プラスチックに蝕まれた私たち
所属:目白大学
インターン生:M.Nさん
普段身の回りで使っているプラスチック製品は多くあります。ペットボトルやビニール袋、コンビニ弁当の容器、使い捨てのストローやスプーン・フォークなどなど。しかしその「便利」の裏側には、私たちが住む地球を脅かす事態が隠れています。
1.はじめに
マクドナルドやスターバックスコーヒーといった外資大手外食チェーンなどで、使い捨てのプラスチック製ストローの使用を廃止する動きが広がっていることや、スーパーやコンビニでのレジ袋有料化についてはご存知でしょうか。
普段身の回りで使っているプラスチック製品は多くあります。ペットボトルやビニール袋、コンビニ弁当の容器、使い捨てのストローやスプーン・フォークなどなど。
軽くて丈夫で持ち運びしやすい、様々な製品に加工しやすいなど多くのメリットがあり、世界中で様々な製品に使われています。本当に「便利」なものです。しかしその「便利」の裏側には、私たちが住む地球を脅かす事態が隠れています。
大量に生産され、使い捨てされるプラスチック製品
現在、世界で毎年3億トン以上のプラスチックが生産されています。その中には数十億トンのペットボトル、50億枚ものビニール袋が含まれています。
日本では年間300億枚、乳幼児を除いた国民一人あたり約300枚が使用されています。プラスチック製品は安価で丈夫なので至る所で使われています。
皆さんも普段、何気なくペットボトルを買ったり、コンビニでレジ袋をもらったりしていると人が多いと思います。また「便利」ということもあり、使い捨て目的として使われることが多いです。
あなたはペットボトルを買って、どのくらいの時間で捨てていますか?コンビニでレジ袋をもらって、どのくらいの時間で捨てていますか?
海ごみとなるプラスチック製品
国連によるとプラスチックゴミの9割はリサイクルされていません。その中でも、プラスチックごみがポイ捨てされたり、屋外に放置されたりすると、雨や風によって河川に入り、海に流れ出てしまいます。
海にあるプラスチックのほとんどは陸からのプラスチックごみです。その量は毎年800万トン以上であり、これを毎日に換算すると2万トン強、10秒毎だとごみ収集車1台分のごみが海に流れている計算になります。
国連によると、レジ袋に関していえば毎年最大5兆枚世界各国で使われ、1分あたりにすると約1000万枚にもなります。海に流れ出たプラスチックのごみは、潮の流れや風の力によって遠くまで運ばれたり、水面や水中を浮遊して遠くまで運ばれたり、海底に沈んだりしています。
海と言えば、綺麗な砂浜と青い海という光景を想像すると思いますが、世界各国のごみが潮の流れにのってそれらが一部の海底に溜まってしまったり、綺麗な砂浜も青い海もごみで埋め尽くされてしまったりと悲しい現状があります。
プラスチックは「丈夫」
プラスチックが素晴らしいのは「丈夫」だからであり、プラスチックが恐ろしいのは「丈夫」だからと言われています。プラスチック製品は自然状態では分解しません。
熱酸化や光分解によって非常にゆっくりとされていきますが、理論上数百年から数千年は分解しません。したがって、焼却でもしない限りこれまでに作られたプラスチックごみはどこかに、なんらかの形で現存しています。
海に入り込んだプラスチックごみは海面を漂う間や海岸に打ち上がっている間,太陽光にさらされます。浜辺では砂や波にもまれて,プラスチックごみ同士がぶつかり合い摩擦が生じます。
そして少しずつ劣化し,微細化していきます。プラスチックごみは,小さなかけらとなってもポリマーとしての構造はそのままで,プラスチックであることに変わりはありません。小さく微細化したプラスチックは,「マイクロプラスチック」と呼ばれ生態系に脅威をふるうようになります。
マイクロプラスチックが与える影響
マイクロプラスチックは微小なプラスチックのことを指します。その大きさに関して公式の定義はありませんが、多くの場合5mm(ミリメートル)以下のプラスチック粒子を指します。
マイクロプラスチックは,世界中の海で見つかっています。浅海から深海まで,どこにでも存在します。北極の氷の中にも見つかっています。海に入りこんだマイクロプラスチックを除去することはほぼ不可能です。そして海の環境中に,何世紀から何千年にもわたって残り続けるのです。
