「環境に優しい」なら本当にエコ?身近な商品から考えるグリーンウォッシュの見分け方
所属:東京ビジネス外語カレッジ
インターン生:インターン生:A.M.さん

「環境に優しい」「エコ」「サステナブル」「再生素材使用」など、環境への配慮をアピールする商品が増えています。しかし、その表示だけを見て「環境に良い商品だ」と判断してよいのでしょうか。実は、環境への配慮を実態以上に良く見せる「グリーンウォッシュ」が世界的に問題となっています。本記事では、身近な商品やデータを通して、環境表示の見方と、消費者ができる選択について考えます。
RAULのインターンシップに参加いただいた東京ビジネス外語カレッジのインターン生:A.M.さんが執筆してくれた記事だモ!内容がご参考になりましたら、ぜひともイイネやシェアしてほしいだモ!
「環境に優しい商品」が増えている理由
私たちが買い物をすると、「環境に優しい」「サステナブル」「エコ」などの言葉を目にする機会が増えました。衣類、飲料、食品、日用品、家電、自動車など、さまざまな商品で環境への配慮がアピールされています。
こうした変化の背景には、環境問題に対する社会の関心の高まりがあります。
気候変動、プラスチック問題、資源の枯渇、廃棄物問題など、環境問題は企業だけの問題ではありません。私たちが何を買い、どのように使い、どのように捨てるのかという日々の消費行動とも深く関係しています。
特に近年注目されているのが「サーキュラーエコノミー(循環経済)」です。
従来の経済では、「資源を採る→商品を作る→使う→捨てる」という一方向の流れが中心でした。一方、循環経済では、製品や資源をできるだけ長く利用し、廃棄物を減らしながら、資源を循環させていくことを目指します。
経済産業省も、循環経済を「ものを買う」「ものを使う」「資源ごとに分ける」「資源をまわす」といった行動を循環させる考え方として紹介しています。再生材の利用、長く使える製品、修理、リユース、シェアリングなども循環経済につながる取り組みです。
つまり、「環境に良い商品を買う」という行動は、単なる個人の選択ではなく、企業のものづくりや社会全体の資源循環にも影響する可能性があります。
しかし、ここで一つ注意しなければならないことがあります。
それは、「環境に優しい」と書いてある商品が、必ずしも環境への負荷が小さいとは限らないということです。
「グリーンウォッシュ」とは何か
そこで知っておきたい言葉が「グリーンウォッシュ」です。
グリーンウォッシュとは、商品や企業の活動について、実際よりも環境に配慮しているように見せることを指します。
例えば、「環境に優しい商品です」と宣伝しているものの、具体的に何がどの程度環境に良いのか説明されていないケースがあります。
また、「CO₂排出量を削減」「エコ素材を使用」「地球に優しい」といった表現だけが大きく表示され、削減量の基準や計算方法、対象となる範囲などが分からない場合もあります。
このような表示では、消費者は商品を正しく比較することが難しくなります。
例えば、ある商品が「CO₂排出量50%削減」と表示されていたとします。
一見すると、とても環境に良い商品に思えます。
しかし、何と比較して50%削減なのかが分からなければ、その数字だけでは商品の環境性能を判断できません。
「以前の商品と比較しているのか」
「一般的な商品と比較しているのか」
「製造時だけを比較しているのか」
「製造から廃棄まで含めているのか」
によって、意味は大きく変わります。
環境省も近年、グリーンウォッシュへの対応を重要な課題として位置付けています。背景には、ネット・ゼロへの対応やグリーン製品市場の拡大があり、企業が環境への取り組みを適切に発信するための環境情報の重要性が高まっています。
つまり、環境に良い商品を増やすだけではなく、「本当に環境に良いのかを正しく伝えること」も重要になっているのです。
日本でも環境表示のルールが変わり始めている
こうした状況を受け、日本でも環境表示に関する取り組みが進んでいます。
環境省は2026年3月31日、「環境表示ガイドライン」を改定しました。
このガイドラインは、主に企業や事業者団体が自己宣言によって環境表示を行う際に、どのような環境情報を提供することが望ましいかを整理したものです。
今回の改定では、グリーンウォッシュ対策の国際的な動向などを踏まえ、5つの基本項目が示されています。
5つの基本項目
- あいまいな表現や環境主張を行わない
- 環境主張の内容に説明文を付ける
- 製品のライフサイクル全体を考慮する
- 環境主張の検証に必要なデータや評価方法にアクセスできるようにする
- 製品や工程を比較する場合は、LCA評価や数値などによって適切に比較する
この中でも特に重要なのが、「ライフサイクル全体を考慮する」という考え方です。
商品は、店頭に並んだ瞬間に突然生まれるわけではありません。
原材料を採取し、製造し、輸送し、販売され、消費者が使用し、最後には廃棄またはリサイクルされます。
つまり、本当の環境負荷を考えるには、一つの場面だけを見るのではなく、「作るところから捨てるところまで」を考える必要があります。
