美味しいフグが食べられなくなる!?

  • 更新日:2020/08/28

所属:高知工科大学

インターン生:I.Kさん

美味しいフグが食べられなくなる!?の写真

ふぐ刺し、ふぐ鍋、白子焼き。多くの調理法で提供されるふぐ料理は、高級料理として親しまれています。また、母国で規制されていても日本で安全に美味しく食べることができることから、外国人旅行者にとっても人気の料理になっています。しかし、高級料理のふぐ料理は今後、食べられなくなる可能性が出てきているのです。

ふぐ料理の歴史

ふぐ食の歴史は古く、縄文時代にまで遡ります。縄文時代の貝塚からフグの歯骨が出土したことからフグは縄文時代に漁獲されていたということがわかりました。また、平安時代の薬物辞典である本草和名にも「布久」という名称で登場しています。

そして、豊臣秀吉による文禄・慶長の役で九州に集結した武士のふぐ中毒が頻発しました。そのため秀吉は「河豚食禁止の令」を発布し、ふぐ食を禁止しました。その後、明治時代まで厳しい取り締まりが行われていました。しかし、伊藤博文が下関でふぐを食べたことがきっかけでふぐ食が解禁されました。

雑種のフグの出現

平成24年ごろから、岩手県、福島県、茨城県の3県で種類が不明の「謎」のフグが大量に水揚げされるようになりました。この謎のフグの出現により水産大学校の高橋洋准教授(集団遺伝子学)らが調査を行いました。高橋准教授らは252匹のDNAを解析すると149匹がゴマフグとショウサイフグとの雑種のフグであると判明しました。また、雑種のフグの内の4匹の外見がショウサイフグとほとんど変わらないものであったそうです。

雑種フグ出現の原因

今回、大量に水揚げされた雑種フグの親となったゴマフグとショウサイフグの生息域は全く異なります。ゴマフグは北海道北西岸から九州西岸の日本海側に生息しています。ショウサイフグは津軽海峡から九州南岸の太平洋側に生息しています。

では、なぜ別々の生息域のフグの雑種が大量に出現したのでしょうか。その原因が地球温暖化による海水温の上昇が原因と考えられています。日本海側のゴマフグが海水温の上昇により水温の低い北へと生息域を変えていき、海流の影響で津軽海峡を越えてショウサイフグの生息域である太平洋側に入り込んだのではないかとされています。

雑種フグの危険性

フグを食べる上で一番危険であるのはフグが持っている毒です。フグの毒はテトロドトキシンと呼ばれる神経毒で、フグの肝臓や卵巣に蓄積されています。テトロドトキシンは消化管からの吸収が速いので唇や舌、指先の痺れ、言語障害、運動失調、知覚麻痺が現れます。また、麻痺が進むと呼吸麻痺により死に至る可能性があります。

大量に獲られるようになった雑種フグの親で、フグ料理として食べられているゴマフグや、ショウサイフグは毒のある部位がわかっているため調理が行いやすいのですが、雑種フグの場合どの部位に毒があるのか判明していません。また、雑種フグは「親」となったフグと同じ部位に毒があるとは限らないため、本来なら食べることができる部位にも毒があるのではないかと言われています。

雑種フグに対しての対策

ゴマフグやショウサイフグはヒレの色の違いやトゲの有無を見ることで種類を見分けて選別しているそうです。そして、それらのフグの特徴と雑種フグを見比べて廃棄し、市場に流通しないように対策を行っています。しかし、雑種のフグは両方の親の特徴を備えていたり、一方の親に似ていたりと様々な特徴を持っているため仕分けの際に間違えて市場に流通してしまう可能生は否定できません。

この仕分けのミスを回避するために、東京都市場衛生検査所によると捕獲した漁師による選別と、仲卸・加工業者のふぐ鑑別資格者によってチェックを行うという2重チェック体制で仕分けのミスをなくすようにしています。

しかし、人の目で選別しているため、たとえ2重のチェックを行ったとしても雑種フグが市場に出回る確率がゼロとは言えません。そのため、専用の選別機械の開発といった科学的な選別方法を一刻も早く用いらなければならないと思います。

