私たちの「選択」で海を守る

  • 更新日:2020/08/28

所属:同志社大学

インターン生:S.Cさん

私たちの「選択」で海を守るの写真

もし、私たちが住む街が、ある日ゴミ捨て場になったら私たちはどのように感じますか?悲しむ人、怒る人、諦めて他の地を探す人。多くの人が負の感情をいだくと思います。 ところで、私たちは海に住む動物たちの住む場所をゴミ捨て場にしてしまっていることをご存知でしょうか。

海に漂うプラスチックごみ

私たちの生活にプラスチックがあることは当たり前です。プラスチックは安価なのに丈夫で様々な形に加工することができる大変便利な材料です。しかし、現在、人間が適切な処理を施さなかったプラスチックが海に流出し、多くの動物の健康被害を与え、時には命を奪っています。

WWFジャパンの発表によると、世界の海には、既に1億5000万トン以上のプラスチックが存在し、年間少なくとも800万トン以上のプラスチックが新たに流入しています。この流入速度は今後も上昇すると考えられており、2050年までには海に住む魚よりもプラスチックの方が多く海に存在すると言われています。

紙や木片などは時間と共に紫外線や微生物によって分解され、最終的には自然界の循環システムに返ります。一方のプラスチックは想像以上に丈夫です。

紫外線によりもろくなり、目に見えないサイズにまで破砕されますが、半永久的に完全な分解はされないことが分かっています。すなわち、海に流れ出たごみ、陸地に落ちているごみは人為的に回収しない限りその場に留まり続け、流出を止めなければその数は増加を続けます。綺麗な海を取り戻すため、私たちにできることはなにかあるのでしょうか。

近年注目されているマイクロプラスチック

レジ袋やストローなど比較的大きいプラスチックが動物の身体に絡まったり、誤って飲み込んだりすることで命を落とす海洋動物が増加している一方で人間の目に見えないプラスチックが対内に入ることで健康に被害が出ている動物も増加しています。

この記事では、「目にみえない」プラスチックが生態系にあたえる影響とその問題を緩和させるために私たちができることについて紹介していきます。

マイクロプラスチックとは?

砂浜や川辺を訪れた際、色のついた小さくかたい石のようなものを見かけたことはありませんか?実はそれがマイクロプラスチックです。

プラスチックは成分や形、用途に関係なく、大きさによってマクロプラスチックとマイクロプラスチックに分類することがあります。今回、記事のテーマであるマイクロプラスチックは世界一般的に直径5mm以下のプラスチック全てを指しています。

5mm~1mm程度の粒子であれば肉眼で見ることも可能ですが、1㎛(=0.001mm)以下の粒子も多く、このような場合は顕微鏡を用いなければ発見することはできません。前述したように、プラスチックは目に見えないサイズであっても完全に分解されたわけではありません。

一次マイクロプラスチックと二次マイクロプラスチック

マイクロプラスチックはその発生方法により、以下の二つに分類することができます。

一次マイクロプラスチック(Primary microplastic)

工場などで意図的に5mm以下に製造・加工されたプラスチックのことを指します。「マイクロビーズ」と呼ばれ、化粧品や石鹸、歯磨き粉、洗剤などに含まれスクラブとして使用されています。

二次マイクロプラスチック(Secondary microplastic)

プラスチック製品が自然環境の中で破砕され5mm以下となったプラスチックのことを指します。年単位で日光、とくに紫外線を浴び続けたことによりプラスチックがもろくなり破砕したり、他の物質との衝突によって粉砕されたりすることで発生する場合が多いと言われています。

つまり、一次マイクロプラスチックは、「もともと5mm以下のプラスチック」のことを、二次マイクロプラスチックは、「もともと大きかったが自然環境下で破砕され、5mm以下になったプラスチック」のことを指します。

意外と身近な存在の一次マイクロプラスチック

ところで、自分が日常的に使っている物のうち、どれに一次マイクロプラスチックが含まれているかご存じですか?日本では成分表示を記載することが義務づけられているので、お風呂に入るときにぜひ、確認してみてください。

一次マイクロプラスチックに使用されることが多い成分は、「ポリエチレンやポリスチレンなど、「ポリ」で始まる物質」、「フェノール系」「アクリル」「シリコン」などです。

ただし、「PE」や「POE~」などと表記されていることが多いです。Pから始まる単語や上記の単語が入っていたらプラスチックかもしれません。本当にプラスチック由来かどうかは調べてみてください。

意外と多くのものに一次マイクロプラスチックが含まれています。一番見つけやすいのは歯磨き粉などです。ただし、近年ヨーロッパ系の会社や日本でも一部の会社では、マイクロプラスチックの使用をやめています。成分を調べる際は、複数の企業を選択肢、それらが販売している商品を比較してみてください。

