宝石と金属の伝導率を比較|ダイヤモンドの熱伝導率が高い理由とは?
金や銀、ダイヤモンドなど、装飾品に用いられる美しい貴金属や宝石には、見た目以外にもさまざまな特徴があります。特筆すべき性質の1つとして「伝導率」が挙げられ、この性質のためにこれらの素材は工業分野で使われることさえあるのです。
この記事では、宝石や貴金属の伝導率、とくに熱伝導率について、その性質や活用方法についてご紹介しています。身近な装飾品の素材における伝導率について関心がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
そもそも伝導率とは?
物質における伝導率とは、熱や電気などのエネルギーをどれだけ伝えやすいかを示した数値のことです。
伝導率には主に熱伝導率と電気伝導率の2種類があり、物質ごとにそれぞれ異なる伝導率を示します。この伝導率の違いによって、物質がどのような場面で役に立つかが異なるのです。
熱伝導率と電気伝導率の違い
熱伝導率と電気伝導率は、それぞれ違うエネルギーの伝えやすさを表す指標です。熱伝導率は熱エネルギーの伝わりやすさを、電気伝導率は電気エネルギーの伝わりやすさを表します。
電気伝導率は物質内での電子の移動による電気の流れやすさを示す数値であり、その物質の組成や純度、温度によって変動するのが特徴です。逆にどれだけ電気が流れにくいかを表す「抵抗率」の概念もあります。
熱伝導率は、物質の移動なしに高温部分から低温部分に熱エネルギーが運ばれるときの運ばれやすさを表す数値です。同一の物質内における分子運動の伝播しやすさ、ともいえます。これは、熱が分子の激しい動きによって伝わるためです。
熱と電気はそれぞれエネルギーを伝える仕組みが異なり、素材によって熱と電気のどちらを通しやすいかが異なります。
伝導率が高いとどのような特徴がある?
熱伝導率は「W/m・K」または「W/m・℃」、電気伝導率は「S/m」の単位で表記し、数値が大きいほど伝導率が高いことを表します。
電気伝導率が高い素材は電気を通しやすく、電線などの素材に使用されることが多いです。また、不純物の多い水は伝導率が高くなりやすいため、水質検査や水を用いる産業の多くで電気伝導率が活用されています。
熱伝導率が高い素材は熱を素早く拡散できるため、放熱部材として利用されることがあります。そのため、機械などでは放熱材として利用される傾向にあります。
宝石と金属の熱伝導率を比較
熱伝導率は、物質によってそれぞれ異なる数値を示します。そのため、目の前にあるものがどのような物質なのかを判断するための基準として用いられることもあるのです。
物質がどのような種類に分類されるかによっても傾向が異なり、熱を伝えやすい物質とそうでない物質に分けることができます。宝石や貴金属の熱伝導率について、代表的なものを見ていきましょう。
主な宝石の熱伝導率
宝石はさまざまな物質によって構成されており、種類によって熱伝導率が大きく異なります。代表的な宝石の熱伝導率は、以下の通りです。
| 宝石の種類 | 熱伝導率(W/m・K) |
|---|---|
| ダイヤモンド | 1,000~2,200 |
| ルビー・サファイア(コランダム) | 40 |
| 水晶(石英) | 8.8 |
※熱伝導率の数値は参考値
宝石の中でも、ダイヤモンドは突出した熱伝導率を備えています。ダイヤモンドは炭素(C)による立方体の結晶構造をもち、硬度も非常に高い宝石です。
ルビーとサファイアは色味に大きな違いがありますが、どちらもAl2O3を主成分とするコランダムと呼ばれる鉱物です。結晶構造は六方晶で、ダイヤモンドほどではないものの比較的高めの熱伝導率です。
水晶は石英(SiO2)のうち透明な結晶を指し、含有する成分によって幅広い色に発色します。ダイヤモンドやコランダムと比較すると熱伝導率は低いですが、多くの宝石は水晶に近い数値を示すのが特徴です。
主な貴金属の熱伝導率
続いて、貴金属の熱伝導率について見ていきましょう。代表的な貴金属の熱伝導率は、以下の表の通りです。
| 貴金属名 | 熱伝導率(W/m・K) |
|---|---|
| 金 | 300 |
| 銀 | 420 |
| 銅 | 370 |
| プラチナ | 70 |
※熱伝導率の数値は参考値
宝石に比べると金属は全体的に熱伝導率が高く、その中でも貴金属である金銀や、工業分野でよく利用される銅は熱を伝えやすい傾向にあります。なお、貴金属以外ではアルミが200W/m・K、鉄が70W/m・Kとなっており、金属が比較的熱を伝えやすい性質をもつことが分かるでしょう。
こうした性質から金属はさまざまな分野で利用されており、貴金属も装飾品だけでなく工業分野でも重要な立ち位置にあります。表に挙げた金属でいえば、銅を利用した炊飯器があるほどです。
熱伝導率から見る宝石と金属の違い
地球などの惑星の地殻で生成される天然の無機物全体を鉱物と呼び、宝石の多くは鉱物に分類されます。一方、金属は鉱石から取り出された元素や合金です。
宝石は鉱物の中でも見た目が美しく希少性があり、耐久性が高いものが分類されるグループです。複数の物質の複合体であり、独特の化学組成や結晶構造をもっています。
一方、金属は金、銀、銅、鉄などの単体の物質を取り出したものであり、独特の光沢や高い電気伝導率・熱伝導率などの特徴がある物質です。
ダイヤモンドやコランダムなど一部の特異な宝石を除いた一般的な鉱物はあまり熱伝導率が高くありませんが、金属はどの種類でもある程度熱伝導率が高い傾向にあります。
熱伝導率が高くても電気を通すとは限らない
