光害が及ぼす影響とは!?
所属:跡見学園女子大学
インターン生:A.Mさん
今日の地球は、地球温暖化という温度上昇や地球の気候変化にも大きく影響する問題を抱えています。しかし地球が抱えている問題は大気汚染や水質汚濁、光害などの問題も抱えています。光害問題に関して、日本は光害大国とも言われ、世界的に見てもとても劣悪な環境となっています。今回はその光害問題について紹介します。
光害とは
光害とは公害の種類の1つで、国際的に統一された指標はありませんが、「光害対策ガイドライン」では、良好な照明環境の形式が、漏れ光によって阻害されている状況またはそれによる悪影響のことと定義されています。簡単に言うと障害光による悪影響のことを指します。例えば次のようなことがあげられます。
- 日本の都市部では、光が大気中の水分や塵などで拡散され、夜空が明るくなることにより天体観測に悪影響を及ぼす。
- 無駄な照明の使用は電気エネルギーの浪費につながる。
- 道路灯などの街頭により農作物が生育不良を起こす。
- ゴルフ場やその他の野外施設などの照明による周辺への悪影響。
- 多くの動物や昆虫に対し光はその行動パターンに影響を与え、人工光に誘引され犠牲になることがある。
光害の原因となる光は、一般家庭やビル、工場や街灯などと多岐にわたっています。その中でも最近大きな問題とされているのが広告照明などの不要な光です。この光が大きくなることにより、周辺や夜空への光漏れが増えてしまいます。
宇宙から見た夜の地球
アメリカ航空宇宙局として知られているNASAが2012年に「NASA | Earth at Night」という映像を発表しました。その映像はNASAが制作し、アメリカ地球物理学連合で発表された映像です。映像では宇宙から見た地球を見ることができ、黒い球体に眩しいほどの光が散りばめられ、とても美しい姿の地球を見ることができます。
しかし、その眩しいほどの光の正体はすべて地球で使われている電気の光なのです。それは、私たち人間が電気をたくさん使い、多くの電気を消費していることがはっきりわかります。地球での各国における夜間の電力の使用は宇宙から見ればとても美しく、キラキラ輝く光が散りばめられた地球は幻想的に見えます。しかし、環境への影響を考えると美しく見えなくなってしまうように感じます。
光害による夜空への影響
光害の影響として最も代表的なのは、夜空が明るくなり、星が見えにくくなってしまうことです。海や山、田舎など自然が多い場所で夜空を見上げると、空にたくさんの星が広がり、月明かりがなければ、肉眼で数千の星や天の川を見ることができます。たくさんの星が広がっている夜空はいくら見ていても見飽きません。
しかし、光害が進んだ地域である都心で夜空を見上げても、天の川が見えないことはもちろん、肉眼で見ることのできる星も極めて限られてしまいます。それは都心と田舎が使用している光の量、光の使い方が影響しているからです。
田舎は都心に比べ人も少なく光を使う量が少ないのです。田舎には川や森、林などが多く、そこには光が存在しません。光があるとすれば、それは、車道や歩道にあり、ある程度の距離を保ち点々と並んでいる街灯や、家の中から漏れる光だけです。
田舎には高層マンション、高さのある建造物などはほとんどありません。田舎にある光は必要な場所だけを照らし、無駄な光はないのです。しかし都心はどうでしょうか。自然は少なく、高層マンションが多く建ち並び、光の種類も様々です。
都心の光は、高層マンションの光、車道や歩道の光はもちろん、一般家庭から漏れる光の量は田舎の比ではありません。またいたるところにお店が建ち並び、それぞれの看板が光を放っています。車道や歩道の光、一般家庭のから漏れる光は田舎にも存在します。
しかし車道や歩道の数、一般家庭の数でさえも田舎と都心では大きく異なるのです。それに加え、都心にはどこにでもコンビニやスーパー、飲食店やショッピングモールといった光を放つ場所がいくつも存在します。そうした場所は夜でも遅くまで光続け、夜空に光を放ち続けます。夜空に漏れた光が大気中で散乱することにより星が見えにくくなってしまいます。そのため都心で夜空を見上げたところで、見ることのできる星は明るい星だけなのです。
