石炭と大気汚染
所属：目白大学
インターン生：F・Hさん
私たち人類は産業革命の時代から石炭を利用し始め、蒸気機関を利用したエネルギーなど多くの利益をもたらしたことは知っていると想います。しかし、現在大気汚染による地球環境の破壊がますます深刻になっており、私たちが安全に暮らせる場所がなくなってきています。この記事では大気汚染物質の種類とヒトの健康に与える影響、過去や現在で起きている大気汚染の例をそれぞれ紹介します。
大気汚染物質の種類と人体への影響
大気汚染物質の特徴や種類は、非常に多く複雑です。有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質が248種類もあり、そのうち、優先的に規制し抑制を行う必要がある物質（優先取組物質）だけでも23種類あります。その内、環境再生保全機構のＨＰに記載されている代表的な物質6種類と、最も危険な指定物質3種類をご紹介致します。
代表的な大気汚染物質6種類
①硫黄酸化物
二酸化硫黄などの硫黄酸化物は、石油や石炭などの化石燃料が燃える際に発生します。日本では高度経済成長の時代に、工場からの煙などに含まれる硫黄酸化物による大気汚染が進行し、大きな問題になりました。また、酸性雨の原因にもなります。さまざまな対策や規制の結果、その濃度は現在、減少しています。
人体への影響…気管支炎やぜん息の原因になると言われています。
②窒素酸化物
窒素酸化物は、燃料を高温で燃やすことで、燃料中や空気中の窒素と酸素が結びついて発生します。工場や火力発電所、自動車、家庭など発生源は多様です。都市部の自動車から排出される窒素酸化物による大気汚染が問題となり、現在も排出ガス規制などにより排出量を減らす努力が続けられています。
人体への影響…高濃度の二酸化窒素（NO2）は、のど、気管、肺などの呼吸器に悪影響を与えます。
③光化学オキシダント
光化学オキシダントは、自動車や工場などから排出された窒素酸化物や揮発性有機化合物が、紫外線を受けて光化学反応を起こすことで生じる物質です。高濃度の光化学オキシダントが大気中に漂う現象を光化学スモッグといいます。近年では、海外からの影響も指摘され、注目されています。
人体への影響…目の痛みや吐き気、頭痛などを引き起こします。
④粒子状物質
粒子状物質は固体および液体の粒を指します。工場などの煙から出るばいじんや、鉱物の堆積場などから発生する粉じん、ディーゼル車の排出ガスに含まれる黒煙などのほか、土ぼこりなど自然現象によるものもあります。高度経済成長期には、洗濯物や室内の汚れなど生活環境への被害が発生しました。
人体への影響…高濃度の粒子状物質は呼吸器疾患やガンなどと関連があると考えられています。
⑤浮遊粒子状物質
粒子状物質のうち、粒径10マイクロメートル以下の小さなものが浮遊粒子状物質と呼ばれます。粒径がより小さいため、吸い込まれると肺や気管などに沈着しやすく、人体への影響が心配されます。都市部の自動車交通量の急増に伴い、浮遊粒子状物質による大気汚染が深刻化したため、さまざまな規制が実施されています。
人体への影響…呼吸器に悪影響を与えるだけでなく、ガンや花粉症などのアレルギー疾患との関連が指摘されています。
⑥微小粒子状物質
浮遊粒子状物質のうちで、さらに小さい粒径2.5マイクロメートル以下のものを微小粒子状物質と呼びます。浮遊粒子状物質よりさらに肺の奥まで入りやすく、健康への影響も大きいと考えられています。日本では2009（平成21）年に環境基準が設けられ、対策が急がれています。
人体への影響…気管支や肺の奥深くまで入りやすく、呼吸器疾患だけでなく、肺ガンなどを引き起こす可能性があると言われています。
最も危険な指定物質3種類
有害大気汚染物質のうち、さらに最も危険な指定物質3種類を紹介します。
⑦ベンゼン
