「エコ」に続く新しい環境ワード、「エシカル」とは?
所属:武蔵野大学
インターン生:R.Oさん
今日、地球環境問題は深刻化が進み早急に解決しなければいけない問題となっています。地球温暖化、海洋汚染、貧困などは、あらゆる国の経済成長等の代償となってしまっているのです。私たちは“地球は有限であり、経済成⻑がすべてではなく、共生、共存、シェア、利他の概念を持たなければ持続可能ではない”ということを念頭において、それぞれの行動に責任をもたなければいけません。そこで今回は人間が生きてく上で必要不可欠な消費活動について、今日日本を含む世界中で沸騰中の “エシカル消費”というものについて詳しく説明したいと思います。
そもそもエシカルとは?
エシカル(ethical)とは、「倫理的な」「道徳上の」という意味であり、“様々な環境問題を引き起こさない「倫理的な」企業活動、消費活動を行う”という意識から欧米で新しく意味づけされました。
世界で統一された定義はありませんが、現在日本では、“地域の活性化や雇用なども含む、人や社会・環境に配慮した消費行動”とされています。また、エシカルは様々な部門で広まっており、用語としては、エシカル消費(倫理的消費)、エシカルファッション、エシカルビジネスなどが挙げられます。(以下では主にエシカル消費について述べます)
私たちがエシカル消費を行うことで、国連加盟国が2030年までの達成目標として掲げたSDGsのうち、12項目である“つくる責任・使う責任”に貢献することができるのです。さらには、直接要因でなくともエシカル消費を行うことによって、間接的に、貧困をなくす活動につながることから1項目“貧困をなくそう”、森林破壊・海洋汚染を防ぐことで14項目“海の豊かさを守ろう”15項目“陸の豊かさも守ろう”にアプローチすることができます。
エシカル消費普及の背景
地球温暖化、砂漠化、海洋汚染など、これらの環境問題はイギリスの産業革命以降続く世界問題です。産業革命によって起こった児童労働や劣悪環境での長時間労働、排水汚染などの環境問題により、イギリスではエシカル意識が強くありました。
その後、19世紀末のナショナル・トラスト(自然と歴史的環境を守る住民運動)へと発展し、1989年、イギリスにあるマンチェスター大学の学生によって世界初のエシカル専門誌「エシカルコンシューマー」(ethical consumer)が発行されたことで、エシカルという言葉が一気に広まりました。
また、1997年のイギリス首相とニー・ブレアがアフリカ政策の推進について「アフリカ諸国における貧困対策の中で最も重要なのはエシカルなアプローチでああり、エシカルな視点で組まれたプログラムである」と述べたことで世界中にエシカルが広まったのです。
この出来事は世界の動向やトレンドに敏感なファッション業界に、“エシカルファッション”を巻き起こし、2004年イギリスにて、世界100カ国以上の6000以上の企業・団体・個人から構成されるエシカルファッション推進団体による「エシカルファッションフォーラム」が開催されました。
2014年バングラデシュでは、欧米のファストファッションブランドの洋服をつくる工場が不法に立て増しされたことに加え、日中のミシンの振動に耐えられなくなり倒壊した事故がありました。
多くの従業員が亡くなってしまっただけでなく、従業員の約8割が20歳以下の女性で自給12 セントという低賃金で13~14 時間も働かされていた事実が発覚したのです。この事故が、欧米で広く取り上げられたことで安価なファッションの裏側を知るきっかけになり、さらにあらゆる業界で「フェアトレード」が認知されるようになりました。
また、日本では2011年の東日本大震災を経験して、ライフスタイルが変化したり、社会貢献を意識するようになったことで、エシカルについての関心が高まってきました。
どのような製品がある?
エシカル消費には、倫理的という意味からあらゆる見解のもと、様々な製品が位置付けられます。
- 自然環境に負荷をかけないオーガニック素材や天然・リサイクル素材を使用した商品
- 商品開発に置いて動物実験をおこなっていない商品
- 対等なパートナーシップに基づいた取引。フェアトレードや労働者への十分な賃金支払いなどがおこなわれている商品
- 伝統技術を伝え、未来に伝える取り組みとなっている商品
- 何らかの社会貢献活動につながる(寄付などを含め)商品
上記に基づいた商品として一部をあげると、MSC認証 を取得したイオン(日)のししゃもや、フェアトレードマークを取得しているベン&ジェリーズ(米)のアイス、FSC認証 を取得したスターバックスコーヒージャパンの紙バッグ、ファッション業界では、ピープルツリー(日)、パタゴニア(米)、古着等の国際的に広く、エシカル商品が展開しています。
さいごに
エシカル消費は、あらゆる環境問題に配慮された地球に優しい行動だけでなく、日本の経済社会を物理的かつ心理的にも豊かにする大きな可能性を秘めています。
“環境のため…!“と思うことも大事ですが、興味を持つだけでも構わないのです。ぜひ、エシカル消費を知るだけでなく、スーパーやお店でエシカル商品を実際に手に取ってみてください。その行動を広げていくことで、倫理的な消費につながるのではないでしょうか。