そんな小さな、鮮やかな、美味しそうな匂いがするマイクロプラスチックをカメ、クジラ、アザラシ、鳥類、魚類を含む200種以上の動物が摂取してしまっていることが分かっています。
特に危険にさらされているのは海鳥で、2015年にはオーストラリアの科学者が、ほぼすべての海鳥がプラスチックを摂取していると結論づける研究を発表しました。
動物たちは美味しい餌だと思って食べてしまうのです。その結果プラスチックは分解されないため動物たちの胃の中で溜まっていき、満腹状態なのに栄養不足で死んでしまうのです。死なずに生きていたとしても、魚たちは、プラスチックを摂取してしまうことにより、集団を作る行動が鈍ったり、肝機能が低下したりすることがわかっています。
また、魚を含んだ食物連鎖の中からプラスチックの生物濃縮が発生し、蓄積されたプラスチックは人間の口の中にも届きます。マイクロプラスチックはもともと石油でできているため、ダイオキシン類やPCBが付着しやすい性質があります。
これらの有害物質は乳がんやそのほかの重篤な疾患の原因になることも考えられ、注意が必要です。また日常的に使用する食品容器の多くは発泡プラスチックや発泡スチレン製であり、その中にはスチレンやベンゼンという毒性と発癌性を持つ性質が含まれています。これらは人体の中でも神経系、呼吸器系、生殖器系に影響を及ぼします。
プラスチック汚染対策をしないと
国連は消費パターンの見直しや廃棄物管理を改善しない限り、埋立て処分場や環境中に蓄積するプラスチックごみが2050年までに約1200万トンにも達すると報告しています。
またレジ袋が水路を塞ぎ自然災害を助長したり、下水道を詰まらせ、蚊の繁殖地を作り出し、マラリア感染のリスクを高めたりしてしまうとも報告しています。
だからマックもスタバもコンビニも
米コーヒーチェーン大手スターバックスコーヒーは、プラスチック製の使い捨てストローの使用を、2020年までに世界中の店舗で全廃すると発表しました。世界に2万8000カ所あるスターバックス店舗では、推計10億本のプラスチック製ストローが毎年使用されています。今回の決断は微細なプラスチックごみによる環境汚染への懸念が高まっていることに対応したそうです。
またプラスチックごみの削減をめざし、原田義昭環境相はレジ袋の有料化(無料配布の禁止)をスーパー、コンビニ、ドラッグストア、百貨店などのレジ袋を使う事業者に対して法令で義務化する考えを、記者会見で示しました。レジ袋の利用を減らすことを目的としてレジ袋が有料化になります。
SDGs14「海の豊かさを守ろう」
プラスチックゴミの廃棄や漁業の乱獲により、海洋資源や生物は著しく減少しています。地球の70%以上を覆い、各大陸を繋ぐ1つの海は私たちが生きていくうえでなくてはならないものです。海は私たちに多くのものを与えてくれていますが、私たちは海になにができるでしょうか。
「海と海洋資源を守り、持続可能な利用を促進する。」 これは国連サミットで定められた「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標であり、それらを持続可能な開発目標(SDGs)と言います。
持続可能な世界を実現するための17のゴールと169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。海ごみを減らし、海の動物たちを守ることはSDGsの取り組みの一つです。
限りある資源「石油」
そもそもプラスチックは何からできていると思いますか。答えは「石油」です。石油は様々な用途に使われ、4割が家庭などの熱源として、4割が自動車や船舶、飛行機の原動力として、残りの2割が洗剤・プラスチックなどの化学製品の原料として使われています。
ペットボトルに関していえば、国連によるとペットボトルを製造するために毎年約27億リットルもの石油が使われています。化石燃料の一つである石油は「限りある資源」です。
このまま使い続けるとあと何年資源を採取できるかという数字を現時点で確認されている経済的、合理的な範囲で採掘可能なそれぞれの資源の埋蔵量を年間の生産量で割ったものを「エネルギー資源確認埋蔵量」と言います。
