物流のエネルギーコスト上昇は物価にどう影響する?原因と対策をわかりやすく解説

  • 更新日:2026/05/11

世界情勢の変化などにより、物流のエネルギーコストが上昇すると、物流の上昇につながり、消費者の生活や企業の経済活動への影響が懸念されます。

本記事では、物流におけるエネルギーコスト上昇の影響や要因、企業が講じるべき対策を解説します。物価への影響に関心のある方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

物流と物価の関係とは?

物流のエネルギーコストが物価に与える影響を理解するには、まず両者の関係を把握することが重要です。物流コストと物価は密接に結びついており、その全体像を確認していきましょう。

物流コストは商品価格の一部である

物流コストと物価は密接に関係しており、物流費は商品価格の一部を構成します。

商品価格は利益と原価で成り立ち、その原価には輸送費などの物流コストが含まれます。なお、売上高に占める物流コスト(売上高物流コスト)はおおむね4〜5%で推移し、近年は上昇傾向にあります。

なぜ「物流コストの上昇=物価上昇」と言われるのか

燃料費の上昇などで物流のコストが上がったとき、企業はそれを商品の価格として「転嫁」することでコストを回収しようとします。

物流にかかるコストが上昇しているにもかかわらず価格を据え置きにしていると、その分売上高物流コストの割合が上昇し、利益率が下がってしまうためです。企業は利益の追求のために商品価格を変更するため、物流コストが上昇すると物価が上昇する傾向にあります。

物流のエネルギーコストが上昇している背景

国内の物流におけるエネルギーコストは、世界中の情勢の影響を受けて変動しています。

そのため、国内でエネルギーコストが上昇したときは、その背景に海外でのトラブルや経済状況の変動が潜んでいることが多いです。エネルギーコストの上昇に影響を与える背景にどのようなものがあるのか見ていきましょう。

燃料価格の高騰

エネルギーコストの上昇には、燃料価格の高騰が影響しています。

ガソリンや電力を生み出すための燃料である原油は、どこの国でも産出する資源ではありません。地球上で原油を採掘できる地域は限られており、産油国でトラブルなどが発生した場合、原油の供給が滞って価格が吊り上がります。

2022年のロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の悪化により原油の確保が難しくなると、エネルギーコストは上昇します。その結果、トラック用のガソリンや倉庫運営に必要な電力費が高騰し、物流コストの増加につながります。

世界的なインフレと供給網の変化

世界的なインフレーションは、国内の物流コスト上昇に大きく影響します。物価全体が上昇する中で、燃料費に加えて人件費も高騰し、物流コストはさらに増大します。

また、インフレは物流にとどまらず製造や販売など供給網全体に波及し、コスト増がさらなる価格上昇を招く悪循環を引き起こす可能性があります。

地政学上のリスク

地政学上のリスクも、物流におけるコストの上昇に影響を与えています。

近年では需要の増加などに伴い、世界的に物流のためのコンテナが不足しており、主要港が常に混雑している状態です。それに加え、各地で発生している国家間の緊張状態や紛争による物流ルートの封鎖などが影響し、海上ルートの変更と運賃の上昇が発生しています。

国際的な物流コストが上昇することにより、多くの商品や燃料を輸入に頼っている日本国内での物流コストも上昇する傾向にあるのです。

物流コストが上がる主な原因

続いて、国内での物流コストが上がる具体的な原因について見ていきましょう。

物流コストの上昇は、エネルギーコストや人件費の上昇など、さまざまな要因で発生します。どのようなものが原因になるのかを知っていれば、コストの上昇がいつ発生しそうなのかを予想することもできるでしょう。

エネルギーコストの増加

物流コストの上昇に最も影響が大きいのは、エネルギーコストの増加です。

日本は原油を輸入に頼っているため、国際情勢の悪化やインフレによる価格高騰が物流業界における大きな打撃を与えます。

ガソリンや軽油の価格が高くなると、トラック、船舶、飛行機などの物流に使用される輸送手段のコストも増大します。

ドライバー不足と人件費の上昇

国内における運送トラックのドライバーは不足している傾向にあり、物流コストの上昇につながっています。

コロナ禍以降、消費者の多くがECサイトを利用するようになり、遠隔地からものを運ぶ機会が増えました。しかし、需要の増加に人員の整備が追いついておらず、ドライバーの数が足りていないのです。

日本全国における少子高齢化に加え、ドライバーには長時間労働や薄給、重労働などのイメージがついてしまっており、積極的に就業しようとする人材は多くありません。そのため、企業はドライバーの人件費や福利厚生を充実させて労働者を呼び込む必要があり、これが物流コストとして反映されているのです。

2024年問題による輸送能力低下

行政による規制の強化も、物流コストの上昇に影響を与えています。

2024年4月1日から働き方改革によってトラックドライバーの時間外労働規制強化が適用され、トラックドライバーの時間外労働が年間960時間に規制されました。これにより、ドライバー1人当たりの走行距離に制限がかかり、従来のような長距離走行が難しくなったのです。

