ウナギ捕獲量が減少している、って知っていますか?

  • 更新日:2020/08/28

所属:目白大学

インターン生:M.Tさん

ウナギ捕獲量が減少している、って知っていますか?の写真

「土用の丑の日=ウナギ」と頭の中で方程式ができている人は多いと思います。私は幼い頃「どうして”うし”の日にウナギを食べるのだろう」と不思議に思っていました。このように小さい子どもでさえ知っているウナギは私たちの生活に深い関わりのある魚です。しかし、そのウナギの捕獲量が減少していることを皆さんはご存じでしょうか。なぜ、ウナギの捕獲量は減少してしまったのでしょうか。

土用の丑の日って何?

そもそもなぜ「土用の丑の日」にウナギを食べるのでしょうか。「土用の丑の日」と聞くと夏を思い浮かべますが、実は春・秋・冬にも「土用の丑の日」は存在します。その中でなぜ夏の「土用の丑の日」にウナギを食べる風習があるのかというと、諸説ありますが、本来冬が旬であるウナギを夏にも売りたい、ということから始まったそうです。

ウナギ捕獲量の現状

1957年から2002年までは漁業・養殖業生産統計年報、2003年からは水産庁が行っている調査により、ニホンウナギの稚魚であるシラスウナギの採捕量は減少していることが明らかになっています。

また、環境省版レッドリスト2017では、ニホンウナギは絶滅危惧IB類(EN)と評価されています。これは、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いものが該当します。捕獲量減少どころではなく、野生での絶滅の可能性まで出てきています。なぜ、このような事態に陥ってしまったのでしょうか。

捕獲量減少の原因

ウナギの捕獲量が減少しているのは次のようなことが原因であると言われています。

乱獲

人間が必要以上にウナギを捕獲してきたため、ウナギの数が減少してしまったのではないかということです。野生のウナギの数が減少すればその分産まれるシラスウナギも減ります。その減ったシラスウナギが成長して乱獲されると、またシラスウナギが減る、という悪循環に陥ってしまいます。

海洋環境の変化

海洋環境の変化により日本に来遊するシラスウナギが減ったため、ということです。ニホンウナギの産卵場は、日本から約2,000km離れたグアム島に近いマリアナ諸島西方海域の北赤道海流中にあります。ここでは、北赤道海流の表層水を南北に分断する塩分フロントに注目が集まっています。

シラスウナギに成長する前のレプトセファルス幼生が塩分フロントの南側で採補されることが多く、この周辺の海流構造が幼生の西方輸送に適したものだからです。

塩分フロントはハワイ沖からの強い蒸散作用を受けた高塩分水と熱帯特有の降雨がもたらす低塩分水によって形成され、エルニーニョが発生すると降雨の源となる積乱雲が東へと移動するために塩分フロントは南側に移動します。

ウナギの生態は未だ不明な点が多いですが、もし、塩分フロントが産卵の目印になっているなら、エルニーニョに対応した日本沿岸へのシラスウナギ来遊量に変化が起こるはずです。実際にエルニーニョが発生するとシラスウナギの採捕量が減少しています。

生息環境の悪化

沿岸に来遊したシラスウナギは産卵するまでの5年~15年の間、河川に定着するものや湾内・河口に留まるもの、再び海に戻るもの、川と海を行き来するものに分かれます。このような生息水域が悪化したことにより、シラスウナギが親まで成長できないことが捕獲量減少の原因だと考えられています。

  1. 野生のウナギが減り、その影響でシラスウナギが減る
  2. 日本へ来遊するシラスウナギが減っている
  3. シラスウナギが親まで成長できない

このような状況では、ウナギの捕獲量が減少することは自然な流れのように思います。しかし、各要因がどれくらい影響しているのかは明確ではありません。

対策

ウナギの捕獲量減少を食い止めるために次のような対策を行っています。

ウナギ養殖業の許可制

うなぎ養殖業は、2015年6月1日、農林水産大臣の許可が必要な指定養殖業に指定されました。現在は農林水産大臣による「うなぎ養殖業の許可」がある者以外は、うなぎ養殖業を営むことはできません。これは、ニホンウナギのみではなくビカーラ種などその他の種のウナギを養殖する場合も同じです。無許可で養殖した場合、3年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金の対象となります。

ウナギの完全養殖

2010年4月、独立行政法人「水産総合研究センター」がウナギの完全養殖の実験に成功したと発表しました。しかし、実験成功から6年経っても完全養殖ウナギは市場には出回っていません。

「完全養殖」とは

1 受精卵を人工的にふ化

2 仔魚から稚魚のシラスウナギを経て、成魚のウナギに育成

3 オスとメスから精子と卵を採取して人工授精

4 再び受精卵を人工的にふ化

というサイクルを人工飼育で完結させることです。実験で完全養殖が成功したとはいえ、大量のシラスウナギを育てるには技術の確立が必要です。水産総合研究センターは次のようなテーマの研究を通じて、シラスウナギを大量に育てる技術の確立に取り組んでいます。

受精卵

大人のウナギを成熟させて、良質な受精卵を産ませるためのホルモン剤を開発しました。その結果、卵のふ化率が従来に比べて向上しました。

エサ

エサに絶滅の恐れが指摘されているアブラツノザメの卵を使っていることから、鶏卵や魚粉を用いた代替エサの開発に着手しています。実際にシラスウナギが食べて生育するところまでは到達しています。今後はアブラツノザメの卵を使ったエサと同程度の生存率・成長率を目指しています。