現在のエネルギー資源確認埋蔵量は、石炭とウランが100年超、石油、天然ガスは50年ほどと見られています。今後、新たな油田や鉱山が発見され、技術革新によってこの数字が変わっていく可能性はありますが、化石燃料がいつかは尽きてしまう「限りある資源」であることに変わりはありません。使い捨てプラスチック製品のために限りある資源を使うのはとても勿体無いです。
プラスチックごみの行方
国連によると今まで生産されてきたプラスチックの中で、リサイクルされているのはおよそ9パーセントのみで、79パーセントは埋め立て処分されたか、ごみ山や海洋などの自然環境に不法投棄されています。残りの12パーセントは焼却されています。
プラスチックには、燃やすと有毒ガスを発生するものがあります。環境汚染の例としてダイオキシンの発生が問題となっています。ダイオキシンは、塩素化合物とベンゼン環を持つ物質が低温で燃えると発生します。
厚生労働省ではダイオキシン発生を抑制する対策として、焼却炉の構造を、800℃以上の高温で2秒以上燃焼し、排ガスを200℃以下に急冷して排出する設備とすることなどを定めています。
現在ではこのような高温の焼却炉の設置やゴミの分別が進んだこと、ダイオキシンの発生を抑える消去黒が開発されたことにより、以前ほど騒がれなくなりました。
SDGs13「気候変動に具体的な対策を」
しかしダイオキシンがあまり発生しないと言っても地球温暖化につながる二酸化炭素は発生します。さらに日本はゴミ大国と言われており、ゴミを多く出します。
環境省のデータによると、日本人のごみの焼却量は、1年間に一人あたり320㎏、2位のフランスが180㎏、3位はドイツの140㎏と、日本はダントツです。またごみ焼却炉の数は、日本が他国を大幅に引き離して1243、2位がアメリカで351、3位がフランスで188です。
ごみを出したとしても、ごみを燃やせば済む話なのでしょうか。「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」これは国連サミットで定められた「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載されたSDGsの目標13です。 ごみを減らし、焼却量を減らし、地球温暖化につながる二酸化炭素の量を減らすことはSDGsの取り組みの一つです。
プラスチック製品の始まり
第二次世界大戦中は銅やアルミ・鉄などが軍事利用で貴重なものになったため、プラスチック需要が世界的に増加しました。また戦後以降プラスチックは安くて使い捨てできる便利さから市場に急速に拡大していきました。
そして家庭内で利用されている日用品の多くがプラスチック製品にとって代わるようになりました。また一般的に「ビニール袋」と呼ばれて使用されている様々な合成樹脂製の袋は、1970年代から使用されるようになりました。
それまでは、紙袋に持ち手がついたものが汎用されていましたが安価で強度もあり、水濡れにも強いことを受け、紙袋に変わり広く使用されるようになりました。
どんなものでも裏側がある
安さや便利の裏には、それなりの代償があります。プラスチック製品を大量に生産し、消費した代償として環境汚染や限りある資源の無駄遣いになっているのです。
これは食べ物でも同じことだと思います。添加物がたくさん入ったジャンクフードは美味しいけれど体に悪い。納豆やオクラ、大豆など人によっては苦手な人がいるかもしれませんが健康食品の一つです。ことわざでもある「良薬口に苦し」とはまさにこのことだと思います。
sdgs12「つくる責任つかう責任」
私たちが安さと便利を求めて作られたプラスチック。そしてすぐにごみとなるプラスチック。それらがいま地球や動植物に多大な影響を与えています。少しでも食い止めるために私たちはすぐにでも行動しなければいけません。買う前に本当に必要なのか、買うべきなのかよく考えて行動しましょう。
「生産と消費のパターンを持続可能なものにすることを促進する」これは国連サミットで定められた「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載されたSDGsの目標12です。つくることでどうなるのか、またつかい終わったあとのこともしっかりと考え行動することは、SDGsの取り組みの一つです。
断る勇気