ベンゼンはたばこにも含まれており、常温では特徴的な臭いがある無色透明な液体であり、非常に危険な物質です。主にヒトの呼吸によって体内に取り込まれ、濃度の程度によってそれぞれ症状が異なります。高濃度のベンゼンを長期間吸い込むと、造血器に障害を引き起こし、貧血などの症状が出ることが知られています。低濃度のベンゼンを長期間吸い込むと、血液のがんである白血病を引き起こす可能性があります。
⑧トリクロロエチレン
トリクロロエチレンは常温では無色透明の液体で、不燃性です。甘い香りを持っているのが特徴です。主にヒトの呼吸、経口によって吸収され、中枢神経系に害を与えます。致死性、発がん性もあり、腎臓がん、生殖機能、発育障害、自己免疫疾患、パーキンソン病の原因にもなります。
⑨テトラクロロエチレン
テトラクロロエチレンは常温では不燃性の液体ですが、空気中に蒸発しやすく、金属にも反応し、鋭く甘い悪臭を持つ特徴があります。土壌汚染の原因物質として報道されることもあり、人々に知られていることがあります。火災時に刺激性もしくは有毒なフォームやガスを出します。ヒトの皮膚によって吸収され、記憶、集中、刺針感覚、自律神経への障害、手足のしびれ、リウマチ性の痛み、体のふらつき、悪心、情緒不安定の兆候が観察されています。
⑩アスベスト（石綿）
アスベストは建物、またはそれを工事で解体、改造、補修する作業の際に使われます。経年劣化や振動、接触等によって、粉じんが発生する恐れがあるため、アスベスト繊維を吸引することによって、石綿肺（じん肺の一種）、肺がん、悪性中皮腫などの疾患を発症する可能性があることが知られています。
海外における大気汚染の例
日本以外の国においても大気汚染の影響は深刻になっており、下記にて一部事例をご紹介致します。
①イギリスの「ロンドンスモッグ事件」
イギリスでは、産業革命以降、石炭を大量に使うようになり、大気汚染が進んだ歴史があります。それはかつて1952年の12月5日から9日に起きた「ロンドンスモッグ事件」です。
当時、石炭を利用し、その燃焼によって生じるすすや亜硫酸ガス（二酸化硫黄）などが、ロンドン地表付近に停滞したことによって大気汚染物質が滞留し、呼吸困難、チアノーゼ、発熱などを呈する人が多発し、4000人の過剰死亡者を出しました。
その死因の大部分は、慢性気管支炎、気管支肺炎、心臓病であり、死亡者の多くは慢性呼吸器疾患を有する高齢者でした。現在のイギリスの石炭消費量は13Mt（2018年）と過去で最低を記録し、世界順位では30位を記録しました。
イギリス政府は「2025年までに石炭火力を撤廃する計画」を打ち出し、風力、バイオマス、太陽光を使った再生可能エネルギーに力を入れており、石炭エネルギーよりも勝る結果を残しています。
②中国の生活環境
中国では石炭ストーブを使って冬の寒さを過ごしている家庭が減っておらず、地方から都市へ出稼ぎに来る「農民工」が住む都市郊外では、集団暖房設備がなく、石炭ストーブで暖を取る人もまだ多いのが現状です。
農村部では、暖房や料理のためにトウモロコシや麦の茎を燃やし、黒煙を発生させているのも大気汚染の一因です。また、人口が多いことに加えて、自動車も非常に多く、工場や汚水対策が間に合っていないこともあり、汚染物質の発生も多いのがあります。
現在、中国の石炭消費量は3770Mt(2018)と世界順位では1位を記録しました。エネルギーの割合では石炭の消費が60%を越えていて、石炭消費から抜け出せない状態となっています。
まとめ
世界の国々では大気汚染が深刻な地域と、改善した国が存在していて、大気汚染物質の危険性を知り、私たちにできることはなにかを考えていくことが大切です。私たちが住んでいる国の政治や政策を知り、関心を持ってみることから初めて見ましょう。大気汚染を減らすためには何をしたらよいのか、改めて考えていきましょう。
宜しければSNSでのシェアをお願い致します！