飼育方法

容量10リットルという小規模な水槽を使って水温やエサの与え方などといった基本的な飼育技術の確立に取り組みながら、大量飼育の実現に向けて容量1000リットルの大型水槽の開発も進めています。

また、水産庁はニホンウナギ種苗の池入れ量の上限を決め、うなぎ養殖業者に分配しています。この制度により、ウナギを必要以上に養殖することを避けることができます。しかし、ニホンウナギの国内漁獲量は年によって変動があるので、不足分は輸入に頼っています。

その理由は現在のウナギ養殖は、天然のシラスウナギを捕獲して養殖場で育てているので完全養殖ではないからです。そのため、シラスウナギの漁獲量が減ると市場に十分な量を供給することができなくなります。

ウナギの国際的資源保護・管理に係る非公式協議(政府間協議)

2012年9月からニホンウナギを利用する主要国・地域である日本、中国、チャイニーズタイペイにより協議を開始しました。2014年9月の第7回協議でニホンウナギやその他の関連するウナギ類の保存及び管理に関する共同声明を発出しました。その内容は以下のようなものです。

1 ニホンウナギの池入れ量を直近の数量から20%削減し、異種ウナギについては近年(直近3カ年)の水準より増やさないための全ての可能な措置をとる。

2保存管理措置の効果的な実施を確保するため、各1つの養鰻管理団体を設立する。それぞれの養鰻管理団体が集まり、国際的な養鰻管理組織を設立する。

3 法的拘束力のある枠組みの設立の可能性について検討する。

2016年9月の第9回協議では、日本、中国、韓国及びチャイニーズタイペイの池入れ量や池入れ上限の遵守状況、昨年の生産及び貿易の状況について情報交換を実施しました。

ウナギ資源の保存及び管理に関する法的枠組み設立の可能性についての検討のための非公式協議(政府間協議)

2014年9月の共同声明を踏まえ、日本、中国、韓国、チャイニーズタイペイの4者間で、ウナギ資源の保存及び管理のための法的拘束力のある枠組みの設立の可能性について議論しました。第1回の会合は2015年2月、第2回は2015年6月に行われました。

民間ベースでの資源管理

2014年9月に行われたウナギの国際的資源保護・管理に係る第7回非公式協議において発出された共同声明に基づき、次のような団体・組織が設立されました。

一般社団法人 全日本持続的養鰻機構

ウナギ資源の持続的な利用の確保を目的として2014年10月20日に設立されました。事業内容は次のようなことです

1 ウナギ資源の適切な管理

2 ウナギ資源の適切な管理の下で養殖されたウナギ利用の促進

3 ウナギ資源の管理、貿易及び市場に関する調査

4 ウナギ資源の適切な管理に関する国際的な養殖業者間の交流及び協力の促進等

持続可能な養鰻同盟(ASEA)

各国・地域の養鰻団体である一般社団法人 全日本持続的養鰻機構(日本)、中国漁業協会 鰻業工作委員会(中国)、養鰻水産業協同組合(韓国)、財団法人台湾区鰻魚発展基金会(チャイニーズタイペイ)が集まり設立しました。

民間ベースで資源管理について話し合う国際的な団体です。2015年6月に第1回会合、2016年12月に第2回会合を開催しました。

ウナギをめぐる国際的な情勢

ワシントン条約(CITES)第17回締約国会議

2016年9月24日から10月4日まで、南アフリカ共和国のヨハネスブルグで開催され、ウナギ類の資源や貿易の状況等を議論する場を設けるという提案が採択されました。しかし、議論の場を設けるだけであり、具体的な対策が考えられているということではないです。建設的な議論の場が設けられることが望ましいです

国際自然保護連盟(IUCN)

1948年に世界的な協力関係のもと設立された、国家、政府機関、非政府機関で構成される国際的な自然保護ネットワークです。2014年6月にニホンウナギを絶滅危惧IB類(EN)、ビカーラ類を準絶滅危惧種(NT)としてレッドリストに掲載しました。

同年11月には、アメリカウナギも絶滅危惧IB類(EN)として掲載しました。また、ヨーロッパウナギは2008年に絶滅危惧種IA類(CR)として掲載されています。以上のようにニホンウナギを持続可能な資源として利用するには国内だけではなく、国外でも対策を考え、実行する必要があると思います。

捕獲量制限や取引制限、資源管理、養殖ウナギの放出など何か一つをすればいいわけではなく、総合的な対策を実行する必要があります。ワシントン条約で「ウナギ類の資源や貿易の状況等を議論する場を設ける」ことが採択されたので、その場で議論されるはずだと思います。

おわりに

今までウナギの捕獲量減少について述べてきましたが、生活者である私たちは国や漁業関係者にただ任せておけばいいということではないと思います。捕獲量制限や取引制限どの行政的なことには関わることはできませんが、環境保護・回復なら協力できると思います。

大きなことをする必要はないと思います。自分ができる小さなことを一人ひとりが行うことで、その積み重ねが環境を考えた大きな行動になると思います。 同じ地球に住む生命として、相手のことを考えてみませんか。これからの時代にウナギを持続可能な資源として残していきましょう。

今回は「食」に関するものでしたが、「食」だけではなく、身近な事柄から「自分に関係がある」と思って、環境について考えることも大切なのではないのでしょうか。意識すれば行動が変わります。行動が変われば結果も変わってきます。地球の未来を私たちが守っていきませんか。

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エコモ博士
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