海面上昇における影響について
所属:関東学院
インターン生:M.Nさん
自分が生活している土地が沈むかもしれないと考えたことはありますか? 世界にはそのような危機に直面している人々がいます。大型台風やゲリラ豪雨など明らかに異常気象が目に見えて分かる今日もう一度環境問題について考えてみましょう。
地球温暖化と海面上昇
海面の水位は130年間に渡って上昇し続けています。地球温暖化に伴う海面上昇は陸上の氷河・氷床が融解して海に流れ込んだり、水温が高くなって海水の体積が膨張することによって起こります。1993年から2003年の海面上昇を調べたところほぼ全てをこの理由で説明することができます。
よく北極海の氷が全てなくなったら海面上昇が進むと言われていますがそうではありません。問題になっているのは大陸や島全体を覆う氷床、山岳氷床など、陸上の氷河・氷床がなくなった場合です。特にグリーンランドの氷床の融解についてはこのまま温暖化が進行した場合早ければ2100年までに融解量が積雪量を上回り氷床が縮小し始めると言われています。その後氷床は数百年以上かけてゆっくり縮小していき、グリーンランドの氷床が完全に消滅すると海面水位は7m上昇すると見込まれています。しかも海面水位は過去の温暖化の影響を受けるため気候を安定化させたあともすぐには止まりません。氷床のリスクや消滅を防ぐにはどのような対策が必要か考える必要があります。
水沈む国ツバル
海面上昇で沈む可能性がある国としてツバルがよく例に出されます。ツバルはフィジーの横、オセアニアに位置しポリネシアという文化圏に属します。環礁といってサンゴ礁からできた小さな9つの島から構成されており首都フナフチがあるフォンガファレ島の平均標高は1.5m、最も高い地点でも4mしかありません。
フナフチで測定される平均潮位は季節によって上下し、高い時と低い時で20~30cm程度の差があります。よって潮位が高くなる春先の満潮時には標高が低い地域では海水面より低くなってしまうところもあります。サンゴ礁の上に砂が蓄積してできた島ですので満潮時に海面以下になる地域では地盤(サンゴ礁)の穴を通って水が滲みでてきます。近年その地面からの湧き出しによる洪水が深刻化しつつあるとの住民の証言があります。
日本と海面上昇
日本は海面上昇しても関係ないと思っている人も多いですがかなり関係しています。近年では海面上昇により自然海岸の浸食が激化しています。特に砂浜の影響は大きく30cm、65cm、1mの海面上昇によって現存する砂浜の56%、81%、90%が消失すると予測されています。もし1m上昇すれば秋田県や東京都、福井県、京都府、大阪府など様々な県の白浜が完全に消失すると予測されています。
砂浜は日本の海岸に24%しかなくその約43%が近年浸食されています。また、日本では満潮位の海面より低い土地に多くの人が住んでおり農地や建築物など様々な資産があります。東京の23区の東半分は下町低地と呼ばれており、土地が満潮時より低いために昔から災害に弱い面があります。地球温暖化により海面が上昇し、さらに台風の勢力が増大すると高潮などの災害に対してさらに弱くなることが予想されます。
これからの対策
対策として臨海部からの撤退、海面上昇への順応と防護がありますが、山地が多く平野部の少ない日本では臨海部の撤退は難しいです。そのため交通、流通、漁業など総合的な計画の立案とその実施が必要となります。運輸省港湾局による試算では1m海面上昇した場合港湾施設の補強の費用7兆9000億円、海岸の護岸や堤防の対策費用11兆5000億円である。二酸化炭素の排出による地球温暖化を防止する取り組みが進められていますが、同時に海面上昇監視体制の強化や適切な対策が今後必要です。