アメリカのエコ意識
所属:早稲田大学
インターン生:A.Fさん
アメリカ=大量生産大量消費の国と考えている人は少なくないでしょう。しかし、意外にも環境保全に取り組む姿勢が垣間見えます。この記事では、私が1年弱のカリフォルニアでの生活で感じたアメリカ国民のエコ意識について書きたいと思います。
エコへの取り組み
私が留学していた街、デービスは、州都のサクラメントに隣接しています。農学が盛んで、大学構内が広いこともあり、自転車がとても普及しているアメリカでも珍しい街です。地域の環境保護に対する意識も高い傾向にあると感じられるような取り組みをいくつか紹介します。
飲食店での食品ロス削減
‘Doggy bag’という単語をご存じでしょうか。直訳すると「わんこの袋」。これは、客が食べきれずに残してしまった料理を入れて持ち帰ることができる容器の事を指します。アメリカの多くの飲食店では必ず用意されているので、頼めばすぐに手に入れることができます。
日本ではあまり馴染がないのではないでしょうか。アメリカで提供される料理は日本のものに比べて量が多いため、食べきることができない人が多いから、というのがこのdoggy bag普及の第一の要因だと考えられます。しかし、一方で環境保全の観点から見ると、食品ロスの削減に大きく貢献しているといえます。私が訪れたデービスの飲食店でももちろんdoggy bagをもらうことができました。
ゴミの分別
現地の大学編入直後にキャンパスである発見をしました。それは、日本とは分別区分が異なるゴミ箱です。日本では、燃えるゴミ、燃えないゴミ、新聞紙などの紙資源ごみ、ビンや缶、といった分別の仕方が一般的です。しかし、そこでは、landfill(埋め立てゴミ)、compost、recycleの主な3つの分別のほかに、ビンや缶類の区分けが設けられていました。つまり、あらかじめ人々にコンポストで分解できるものとリサイクルができるものを優先的に分別し、残りのものは埋め立てゴミに分類する、といった意識があるのです。
日本でもコンポストは一時期話題になりましたが、日常のゴミ処理に利用する、といった考え方はあまり浸透していないのではないでしょうか。個人の段階から環境に配慮した分別を心がける姿勢は環境保護を進める上で重要な働きを担っていると考えられます。
エコへの課題
前述したように、アメリカでは環境に優しい取り組みが実施されています。その反面、更なる意識の改善が求められる場面が存在することも確かです。
家庭内の食品ロス
ホームステイ先で初めて感じた違和感は、家族の食品廃棄の方法でした。「農家の人たちや自然の恵みに感謝してご飯は残さず食べなさい」と教えられてきた私は、出されたものは食べ、食べきれなかったら残して取っておいてもらうのが普通だと思っていました。しかし、アメリカでは食べ物を食べきれないことは日常的なことで、食べ残しは排水溝にそのまま廃棄する家庭が比較的多く、私のホストファミリーもそのうちの一つでした。また、友人宅に招かれた際も、残飯を流しに捨てている光景を見てショックを受けました。
料理を残し、それをそのまま廃棄する生活をアメリカという巨大な国家全体で行うと大量の食品ロスにつながり、フードマイレージの無駄、つまり大量のCO2排出に起因します。アメリカの抱える環境対策における課題の一つです。
公共施設以外のゴミ分別
先ほど大学構内のゴミ箱を紹介しました。それ以外の場所ではどうでしょうか。繁華街であるダウンタウンに足を運ぶと、いたるところにゴミ箱があります。しかし、そのゴミ箱は大学に設置されているような分別機能がついているものではありません。そのため、街ゆく人々は思うままに様々な種類のゴミをそのゴミ箱に投入することになります。また、日本ではあまり習慣がありませんが、外国ではトイレのゴミ箱に一般ごみを捨てるのが日常化している場面があります。
デービスでも、キャンパスのゴミ箱には規定に沿って分別するのにも関わらず、トイレに赴くとスターバックスの空の容器やキャンディのゴミなどが無造作に捨てられているのを目にすることが度々ありました。スターバックスは頻繁に植林活動を始めとした自社の環境保護に対する取り組みを広告しているだけに、この光景はとても皮肉に思えました。
まとめ
一般的にアメリカは環境対策に後れを取っている印象が強いですが、日本が見習うべき取り組みもあります。食品ロスではdoggy bag、ゴミ分別ではコンポストとリサイクルへの意識を育むゴミ箱の設置は日本も検討していくべきではないでしょうか。
しかし、こうした環境配慮は実際には表面的なものであり、どれだけ公共整備が整ったとしても、個人一人一人の意識を変えていかなければ根本的な環境対策にはつながりません。アメリカでも日本でも、個人レベルでのエコ意識を高めることが重要です。