環境省も消費者向けに、環境表示を見る際の5つのチェックポイントを公開しています。そこでも、あいまいな表現への注意、何が環境に良いのかの確認、ライフサイクル全体の確認、誰がどのように証明しているかの確認、比較の根拠の確認が示されています。
これは私たち消費者にとっても重要な考え方です。
「エコ」という言葉だけでは判断できない理由
では、なぜ「エコ」という言葉だけでは判断できないのでしょうか。
一つの理由は、環境問題にはさまざまな側面があるからです。
例えば、ある商品がCO₂排出量を減らせたとしても、製造時に大量の水を使用しているかもしれません。
反対に、リサイクルしやすい商品であっても、輸送距離が長ければ別の環境負荷が発生する可能性があります。
環境問題は一つの数字だけでは表せません。
CO₂排出量だけでなく、
- 資源の使用量
- 水の使用
- 廃棄物
- 大気への影響
- 生物多様性
- 土地利用
など、さまざまな視点があります。
そのため、「CO₂を削減したから絶対に環境に良い」と単純に判断することはできません。
環境省のガイドラインでLCA(ライフサイクルアセスメント)が重視されているのも、このような背景があります。
LCAとは、原材料の調達から製造、流通、使用、廃棄・リサイクルまで、製品のライフサイクル全体における環境負荷を評価する考え方です。
例えば、同じ「ペットボトル飲料」でも、ボトルの素材、製造方法、輸送距離、使用後の回収・リサイクルなどによって環境負荷は変わります。
だからこそ、「エコ」という一言ではなく、「何が」「どの範囲で」「どの程度」環境に良いのかを見ることが重要なのです。
身近な商品から考える「本当のエコ」
ここからは、私たちの身近にある商品を例に考えてみます。
紙ストローなら必ず環境に良い?
プラスチック製ストローの代わりに紙ストローを使う取り組みは、多くの人が知っているでしょう。
プラスチックの使用量を減らすという点では、一つの対策になります。
しかし、「紙だから必ず環境に良い」と決めつけることはできません。
紙の原料となる木材をどこから調達するのか、製造時にどれだけエネルギーや水を使うのか、輸送距離はどの程度なのか、使用後にどのように処理されるのかなど、さまざまな要素を考える必要があります。
重要なのは、「紙かプラスチックか」という素材だけで判断するのではなく、商品のライフサイクル全体を見ることです。
再生素材なら必ず環境に良い?
「再生素材使用」という表示も、最近よく見かけます。
廃棄されるはずだった資源を再び製品に利用することは、資源循環の観点から重要です。
しかし、ここでも「再生素材だから絶対に環境に良い」とは限りません。
どの程度の割合で再生素材が使われているのか、どのような原料から作られているのか、再生するためにどの程度のエネルギーを使ったのかなどを確認する必要があります。
例えば、「再生素材100%」と「再生素材10%」では意味が大きく違います。
そのため、環境表示では具体的な数字や説明が重要になります。
エコバッグは何回使えばいい?
エコバッグも身近な例です。
レジ袋を繰り返し使うバッグに置き換えることは、使い捨てプラスチックを減らす一つの方法です。
しかし、エコバッグも製造時には原材料やエネルギーが必要です。
だからこそ、「エコバッグを買ったから環境問題を解決できた」と考えるのではなく、購入したバッグをできるだけ長く使うことが重要になります。
これは経済産業省が紹介する循環経済の考え方とも一致します。
「環境に良い商品を次々に買う」ことだけが環境配慮ではありません。
むしろ、今持っているものを長く使い、修理し、必要以上に買わないことも重要な環境配慮です。
日本のプラスチック問題を数字で見る
ここで、日本のプラスチック問題を数字から見てみましょう。
環境省の令和7年版環境・循環型社会・生物多様性白書によると、2023年の日本では、プラスチックの生産量が約887万トン、国内消費量が約843万トン、廃プラスチックの総排出量が約769万トンと推計されています。
さらに、廃プラスチックの排出量に対する有効利用率は約89%でした。一方で、約8%が単純焼却、約3%が埋立処理と推計されています。
「有効利用率89%」という数字を見ると、日本ではかなりリサイクルが進んでいるように感じるかもしれません。
しかし、ここで「有効利用率が89%だから、プラスチック問題はほとんど解決している」と考えてはいけません。
そもそも日本では、年間約769万トンもの廃プラスチックが発生しているからです。
大切なのは、廃棄物を処理するだけではなく、「そもそも廃棄物をどのように減らすか」という視点です。
例えば、
- 長く使える商品を作る
- 必要以上に包装しない
- 再使用できる仕組みを作る
- 再生材を利用する
- 回収しやすい設計にする
など、商品が廃棄される前の段階から考える必要があります。
このような考え方が、循環経済につながります。
サーキュラーエコノミーと企業の役割
環境問題を考えるうえで、消費者だけに責任を押し付けることはできません。
企業には、商品を作る段階から環境負荷を減らす役割があります。
例えば、長期間使える商品を設計すること、修理しやすくすること、再生材を利用すること、使用後に回収できる仕組みを作ることなどです。