ダイヤモンドやルビー・サファイアのような例を除けば、「熱を伝えやすい素材」と聞いて金属を思い浮かべる方は多いでしょう。そのため、熱を伝えやすいなら電気も通しやすいのでは、と考えることも不思議ではありません。
しかし、実際には熱伝導率が高いからといって必ずしも電気伝導率が高いわけではない点に注意が必要です。熱と電気は伝わり方の仕組みが異なるため、熱を伝えやすい素材でも電気はほとんど通さないことがあります。
金属は熱も電気も伝えやすい
熱を伝えやすい素材の代表である金属は、概ね電気も伝えやすい素材です。金属の定義は、独特の金属光沢をもつこと、引き延ばしたり薄く叩いたりしやすいこと、熱や電気を通しやすいことが挙げられます。
金属は加工しやすくエネルギーの伝達効率が良いうえ再利用もしやすいため、工業分野で活用されることが多いです。さらに、金やプラチナはほとんどの物質と反応せず触媒として利用しやすい性質があります。
ダイヤモンドは熱を伝えるが電気は通しにくい
金属と比べても飛び抜けて熱伝導率が高いダイヤモンドですが、電気伝導率については異なる性質を示します。炭素でできたダイヤモンドは、電気をほとんど通さない素材です。
ダイヤモンドの電気抵抗率は10⁶~10¹⁸Ω・mとされています。ダイヤモンドを含む多くの宝石は絶縁体に分類され、電気抵抗率が高い性質をもっています。そのため、電線のように電気を通すための製品には電気を通しやすい金属が使用されるのです。
宝石が工業分野で用いられる場合は、熱伝導率や屈折率、硬度など電気伝導率以外の性質を期待されています。
伝導率の仕組みの違い
金属とダイヤモンドで性質が異なるのは、熱と電気の伝導の仕組みが異なることに加え、両者の物理的な特性にも違いがあるためです。
金属は金属結合と呼ばれる結合によって原子が結びついており、素材の内部で電子が動きやすい状態にあります。そのため、自由電子が熱や電気を伝える際に動き回り、高い熱伝導率や電気伝導率を示すのです。
一方、ダイヤモンドは炭素原子が共有結合と呼ばれる結合で格子状に強く結びついています。この状態では電子が動けないため、ダイヤモンドは電気をほとんど通しません。ただし、格子状の結合が振動して熱エネルギーを伝えるため、熱伝導率は高いです。
宝石や金属の伝導率はどのように活用されている?
宝石や金属は、その性質からさまざまな分野で活用されています。とくに、ダイヤモンドや金属がもつ高い熱伝導率は重要な性質の1つです。
熱伝導率がどのように活用されているのかについて見ていきましょう。
ダイヤモンド鑑定への活用
ダイヤモンドがもつ高い熱伝導率は、ダイヤモンドとして提示された宝石が本物であるかの鑑定に活用されています。
専用の機械であるダイヤモンド・テスターでは、熱伝導率と関連性の高い熱慣性と呼ばれる性質を用いてその石がダイヤモンドなのかを検査しているのです。ダイヤモンドに次いで熱伝導率が高い天然石はルビーやサファイアなどのコランダムですが、その間にすら約50倍の差があります。そのため、突出した熱慣性を示す石であればダイヤモンドだと考えられるのです。
ただし、例外的に高い熱伝導率や熱慣性を示す石としてモアッサナイトと呼ばれる人工石も存在します。モアッサナイトはコランダムの約10倍の熱伝導率をもち、かつてはダイヤモンドとして鑑定されてしまうこともあったのです。現在ではダイヤモンド・テスターの精度が改良され、ダイヤモンドとモアッサナイトも見分けられるようになりました。
ジュエリー素材の特徴を知る目安
熱伝導率が高い素材は熱を伝えやすく逃がしやすい性質をもちます。そのため、最初に触った段階ではひんやりと冷たく、ずっと身につけているとじわじわと温かくなっていくのが特徴です。
金の含有量が多いジュエリーの場合この性質が顕著であり、あまり含有量が多くない合金の場合は実感しにくい傾向にあります。従って、この性質は該当のジュエリーが熱伝導率が高い金属でできているかを知る目安になるのです。
なお、熱伝導率が高い銀でジュエリーを作る場合、ろう付けの作業におけるろうが融けやすく加工が難しくなります。一方、貴金属の中では熱伝導率が比較的低いプラチナは熱が拡散しにくいため、ろう付け作業を行いやすい特徴があります。
電子機器や工業分野での活用
熱伝導率が高い素材は、ジュエリーとしてだけでなく工業などの分野でも活用されています。
ダイヤモンドは金属よりも高い熱伝導率が注目されており、電子機器への活用や宇宙産業での利用も行われている素材です。電子基板や半導体のように高い電圧によって熱が発生する部品は効率的な放熱が必要であり、そのためのヒートシンクなどにダイヤモンドが用いられる場合があります。
ダイヤモンドを使用した電子機器は宇宙でも活用されており、ロケットや探査機の部品としても用いられることが多いです。とくに宇宙では熱伝導率だけでなく耐放射線性も求められるため、さまざまな性質を併せもつダイヤモンドが選択される傾向にあります。
金属の中では銅がとくに活用されており、日常生活では鉄と並んで調理器具に使われることが多いです。また、熱伝導率が高い金属は熱による加工がしやすく、加工後の変形が起こりにくい性質もあります。
まとめ
ジュエリーとして使用される宝石や金属の中でも、ダイヤモンドや金銀銅は熱伝導率が高い素材です。そのため、装飾品としての用途以外にもさまざまな使い道があります。半導体などに用いられることもあり、宇宙産業でも活躍しているのが特徴です。
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