バイオ電池のこれから
所属:慶應義塾大学
インターン生:H.Gさん
バイオエタノール、という言葉はずいぶん身近になってきました。では、バイオ電池という言葉はどうでしょうか。実は、バイオ電池は高いポテンシャルを秘めていると最近注目を集めているのです。この記事ではバイオ電池がどのようなものなのか、今後どうなっていくのかを述べていきます。
有機物をエネルギー源として利用するバイオマスエネルギー。よく知られているバイオエタノールなどのバイオ燃料はバイオマスから化学エネルギーを取り出す、すなわちガソリンなどの代わりとして用いられています。それに対し、バイオ電池はバイオマスから電気エネルギーを取り出すものです。
バイオマス、と聞くと難しく思うかもしれませんが、実は、私たちの身近なお米も立派なバイオマス。お茶碗一杯のご飯(約100 g=160 kcal)には、電気量に換算すると単三アルカリ乾電池約64本分のエネルギーが含まれています。バイオ電池が実用化すれば、このような電気エネルギーも取り出すことができるかもしれないのです。
バイオ電池の現状
バイオ電池では、バイオマスから得られたグルコース(ブドウ糖)を酸化還元酵素が分解し、電極に電子を受け渡すことで発電します。無機触媒として高価な希少金属を必要としないため、安全で環境負荷が小さいエネルギー源として期待されています。国内メーカーではSONYが発表した紙で発電するバイオ電池が注目されていますが、現段階では電池の出力が低く(最高出力50 mW(2007年度時点、一般な単3電池の30分の1))、寿命も短いという課題があります。
ポイントは酵素
バイオ電池の未熟な点を治すにはどうすればよいのでしょうか。ポイントは酵素です。バイオ電池では2種類の酵素が使われます。1つはバイオマスをグルコースにまで分解するセルロース分解酵素。そして、グルコースを分解して電極に電子を受け渡すのを助ける酸化還元酵素。これらの活性と安定性が向上すれば、より効率的に電気を得ることができます。
バイオ電池の将来
バイオ燃料は実用化が進んでいるのに対し、そもそも、バイオ電池は言葉自体あまり一般的ではないのが現状です。しかし、先に述べた通り、まだまだ課題は多いですが、バイオ電池のポテンシャルは高いことは事実です。では、酵素の活性と安全性を上げるにはどのようにしたらよいのでしょうか。
まず、自然界に存在するより良い酵素を探し出すという方法があります。また、酵素との反応面積が増えるようにバイオ電池を改良することもできるでしょう。さらに、酵素そのものを遺伝子レベルから改良するという取り組みもなされています。日本は研究にお金をかけないと言われますが、実際、日本政府が負担する研究開発費の割合は先進国の中でも低くなっています(図1参照)。
実用化への課題を解決するには、研究を進めることしか道はありません。企業や国が積極的にバイオ電池への研究を後押しすることを切に願います。そして、バイオ電池が身近になる未来を楽しみにしています。