摩擦によるエネルギーロスとは?発生する仕組みや原因、削減方法をわかりやすく解説
物体と物体が接していると、摩擦と呼ばれる現象が発生します。摩擦は日常生活の中にも深く関わっている物理現象ですが、実はエネルギーロスに繋がる現象でもあるのです。
この記事では、摩擦とはどのような現象か、摩擦によるエネルギーロスとはどのようなものか、エネルギーロスの影響や発生しやすい例、ロスを削減する方法などについてご紹介しています。摩擦によるエネルギーロスに関心がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
摩擦によるエネルギーロスとは?
まずは、摩擦によるエネルギーロスとは何か、その基本的な仕組みについて見ていきましょう。
一口にエネルギーと言ってもさまざまな形が存在し、相互に変換が可能な存在です。エネルギーのロスは、1種のエネルギーが別のエネルギーに変換されることで発生しやすくなります。
摩擦が発生する仕組み
摩擦とは、接触している物体同士の相対的な動きを妨げる向きに働く力(現象)のことです。
物質と物質の接触面に対し、垂直に力が働くことで物体が静止していても発生する静止摩擦と、運動する物体同士が擦れ合うときに発生する動摩擦の2種類が存在します。エネルギーロスが問題になるのは、動摩擦の方です。
物体の表面にはミクロ単位の凹凸があり、その凹凸同士のかみ合いや、接触面で働く分子・原子間の力によって摩擦が発生します。
エネルギーが熱へ変換される理由
物体が動こうとするとき、運動エネルギーと呼ばれるエネルギーがその物体を動かすのに使われています。
物体同士が触れ合って摩擦が発生すると、この運動エネルギーが摩擦の抵抗によって奪われ、熱エネルギーに変換されてエネルギーロスが発生するのです。この変換された熱エネルギーによる熱さを摩擦熱と呼びます。
摩擦が発生すると、物体表面に位置する原子や分子が激しく振動して熱が発生します。この原子の振動に運動エネルギーが奪われて熱エネルギーに変換されることで、本来運動エネルギーとして使われるはずだったエネルギーの一部が失われるのです。
摩擦によるエネルギーロスが問題となる場面
摩擦にはさまざまなメリットがありますが、工業分野などではデメリットも目立ちます。そのデメリットの1つがエネルギーロスです。
モーターを搭載する機械は、電気エネルギーを運動エネルギーに変換することで動力を生み出しています。しかし、モーター内部の部品同士が擦れると電気エネルギーの一部が熱エネルギーに変わってしまい、エネルギーロスが発生するのです。
これにより、入力した電気エネルギーの一部は摩擦などによって熱エネルギーへ変換され、エネルギーロスが発生します。
摩擦によるデメリットがもたらす影響
続いて、摩擦によるエネルギーロスをはじめとするデメリットによる影響について見ていきましょう。
モーターなどで摩擦が発生すると、エネルギーロス以外にもさまざまなデメリットが発生します。これにより、生産に関わるコストやエネルギーコストがより多くかかるなどの影響が出ることもあるのです。
それぞれの影響について、詳しく見ていきましょう。
エネルギー効率の低下
摩擦によるエネルギーロスは、モーターなどを動かす上でのエネルギー効率の低下を引き起こします。
電気エネルギーなど、入力したエネルギーが100%希望するエネルギー、すなわち運動エネルギーに変換されるのであれば、エネルギーの無駄は発生していないことになるでしょう。しかし、実際には摩擦によって運動エネルギーと熱エネルギーの両方に変換されており、動力に使いたかったエネルギーが熱になって逃げてしまいます。
これは、希望する結果を100%出すためには、それよりも多くのエネルギーを投じなければならないということでもあります。エネルギー効率が下がるということは、モーターなどの機械の稼働においては大きなデメリットになると言えるでしょう。
部品の摩耗や設備寿命の短縮
機械における摩擦は、機械そのものの寿命に関わる可能性もあります。
接触面の材料が少しずつ摩耗することで部品の寸法や表面状態が変化し、機械の性能が低下する場合があります。摩耗は部品の形状を変えてしまうため、機械の性能が落ちる原因になります。したがって、摩耗によって擦り減った部品は取り換えなければなりません。