今後の行方

雑種フグの大量発生に伴い、厳しい選別が行われ安全なフグのみが市場に流通しています。また、水産大学校がこれから雑種フグについて毒のある部位の解明に取り組むそうです。解明されれば新たな食用として供される可能性があるそうです。しかし、今後も雑種フグの増加が進み雑種でないフグの漁獲量が減少するとフグの価格相場に影響が現れる可能性や、雑種フグが市場に出回り事故などが起きてしまう可能性があると考えられます。

海水温の上昇

雑種のフグが出現するようになった要因である海水温の上昇は、地球温暖化によって引き起こされる重大な問題でもあります。日本近海での海水温の上昇率は2016年までのおよそ100年間で+1.09℃となっています(図1)。この上昇率は世界全体で平均した海面水温の上昇率よりも大きい値であり、日本の気温の上昇率と同程度の値となっています。

海域別の上昇率を見ると、黄海、東シナ海、日本海南西部、四国・東海沖、釧路沖では日本の気温の気温上昇率と同程度の値となっています。また、三陸沖、関東の東、関東の南、沖縄の東及び先島諸島周辺においては日本の気温の上昇率よりも大きくなっています。

図1 日本近海の海域平均海面水温(年平均)の長期変化傾向(℃/100年) (左図)と海域区分(右図) 出典:気象庁

左図中の無印の値は信頼度水準99%以上で統計的に有意な値を、「*」を付加した値は95%以上で有意な値を示しています。上昇率が「#」とあるものは、統計的に有意な長期変化傾向が見出せないことを示しています。図中の青線は海域の境界を示しています。

海域別の海水温上昇の特徴

ゴマフグの生息域である日本海、ショウサイフグの生息域である、太平洋側の海域の中で特に雑種のフグが大量に発生した岩手、福島などの日本東方海域の海水温の変化はどのようになっているのでしょうか。

日本海側では、日本海中部と南西部で海水温の上昇が確認できます。日本海中部・南西部の上昇率は、世界全体や、北太平洋全体で平均した上昇率のおよそ2、3倍の大きさになっています。また、日本海中部の上昇率が日本近海で最も大きいものになっています。

日本東方海域では、三陸沖の水温の上昇傾向が明瞭に現れています。また、冬季と秋季に上昇傾向が明瞭に現れていますが春季と夏季には変化傾向がみられないという結果になっています。

海水温上昇の原因

海水温の上昇の原因は地球温暖化によって引き起こされます。海は地球表面の7割を占めており地球温暖化進行を和らげる役割を担っています。約40年間において地球全体で生成され蓄積された熱エネルギーの9割以上を海が吸収します。この熱エネルギーの吸収が海水温の上昇を引き起こしています。

海水温上昇によって引き起こされる問題

海は大気に比べ変化しにくいものですが、一度変化してしまうとその状況が長く続くため、様々な問題の発生が懸念されています。では一体どのような問題が発生するのでしょうか。

サンゴの死滅

環境省の調査によると沖縄県の西表石垣国定公園内にある石西礁湖海域のサンゴの91.4%が白化し、70.1%のサンゴが死亡していたそうです。サンゴの白化とはサンゴと共生している藻類がいなくなることでサンゴの骨格部分が目立つことで白く見える現象のことです。この状態が続くと栄養補給が行えないため死んでしまうのも時間の問題であると言えます。藻類の減少も海水温の上昇により生息する海域では生きていくことができなくなり生息域を変えたりしたのではなのかと考えられます。

熱帯魚の生息域の拡大

海水温の上昇により生態系にも影響が出てきます。サンゴの死滅のような現象が発生すればそこに生息していた生物の住処がなくなってしまいます。また、本州近くで熱帯の海に生息する魚が獲れるようになります。それにより、これまで獲れるようになっていた魚が見つからなくなり漁業的な問題が引き起こされてしまいます。

これらのような問題は一例にすぎません。この他にも異常気象など様々な問題が引き起こされる可能性があります。

海水温上昇への対策

海水温の上昇に関しての対策は大変難しいと考えます。上記でも述べましたが、地球の7割を海が占めています。この大きな海全体の水温を下げるとなると個人や国などが対策を行うにも限界があり、すぐに結果は出ないと思います。