この問題はいわゆる「2024年問題」と呼ばれ、これまで1日で完了していた輸送に数日必要になるなど輸送能力の低下を招いています。これを解消するためには複数人のドライバーを雇う必要があり、支払う人件費の増加によるコスト増が発生しています。

倉庫・保管コストの上昇

物流の需要増加に伴い倉庫や保管に関するコストも上昇しており、物流コストに影響を与えています。

物流のコストとして倉庫の存在は欠かせませんが、倉庫の維持には多くのコストがかかるのが課題です。とくに、都心部は地価が高く、倉庫の賃料が上昇しています。また、倉庫で使用する電気の料金や従業員の人件費もコストに含まれる点に注意が必要です。

倉庫の照明や冷蔵倉庫、冷凍倉庫の空調・冷凍設備、シャッターの開閉など、倉庫では多くの電気を消費しています。燃料費が高騰すると火力発電に必要なコストが上昇するため、その分電気代が高くなる可能性があるのです。倉庫内でのピッキングや梱包作業を行う従業員も不足しており、新たな雇い入れのために人件費がかかっています。

物流コスト上昇が物価に与える影響

続いて、物流コストの上昇が物価に与える影響について見ていきましょう。

上昇したコストは、企業によって商品価格に転嫁される可能性があります。コストが価格に転嫁されるとその分物価が上昇し、消費者の生活や企業の経済活動に大きな影響を与えることでしょう。

商品の価格にコストが転嫁される仕組み

企業が商品価格にコストの上昇分を上乗せして回収することを「転嫁」と言います。

物流コストが上昇すると、まず原材料のメーカーが材料費に転嫁します。次に、原材料を用いて製品を製造した製造業者が卸売業者に販売する商品価格に対して物流コストを転嫁するのです。そして、卸売業者が小売業者に、小売業者が消費者に製品を販売する過程でコストを転嫁します。

このように、複数の業者を経るたびに物流コストが転嫁されていくため、物価の上昇につながりやすいのです。

企業利益の圧迫と値上げの判断

物流コストが上昇したからといって、企業はただちに商品価格に転嫁するわけではありません。

市場における価格競争は激化の一途を辿っており、消費者も価格の上昇には敏感です。そのため、無理に商品価格を上昇させると消費者からの反発を招き、顧客離れの原因になる恐れがあります。

しかし、いつまでも価格を据え置きにしていると、商品価格の中の物流コストの割合が高くなっていき企業の利益を圧迫するでしょう。価格を上げても購買意欲の低下によって売り上げが下がる可能性があり、価格を据え置くか、思い切って値上げするかのどちらにメリットがあるかの判断は難しいです。

消費者への影響

物流コストと物価が両方上昇すると、消費者の生活コストも増加します。

エネルギーコストが上昇すると、消費者の交通費も高くなるでしょう。また、食品や日用品の価格が上昇すると生活費は大きく圧迫されます。

物価が上昇したからと言って、消費者側の収入がすぐに上がるとは限らないため、生活が厳しくなる可能性があります。

物価上昇の原因は物流だけではない

物価の上昇は、物流コストの影響で発生するばかりではありません。

生活や経済活動に影響を与える物価高は、さまざまな原因で発生します。物価高への対策を立てるためには、何が原因なのかを見極めることが大切です。

原材料価格の高騰

原材料価格の高騰は、物価高に影響を与える大きな要因の1つです。

原油、天然ガスの価格が上昇すると、小麦や大豆などの農作物の価格も上昇していきます。このように連鎖的に原材料価格が上昇していくと、原材料の調達にかかったコストが転嫁されて商品価格が上昇するのです。

結果的に食料品や燃料、日用品など、多くの商品の価格が上がって物価高になります。

人件費の上昇

従業員に支払う人件費の上昇も、物価高に影響します。

商品の製造や販売に関わる従業員には、対価として給与を支払う必要があります。また、従業員の働きやすい環境を整えて人材を呼び込むためには、福利厚生を充実させることも大切です。

このような形で発生した人件費は商品価格に転嫁され、物価の上昇を招く可能性があります。近年では働き方改革によって1人あたりの労働時間の制限が強くなり、生産性の維持のためにより多くの労働者が求められる傾向にあるためより物価に影響する可能性があるでしょう。

為替や経済環境の影響

為替や経済環境の変動も、国内の物価に影響を与えます。

海外通貨に対して円の価値が落ちる円安になると、同じ物品を輸入するのにより多くの円が必要になるため物価が上昇しやすいです。とくに、ドルに対して円安が発生すると経済への影響が大きくなります。