交換が可能な部品であればその部分だけを取り換えれば済みますが、交換できない部分の摩耗はそのまま機械の寿命に繋がります。設備の寿命が短いとそれだけ設備投資に必要なコストが大きくなるため、できる限り摩擦を抑える工夫をしていることが多いです。
発熱による故障やトラブルのリスク
摩擦熱は、機械の故障やトラブルの原因になることがあります。
摩擦は物体同士が擦れるスピードが速くなったり、強い力で擦れ合ったりするほど大きな熱を発生させる現象です。そのため、機械の稼働状況によっては膨大な熱が発生する可能性があります。
摩擦によって発生した熱が設計上の許容量を超えてオーバーヒートが発生すると、部品の変形やオイルの変質などが発生し機械が故障する可能性が高いです。機械が稼働中に故障するのを防ぐためにも、摩擦による熱の発生は抑える必要があります。
生産コスト・電力コストの増加
摩擦によってエネルギーロスが発生すると、生産コストや電力コストが増加する可能性があります。
部品が摩耗したり、オーバーヒートによって変形・故障が発生したりした場合は、該当の部品を交換する、設備を買い替えるといった対応が必要です。こうした対応にはコストがかかるため、できる限り頻度を抑えたいと考える人は少なくありません。
また、希望する結果を100%得るために必要な電気が多いほど、電気代が高くなりコストが発生します。必要な電気が多いと発電の際に発生する二酸化炭素も多くなるため、環境にも良くありません。
摩擦によるエネルギーロスが発生しやすい例
続いて、摩擦によるエネルギーロスが発生しやすい例について見ていきましょう。
摩擦によるエネルギーロスは、工業分野だけでなく日常生活の中でも発生する可能性があります。このエネルギーロスが積み重なると、想像よりも大きな損害が出る可能性があるでしょう。
モーター・ベアリングなどの回転機械
摩擦によるエネルギーロスの1例として、モーターのように回転を利用する機械が挙げられます。
モーターは部品同士を繋げて回転の力を伝えることで動いており、摩擦が発生しやすい機械の1つです。そのため、定期的な点検と部品の交換によって摩擦の影響を抑える必要があります。
モーターの摩擦を抑えるための対策の1つとして、ベアリングという部品の導入が挙げられるでしょう。ベアリングはモーターの軸を正確に、滑らかに回転させることで、摩擦によるモーター全体のエネルギー損失や発熱を防止する部品です。そのためベアリングを装着すればモーターのエネルギーロスは抑えられますが、ベアリングにも転がり摩擦や潤滑抵抗などによるエネルギー損失は生じます。
したがって、ベアリングを導入しても摩擦によるエネルギーロスをゼロにすることはできません。
自動車や産業機械
自動車や産業機械においても、モーターや機械の摩擦によるエネルギーロスの可能性があります。
とくに電気自動車はモーターで推進力を生み出しており、部品の摩擦は重要な課題です。また、ガソリン車でもエンジンのオーバーヒートの可能性があるため、摩擦による発熱を冷却する工夫が行われています。
産業機械はとくにエネルギーロスによる効率の低下やコストの増加に厳しい目が向けられており、潤滑油やエアベアリングなどさまざまな対策が取られているのが特徴です。
身近な生活用品や家電
エアコン内部にもコンプレッサーや送風ファンなどの回転部品があり、摩擦による損失が発生します。ただし、エアコン全体の消費電力は熱交換効率や制御方式など、さまざまな要因の影響も受けます。
摩擦によるエネルギーロスを減らす方法
続いて、摩擦によって発生するエネルギーロスを減らす対策方法についてご紹介します。
工業などの分野では、少しでも摩擦によってエネルギーが奪われないようさまざまな対策を取っています。これらの対策により、できる限りエネルギーを効率良く使用できるように工夫が行われてきました。
それぞれの対策について、詳しく見ていきましょう。
適切な潤滑剤を使用する
機械の摩擦を抑えるためには、適切な潤滑剤を使用することが大切です。
潤滑剤として油を使用することで、物体と物体の間に油の膜を張って物体同士が直接触れ合うのを避け、摩擦を抑えて滑りを良くすることができます。ただし、油には油の粘性抵抗があり、粘性が高い油を使用すると摩擦とは別の形で発熱やエネルギーロスが発生する可能性があるので注意が必要です。
稼働する機械に応じて適切な粘度の油を利用すれば、より効率良く摩擦を軽減できる可能性があります。
