環境問題が動物に及ぼすさまざまな影響
所属:恵泉女学園大学
インターン生:M.Iさん
地球上にはさまざまな生態系が存在しており、既知の生物は約175万種という記録があります(平成20年度・環境省より)。その中で地球温暖化などの環境問題により、生態系の破壊や絶滅を危惧している動物が多く存在しています。そして、私たちの生活は環境問題と密接に関係しています。本文ではさまざまな環境汚染の原因と、環境問題が動物に及ぼす影響についてまとめます。
地球温暖化により絶滅が危惧される動物
地球温暖化の主な原因には、温室効果ガスがあります。温室効果ガスとは、主に二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素などによって構成されたガスのことで、地表から放出された赤外線の一部を吸収することにより、地球の平均気温を14℃に保つ性質があります。
これを温室効果と呼びます。温室効果がないと地球の表面温度は-19℃になってしまうと考えられているため、この温室効果によって、私たちは地球上で生活することが出来るといえます。
しかし近年では、温室効果ガスの大気中の濃度が急激に増加し熱の吸収力が高まっているため、地球の平均気温が上昇しています。これが、地球温暖化といわれるものです。
地球の平均気温が上昇することによって生じる問題は、気候変動や異常気象です。気候変動による地球への影響としては、冬期の降雪量減少が起こり夏期の渇水につながる、また気候が熱帯化し短時間豪雨が頻発する、そして高潮、高波のリスクが高まる、などがあります。
気候変動は、多くの生態系に影響を及ぼしています。ジャイアントパンダは、生息地である竹林が育たなくなり、すみかと食料を失ってしまいます。北極に生息するアザラシは、海面温度の上昇により海氷が溶け、年々生存率が減少しています。
海氷が溶け出すと海面の水位が上昇し、沿岸地域が海に沈んでしまう原因にもなります。また熱帯に生息するオラウータンは、雨の増加や干ばつなどの異常気象により食物不足や森林火災が生じ、成長や繁殖に影響を及ぼしています。そしてアフリカに生息するアフリカゾウは、アフリカの乾燥化により水不足に陥っています。
温室効果ガスの一つである二酸化炭素が増加する原因として、化石燃料をエネルギー源とした開発と大量消費があります。これまで私たちは、人間や動物、自然の力をエネルギー源として生活してきました。
そして18世紀の産業革命以降、油や石炭、天然ガスなどの化石燃料が新たにエネルギー源として開発されました。化石燃料とは、地質時代にかけて堆積した動植物の化石の中の有機物を燃料としたものです。
化石燃料はこれまでのエネルギーに比べ効率がよく、安定的な供給が望めるため、現在でも使用され続けています。しかし化石燃料には炭素が凝縮されているため、エネルギー源として使用すると二酸化炭素が大気中に大量に放出されることになります。
そのため、化石燃料を繰り返し使うことによって、大気中の二酸化炭素の濃度は増加します。効率が良いとされる化石燃料の短所としては、環境破壊を引き起こすということだけでなく、有限物質であるため、将来的には枯渇するということです。
地球温暖化対策として、最近では新たに「再生可能エネルギー」がエネルギー源として注目されています。再生可能エネルギーとは、化石燃料のように有限なものとは異なり、太陽光や風力、水力、地熱といった自然界に常在するエネルギーのことです。
再生可能エネルギーの特徴としては、枯渇せず、二酸化炭素を排出しないことです。地球温暖化対策として、再生可能エネルギーはガスや電気、重工業などを取り扱う一部の企業で採用されています。
一方で再生可能エネルギーは自然の力であるため、供給が安定しないことや、場所を選ぶなどの課題があります。それぞれのエネルギー源には長所と短所があるため、発電をバランスよく組み合わせ、それぞれの特徴を最大限に活用した「エネルギーミックス」も、重要視されています。
また、企業は消費者目線のエコ活動を提唱しています。家庭でできるエコ活動の紹介や、企業によるエコ活動から関心を高めるものがあります。例えば、スーパーマーケットではエコバッグを持参するよう呼びかけることや、リサイクルボックスを設置するなどをしています。