処理が難しい一次プラスチック

実際に一次マイクロプラスチックの有無を調べていただいた人には、身近なところに使用されていることがわかったと思います。さて、一次マイクロプラスチックは製造された時点ですでに小さいことから、使用後の回収はほとんど困難だと言われています。世界各国と比較しても高い下水処理技術を誇る日本でさえ、100%の回収が難しく、条件が整わなければほとんどが海に流れ出てしまっているのが現状です。

現在海に存在しているマイクロプラスチックは二次マイクロプラスチックの方が多いとの見解が公表されていますが、一次マイクロプラスチックの流出をやめなければ海中へのマイクロプラスチック流入量は減少させることができません。

生態系にあたえる影響

実はマイクロプラスチックが生態系にあたえる影響は他の環境問題とは違い、比較的新しい課題であるため、確定的な結論を導くためにはまだまだ研究が必要です。しかしながら、専門家は生態系に十分大きな影響を与えているまたはその可能性があるとの見解を示しています。ここでは大きく2つの影響について紹介します。

海洋生物の栄養不十分

非常に小さいマイクロプラスチックは、海中に生息するプランクトンと見分けることが難しく、小魚が誤飲するケースが相次いで発生しています。2016年に東京農工大の高田教授の研究チームが、東京湾で採取されたイワシ64匹の消化管を調査したところ、約8割の魚の体内からマイクロプラスチックが発見されたと報告しています。

基本的に、少量でかつ十分に小さければマイクロプラスチックは体外に排出されると考えられています。しかし、その量が多い場合や、粒子の大きさが消化管より大きい場合は体内に残ってしまいます。体内にプラスチックが残ってしまうと、魚は満腹感を感じ新しく餌を食べようとしなくなります。プラスチックには栄養素が含まれていないため、栄養失調となり、最悪の場合死に至ると考えられます。

海中に存在するマイクロプラスチックの数が多くなればなるほど、魚が誤飲する可能性が高まることから、魚が栄養失調となり餓死する可能性も高くなるといえます。さらに、これが原因で魚の個体数が減少すれば、これまで食べられていたプランクトンの数が増加します。逆に、これまでその魚を食べていた大きな魚は餌が減るため、個体数が減少することに繋がります。ある魚の餓死は生態系のバランスを崩壊させる危険性が十分考えられます。

生物濃縮による生態系への影響

地球上に存在する動物は基本的に他の動物と「食う・食われる」の関係である食物連鎖でつながっています。この食物連鎖の中に、健康に被害を及ぼす有害物質が入り込み、食物連鎖の下流にいる動物(例えばプランクトンや小魚)よりも上流にいる動物(例えば人間や大型動物)のほうが有害物質の濃度が高くなる、生物濃縮が起きます。

生物濃縮についてもう少し具体的に紹介します。例えば、小魚Aは小魚Bに食べられ、小魚Bは魚Cに食べられるという食物連鎖が存在するとします。ここで小魚Aは有害物質X、1単位に汚染されているとします。小魚Bは小魚Aを10匹、魚Cは魚Bを5匹食べた時、魚Cは間接的に小魚Aを50匹食べたことで有害物質Xを50単位、取り込んだことになります。

このように食物連鎖の上流にいる動物は比較的高濃度の汚染物質を蓄積してしまい、健康への慢性的な被害が現れる場合があります。この生物濃縮が人間に被害を与えた例が、1950年代に流行した水俣病などです。

マイクロプラスチックはこのように生物濃縮による慢性的な健康被害を人間や大型の魚に及ぼす可能性が指摘されています。そもそも、プラスチックには製造過程で添加剤が含まれており、これが海水中に残留する有害物質と結合する可能性が高いことが研究で明らかになっています。マイクロプラスチックを食べた小魚を、さらに食べる動物は汚染物質を体内に取り込むことになります。

現時点では人にマイクロプラスチックが原因となった健康被害は報告されていないため、具体的にどのような影響が出るのかについてはわかりません。しかし海水中には人に影響を与えうる有害物質が残留していること、これらが、マイクロプラスチックと結合しやすいことなどから食物連鎖の上流にいる動物が健康被害に見舞われる可能性が高いといえます。

以上のように自然界に生息する全ての動物がマイクロプラスチックによる悪影響を受ける可能性が年々高まってきています。近年はマイクロプラスチックが集まっている地域を見つけるための技術や、マイクロプラスチックのみを海から回収するための技術開発が進められています。

マイクロプラスチックの利点

プラスチックを自然界へ流出させると、生態系に負の影響を与えることは事実です。特に二次マイクロプラスチックは人間が使用したプラスチックを適切に処理することで、その発生を十分に抑えることが可能です。

しかし、意図して製造される一次マイクロプラスチックは、生態系のバランスを支え、私たちの生活を豊かにしているのも事実です。例えば、水だけでは洗い流しにくい油性の汚れや垢を流すために、古くは粘土や火山灰などを加えた石鹸をシャンプーとして使用していました。これらが非常に高価だったこと、また現在のように水を自由に扱うことが難しかったため、平安時代などでは年に一回程度、江戸時代でも月に一回程度しか洗うことが出来なかったといいます。