摩擦の少ない材料や部品を採用する
機械に用いる素材そのものを摩擦の少ない素材にすることでも、摩擦によるエネルギーロスを抑えられます。
摩擦が発生するのは、物体同士の表面に凹凸が存在するためです。そのため、表面をミクロ単位で滑らかな状態にすれば引っ掛かりがなくなり、摩擦そのものを減らすことができます。
こうした素材表面の改良は、自動車の低燃費化などの場面で役立っている技術です。
設備の運転条件を最適化する
摩擦によるエネルギーロスを軽減するためには、設備を適切な運転条件のもとで稼働させる必要があります。
摩擦の大きさは、荷重や回転速度、潤滑状態、使用環境の温度などによって変化します。そのため、求める効率に達するために適切な条件をしっかり守って設備を稼働させる必要があります。
また、設備のメンテナンスを行わずに稼働させ続けると潤滑剤の効果が薄れたり、部品が変形してより摩擦が発生しやすくなったりする可能性もあるでしょう。定期的なメンテナンスによって、設備側の条件を整えることが大切です。
高効率機器への更新を検討する
機械の摩擦によるエネルギーロスを抑えたいのであれば、現在使用している設備をより高効率な機器に更新することも大切です。
機械の性能は年々改善が進んでおり、古い設備よりも新しい設備の方が効率が良い技術が採用されています。そのため、古い設備を一新して新しい設備に入れ替えることで、エネルギー効率を高められる可能性が高いです。
例えば、油の代わりに高圧空気を用いて薄い空気層を作り、物体同士の摩擦を軽減するエアベアリングなどの技術があります。空気は潤滑油より粘度が低いため、流体抵抗を抑えながら非接触で支持できることが特長です。こうした技術が採用されている設備を導入すれば、より効率良く摩擦によるエネルギーロスを軽減できるでしょう。
エネルギーロス削減がもたらすメリット
ここからは、摩擦によるエネルギーロスを削減したときに得られるメリットについてご紹介します。
エネルギーロスにはさまざまなデメリットがありますが、裏を返せば改善によって得られるメリットも存在するということです。その設備を使用している施設だけでなく、環境全体へのメリットも存在します。
電力消費やランニングコストを削減できる
摩擦によるエネルギーロスを削減できれば、ランニングコストを削減できる可能性があります。
投入した電気エネルギーがそのまま運動エネルギーに変換され、熱エネルギーになってしまう分が少なければ少ないほど余分な電気を使わなくても済むでしょう。これにより、電気代を抑えてより良い生産性を実現できる可能性があります。
これは、ガソリン車におけるガソリンなど電気以外のエネルギーや燃料にも言えることです。投入するエネルギーが少ないほど、ランニングコストも抑えられます。
設備の長寿命化につながる
摩擦によるエネルギーロスの削減は、設備そのものの長寿命化にも繋がります。
摩擦を軽減することにより、部品の変形を防いで交換頻度を減らすことが可能です。また、摩擦熱が発生しなくなれば、オーバーヒートなど故障の原因になる現象を発生しにくくできるでしょう。
そのため設備そのものが壊れにくくなり、長期間使用できるようになる可能性があります。
CO₂排出量削減や環境負荷の低減に貢献する
摩擦によるエネルギーロスの削減は、回り回って環境への貢献になる可能性があります。
日本の発電量は火力発電が大きな割合を占めているため、電力消費が増えるとCO₂排出量の増加につながる可能性があります。そのため、摩擦のエネルギーロスで消費電力が増えると、その分二酸化炭素排出量も増えてしまうのです。
摩擦によるエネルギーのロスを削減すれば、消費される電気エネルギーも削減して二酸化炭素の排出量を抑えられる可能性があります。
まとめ
摩擦によって熱が発生すると、本来別の形のエネルギーとして使用されるはずだった分がエネルギーロスとしてなくなってしまいます。エネルギーロスを削減するためには、潤滑剤の使用や表面の研磨・コーティングなどにより摩擦を軽減することが大切です。
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エコモは各地を飛び回って、電力・エネルギーや地球環境についてお勉強中なんだモ!色んな人に電気/ガスのことをお伝えし、エネルギーをもっと身近に感じてもらいたモ!