家庭でできるエコ活動としては、照明をこまめに消すことや使用していないコンセントを抜くこと、また夏には緑のカーテンで冷房の使用を削減するなどの方法があります。
森林伐採によって失われるオラウータンの生息地
森林伐採の原因の一つとして、私たちの食生活が関係しています。日本を含む先進国では、食べ物を大量生産し大量消費しています。食生活の変化が分かる例として、油の消費量の推移があげられます。
2001年度から2017年度にかけて、大豆やごま、パーム核をはじめとする世界の主要油の消費量は、約2倍に増加しています。その中で、パーム油は主にインスタント麺やスナック菓子をはじめとした多くの加工食品に使用されています。
日本では一人当たり、年間約5キロものパーム油が消費されています。世界のパーム油の85%(2014)はインドネシアとマレーシアで生産されており、プランテーション方式による集約的な栽培がはじまってからはその面積は徐々に拡大しています。
パーム油を大量に生産するためには、広大な土地が必要になります。熱帯地域や東南アジアでは、アブラヤシを植えるためにたくさんの森林伐採が行われました。
その結果森林減少に陥り、森林生態系はすべて失われてしまいました。また、森林伐採によって熱帯に生息するオラウータンは、生息地の80%が既に失われており、オラウータンの個体数も100年前に比べると80%も減少しているという記録があり、絶滅が危惧されています。
パーム油の生産による森林伐採の対策には、消費者による需要の減少、また持続可能な製品の開発が求められます。環境への影響に配慮し、持続可能なパーム油を求める声が世界的に高まり、2004年に「持続可能なパーム油のための円卓会議(英名:“Roundtable on Sustainable Palm Oil”※以下“RSPO”)」が設立されました。
RSPOでは新たに熱帯雨林を伐採することなく、持続可能なアブラヤシ農園の在り方を示しています。また、森林伐採は大気中の二酸化炭素が増加する原因にもなります。熱帯雨林の森林は世界のおよそ40%を占めているため、熱帯雨林の減少は環境中に非常に大きな影響を及ぼします。
人間による環境汚染
「環境問題」と一括りした中でもいろいろな課題がありますが、一つ一つが密接に関係していることがわかります。私たちは日常生活において、さまざまな汚染物質を排出しています。
汚染物質は大気や水、土壌を汚染します。大気汚染の主な原因は、工場などから排出される二酸化硫黄、大都市の車などから排出される二酸化窒素及び浮遊粒子状物質です。
大気汚染がもたらす影響としては、大気中の汚染物質が雨に溶け込み、酸性雨として土壌や水を汚染します。酸性雨によって土壌は栄養不足となり、枯れていきます。
そして枯れた土地の森林は育たなくなり、砂漠化を引き起こします。食物が育たないなどの影響を受けることよって、森林を生息地とする動物は生態系が破壊され、生活が出来なくなります。
また、海や湖に降った酸性雨は有害なプランクトンを発生させる原因になります。これにより、水中にすむ生物は生息できなくなってしまいます。その他に、人間が作り出したフロンとい物質は、オゾン層を破壊させました。
フロンは主にスプレー缶や冷蔵庫、冷房などに使われます。フロンガスは燃えにくく、人に無害であるという優れた性質を持つ一方で、オゾン層を破壊させるということが判明し、使われなくなりました。
しかしフロンガスの上昇によって、既に南極上空のオゾン層は無くなってしまいました。オゾン層が破壊されると、地球に大量の紫外線が降り注ぎます。
紫外線は人体への危険だけでなく、植物や水中生物にも悪影響を及ぼすことになります。植物の場合、紫外線は細胞のDNAにダメージを与えてしまいます。
これによって、細胞が死んでしまうことや、突然変異を起こすなどの害があります。対策として、オゾン層を破壊させるフロンガスに代わり、代替フロンがいくつか開発されました。
しかし、それらはオゾン層への影響は無いものの、温室効果が高まってしまうという欠点がありました。フロンは主に冷媒として使用されており、現在はフロンを使用しないノンフロン型の冷蔵庫が主流となっています。一方で冷房にはノンフロンは適用されていないため、新しい冷媒ガスの開発が期待されています。