しかし、技術開発がすすみ、マイクロプラスチックの合成が容易になったことで、より、皮脂汚れを落とす石鹸が比較的安値で手にいれられるようになりました。マイクロプラスチックのおかげで私たちは毎日髪を洗うことができ、清潔な状態を保てています。

また、歯についた汚れをより綺麗に落とすためのスクラブや顔に付着した皮脂を綺麗に落とすための洗顔料や化粧品等は、私たちの身体に関わるトラブルを減らしています。

加えて、マイクロプラスチックと同じ働きを担うと考えられる植物の種子や火山灰などは自然界で手に入れることができる量が制限されています。マイクロプラスチックの製造量にももちろん限界はありますが、比較的入手できる量を増やすことが可能です。そのため、人口が増加している現在も多くの人に安価で品質の高いシャンプー供給が実現しています。

このように、私たちの生活にたくさんの「便利」を与えてくれるプラスチック。生態系への影響も理解した上で「うまく」使用することが必要です。

私たちにできること

私たちの生活はプラスチックに支えられており、プラスチックなしで今の豊かさを維持することは不可能です。しかし、人間の豊かさを維持することは海を汚し続けていい理由になるわけではありません。数十年後、今よりも綺麗な海を取り戻すため、私たちに出来ることについて考えていきましょう。

プラスチックを適切に処理する。そして必要以上に使わない

二次マイクロプラスチックの発生を抑えるため、道路にごみをポイ捨てせず、定められた方法に従って処理することは非常に重要です。また、現在多くの店で実施されていますが、レジ袋ではなく、エコバックを利用する、ペットボトルをリサイクルする、過剰包装を求めないなどの工夫によりプラスチックの使用を抑えることはプラスチックごみの絶対量を減らすことにつながります。それが、引いてはマイクロプラスチック発生を抑えることにつながります。

マイクロプラスチック以外の商品を選択する

一次マイクロプラスチックは私たちの生活に豊かさを与えてくれました。しかし、現在は多くの企業が生態系へ与える影響を認め、植物由来のもの等環境負荷の小さい成分に代替する取り組みを進めています。

しかし、新しい成分であること、従来の製品よりも価格が高いなどの課題によりなかなか代替は進んでいません。マイクロプラスチックフリーの商品を選択することで、代替成分を使用する取り組みをしている企業を応援することができます。将来の子供たちの生活を環境保全の視点から守るために、いつもと違う選択をしてみませんか?

代替商品の紹介

資生堂、花王、コーセーなど日系大手企業は化粧品に含まれている石油由来のマイクロプラスチックの使用を中止し、植物由来の生分解性マイクロプラスチックに代替することを宣言しています。

すでに石油由来成分の使用中止を実施している製品もあります。しかし、現在も化粧水などには人口高分子、すなわちプラスチックが含まれてる製品もあり、完全にマイクロプラスチックフリーとは言えません。

生分解性プラスチックが環境に与える影響については現在研究中です。しかし、自然界で分解されないというプラスチックの大きな課題の解決に近づく物であるという点で環境保全に貢献しているといえるでしょう。

プラスチックフリーを掲げた海外企業

アメリカ、イギリス、カナダ、フランスなど一部の国では、生分解性であってもマイクロプラスチックを製品に含めることを規制しているため、企業は完全にプラスチックフリーな製品の開発が求められています。ここでは完全なプラスチックフリーを掲げる2社を紹介します。

LASH

英国発のフレッシュハンド・メイドコスメのLASHは環境保全や動物実験廃止を強く訴えている企業として有名です。早い段階で容器をプラスチックから紙に代替するなどの取り組みを続けていました。

そんなLASHはマイクロプラスチックフリーの歯磨き粉の販売をスタートさせました!マイクロプラスチックの使用が規制されているアメリカ、カナダ、フランス、イギリスで商品展開を実現するために開発されました。

歯を磨く前にこのタブレットを歯でかみ砕きます。その後水で濡らした歯ブラシで歯を磨くと従来の歯磨き粉と同様に泡立ちます。使用後は口をしっかりゆすいでください。

ethique

ニュージーランド発のethique。原材料から包装紙まで、プラスチックを一切使用せず環境に配慮したシャンプーとリンスになっています。海外の有名歌手や女優などからも高い支持も得ており、2019年より日本でも販売が開始されています。

まとめ

私たちの生活を豊かにしてくれたプラスチック。その一方で、人間以外の動物の健康に被害を与える可能性も危惧されています。将来的には脱プラスチックを目指す必要がありますが、まずは、私たちに出来ることから無理せず取り組んでいくことが重要です。

今回紹介した方法以外にも、国連環境計画(UNDP)が「プラスチックを使わず生活する20の方法」を発表し、私たちにできることを提案しています。全てをすぐに実行に移すことは難しいですが、私たちの行動を可能な範囲から少しずつ変えていくことは、将来の地球を守ることに繋がります。綺麗で快適な世界を維持するために、いつもと違う「選択」をしてみませんか?

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