じ、環境(Environment)、社会(Social)、投資(Governance)の三観点からの投資を国内で先陣を切って取り組み始めたそうです。その一方、ESGの評価に問題のある企業、銘柄への投資撤退は未だ行っていないのが現状です。GPIFによる石炭関連企業への投資額はおよそ1兆8000億円ともいわれています。

石炭火力発電に多額の融資を続ける日本の公的機関は、GPIFだけではありません。国際協力機構(JICA)、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)も世界最大規模の融資を続けています。融資には返済義務があるものの、返済不要型の資金給付もあり、これを補助金と呼びます。日本の公的機関による、海外の石炭火力発電への補助金は年52億米ドル(5600億円)に上ると言われ、これら化石燃料補助金はインドネシアやマレーシア等の新興国において、電力料金の助成金として使われてしまうというのですから、もはや持続可能な社会における時代遅れの補助金といった印象を受けてしまいます。

冒頭で触れた経産省の新たな決定にもあるように、日本政府は低効率の石炭火力発電に限り、今年中に段階的な廃止計画を立てるようです。一方、高効率の石炭利用技術の研究開発は奨励しており、将来的には国内外で「ゼロエミッション石炭火力発電」の実現に向け、投融資及び補助金を増額する方針です。高効率の模索を理由に、完全な投資撤退を拒む日本ですが、国際社会は既にダイベストメント一色です。G7では既に化石燃料産業への補助金撤廃で合意しており、G20に関しても、補助金撤廃の要請が共同声明に盛り込まれました。日本政府の渋々ながらの対応を見るに、今後国際社会からの非難をかわすには未だ不十分といえそうです。最後に、各国の状況を見てみましょう。

アメリカ・カリフォルニア州、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、ニュージーランド等では、年金基金、中央銀行、またはその両方からの化石燃料投資撤退の表明がありました。歴史的に石油と天然ガスの輸出を最大の歳入源としてきた、ノルウェー政府年金基金によるダイベストメント声明には、世界中にかなりのインパクトがあったものと思われます。

過去もダイベストメントの波にのれなかった日本

世界の化石燃料投資脱退の波に乗り遅れた日本。実は過去にも似た過ちを犯しています。それは、ダイベストメントの初の成功事例ともなった、南アフリカ政府によるアパルトヘイト政策に対してでした。1980年代、南アフリカ国内でも抗議運動が高まり、さらに世界各国は協調して経済制裁を進める動きが高まる中、1987年、日本は南アフリカの最大貿易相手国(米ドル基準)となってしまいます。

この背景には、日本はアジアの唯一の先進国であるとして、日本人が「名誉白人」の待遇を受けており、経済的にもアパルトヘイト政府と強い結びつきがあったためでしょう。結果として、最大貿易相手国に躍り出てしまった日本は、国際社会からの非難を浴びることになり、最終的には他国に同調して、経済制裁を行う決断に迫られました。

当時と今とでは、投資撤退の対象やその背景も大きく異なりますが、国際社会のダイベストメントの流れに乗り遅れ、非難を浴びて初めて、ダイベストメントへの第一歩を踏み出すという点においては、あまり変化が見られないようです。

今後の日本経済とダイベストメント

この記事では、ダイベストメントの変遷から、現在の日本の三大メガバンクや公的機関の対応と国際社会との隔たりを振り返りました。受身ながらもようやく投融資撤退、また補助金廃止に向けて第一歩を踏み出した状況ですが、国際社会の非難をかわすにはまだまだ努力が必要と思われます。今後の日本及び国際社会の動きに注目すると同時に、私達一般市民がダイベストメントや化石燃料についてもう一度考える機会となれば幸いです。

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