海洋プラスチックごみによる海の汚染
最後に、プラスチックごみについてです。最近は、海洋プラスチックごみが大きな問題として取り上げられています。海洋プラスチックごみとは、便利に使い捨てできるプラスチックが環境中に投棄され、その殆どが海に流れ着いて溜まってしまったものです。
すでに世界の海に存在しているプラスチックごみは、合計で1億5000万トンといわれています。プラスチックごみが分解されずに海に溜まってしまう理由は、プラスチックの原材料に問題があります。
プラスチックは石油からつくられています。プラスチックは人工的につくられたもので、耐久性に優れています。そのため、水道管のように地中に埋めても長持ちします。
しかし人工的につくられたプラスチックは、それを分解できる微生物が存在しないため、自然に分解することが出来ません。自然に分解することが出来ないプラスチックごみは、焼却処分することになります。
現在では技術の向上により、プラスチックの焼却に有害なガスが排出されることは少なくなりましたが、大規模なごみに対して焼却が追い付かない状況になっています。
海に大量に放流されたプラスチックごみは、魚類、海鳥やアザラシなどの海洋哺乳動物など少なくとも約700種の生物に害を及ぼしています。海の生物はプラスチックと餌の区別がつかず、プラスチックの匂いや見た目から餌だと勘違いし、誤食してしまいます。
このように海にすむ生物は多くのプラスチックを摂取することによって傷つけられ、死んでしまうことになります。海岸にあがったウミガメやイルカ、水鳥などの死骸からは、たくさんのプラスチックごみが摘出されています。
また世界経済フォーラムは、2050年にはプラスチック生産量が約4倍になり、海洋プラスチックごみの量が海にいる魚を上回る、という予測を発表しています。
これらを踏まえ世界ではプラスチックのリサイクル呼びかけが高まる中、最近ではプラスチック製品を廃止する動きも見られます。スターバックスやマクドナルド、米ディズニー、イケア、すかいらーくなどでは2020年から2030年の間に、プラスチック製のストローやマドラー、保存袋などをすべて廃止し、紙製のものに切り替えるなどの計画をしています。
紙製品の他に、プラスチック製品に代わるものとして注目されているのが、バイオプラスチック製品と生分解性プラスチックです。バイオプラスチックとは、主にトウモロコシやサトウキビなどの植物からつくられており、環境に優しい素材です。
生分解性プラスチックとは微生物によって水と二酸化炭素に分解され、環境中に残らないものとなっています。消費者によるエコ活動や、企業による新しい製品の開発など、環境への取り組みが世界的に前向きに進んでいます。
おわりに
これらのことから、環境問題は私たちの生活と密接に関わっていることが分かります。便利な社会になっていくほど環境汚染の影は大きくなり、地球上に共存する生態系を破壊していきます。
以下のデータから、私たちは地球の資源を使いすぎているということがわかります。もし世界中の人類すべてがアメリカ人と同様の生活をしたら、地球があと5個必要になってきます。
日本人と同様の生活の場合だと、あと2.8個分の地球が必要になります。一方で、人類すべてが平均的なインド人と同様の生活をすると、地球の生物生産力の70%で十分となります。
この計算からわかることは、環境問題は貧困などの社会問題とも切り離せない問題であるということです。環境問題の改善に向け取り組むべき課題は、まず環境の現状について知ることだと考えます。
最近ではメディアでも多く取り上げられ、環境問題について考える機会が増えました。環境に対して無関心であると、知らずのうちに環境を汚染してしまいます。
そのため、一人一人の行動が環境にどう影響するかを、考えていく必要があります。私が望む次世代の社会の目標は、一人一人が環境に対して関心を持ち、持続可能な環境づくりを目指せることです。
エコモは各地を飛び回って、電力・エネルギーや地球環境についてお勉強中なんだモ!色んな人に電気/ガスのことをお伝えし、エネルギーをもっと身近に感じてもらいたモ!