地球温暖化によるホッキョクグマの絶滅
所属:東京農業大学
インターン生:I.Mさん
地球温暖化による気温上昇により北極の氷は溶けて減少し ていっています。JAXAの観測データによると2012年の面 積は341万平方キロにまで減少しています。冬季になれば北極の氷が増加していきますが1年の氷の減少量が増加 量を上回っているため事態は深刻になっています。
現状
地球温暖化による気温上昇により北極の氷は溶けて減少していっています。JAXAの観測データによると2012年の面積は341万平方キロにまで減少しています。
今までの最小面積であった2007年の417万平方キロよりも大きく減少していることがわかります。この縮小差である76万平方キロは日本の面積の約2倍にあたります。冬季になれば北極の氷が増加していきますが1年の氷の減少量が増加量を上回っているため事態は深刻になっています。
北極の氷の減少による生態系への影響
ホッキョクグマについて
北極の氷が溶けることにより最も影響を受けているとされるのがホッキョクグマです。ホッキョクグマは主に捕らえた獲物の脂肪を食べて厳しい寒さに耐えるため、体に厚い皮下脂肪を蓄えます。氷上で休息する動物を見つけるとホッキョクグマは海へ潜り、氷の縁などから獲物に近づいて相手を仕留めます。主にアザラシを捕食しますが、セイウチやシロイルカなども捕食します。
夏、大陸沿岸の氷が解けはじめると流氷が多くなり、安定した定着氷域は狭くなります。このため、ホッキョクグマは再び海が凍結するまで、北極海沿岸部の陸地で暮らさなくてはなりません。この間は食料が少なくなるため断食のような状態が続きます。
その期間は3~4ヶ月で出産などが重なると最長で8ヶ月に及びます。この季節を乗り越えるために、ホッキョクグマは新陳代謝を低く押さえて体力を温存し、春の間にできるだけ多くの脂肪をとっておかなければならないのです。
ホッキョクグマが受ける影響
地球温暖化により氷が解け出すのが早くなれば、それに合わせて氷原から陸地に移動しなければならなくなり、狩りのできる期間が縮まってしまいます。これは、貯えられる脂肪の量にも影響します。ホッキョクグマが陸地に一週間早く移動すると、クマの体重が10㎏軽くなりそれに伴い体力も低下してしまいます。
カナダのハドソン湾で生まれた子グマの生存率は年々減少しています。その原因は食料不足や母乳に含まれる脂肪分の減少だと考えられています。ホッキョクグマの繁殖の成否は健康状態に大きく左右されます。氷がこのまま減少していけば、ホッキョクグマの個体数はどんどん減少していき、やがては絶滅してしまう恐れがあります。
また、気温の上昇により降水量が増加します。雨は氷や雪で作られた巣を壊しホッキョクグマの赤ちゃんから隠れ家を奪ってしまいます。ホッキョクグマは今世紀の最初の10年で急速に減少し、4割が失われ2010年度では約26,000頭しかいないとされ、この状況が続くと2050年には26,000頭のうち少なくとも66%が消滅すると言われています。
問題への取り組み
人類が自然と調和して生きられる未来を目指し、約100カ国で活動している環境保全団体であるWWFはこの温暖化の悪影響に関する調査を行ない、「温暖化の目撃者」や、「ホッキョクグマの衛星追跡調査」などを通じて、温暖化の脅威を広く伝え、社会の意識を変える活動を、率先して行なっています。
WWFは現在、温室効果ガスの排出を削減し、地球の平均気温の上昇を、産業革命以前のレベルに比べ「2度未満」に抑えることを目標にした活動を行なっています。このために、世界各国にネットワークを持つ「WWF気候変動プログラム」では、地球温暖化を引き起こす温室効果ガスの排出量を大幅に削減する国際的な協定を、各国政府と産業界、金融セクター、そして一般市民から引き出すことができるよう、世界各地で活動を展開しています。また、2015年に地球温暖化対策の新枠組みであるパリ協定に約200ヵ国が同意しました。
パリ協定では、産業革命以前と比べた世界の平均気温の上昇を2℃以下、できれば1.5℃以下に抑制することが定められました。しかし、イギリスのエクスター大学のチームによる研究でパリ協定が順守されても、今世紀中には夏季に北極の氷がすべて消滅してしまう可能性があるとされています。
研究は統計を分析したもので、気温が2度上昇すると北極の氷が夏季にすべて消滅する確率は39%と予想しています。一方、上昇が1.5℃ならほぼ確実に海氷が残る見込みとしています。さらに、各政府が現状を上回る温暖化ガス排出削減に踏み切らなければ、夏季の北極の氷消滅の確率は73%にまでなると推定されています。研究は、現状では気温が3度上昇すると予想しています。