お客様に幸せを与えながらコストも同時に削減-ホテルにおける省エネ対策
所属:早稲田大学
インターン生:S.Mさん
みんなさんが旅行する時、気持ちいいホテルに住むのは大事なことであります。完備された客室、美味しい食事、温泉やプールなどの施設を通じて、くつろぎの一時(ひととき)を楽しむことができます。しかし、上記の環境を作るためには、ホテル側として大量の資金を使わざる得ない立場から見ると、エネルギー消費も大きく、環境によくない影響を与えてしまいます。したがって、ホテルの省エネ問題も考えるべきことが本文の主張であり、はホテルにおける省エネ対策について話したと思います。
はじめに
みんなさんが旅行する時、気持ちいいホテルに住むのは大事なことであります。完備された客室、美味しい食事、温泉やプールなどの施設を通じて、くつろぎの一時(ひととき)を楽しむことができます。
しかし、上記の環境を作るためには、ホテル側として大量の資金を使わざる得ない立場から見ると、エネルギー消費も大きく、環境によくない影響を与えてしまいます。
したがって、ホテルの省エネ問題も考えるべきことが本文の主張であり、はホテルにおける省エネ対策について話したと思います。
ホテルのエネルギー消費の特徴
ホテルのエネルギー消費の特徴は、一般的に日運転時間や年間運転時間が長いです。面積当たりのエネルギー消費量が大くて、大型ホテルではオフィスビルの1.7 倍になります。空調熱源、熱搬送、給湯と照明、コンセントの割合が大きいです。
宿泊部門の面積あたりのエネルギー消費量は小さいですが、総エネルギー消費量としては一般的に最大です。その理由ですが、宿泊部門が全体に占める面積が大き、運転時間も長くなるためです。一方、屋内駐車場の主な消費エネルギーは照明と換気のみで、エネルギー密度は他部門と比べて非常に小さいです。下段はこのホテルの主なエネルギーの年間・時刻別のエネルギー消費変動のグラフです。
給湯負荷については、朝(7~9時頃)と夜(22時前後)がピークとなる特徴があります。
ホテルの業態によるエネルギーの消費特徴
三つのホテルの種類があります。ビジネスホテル、リゾートホテル、総合ホテルです。この三つの種類は特性が異なって、エネルギー消費特性も違いがあります。
ビジネスホテルはリゾートホテルや総合ホテルに比べれば、宿泊部門でのエネルギー消費が中心になります。リゾートホテルと総合ホテルに比べれば、宴会場や大浴場、プール等のパブリック部分におけるエネルギー消費の占める割合は少ないです。
リゾートホテルや温泉旅館の場合は、公用部門の照明や空調用の消費、また、プールや大浴場における給湯用のエネルギー消費が多くなります。総合ホテルの場合は、宴会場や飲食店、ロビー等の公用部門の占める割合が大きいため、客室のエネルギー消費はもちろんですが、これらの公用部門での照明用、空調用の消費も多くなりがちです。
ベンチマーク制度とは
ベンチマーク制度は、平成21年から始め、特定の業種・分野について、当該業種に属する事業者の省エネ状況を業種内で比較できる指標(ベンチマーク指標)を設定し、省エネの取組が他社と比較して進んでいるか遅れているかを明確にし、非常に進んでいる事業者を評価するとともに、遅れている事業者には更なる努力を促すための制度です。
ホテル業のベンチマーク制度では、以下の2つの基準を満足するホテルをベンチマーク対象ホテルとします。
1.15㎡以上のシングルルームと22㎡以上のツインルーム(ダブルルーム等2人室以上の客室を含む)の合計が客室総数の50%以上あること。
2.朝、昼、夕食時に食事を提供できる食堂があること。
ベンチマーク制度の課題
一口に「ホテル」といっても、様々な業態があり、ホテルの種類によってエネルギー消費量が異なります。これらの違いをどのようにベンチマーク指標に反映できるのかが課題になります。各別ホテルの違いを反映できるベンチマーク指標を設定するのは必要です。
ホテルの業態による省エネルギーの可能対策