また、海水温上昇に関する観測データや海水温上昇が原因とされる問題の観測データなど様々な研究データが存在します。しかし、それらを本当に海水温の上昇が原因と結びつけても良いのかなどの判断が分かれているという状況にもあります。

これははっきりとした海水温上昇についての理論が確立されていないためであると考えられます。ですから、結果が明確に現れるかわからない対策方法を行うより、時間をかけ理論の確立や確実に結果が現れる方法を見つけ出すといった研究を行う必要があるのではないかと考えます。

また、温暖化の問題について様々な方法で対策を行っていますが我々人間が対処しようとしている問題の相手は地球で、自然そのものを相手にしているようなものです。したがって、自然が対応してくれるまで待ってみるというのも一つの手段ではないのかと考えます。

海全体は大きく循環しているため、南極海から、大西洋と太平洋、そして表層と深層、これらを約1000年の歳月をかけて循環していると言われています。また、深層は比較的水温が低いと言われ、その深層水と入れ替わるまで待つというのも妥当ではないかと考えます。

海水温上昇による水産業への問題

雑種フグの出現の他にも海水温の上昇が影響し発生している水産業への問題は存在します。海水温上昇によって引き起こされる問題の中でも記述しましたが海水温が上昇すると熱帯の海に住む魚は生息域を広げ、徐々に北へと拡大していきます。

また、低い水温で生息している魚は日本周辺よりも水温の低い北へと退いていくと考えられます。これにより各地の漁業に大きな影響を与えるのではないでしょうか。

また、魚の生息域の変化だけでなく魚の一生にも影響を与えます。産卵時期の魚や、産卵された卵、稚魚にはそれぞれ適した環境でなければ生きていくことはできません。ですが水温の上昇により熱帯の魚は暖かい環境に適応できるため数が増えますが、冷たい環境で生きている魚の数は減少していくと考えられます。

北海道根室でのサケマスの定置網に獲れることのなかったクロマグロが掛かったり、南の海で生息するブリがオホーツク海で漁獲されたりなど様々な事例があります。 本来なら獲れるはずのない魚が獲れてしまうと獲られた地域では馴染みのない魚であるので買い手がつかず産地を悩ましているという問題も発生しています。

さらに、本来なら8月になると北海道の東沖に南下してくるはずのサンマが南下してこず水温が低下する9月の下旬まで姿を見せなくなっています。そのため、根室沖釧路沖でのサンマの操業開始が数年間にわたり遅れているという状況になっています。

また、茨城県をはじめとした関東地方の海水浴場に南の海に生息するはずのサメが出現し海水浴場での遊泳が禁止されるなど人に被害を及ぼしうる問題もあります。

一方で減少が顕著に現れている魚も存在します。北海道周辺に主な産卵場所を持つホッケやスケトウダラは水温の低い環境に適しています。しかし、水温上昇により漁獲量が大きく減少し加工業者などに深刻な影響を与えています。

水産業の対策

雑種フグの市場流出を避ける対策のように、我々人間に被害が及ばないようにする対策は取られています。しかし、雑種フグの増加を防ぐなどの対策は大変困難であると言えます。地球規模での環境の変化によって引き起こされた生態系の変化は人間の手で元の状態に戻せるほど簡単ではないと思います。

しかし、レジームシフトと呼ばれる環境の変化が起きる現象によって漁獲量の減少が回復しているという状況も見られます。このことから、海でおこる様々な現象をよく理解した上で魚の量が減少した時や増加傾向にある時は、漁獲を控えて天然の魚を守り、増やしていく行動も必要ではないかと考えます。

また、魚の漁獲量の減少に対して行われている対策として養殖が挙げられます。牛や豚といった家畜のように自然と切り離し人間の管理下で飼育することは可能であるとされています。海の沖合に出て天然の魚を獲って得られる漁業生産量は頭打ちとなっていますが、養殖での生産量は増加しています。

そのため、漁獲量が減少している魚の養殖を行うことが良いのではないかと考えます。しかし、生き物を育てる上で必要となってくるのはエサです。魚の養殖で用いられているエサはマイワシなどの魚の切り身、切り身に魚粉や魚油を混ぜ合わせたもの、魚粉を固形にしたものなどです。