日本ではコンビニに行ったらあたり前に商品をレジ袋にいれてくれます。スープやパスタなどを買えば、プラスチックのスプーンやフォークをつけてくれます。またスーパーで果物を買うと別の小さいビニール袋に入れることもあるでしょう。これらは本当に必要でしょうか。よく考えてみてください。
「IF YOU CAN’T REUSE IT,REFUSE IT 捨てるなら、もらわない」これは国連が公開しているサイトの言葉の一部です。世界的にも、もらわないこと、断ることが大事だとされています。
またゴミ問題に対する活動としては3つの英語の頭文字Rに基づいた3R活動があります。最近ではこの「断る(refuse)」のRを加えた4R活動が提唱されています。
4R
Refuse 断る
必要のないものは受け取らない、ゴミになりそうなものはなるべく買わない、スーパーで買い物袋を持参してレジ袋を断るのがこの活動です。
Reduce 少なくする
ゴミの発生を抑制し、ゴミの量を減らすことです。ものを大事に使うことも大事です。シャンプーなど使い捨ての商品を買わずに詰め替え商品を買うなどがあります。
Reuse 再使用する
まだ使えるものを繰り返し使うことです。いらなくなったおもちゃを修理して使ったり、人に譲ったり、リユースできるものを使うこと。家電製品や家具類の中古品販売も盛んになってきています。
Recycle 再生利用する
廃棄されたゴミの中から有用な素材を取り出し、物理的、化学的な処理を加えて新たな製品を作り出すことです。リサイクルを効率よく進めるためには資源ゴミとしてきちんと分別回収することが肝要です。またなるべく捨てないことや、リサイクル品を買って循環の輪を広げることも大事です。
リサイクルの種類
① マテリアルリサイクル
一般的にリサイクルと呼ばれている方法で、廃プラスチックを融かしてそのままプラスチック製品の原料として使います。PETボトルを融かして公園のベンチにするなどです。
② ケミカルリサイクル
廃プラスチックに熱や圧力を加えて化学的な処理を施し、モノマーなどの原料物質にいったん戻してから新たにプラスチックを合成します。PETボトルの場合、モノマーのテレフタル酸に戻し、再びPETの原料とします。ただコスト面での課題が残ります。
③ サーマルリサイクル
廃プラスチックを燃やして熱エネルギーとして回収します。主に炭素原子と水素原子とからできているプラスチックは燃やしたときに発熱量が大きいため、焼却炉を発電や冷暖房に利用できます。また廃プラスチックを固めて固形燃料とすることもできます。
*私たちができることの例
- マイバッグを持参し、レジ袋はもらわない
- マイボトルを持ち歩き、プラスチックのカップを減らす(ペットボトルを買わない)
- マイ箸(スプーン・フォーク)を持ち歩き、プラスチックのスプーンやフォークを減らす
- プラスチック製のストローの使用を控える
- スーパーなどで食品を小分けにするポリ袋の使用を減らす
- 詰め替え用ボトルなど繰り返し使えるものを選ぶ
- 食品の保存はふた付き容器を使い、ラップの使用を減らす
- 買い物のときには簡易包装を頼む
- 海・川・山のレジャーではごみを持ち帰る
- 屋外で出たごみは家に持ち帰って処分する
- 河川敷や海岸の清掃活動に参加する
- ごみは所定の場所・時間に、分別して出す
- ごみのポイ捨て、不法投棄はしない
- ごみを減らすようにする
まとめ
近年、世界中で話題となっているプラスチックごみ。安価で丈夫なプラスチック製品は「便利だから」という理由だけ様々な場面で使われています。そして使えば使うほど様々な影響が出てきます。
海の動植物に影響を与えるだけでなく、人体にも害が及ぶこと、化石燃料である石油の無駄遣いになっていること、地球温暖化につながっていることをまずは知ることが大事だと思います。
それから私たち一人一人、この問題に立ち向かうために意識して生活することが大事だと思います。ポイ捨てをしないようにしよう、ごみが落ちていたらゴミ箱に入れよう、ビニール袋はゴミになるからもらわないようにしよう、マイバックやマイボトル、マイ箸を持とう。一人一人が意識して行動すれば、今より良い環境になるはずです。
また何事も「本当に必要なものを、必要な分だけ」という考えが大事だと思います。食料にせよ、モノにせよ、エネルギーにせよ、無駄遣いは良くありません。世界中の全ての人間、動物、植物、生物が幸せに健康に過ごしていけるように、まずは自分から行動に移していきたいと思います。