また、世界的にインフレが発生していると輸入商品の価格が上昇するため、これも国内の物価に影響を与えるでしょう。

企業が取り組むべき物流コスト削減対策

物流コストの増加に伴う物価高は、経済活動に大きな影響を及ぼすため、企業は物価高解消や回避に向けてさまざまな対策を求められます。

ここからは、企業が取り組むべき物流コスト削減への対策について見ていきましょう。

輸送ルート・配送ネットワークの最適化

企業として物流コストの上昇に対策するのであれば、輸送ルートや配送ネットワークの最適化を目指すことが大切です。

例えば、倉庫などの物流拠点の数や位置が効率的に配置されているかをしっかり確認してみましょう。無駄や不足があるのであれば、より効率良く荷物を運べるように再配置する必要があります。輸送距離の短縮、管理コストの削減など、求める効果が何なのかをはっきりさせておくのがおすすめです。

また、現在の輸送ルートが適切なのかを見直す方法もあります。最新の配送計画システムやAIなどを活用し、渋滞情報や荷量に応じた配車パターンやルートを計算し直すと良いでしょう。

共同配送・積載率向上

物流コストを削減するためには、共同配送や混載便を利用して積載率を向上させるのもおすすめです。

配送エリアが重なっている他社とトラックをシェアし、まとめて荷物を配送することで個別の配送にかかるコストを削減できます。トラック1台あたりの積載率を向上させられれば、必要なトラックの数が減るでしょう。

都心部などでは1社あたりが確保できる車両数も少ない傾向にあるため、他社と協業することにより物流の効率を高められるでしょう。

在庫管理の効率化

物流の拠点における在庫管理の効率化も、コスト削減に有効です。

いつまでも在庫を抱えて倉庫をいっぱいにしておくよりも、必要なものを必要なときに、必要な量だけ生産・調達し、適正な在庫を維持した方が効率良く事業を進められます。商品の保管にもコストがかかるうえ古くなったものは廃棄することになるため、在庫の回転率は高い方が望ましいです。

さらに、倉庫内における在庫配置を最適化し、限られたスペースで効率的にものを出し入れできるようにしておくことでコストの削減につながります。

物流DXによる業務改善

物流コストを削減するためには、DXの推進もおすすめです。

デジタル技術を活用してより最適な形で業務を行えるようなシステムを導入すると、業務の無駄を削減してコストを減らせます。荷物の入出荷やピッキングなどを一元管理できる倉庫管理システムやデータ入力の自動化などを活用し、人為的なミスを減らして業務効率を上げるのがおすすめです。

エネルギーコスト対策が今後の鍵

物流コストを削減して物価高に対抗するためには、エネルギーコストへの対策が欠かせません。

物流コストに大きな影響を与えるのは、燃料などのエネルギーにかかる費用です。そのため、エネルギーコストを抑えることは、物流全体のコスト削減につながります。

省エネ設備・再エネ導入の重要性

2024年に改正省エネ法が施行され、エネルギー使用量とCO2の削減を目的として物流業界にも省エネ対策が求められています。そのため、貨物輸送や倉庫運営における省エネ対策を進める必要があるのです。

輸送に用いる手段の燃費向上や、輸送の効率化によるエネルギーの消費量削減が求められます。また、物流の拠点である倉庫などに太陽光発電システムや断熱材、LED照明などを導入して消費エネルギーを減らすだけでなく、エネルギーの使用で発生するCO2を削減することが大切です。

長期的なコスト安定化への取り組み

長期的な視点からエネルギーコストを削減することは、経営を安定させるためにも重要です。事業全体でどのようにエネルギーを消費しているのか、その流れを把握した上で改善策を講じる必要があります。

輸送にかかるエネルギーコストを削減するために積載率を上げ、最適なルートを割り出して輸送ルートを効率化する、倉庫の維持管理にかかる電気代を削減するなど、さまざまな取り組みが必要です。とくに、倉庫は設備の刷新や電気契約の見直しがコストの安定化につながる可能性があります。

まとめ

物流の過程で生じるエネルギーコストが増大すると、商品価格に転嫁されて物価が上昇する傾向にあります。物価が上昇すると消費者の生活や企業の経済活動には大きな影響が出るため、企業側はできる限り物流にかかるコストを削減することを求められるでしょう。物流の効率化や拠点の改善によって、消費されるエネルギーの量を減らすことが大切です。

「LOGI FLAG」は、霞ヶ関キャピタルが提供している次世代型物流ブランドです。多様化する生活様式や変化する消費活動、地球環境に関する課題解決に向け、市場供給されていない新たな物流施設を開発しています。物流の効率化と物流拠点の改善に関心がある方は、ぜひ利用してみてください。

<このページを監修した人>
エコモ博士

RAUL株式会社 電気プラン乗換コム運営事務局
エコモ博士のエコらいふナビ

エコモは各地を飛び回って、電力・エネルギーや地球環境についてお勉強中なんだモ!色んな人に電気/ガスのことをお伝えし、エネルギーをもっと身近に感じてもらいたモ!

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