このエサから明らかになるのは、魚を育てるのに魚を使っているということです。養殖量が増えるとエサになる魚が大量に必要になるので養殖量にも限界があると思います。そのため、魚を使ったエサに変わるエサの開発を進める必要があるのではないかと考えられます。

おわりに

私は、テレビのニュースで雑種フグの存在を知りました。今回この記事を書く上で、雑種フグの出現原因などを調べた結果、海水温上昇が原因であると知りました。また、海水温上昇によって引き起こされる様々な問題が関連して出てきました。

そして、雑種フグだけでなく漁業への影響が多く存在したので、一緒に書かせていただきました。このことから普段何気なく口にしているものが温暖化によってなくなる可能性があるという事をこの記事を読んでもらった方に知っていただきたいと思います。

また、温暖化によって人間以外の生物にも影響が出ているということを実感していただきたいです。海水温の上昇への対策でも述べさせていただきましたが、対策しようとしている問題は地球規模の問題です。ですので、個人の頑張りだけでは限界があります。

しかし、多くの人が行えば少なくても効果は出ます。そのため。周りの人々への呼びかけが大切になってきます。温暖化が起きているというだけでなんとなくエコ活動をしている人や今世界中で起きていることを詳しく知らない人もいると思います。しかし、今起きていることをよく知ることで今後生活していく上で大切なことは何なのかを知ることができると思います。

宜しければSNSでのシェアをお願い致します!

エコモ博士
本ページの記事が皆様のご参考になりましたら、ぜひともイイネやシェアいただければ有難く思います。ご検討いただけますと幸いです。
おすすめ電力会社用アイコン 編集部おすすめの電力会社
個人・ご家庭の方
Looopでんき用アイコン
基本料金0円でお得
Looopのプランは基本料金が0円となっており、電気を使った分だけ料金が発生することが最大の特徴です。ポイント等の付与がなくとも問題ない方、電気の利用方法で電気代を徹底的に安くしたい方に推奨できます。価格を追求しながらも、環境や日本社会への貢献にも目を向けた大手の新電力会社となり、特に基本料金のコストを削減したい方におススメです。
idemitsuでんき用アイコン
オール電化で最高峰
idemitsuでんきは、出光興産が提供する電気料金プランです。オール電化住宅において最高水準に安価な専用プランがあります。特にオール電化向けという観点では、一人暮らし~大家族まで国内で最高峰の料金構成となっている電気プランの一つと言えます。また、EVユーザーの方も深夜電気で蓄電できるためおススメです。
シン・エナジーでんき用アイコン
マイルが貯まる
シン・エナジーの電気料金プランは、JALのマイレージがどんどんと貯まることが特徴です。電気代をお得にしながら、マイルを貯めたい方にとって非常におススメの電気料金プランとなっています。
四つ葉電力用アイコン
完全固定単価で安心
四つ葉電力の「ほっと5.0安心プラン」は、[基本料金][再エネ賦課金][燃料調整費][容量拠出金][託送費]が0円の、電気を使った分だけ完全固定単価での支払いとなる安定性の高いプランです。原油高等による電気代変動の影響を受けたくない方に推奨できます。
法人(高圧)の方

電力会社の一括見積にて電気代削減のサポートをしております。皆様には電気料金明細をご用意いただくのみの簡単作業となります。複数社の見積りを一覧化、どの程度電気料金を削減できるか比較できます。

おすすめガス会社用アイコン 編集部おすすめのガス会社
個人・ご家庭の方
ENEOS都市ガス用アイコン
オススメ都市ガスプラン
石油元売りとして国内最大の規模を持つENEOSは、都市ガスプランが特筆すべき水準の価格構成となっています。ただし、東京ガス/京葉ガスエリア限定の部分がネックです。しかしそれらエリアにお住いの方であれば、ENEOS都市ガスに切り替えることで大幅なガス代削減が期待できます。
プロパンガス用アイコン
プロパンガス比較サービス
日本では2万社ほどのLPガス事業者が販売を行っており、価格差が極めて大きいのが業界の特徴となります。LPガス会社の見直しにより毎月のガス料金を大きく抑えられる可能性があり、おススメのプロパンガス比較サービスをご紹介しております。
ページトップへ