カーボン・オフセットと地方創生
所属:國學院大學
インターン生:M.Rさん
現在、地方創生と環境対策を合わせて取り組む動きが広がっています。その中で「カーボン・オフセット」という取り組みが注目されています。この取り組みの内容と地域活性化、地方創生の可能性について探ってみたいと思います。
カーボン・オフセットとは
カーボン・オフセットとは、地球温暖化の原因といわれる二酸化炭素の排出を削減する取り組みです。家庭、オフィス、移動も含め、まず自ら排出する温室効果ガスを把握した上で、削減努力を行い、排出削減が困難なものについては他の場所の温室効果ガス排出削減量又は吸収量(クレジット)を購入してオフセット(埋め合わせ)をするというものです。イギリスを始めとした欧州、米国、豪州等での取り組みが活発であり、我が国でも民間での取り組みが広がりつつあります。
日本では2012年5月より「カーボン・オフセット制度」が運営されています。これは、環境省の主導で、カーボン・オフセットの取り組みへの信頼性を向上すること、公正なクレジット取引市場を形成すること、市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府などの社会のあらゆる構成員が地球温暖化を自らの問題として捉え、主体的な排出削減努力を進んで行うようになること、国内外の排出削減・吸収プロジェクトを支援すること等を目的としてスタートした制度です。
カーボン・オフセットの取り組み
商品使用・サービス利用オフセット
市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府などが商品を使用したり、サービスを利用する際に排出される温室効果ガス排出量について、当該商品・サービスと併せてクレジットを購入することでオフセットするものです。例としては、エネルギー購入のときや、航空機利用時などです。
会議・イベント開催オフセット
国際会議やコンサート、スポーツ大会などの主催者がその開催に伴って排出される温室効果ガス排出量をオフセットするものです。例としては、グレンイーグルスG8サミット(2005年)やFIFAワールドカップドイツ大会(2006年)などで実施されました。
自己活動オフセット
市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府などが、他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトからのクレジットを購入することで、自らの活動に伴って排出される温室効果ガス排出量をオフセットするものです。例としては、自社ビルからの温室効果ガス排出量や自動車利用の際の温室効果ガス、日常生活からの温室効果ガスのオフセットが挙げられます。
J−クレジット制度とは
国が認証するJ−クレジット制度とは、省エネルギー機器の導入や森林経営などの取り組みによる、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。
本制度により創出されたクレジットは、低炭素社会実行計画の目標達成やカーボン・オフセットなど、様々な用途に活用できます。
ガーボン・オフセットを通じた地域振興
平成27年度は、地域社会において創出されたクレジットが、カーボン・オフセット実施者に購入され、その分のクレジット料金が最終的には地域社会に還流し、地域レベルでの雇用確保等を含め地域の活性化や地方創生につながるような事業を展開することとしています。
商品代金の一部がクレジット購入に充てられる寄付型の商品やクレジットを付与したクレジット付き商品等は多くあり、そのような環境貢献型の商品を選ぶ人も増えています。企業側も、環境に配慮した商品の開発を出来る限り積極的に支援したいと考えています。
カーボン・オフセットで地域振興に利用した事例
岡山県津山市の事例
津山市では、平成23年度より地域で作ったクレジットを地域で活用するクレジットの「地産地消」を進めています。多くの市民が関わるイベントのカーボン・オフセットでは、イベントの環境価値を向上させるとともに、カーボン・オフセット活動を通してJ−クレジット制度のPR、環境啓発を行い、環境に優しいまちづくりの推進に役立てています。
また、地域産品に地域で生まれた環境価値(クレジット)を付加した「津山版カーボン・オフセット商品」は、地域商品のさらなるブランド化を図り、地域活性化を目指すものとしています。売り上げの一部は地域の環境活動に充てられます。
周知を図るため、イベントではチラシ等に津山市のカーボン・オフセットのオリジナルロゴを印刷し、カーボン・オフセットをアピールしています。また、報道機関に取り上げてもらうために、カーボン・オフセットを行う際は関係者と協定締結式を行う等の工夫をしてきました。さらに地元紙によるオフセット新聞の発行、地元金融機関によるオフセット通帳の作成など、事業者と恊働でカーボン・オフセットをすると同時に、広く制度の周知をおこなっています。
今後は「低酸素のまちづくり」と「地域の活性化」の双方が実現できるよう、事業を拡大していきたいと考えています。
「津山カーボン・オフセット事業」のロゴ
協働で取り組んだカーボン・オフセット事業には、広報ポスターや製品などにロゴを粘付しています。キャラクターは津山市の環境啓発キャラクターの津山太助(右)、ごんちゃん(中)、エコ姫(左)です。
北海道の事例
北海道でもJクレジットや国内クレジットの流通・活用によって地域振興に貢献させています。
どさんCO2(こ)ポート
Jクレジット、国内クレジットの流通・活用を促進し、社会・地域に貢献することを目的に、道内で創出された優良なJクレジット、国内クレジットを集約、大口化・商品化し提供するための仕組みです。経済産業省北海道経済産業局の委託を受けて、公益財団法人北海道環境財団が管理・運営しています。
北海道森と大地のカーボン・クレジット
森林やバイオマスなどの豊かな自然環境に恵まれた北海道各地において創出される、「森林」をテーマとしたクレジットを集約し、北海道を代表するカーボン・クレジットとして取りまとめ、提供する仕組みです。道内多数の自治体との協働のもと、公益財団法人北海道環境財団が管理・運営しています。
カーボン・オフセット玉ねぎ〜北の大地のカーボン・オフセット玉ねぎでめぐる森と健康のおいしさの輪〜
北見市玉葱振興会特別栽培部会、北見市こだわり野菜部会 真白栽培グループでは、減農薬・木炭土壌改良材を使用し栽培した玉ねぎ、「環(めぐる)」と「真白(ましろ)」の生産過程において発生するCO2をオフセットしています。良質でクリーンな山地形成とカーボン・オフセットを通じて、からだと地球に優しい「北の大地のカーボン・オフセットたまねぎ」を全国に供給します。
第64回さっぽろ雪まつり
タイ国際航空では、札幌—バンコク線通年運行開始を記念して、さっぽろ雪まつり実行委員会が開催する第64回さっぽろ雪まつり会場のライトアップから排出されるCO2をオフセットするとともに、東日本大震災への支援を実施しました。
まとめ
二酸化炭素削減は、個人の努力も大切ですが、それだけではなかなか成果が出ないのも事実です。そのため、国・地域をあげての政策が必要だと考えられます。
カーボン・オフセットは環境に優しいだけでなく、地域活性化にもつながる画期的な制度だと思います。私自身も今回調べてはじめて知ったので、知らない人も多いのではないかと思います。この活動がもっと全国に広まれば良いと思います。