ビジネスホテルの場合は、ルームキーによる客室の空調や照明の管理が可能な設備の導入、シーツやタオル等の取替えについてお客の希望を確認した上で必要に応じて取り替える仕組みの導入などです。 一方、リゾートホテルでは、その立地から、温泉や風力、太陽光等の自然エネルギーに恵まれている場合もあります。
そのような場合には、温泉や風、太陽光等の自然エネルギーを積極的に利用する技術の導入等が有効です。また、総合ホテルでは、宴会場や飲食店等の利用時間に合わせた照明や空調の管理による設備使用時間の短縮等が考えられます。省エネ型の機器や設備を導入する場合には、特に、宴会場や飲食店等に関係する部分に優先的に導入することも考えられます。
ホテルの施設による省エネルギー対策
宿泊部門:
- チェックイン前、チェックアウト後のエアコン温度調整
- ロビーや廊下、事務所などの温度調整
- 宿泊客への節電、節水呼び掛け
- 不使用室の消灯及び空調の停止
- 閑散期には、客室フロアを集約し、未使用フロアの空調を節減する
公用部門
- 建物内の予冷・予熱時に外気を入れない
- ロビー等ではカーテンやブラインドにより日射を調整し、冷暖房への負荷を低減する
- 大浴場等における節水を呼びかける
- 宴会場の照明管理を実施して、準備及び片付け時間は一般照明のみを点灯し、演出照明はこの時間帯は点灯しない
従業員に対して
- 従業員に対して、節水、低負荷型の清掃・設備管理方法(例:浴槽清掃にアルコール消毒を用いる等)を徹底するためのマニュアル等を作成し、配布、指導する
- 従業員のみが使用する場所等の冷暖房の設定温度の適正化を図る
- 従業員が使用する事務所や厨房等での節水や給湯温度を下げることを呼びかける。
空調施設について
- ダクト内の清掃や空気漏れの点検・修理、フィルターの適正保守等をこまめに行う
- 冷媒にCFC、HCFC 等のフロンが用いられている冷凍機等については、オゾン層破壊防止と温暖化防止の両側面から、漏洩防止のため適正なメンテナンスを行うとともに、廃棄時には、適正な回収・破壊処理を行う回収業者に引き渡す
参考にできるホテルの先進事例
事例業主名:大和屋本店
大阪における総合ホテルで、延床面積は約2,600平方メートルです。年間エネルギー使用量は約174kL/年です(原油換算値)。省エネ対策を導入した後、エネルギー削減量は12.3kL/年になり、コスト削減額は約1,048千円/年です。
対策の種類
- 客室冷蔵庫の運用改善: 客室冷蔵庫39台を宿泊客がいない間「切」状態にした場合、削減電力使用量は2.0kL/年になります。削減コストは147千円/年です。
- 空調機の省エネ:冷房設定温度25℃から26℃、暖房設定温度24℃から23℃にした場合、削減ガス使用量は0.4kL/年になり、削減コストは42千円/年です。
- 自販機の省エネ:旧型の自販機2台を省エネ型に入れ替えた場合、削減電力使用量は0.3kL/年になり、削減コストは22千円/年です。
- デマンドの低減:デマンド監視装置を活用して契約電力を66kWから60kWに低減した場合、削減電力:6kW/年になり、削減コストは97千円/年です。
- 不要変圧器の遮断:変圧器を3台から2台に統合し、無負荷損失を削減した場合、削減電力使用量:2,891kWh/年 (原油換算値:0.7kL/年)
- 客室照明をLED灯へ更新:蛍光灯78台をLED灯に取り替えた場合、消費電力削減量は2.4kL/年になり、削減コストは176千円/年です。しかし、イニシャルコストは1,248千円ですので、投資回収年数は7.1年になります。
結論
今後、ホテルにおける省エネ政策の適用対象と基準を拡大に向ける可能性があります。しかし、ホテル業界はせービス産業ですので、省エネルギーのためにサービスの質が下がることになってもいけません。お客様にとって不快とならない省エネ対策は今後の課題になると思われます。一方、お客さんとしてのみんなも、環境を守るためにホテルの省エネ規定に従って、ご協力してください。