生態系への影響
光害の広がりにつれ人間や動物、昆虫の行動に影響を及ぼしているという考えもあります。今まで動植物は、地球の自転や公転によって作り出される昼と夜、日の長さの差に対応してきました。しかし、照明によりそのリズムを崩されているのです。
例えば、夜に開花する花を受粉させる蛾の行動の変化などがあります。多くの鱗翅類学者や昆虫学者は、夜間の照明が画の飛行能力を妨害していると考えています。鳥類にも同じことが言えると考えている学者もいるそうです。
そして植物への影響もあげられています。街路樹が明るい街灯のそばに立っている場合、その街路樹は夜間も長時間光を浴び続けることにより、紅葉の遅れなどの異常が起きる場合があるということが報告されています。このことは、植物の寿命にも影響し、寿命が短くなってしまうことがあります。植物への影響としては稲もあげられています。稲も至近距離で明るい街灯から照らされ続けた場合には、異常出穂や稔実障害が発生することが報告されています。
人間への影響
光害は人間にも悪影響を与えます。街灯の過剰な明かりは歩行者や車などの運転手に危険を及ぼすことがあるのです。夜の道では街灯の光源から届く眩しい光が目に入ってしまいます。眩しい光はグレアと呼ばれ、それが歩行者や車などの運転手に危険をもたらすのです。
グレアが目に入ることにより、目がくらみ、暗いものまで見えるように開かれていた瞳孔が収縮してしまいます。これにより、影になった暗い部分が見えにくくなってしまい、歩行者や車などの運転手が危険にさらされるのです。
グレアによる危険の典型例もあげられています。道路を横断している歩行者を、歩行者の向こう側にある強力な光源である対向車のライトが逆光になることにより、まったく視認できなくなり車ではねてしまうという事故例です。
また光害は一般の居住者にも影響を与えるこがもあります。それは道路や街路の屋外照明によるものです。道路や街路にある屋外照明が住居内へ強く差し込むことによる安眠妨害や不適切な照明の選定・設置により、逆に歩道や車道に必要な明るさが得られないのです。
光害への対策
光害の対策として、照明を「消す」など「撤去する」という対策が考えられます。しかしそこに照明があるということは何らかの理由や目的があるということです。何らかの理由や目的がある以上、そこの場所から照明をなくすことは、光害への対策として相応しくありません。必要な照度、照明目的を確保しながら、周囲への悪影響を起こさせないことが光害への相応しい対策となります。
光害の対策として、光害に関心を持ってもらうため1988年から環境省主催で全国星空継続観察が夏と冬に行われていました。これは、一般市民参加型の事業で、肉眼や双眼鏡を使って星空を観察することにより、一般の方の光害への理解度を上げることを狙ったイベントでした。しかし参加登録や観察結果の入力等を行っている環境省の全国星空継続観察調査システムの2013年度以降の運営が困難な状況となり、2013年3月末をもってシステムが休止されました。
また、1998年には環境省により「光害対策ガイドライン」が策定され、2006年には改訂版が公表されています。このガイドラインは良好な照明環境の実現はもちろん地球温暖化対策の一助ともなるものです。
全国各地の自治体でも、パチンコ店などから発せられている無駄なサーチライトを禁止する条例が制定されています。2004年時点で、県としてサーチライトを規制しているのは、岡山県、佐賀県、大分県、熊本県があり、いずれも「特定の対象物を照射する目的以外の目的で使用してはならない」と定められています。岡山県美里町(現井原市)では、1989年11月22日に美しい星空を守るための「光害防止条例」が制定されました。
こうした対策はとられているものの、光害に対する一般への理解度は低いままというのが現状です。その理由としては政府の対応が後手に回ってしまっていることや、マスコミが、光害問題は経済効果につながりにくく、諸手をあげて報道していないこともあげられます。