砂浜がなくなる!?海岸浸食ってなに?
所属:山梨大学
インターン生:I.Rさん
海に囲まれた島国の日本では、砂浜になじみのある人が多いのではないでしょうか。なじみのない人も社会(地理)の教科書で砂浜海岸を学んだと思います。現在、砂浜海岸の代表例である九十九里浜は海岸浸食により消失の危機にあります。本記事では九十九里浜の海岸浸食を例に挙げて説明していきます。
はじめに
みなさんは海を想像したとき、その光景の中に海の他に何を思い浮かべますか。全体に広がる空ですか。その空に浮かぶ雲ですか。それとも一緒に行く人たちのことでしょうか。その光景の片隅には砂浜が存在していないでしょうか。そんな当たり前に考える光景の中の砂浜がなくなると考えたことはありますか。
現在日本では様々な海岸で砂浜が消えていく海岸浸食が起こっています。本記事ではあまりなじみのない海岸浸食について、砂浜海岸の代表例である九十九里浜の実例を紹介していきます。
海岸浸食とは
波浪、潮流、沿岸流、風によって海岸の砂などが運び去られることを言います。そのため一般的には汀線(海岸線)の後退を伴います。海岸浸食は土砂の供給量が流出量を下回ることで起き、その原因は自然的要因(地形、河川の土砂供給、地盤運動など)と人為的要因(護岸等の構造物設置等による供給量の変化、地盤沈下など)の2つに分けられます。
九十九里浜
九十九里浜は、千葉県旭市からいすみ市にかけて広がる全長60㎞の砂浜です。浜の北端にある屛風ヶ浦(銚子市、旭市)と南端にある太東崎(いすみ市)、2つの海食崖が波で削られ、その土砂が堆積して形成されました。
原因
1960年代以降、屛風ヶ浦と太東崎の浸食を防ぐために消波ブロックを設置しました。このことにより土砂の供給量が減り、砂浜は後退していきました。他にも、川からの土砂の供給量の減少、漁港防波堤による沿岸漂砂の阻止、水溶性ガス採掘等に伴う地盤沈下が原因とされます。
影響
防護面
汀線の後退により海浜空間が消失するだけでなく、地盤沈下や急勾配化により波力が増大します。これにより、越波や浸水被害、海岸施設の被災等、防護レベルの弱体化が進んでしまいます。
利用面
海関連の地域産業は砂浜の消失により大きな打撃を受けました。
海水浴場の閉鎖
汀線の後退による砂浜の縮小や急勾配化により多くの河水浴場が閉鎖に追い込まれました。また、海水浴場の閉鎖に伴い海の家も減少しています。
地曳網の廃業、移転
九十九里浜の名物の地曳網は、砂浜の消失や消波ブロックの設置等により、廃業・移転を余儀なくされてしまいました。
環境面
海浜空間や海底の瀬の消失により動植物の生息場所や生育場所がなくなってしまいます。また、砂質の粗粒化によって生物への影響が生じます
貝類
海岸浸食により沖合の沿岸砂州が消失し、ヨブや瀬といった貝類(チョウセンハマグリなどの有用水産種)の生育に必要な海底の環境が失われてしまいます。そのため漁業への影響も懸念されます。
海浜植物群落
九十九里浜では県立九十九里自然公園に指定されていますが、砂丘地とハマヒルガオ・ハマニンニク等の海浜植物群落が織りなす美しい自然景観が海岸浸食の進行により消失してしまった場所があります。
対策
九十九里浜ではヘッドランド工法を行っていましたが養浜に移行し始めて行っています。
日本の海岸浸食
主な場所
- 茨城県鹿嶋市
- 神奈川県茅ケ崎市
- 福井県福井市
- 鳥取県米子市
対策
人工リーフ(潜堤)
潜堤は堤体が水面下に没した消波構造物のことです。潜堤のうち天端水深を深くし、天端幅を広くしたものを人工リーフと言います。これらは自然のサンゴ礁を真似た構造物で海岸付近に幅広い浅瀬を作ります。波は水深が浅くなると砕けて勢いを失うことから潜堤・人工リーフによって作られた浅瀬によって沖のほうで波が砕けるため波の小さい海域ができます。
突堤
突堤は一般的には金の延べ棒のような形をしており、海岸線に垂直方向に設置されます。このような突堤は1基だけでなく一定間隔をあけて数基から数十基設置し、突堤の間に流された砂を捕まえて逃げにくくする機能を持っています。
離岸堤
離岸堤は、沖合に海岸線と平行につくられる構造物のことです。効果は2つあり、1つ目は、波を消す機能、あるいは波の勢いを弱める機能で陸上への波の侵入を食い止めます。2つ目は海岸の砂が沖に出ていくのを防ぎ、ためる効果があります。
ヘッドランド(人工岬)工法
T字型の構造物を海岸線に垂直に設置し、構造物に沿う循環流を発生させることで波による砂の流出を抑制させる工法のことです。突堤と同じく間隔を開けて数基設置します。しかしヘッドランドだけでは、砂の流出を抑制するだけなので根本的には解決しません。
養浜
養浜とは、波によって海岸の砂が削り取られた海岸に再び人の手で砂を戻す行為のことです。また、その養浜によって作られた砂浜を人工海浜といいます。
サンドバイパス
養浜の具体的な方法で、港の上手側にたまった砂を浸食された港の下手側の海岸に人工的に移動させて砂浜を復元する工法のことです。
サンドリサイクル
養浜の具体的な方法で、流れの下手側の海岸にたまった砂を上手側の海岸に戻し砂浜を復元する工法のことです。
緩傾斜堤
従来の堤防よりも傾斜の緩やかなのり面で、小段を設けずに一枚のりにした堤防のことです。一般的に傾斜が1対3より緩やかなものを指します。
海外の海岸浸食
アメリカ
もともと埋め立て地であるマイアミビーチでは海岸浸食が進んでいます。対策としては、多額の費用を費やして砂を運び養浜をしています。
セネガル
サンルイ、ダカール、ルフィスク、プティコート、ジョアール等のほぼ全ての沿岸都市で海岸浸食の現象が見られました。原因としては異常波浪の来襲(自然的要因)や海岸構造物による砂の移動の阻害、海岸での砂の採取、ダムでの土砂堆積など(人為的要因)があげられます。しかし対策をする知見が十分になく、セネガル政府はJICAに国別研修を要請し2010年11月~2013年3月まで研修を行いました。
最後に
本記事はいかがでしたでしょうか。当たり前に存在しているものがなくなっていく世界、海岸浸食は自然に起こっていくものなので私たちに海岸浸食は完全には止めることはできません。しかし私たちが気づくことで砂浜を残していくことはできるはずです。
海岸浸食の他にも当たり前の世界を注意深く見てみると変わっているものがあるかもしれません。この記事をきっかけに、その何かに気付けたら未来は素敵なものになるかもしれませんね。
また、九十九里浜の例では、海食崖や河川が安全を考えて護岸等が行われていました。しかし、このことが環境の流れを変え、海岸浸食を引き起こす原因の1つとなってしまいました。この実例を踏まえ物事を行う際には先を見通す力も必要なのかもしれません。