環境省の令和8年版環境・循環型社会・生物多様性白書では、循環経済への移行を進めるため、資源循環をビジネスの成長につなげることが重要だとされています。
政府は2030年までに、循環経済関連ビジネスの市場規模を80兆円以上にするという目標を掲げています。
これは環境問題が「企業にとってコストになる」というだけではなく、新しいビジネスを生み出す可能性があることを示しています。
例えば、使い終わった製品を回収して再び原材料として利用するビジネスや、商品を販売するのではなくレンタル・シェアリングするビジネスなどがあります。
つまり、環境問題への対応とビジネスの成長は、必ずしも対立するものではありません。
むしろ、環境負荷を減らしながら経済的な価値を生み出すことが、これからの企業に求められているのではないでしょうか。
消費者は何を見て商品を選べばよいのか
では、私たちは実際に何を見ればよいのでしょうか。
環境省が公開している「環境表示のここを見よう」では、消費者が環境表示を確認するための5つのポイントが示されています。
①「あいまいな言葉」に注意する
「地球に優しい」「環境に配慮」「エコ」など、具体的な意味が分からない表現には注意が必要です。
「何が」「どのように」環境に良いのかを確認しましょう。
②何が環境に良いのか確認する
例えば「CO₂削減」と書いてあった場合、削減対象が何なのか確認します。
製造時なのか、輸送時なのか、製品全体なのかによって意味が異なります。
③ライフサイクル全体を見る
商品の製造だけを見るのではなく、
「原材料→製造→輸送→使用→廃棄・リサイクル」
まで考えます。
④誰がどのように証明したのかを見る
企業が自社で計算した数字なのか、第三者による認証なのかなど、情報の出どころを確認することも重要です。
日本では「エコマーク」のような第三者認証制度もあります。
環境省の令和8年版環境白書によると、2026年3月31日時点でエコマークの対象商品類型は78、認定商品数は5万7,704に達しています。
もちろん、マークが付いているだけで全てを判断するのではなく、そのマークが何を意味しているのかを確認することが大切です。
⑤「○○よりエコ」という比較には根拠があるか確認する
「従来品よりCO₂を30%削減」「他社製品より環境に優しい」などの比較表現を見る場合には、何を基準に比較した数字なのかを確認します。
比較対象が違えば、結果も変わります。
環境に配慮した商品を広げるために
ここまで読むと、「環境表示は難しい」と感じるかもしれません。
しかし、すべての商品の環境負荷を消費者自身が専門的に分析する必要はありません。
重要なのは、「エコ」という言葉をそのまま信じるのではなく、一度立ち止まって考えることです。
「何が環境に良いの?」
「その数字の根拠は?」
「どこからどこまでを計算しているの?」
「誰が評価しているの?」
こうした疑問を持つだけでも、商品を見る視点は変わります。
そして、企業側にも分かりやすい情報発信が求められます。
環境省の2026年改定「環境表示ガイドライン」では、あいまいな環境主張を避け、説明文を付け、ライフサイクル全体を考慮し、根拠となるデータや評価方法を示せるようにすることなどが基本項目として整理されています。
これは企業にとって単なる「表示ルール」ではありません。
適切な環境情報を提供することは、消費者からの信頼を得ることにもつながります。
一方、消費者庁も、実際よりも商品やサービスが優れているように見せる「優良誤認表示」などを景品表示法で規制しています。消費者が商品を適切に選択できる環境を守ることが、同法の重要な目的です。
企業が正確な情報を発信し、消費者がその情報を正しく読み取る。
この両方がそろって初めて、環境に配慮した市場が成長していくのではないでしょうか。
まとめ
「環境に優しい」という言葉は、私たちにとって分かりやすく、商品を選ぶ際の便利な目印になります。
しかし、その言葉だけで商品の環境性能を判断することには注意が必要です。
日本では2023年だけでも約769万トンの廃プラスチックが発生しており、環境問題は決して遠い存在ではありません。
一方で、日本は資源を循環させる「サーキュラーエコノミー」への移行を進めています。政府は2030年までに循環経済関連ビジネスの市場規模を80兆円以上にする目標を掲げており、環境問題への対応は新しいビジネスを生み出す機会にもなっています。
そして2026年3月には、環境省が環境表示ガイドラインを改定しました。
これからは企業が「環境に優しい」と発信するだけではなく、「なぜ環境に優しいのか」「どの程度優しいのか」「どのような根拠があるのか」を分かりやすく示すことが、より重要になります。
消費者にとっても、「エコ」という言葉を鵜呑みにするのではなく、数字や根拠、ライフサイクル、第三者認証などを確認することが大切です。
環境問題を解決するために必要なのは、すべての商品を「環境に良い」「環境に悪い」の二つに分けることではありません。
一つの商品がどのように作られ、どのように使われ、最後にどうなるのかを考えること。
そして、企業と消費者が正確な情報を共有しながら、より良い選択を積み重ねていくこと。
その積み重ねが、持続可能な社会と循環経済をつくる一歩になるのではないでしょうか。

